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暇人、魔王の姿で異世界へ 番外編  作者: 藍敦
後日談

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書籍版六巻特典SS2

(´・ω・`)土木魔王

『彼を見て何を思う』




「そうか……かの地で彼が動くというのか」

「はい。いずれ、こうなる事は予想していましたから」

「本当に、昔から余はそなたの掌の上で転がされてばかりだな」

 私が見上げるのは、この国の長である人物。二二代国王エンドレシアその人。

 そして私は、その王である人物から『絶対の約束』を取り付けようとしていた。

『断罪執行権』カイヴォンが王から勝ち取った破格の権利と、そして国が彼を縛る為に与えた『次期公爵』という肩書。この二つを、他大陸で振りかざす許可という強い約束を。

 ……私は、貴方が望まずともいずれこれに近い形で力を持たせるつもりでいたのに。

 けれども貴方は、私の思惑を易々と飛び越えていってしまった。

 だから……私はそれすらも利用する。

「私は貴方が思う程の人間ではありません。今だって必死に軌道修正を出来ないか手探りの状況なのですから」

「ふふふ。ならば、もはや運命は決まったと見て良さそうだ。ならば余はそれに乗るだけ。良いだろう、彼の地での名乗りを余が直々に許可しよう。次期公爵として、そして断罪の刃を振り下ろす執行者としての名乗りを」

「……ありがとうございます、エンドレシア王」


 あれから――私がエンドレシアを旅立ってからまだ一月も経っていないというのに。

 それでも貴方は、私という力を使いこなし、見事に強大な敵を打ち倒してみせた。

 私の長年の宿敵であり、いつか再び相見えることになると確信していた相手アーカム。

 それを貴方は、完膚なきまでに、その勝利を見届けた全ての人間に刻みつけた。

 頼もしくもあり、恐ろしくもあり。私は……きっと貴方を従えられない。

 貴方を御すことなど、きっと誰にも出来ない……そう思っていたんですけどね。

「まったく……あれが魔王だなんて、笑ってしまいますね」

 私はギルドの一室から外を眺める。そこには、今日も住人と共に歩く彼の姿。

 大勢の子供を引き連れて、時々困りながら、その子達に様々な物を見せている。

 それはまるで、子供たちに逆らえない、気のいいお兄さんのようで。

 ふふふ、そろそろこちらに到着する頃合ですね。今日は一体どんな要件でしょう。


「街の近くに公園でも作れないか? 子供達が元気になったのは良いが、この先外から多くの商人の馬車も入ってくるだろ? 安全に遊べる場所が必要だと思うんだが」

「なるほど……確かに今日も大勢の子供にたかられていましたね?」

「見ていたのか……で、どうだ。過去に伐採されたまま枯れ果てた林があるそうじゃないか、そこを切り開いて公園に出来たらって考えてみたんだが」

「そうですね……可能ではありますが、今そちらに人員を割く余裕がありません。少々後回しになってしまっても良いのでしたら」

 アーカム亡き今、仮の代表として街のトップに立っている彼は、やはりどこか情に弱く、物事の優先順位を決める際、感情のままに決めてしまう事が多々あった。

 それを、否定はしない。私達が、貴方の未熟さをカバーする事が出来るのだから。

 だから――貴方は自分の思うまま、心のままに駆け抜けてくれていい。

「いや、許可さえ貰えれば整地は俺の方でする。一日あれば十分だ」

「はぁ……そうでしょうとも。屋敷周辺の地形を一瞬で変えるくらいですものね」

「……反省してまーす」

「感情が困っていない、やり直し」

 嬉しそうに退出する彼を見送る。ふふ、本当にスイッチの切り替えがはっきりした人。

 苛烈で容赦がない、まさしく魔王としての貴方も、そして今、少しでも街の為になにか出来ないかと、手探りながらも駆け回る、普通の人間としての貴方。

 不器用なようで、器用で。本当に不思議で、楽しい人。本当に、飽きが来ませんね。

「さて……では何か遊具に使えそうな物でも手配しておきましょうかね……」

 私は、この街から撤去された瓦礫を保管している人間宛の書状をしたためる。

 まだまだ利用可能な物もあるでしょう。少しでも節約をしなければ。

 するとその時でした。建物全体がかすかに揺れたのは。

 慌てて窓から外の様子を見ると、街の外から砂煙が大きく舞い上がっているのが見えた。

 それと時同じくして、部屋に響くノックの音。そして転がり込むように入ってきた職員がただ一言私にこう報告しました。

『閣下がご乱心召された』と。

 ……モノには限度というものがあるんですよ!

貴方が全力を振るえば、皆が驚いてしまうでしょう!

ため息を付きながら、咄嗟に私は嘘をつく。

貴方の為なんですからね? 感謝して下さい。

「……彼に私が命じたのです。林に良くない物があるので処分して欲しいと」

「そ、そうでしたか! では、そのように皆に報告してまいります!」

 ……さすがに魔王閣下が整地をしているなんて、言えませんからね?

 貴方にも、守るべきイメージがあるでしょう?

「……本当、飽きさせませんね、貴方は」

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