書籍版七巻特典SS1
((´・ω・`))びびったしぬか
『魔法ではないのです』
「カイくん、次はあっちに行こうあっち!」
まるで遊園地ではしゃぐ子供の様に、リュエが通りを駆けていく。
いや、まるでというよりまんまその通りだろうか。
今日は訓練所で様々な人間から対人訓練を申し込まれ、少しお疲れ気味リュエを労う為に街の散策へとやって来た訳だが、珍しくレイスはホテルでお留守番だ。
彼女もここ最近の疲れが出たのか『今日はベッドでゆっくりします』との事。
元々朝が弱い彼女の事だ。連日の早起きが堪えたのだろう。
先に走っていった彼女を追いかけ、少し大きな通りへと入ると、そこでは他の通り以上の道が通行人で溢れ、笑い声や小さな悲鳴、驚きの声と、とても賑やかな様子だった。
「カイくん、ここはなんだろう? 見世物……かな?」
「どうやらパフォーマー達の為にある通りみたいだね」
大玉に乗りながらボールをジャグリングする人間や、ギャラリーを巻き込んでパントマイムを披露する道化師、変わり種としては、魔術を使っているであろう火吹き男まで。
ありとあらゆるパフォーマーとそれを見て歓声を上げるギャラリーが、他の通りとは比べ物にならない盛り上がりを見せ、いかにもお祭りといった光景が広がっていた。
「凄いねぇ……見てよ、剣でお手玉しているよ。お手剣? なんて言うんだろう」
「リュエ、あっちを見てみなよ。目から炎を出している人もいる」
「おー……って、あれはただの魔術じゃないかい?」
なるほど、この世界じゃそんなに驚く事ではないんですね。
地球とは微妙に評価の違うジャグラーや見慣れない芸を眺めて歩いていると、他の人達とは違い、演じる側だけでなく見守る側も静寂に包まれる、そんな演目を見つけた。
「へぇ、トランプマジックじゃないか」
「マジック? 魔法の類かい? ちょっと見ていこうよ」
マジックという響きに惹かれたのか、リュエがギャラリーに混じり、一人の女性マジシャンが演じるカードマジックを凝視し始める。
まるで『どんな魔法でも解析してやろう』とでも言いたげな様子だ。
……魔法じゃなくて技術なんだけどなぁ手品って。
「では次の演目ですが……そこに新しく立ち止まってくれたお姉さん、前へどうぞ」
「え、私かい?」
すると、マジシャンの女性がリュエに声をかけ、サッとギャラリーが左右に分かれる。
前に歩み出たリュエに、女性は口上を述べ始めた。
「さてお姉さん。私が広げたこのトランプの中から一枚カードを引いてくれるかな?」
「うん、了解したよ。じゃあ……これ」
「では、それを私には見えないように周囲の人に見せてあげてくれないかな?」
どうやらよくあるカード当ての手品のようだ。
リュエが引いたのはハートのA、偶然にしては中々シンボリックな一枚だ。
「では、そのカードを好きなところに戻して、よくシャッフルして?」
「……わ、わかった」
よくある流れ。地球にいた頃に手品がブームになっていた影響もあり、俺自身もある程度の知識、そして技術を習得している為、そこまで驚く事はないのだが、どうやらこの世界では珍しいらしく、観客もリュエも、固唾を飲みその演目を見つめ続けていた。
そして、案の定リュエの選んだカードが、マジシャンの見事な手さばきにより、突然デッキの上に現れたのだった。ふむ、所謂“アンビシャスカード”という技法だったか。
その妙技に周囲から静かな驚きの声が上がり、畏怖する様な視線が女性に向かう。
そして当事者であるリュエはと言うと――
「……馬鹿な……私が解析も感知も出来ない魔法が……」
信じられない物を見たかのように後ずさり、そして恐怖を表情でこちらを見るリュエ。
「リュエ、ちなみにあれは俺も出来たりする」
その瞬間、まるでこの世の終わりの様な表情をするリュエさんでしたとさ。
……後で解説してあげよう。
(´・ω・`)きっと彼女が地球に来た当初は面白いリアクションをする毎日だったんでしょうなぁ




