奇襲
奇襲
徐々に上の階へと上がってくるからくり人形達を、久信の視界は捉え続けていた。
(内部の非常階段からきますね、外階段は使っていませんか。ですが下はがっちり人形で
固められていますので、そちらへの誘導が本命でしょうね。)
「勇司さん、エレベーター横の階段からきますよ。それなりの大群です。」
「寝不足だっつうのに困ったもんだ。お前もずっと警戒で寝てないだろ、大丈夫か?」
「まだしばらくは問題ないですね。睡眠の問題よりも、これが続くと視力に問題がでそうです。」
「じゃあ撤退準備もしといたほうがいいな、準備するものは何もないが。よし、素早く逃げよう。」
すると階段から行列を為してからくり人形達が勇司達のいる階まで到達すると、少し毛足の長い絨毯がひかれた廊下を迷わず進んで来る。赤ん坊程のサイズのからくり人形達がカタカタ歩きながら群れで現れるが、勇司は一つの疑問が浮かんでいた。
「なあ久信よ、あれどうやって階段登ってきたんだろうな?」
「ああやってのようですね。」
二人を見つけたからくり人形達は、先陣をきる二体の武者鎧を着たからくり人形が槍を持ち、廊下を飛び跳ねながら距離を詰めてくる。
「結構おっかねえなおいっ!」
少し後ずさる勇司を置いて、久信はロングコートの中からを特殊警棒を抜くと、飛び掛かってくる鎧武者のからくり人形を叩き落としていく。
床に落ちた武者鎧のからくり人形二体は、内部構造にダメージを負いその動きをゆっくりと止めていた。
そして一斉にからくり人形達の攻勢が始まろうとしていたが、銀色に輝く煙草に火をつけた勇司が手元に煙を吐き出す。
【真銀煙・大盾】
全身を覆い隠す程の銀色に輝くライオットシールドを手元に出し構えると、久信はすぐに勇司の後ろへ回りこんでいた。
隊列を作るからくり人形達から、矢が一斉に放たれるが全て真銀煙のライオットシールドに阻まれ、矢は二人に届かない。
多数配置される弓引き人形は次々矢を取り、休む間もなく無表情で放ち続ける。
「どんな仕組みだあれ?動きが滑らかすぎて逆に気持ち悪いぞ。」
「それより弓引き人形が自走式な事に驚きますね。複雑な構造ですので壊すのは容易そうですが。」
しかしからくり人形から続く遠距離攻撃に、二人は体を小さくしてライオットシールドの後ろで身を隠す。反撃に備え久信はロングコートの中から自動式拳銃を取り出し構え、勇司も咥えたままの真銀煙から新たに煙を手元に吐き出していた。
【真銀煙・リボルバー】
二人はハンドガンを手に身を隠しながら銃弾を返すが、からくり人形達は銃弾に身を晒されながらも、恐怖を感じる事はなくジリジリと前進してくる。
降り注ぐ矢を受ける中、久信は後ろから銃撃を続けながら下がろうとする勇司を押し、少しずつ前進を促す。
「おいおいっ、そんな押してどうする気だよっ!」
「このままではジリ貧ですので、中に突っ込みます。我々でも破壊可能な相手のようですので。」
「じゃあ勢いつけたほうがいいかな?やるならそっちの方が怖くないよな。」
一人納得するとからくり人形の群れに、ライオットシールドを構えた勇司は走り出し、後にすぐ久信も続いていく。ライオットシールドから勢い良く突っ込み、多くのからくり人形を破壊すると、銃と特殊警棒を構える久信がからくり人形の群れの中へと雪崩込んだ。
様々な種類のからくり人形が蠢く中を、容赦なく久信は銃を放ち特殊警棒を振るい、破壊していく。後ろから狙い放たれる弓も、見ることなく躱され他のからくり人形に突き刺さる。
冷静に暴れまわる久信を見ながら、勇司はガードを固め一人防衛線の維持に務めていた。ライオットシールドに身を隠しながらも、ライオットシールドでからくり人形達を押し引きし、自らの後ろには一体も行かせない。
しかし両手に持つ特殊警棒を振り、からくり人形の頭を叩き飛ばしていた久信が少し目を気にすると、二人はすぐに退却を開始する。
身体を回し特殊警棒で周囲のからくり人形を吹き飛ばすと、一気に勇司の後ろまで下がりライオットシールドをからくり人形達に投げつけ、二人は後方に走り出した。
長谷島の部屋を素通りし、二人は屋外に作り付けられている非常階段に飛び出すと上に昇っていく。
廊下に取り残され、長谷島がいると思われていた部屋の前に殺到するからくり人形達を押しのけ、スーツ姿の女性が現れ扉を開くが、中には誰もいない。忌々しそうに携帯電話を取り出し、どこかに連絡をつけながら屋外の非常階段に飛び出していくと、横の立体駐車場から猛スピードで走り出す黒い車の姿があった。
非常階段をヒールで駆け下り、からくり人形達を付き従えて再び追跡に入っていく。
その頃車の中では勇司と久信が、後部座席で未だ仕事を続ける長谷島に軽い謝罪を行っていた。
「すいませんでした。車内に閉じ込めたみたいで心苦しかったのですが、お陰で犯人の特定は出来そうです。今特局で照会してるのですぐに分かると思います。」
「問題はない。仕事も進んだしな。後ここから逃げ回るだけか、もうしばらく頼んだぞ。」
三人の乗る車はあてもなく彷徨い、深夜の逃走劇へと突入していくのであった。
なんとなくの粗く話が仕上がっています。なんかこう肉弾戦が書きたい今日この頃です。




