山狩り
山狩り
山の中を迷彩柄のロングコートの裾を翻しながら、勇司は走り続けていた。
「優秀です事、日本の警察機構。あっという間に見つかったな、北の方角で中古DVDのセールやってるのが問題なんだよ。まさか『中年だらけの将棋大会プレミアムボックス8』があの値段で売ってるなんて思わないからな。」
大きく形を変えたボストンバッグを抱え、山の中を駈け続ける。人の声の中に犬の吠える声も混じり、本格的な山狩りが始まっていた。
「土地勘ないし、このままじゃ囲まれて面倒な事になりそうだ。守らなきゃならないDVDも増えてピンチが広がってるか。・・・まずは犬だな。」
近くにあった木にバックから取り出したジャケットを括り付けると、煙草入れから水色の煙草を取り出す。
【水色煙】
火をつけ吐き出した少しサイバー感のある水色の煙を浴びると、全身を清涼感が包み勇司の臭いが完璧と言えるまでに消え去る。その場から逃げ出すように再び山を登っていくのであった。
数分後興奮した犬達が木の下で上を見上げながら吠え続ける。
「どおどお。」
「よしよし、何か見つけたか?」
犬達の吠える先には木に結び付けられたジャケットがあり、そこから先へと犬達を促しても周囲をグルグル回るだけで犬達による追跡は不能となる。
「まだ遠くには行ってないはずだっ!探せっ。」
集まってくる刑事の一人が指示を出すと、警官達が周囲に散り散りになって捜索に入る。
人口密度が低くなり、近付いてくる警官をやり過ごすとコアラのように木の幹にしがみつきながら、ズルズルと地面に降り立つ。
「これ以上登っても仕方ないしな、とりあえず下るか。なかなかぶつからないで逃げるって難しいもんだな。」
周囲を見渡し人影が無いことを確認しながら勇司は慎重に進むが、そこでようやく待ち望んでいたが、このタイミングで待ち望んでいない無線が山中に響く程の音を出す。
慌ててロングコートの中から無線を取り出すと、大勢を低くしながら耳をつけた。
(「マイクテスト、マイクテス。調子はいかがでしょうか?」)
耳元から聞こえる久信の声に、少しの安堵感と多少の苛立ちを感じながら小声で返事をする。
「久信、なかなかにタイミング悪いわ。それでいったいどうなってるんだこれ?」
(「では手短に、あと三時間でなんとか片付けます。では。」)
プツッ。
「おいおいっ、俺の身に何が起きてるのかは誰も教えてくれないのな。」
無線をポケットの中に戻し溜息を一つ吐くと、近くに声が聞こえてくる。
「こっちで何か音がしたぞっ!」
「相手は特局の0班だ、殺人の容疑者相手に遠慮はするなよっ!」
警官達の言葉に、勇司は思わず足の力が抜け座り込み、頭を掻きながら困ったように上空を見上げた。
(まいったなこりゃ、殺人はいただけないぞ。全貌がさっぱりだな。とりあえず三時間か・・・、よく分からないから逃げよっ。)
大勢を低くしたまま山を下っていく勇司ではあるが、少しずつではあるが確実に縮められていく包囲網に気付きながらも、いい策が浮かばないまま人がいない方いない方へと足を進めていくのであった。
とりあえずの閑話みたいな投稿です。内容のないお話ですが、暇つぶしにでもしていただければ幸いです。




