袋のネズミ
袋のネズミ
這いずるように隠れながら土に塗れ、進もうとする方向に警官が並び穴はない。
戻ろうにも後方から追い立てるように近付く人々の気配に、勇司は動きようがなくなっていた。
「どうすっかなー。後ろからは犬もきてるし、やっぱり前だな。山の中も飽きたし平地にでよう、俺は一応都会育ちだし。」
立ち上がり土を払うと、両手を見せながら警戒を続ける警官二名に近付いていく。無線ですぐに応援を呼ばれるが、何も凶器の類を持っていない事をアピールしながら前に出た。
「止まれっ!」
「その場に伏せるんだっ!」
警官の言葉に耳を貸さず勇司は両手を上げたまま距離を縮めていくと、山狩りのために持っていた長い木の棒を二人の警官は構えるが、素手の相手にどうしようかと悩んでいる風であった。
(ふぅ、普通の対応してくれてよかった。いきなり銃とか取り出されたら焦ったな。)
すると近辺にいた警官達も駆けつけ、六人の制服警官と勇司は向かい合う事になるが、手を上げたまま少し面倒くさそうに苦笑いを浮かべる。
六人のうち一番巨体の警官が前に出ると、勇司の腕を掴んだ瞬間に背中から投げ落とす。
素直に背中から落ちる勇司にのしかかる巨体の警官ではあるが、立ち上がったのは勇司一人であった。
「バランスを崩させる特技か。背中は多少痛いけど硬い床にむかって八千回は投げられた悲しい過去があるから、慣れたもんだよ。」
火のついた紫色の煙草を咥え腰を叩き軽口を叩く勇司を、警官達が確保にかかる。長尺の棒を躱して紫煙を吐き出し、片方の腕に手錠を掛けられては紫煙を吐き出す。
更に両腕に手錠を掛けられても紫煙を吐き出して相手を行動不能にすると、打ち下ろされる棒を手錠で受け止め、鎖を滑らせながら前進して紫煙を吐き出す。気付くと手錠ははめられているものの、確保する警察官らは全員紫煙によって行動の自由を奪われていた。
「逮捕術持ちか。まあ、しばらくしたら皆様何事もなく動けるようになるのでご安心を。」
紫色の煙草を地面から生やした灰皿に捨て、続けて煙草入れから銀色の煙草を取り出す。
【銀煙・鍵】
銀色の煙を鍵穴に吐き出し、あっさりと手錠を外すと警官の身体の上に手錠を置き、勇司は再び山を下って歩き出した。
次の追手がなかなか現れない事に不審に思いながら少しひらけた場所に出ると、勇司の足が思わず止まり、最大限の警報が頭の中で鳴り出す。
そこには明らかに特殊部隊であろう黒ずくめの装備に見を包んだ集団が突然現れ、これから戦争でも始めそうな物騒な銃器を構えると、その銃口を勇司に向けてくるのであった。
主人公のターンがなかなかに続いています。
もうじきなんか新たな派手な事件を考えなきゃなー。




