回転
回転
真っ直ぐ歩いてくる久信を前に、手嶋はスターダストによって強力になった特技を使い先制していく。
【フラッシュ】
目を瞑ってもなお、目をくらます程の強い光が手嶋の全身から放たれるが、久信は一瞬のそのタイミングを完全に掴み身体ごと後ろを向き、強烈な光から逃れる。
ただ後ろを向いただけでなく攻撃の予備動作として動き始めていた久信は、後ろ蹴りを思い切り手嶋の腹に叩き込んだ。足裏に鳩尾へ完璧に入った感触が確かに伝わってくるが、スターダストを摂取した手嶋の肉体は痛覚を限界まで鈍化しており怯む事さえない。
「やっかいな薬ですね、全く。予想通りではありますが。」
ダメージは感じられないものの、蹴り飛ばし距離を開けた手嶋を視界に収め久信は再び前へと歩き出す。
手の届きそうな位置まで迫ってくる久信に手嶋は光を放つが、再び久信は身体ごと後ろを向き光を避けると同時に回転肘打ちを顔面に打ち込む。
側頭部に肘を受けても更に光を放つ手嶋ではあるが、久信はタイミングよくそのまま一回転するとローリングエルボーを顔面に叩き込み、ようやく手嶋からダウンを奪っていた。
「タイミングは掴めましたね。効いてはいないようですが。」
地面に転がったカーキ色の帽子を取り、薄くなった頭髪を隠すように被ると、鼻血を流しながら手嶋はすぐに立ち上がる。ブツブツと呟き続け、思考能力の下がった手嶋のターゲットは完全に久信へと移っていた。
「・・・邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ・・・、燃えろ。。。」
帽子の奥から久信を睨みつけ手の平から収束させた光を放とうとするが、二人の視線が合った時にはすでに久信が特技を使っていく。
【視界操作・焦点】
手嶋は収束させた光を放つが、その光は久信の手前で更に集まりその光と熱を散らしていく。狙いが外れた事に手嶋は焦り、続けざまに両手から光を放つがその全てが狙いの奥域が定まらず久信に火をつける事が出来ず、苛立ちを隠す事なく放ち続けていた。
「手前は問題ないですが、後方だと熱いものは熱いですね。燃えるほどではありませんが。」
久信を形相を変えて睨みつけると手嶋は諦めることなく光を放ち続け、偶然にも後方にある病院の建物に火がつくが、すぐに消火器片手に勇司が走ってきて消火活動に入る。
「久信っ、避難は完了。そして天職が消防士の俺が見守っている、安心して燃やされていいぞっ。」
「あなたに応援されると少々やる気が削がれますね。いい加減焦点の操作も疲れましたし、次で確保させていただきます。」
勇司は久信の言葉を聞くことはなく消火活動に勤しみ、久信は手嶋に向かい歩きながら特技を使う。
【視界操作・狭窄】
【思金神の眼鏡・最適化】
二つの特技を同時に使うと、光を放ち続ける手嶋の視界から久信の姿が消え、狭くなった視界の死角から久信が足音をたてずにユルリと近付いていた。
「そんなに光ると迷惑ですよ。」
突然手嶋の視界の端に久信が映ると、一切の無駄を省いた動きで手首を極めて地面に転がし、一息に手首の関節を破壊する。
痛覚をいくら消していても力なく垂れ下がる手首を見た途端、手嶋は焦って立ち上がり逆の手を久信に伸ばしていく。
無表情のまま久信は伸ばされた腕を掴み、立ち関節で肘を極めると体重をかけてそのまま倒し、肘と肩をあっさりと破壊していた。
両腕使えなくなっても未だ倒されながら暴れ抵抗する手嶋に対し、久信は後頭部に上から膝を落とす。
「その状態で暴れると手に障害が残ってしまいますよ。」
強烈な膝と地面とのサンドイッチによって、手嶋は意識を失い傷ついた腕に手錠をかけられ確保となる。そこに消火器と、火のついた月白煙を持つ勇司が戻ってきた。
「やっぱり初期消火が大事だよな。問題としては敷地内禁煙なとこだが。」
「なんとか小火程度で済んだようですね。すぐに搬送班を呼びますので。」
二人はすぐに到着した搬送班に手嶋を引き渡し、事後処理を済ませると車に乗り込む。
「さてさて、どこからスターダスト手に入れたのか気になるとこだよな。」
「ええ。ここから入手先を厳しく追求されると思いますよ。以前出回っていたのとは明らかな違いを感じました。」
「そこは警察にお任せか。それにしても容赦なくやったよな、お前。」
「そうですか?身体が勝手に動いたので、仕方ありません。火遊びも度が過ぎると重罪ですしね。」
今回の事件はとりあえず解決となったが、再びスターダストが出回り始める事に不安を感じながらも特局へ戻っていくのであった。
少々様々な事情で更新が遅くなってしまいました。反省です。
とりあえずここから最終話に向けて更新速度上げていけたらいいなー。




