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書籍版八巻特典SS2

『木工職人リュエ』


「リュエ? なにをしているんだい?」

 午後。用意された船室で休憩しようと戻ってみると、珍しくリュエが甲板に出ることなく部屋で何やら作業をしていた。

「あ、カイくん。ほら、昨日レイスが大きな魚を釣っただろう? あの時ウキが取れて海に流されてしまったんだ。だから、こうして新しいウキを作っているのさ」

「なるほど……ウキ作りは俺もした事があるけれど……随分上手だね」

「長丸に削るだけだからね。後はここに水を弾く薬を塗ったら完成さ」

 綺麗な楕円に削られたそれを、小瓶に満たされた液体にトプンと沈め引き上げる。

 ……釣りは苦手なのに道具作りに慣れているというのもおかしな話ではあるのだが。

「カイくんもやってみるかい? せっかくだし予備を作ろうと思うのだけど」

「そうだなぁ久々にやってみようか」

 そうして、二人で黙々と木を削り始めたのだった。


「よし完成。ナツメ型のウキだ」

「おー、上手だねカイくん! ほら、私は疑似餌の真似で魚の形のウキにしてみたよ」

「ふふ、私はシンプルに丸い形にしてみましたよ」

 一時間後、俺達を探しに来たレイスも一緒にウキ作りをする事になったのだが、やはり彼女も日曜大工のような事をしていただけはあり手先が大層器用でございました。

 真ん丸ウキを嬉しそうに手のひらで転がしながら、その出来栄えを確認するレイス。

 どうやら先日の一件で釣りを気に入ったらしく、是非自分用の道具を手に入れたいと言っていたのだ。

「それにしても本当にリュエは手先が器用ですね……どうしましょうか、これ」

 そして、俺達が一つ完成させる間にリュエが量産したウキが散乱する室内。

 するとその時、再び部屋の扉が開かれる。現れたのは――

「みんなこんなところにいたはむか。なにしてるはむ?」

 そう、太陽少女ことはむちゃんだ。いつも遊び相手をしてくれるリュエがいなかった為、俺達を探していたのだろう。少しだけ不満そうな様子で彼女が近寄って来る。

「これなにはむ? 木の実はむか? 一つ欲しいはむ」

「あ、ダメだよはむちゃん。それはただの木なんだ」

「木を削ってどうするはむ? 削っても食べられないはむよ?」

 ふむ。こんなに沢山あるのならば、ビー玉のような遊びも出来るだろう。

 散乱している木の玉を集め、毛布の上に並べて見せる。

 そしてそのうち一つを指で弾き……つまりおはじき遊びのような物だ。

 自分が子供の時ですらあまりしなかった遊びではあるのだが、それをはむちゃんに説明してみせる。

「――とまぁ、こうやって遊ぶんだ」

「楽しそうはむ。やってみるはむ」

「似たような遊びを木の実でしてる子供を、大昔に森で見た事あったかも」

「私も小石で遊んでいる子供達を見た事があります。ふふ、懐かしいです」

「はは、じゃあちょっと一緒にやってみようか」

 世界は違えど、時代は違えど、遊びの発想は案外同じなのかもしれないな。

 そんな遊びの文化に思いを馳せながら、俺も久々に童心に帰るのだった。

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