万引き犯
万引き犯
大型ホームセンターの出入り口の近くにある喫煙所で勇司は張り込みを続けていた。幾つかの疑問を感じずにはいられない心境ながらも、生真面目に待ち続け耳につけた無線に話し掛ける。
「こちら異状なし異状なし。久信そちらはどんな感じだ?」
(「こちらは万引き犯を五名程確保し、店長から専属万引きGメンを依頼された以外は異常なしです。引き続きどうぞ。」)
「天職が見つかってよかったな。天職が万引きGメンなんて素敵じゃないか。」
(「そうですね。天職が幼稚園の滑り台のあなたよりはまともな職種で一安心ですよ。では警戒に戻ります。」)
無線の切れる音と共に溜息を吐きつつ、勇司は再び待機を続け物思いにふける。
(ハァ・・・。天職はせめて人間の職種にしてくれよな。それにしたって0班に来て、まさか万引きGメンの真似事するとは思わなかったよな。まあ、銃で撃たれるよりはマシだしいいか。)
二人は特局に要請された依頼の中でも、明らかに0班の担当ではないであろう依頼を託され、少しの愚痴はこぼしながらも真面目に取り組んでいた。
二人が派遣された理由はとある一人の学生が原因であったが、その学生を見つけ出すために万引きGメンの真似事を続けているのであった。
久信は隠されていた才能を発揮し、万引き犯を見つけ続け店長へ報告すると店員や暇を持て余している勇司が捕まえる。
普段と違い万引きの被害を一切出さず営業を続けるホームセンターに対し、対象の人物はなかなか見つからないが気長に二人は万引きGメンの役割を全うしていく。
夕方を過ぎこんなにも犯罪に手を染める者がいるのかと二人が呆れている頃、セーラー服姿の二人組の学生が久信の目に止まる。
(あの制服のはずですね。情報によると、あの学校の生徒が逃げるときに事件が起こっていたはずです。逃げるような事をしなければ問題はないのですが、・・・残念ながらやりましたか。)
周囲を見渡しながら持っていたカバンにレジを通していない品をこっそり忍ばせると、逃げるようにその場を離れ店外へと向かっていく。
(「そちらに向かう制服姿の女性二人をお願いします。現れるかどうかは運次第ですが。」)
「了解っと。とりあえず捕まえろって事ね。」
無線の連絡を受けた勇司が、そそくさと出てきた所を道を塞ぎIDカードを提示した。
「さてはて、とりあえずお会計はちゃんとしないとダメだぞ。」
立ちはだかる勇司を見て、ギョッとした二人の女子高生は顔を見合わせると一人のカバンの中から万引きした品を二人で取り出す。その品を見て勇司は二人に負けないほどのギョッとした表情を見せていた。
「どうやってそのカバンに入れてこっそり持ってきたんだそれ?」
一人が手に様々な化粧品を持ち、一人が50インチのテレビに服を着たマネキン一体を持つと、思い切り振りかぶる。
「最近の若い娘はなかなかパワフルになったもんで・・・。」
勢い良く放り投げられる商品を前に、勇司は銀色の煙草に火をつけていた。
【銀煙】
吐き出して広げた銀色の煙に商品は受け止められ、勇司は丁寧に地面へと置いていく。その間に二人は逃げ出しているが、すぐにその後を追い距離を縮めていった。
一人の女子高生に手が届きそうな位置まで迫るが、そこに横から飛び込んでくる人影に勇司は気付かず思い切り飛び蹴りをくらう。
受け身をとりすぐに立ち上がる勇司の目に飛び込んできたのは、学ラン姿で上着の前を開き、髪の真ん中だけを金色に染めた飢えたような鋭い目つきをする若い男が、再び飛び蹴りを放とうと走り出しているのであった。
雪の中元気に投稿です。
一応次代へ編ですので、それらしいお話を。
まあ、いきあたりばったりで書いているわけですが。




