からくり人形
からくり人形
運転する勇司は疲労を隠し切れないでいた。移動に次ぐ移動、そして精力的に動く長谷島、全ての行動に付き添っている久信にも軽い疲労の色が見えていた。
「長谷島さん、政治家ってこんな忙しいもんなんですか?結構ヘロヘロですよ。」
「若いんだからそんな事言ってないで、色々体験出来てよかったじゃないか。まあ安心してくれていい、今日はもう終わりだよ。ホテルに回してくれ。」
支持に従い勇司は運転し、高速道路にのると法定速度を厳守して進ませていく。後部座席で仕事を続ける長谷島をバックミラーで覗きながら順調に車はホテルへと向かっていたが、助手席の久信はバックミラーに手を伸ばし向きを変える。
「つけられていますか、勘違いではなさそうです。少しスピードを落としてみてください。」
言われるがままに勇司は車のスピードを落とすと、後方に位置する黒いパンはスピードを落とすことなく車線を変更し、抜き去っていく。
横を過ぎ去るスモークガラスを貼り付けた車内を見た途端に、久信は表情を変えた。
「判断ミスですね。挟撃までは考えていましたが、あの中身は少し予想外です。」
「なんかこえーな。何入ってたんだよ?」
「・・・あれですね。」
「予想以上にこえーなっ!」
バンのトランクが開き、中から数体の茶運び人形が転げ落ちると不自然な動きで立ち上がり、猛スピードで動き始める。
からくり人形独特の癖のある動きで無表情に三人が乗る高級車に迫ってきていた。
「長谷島さん、掴まっていてください。勇司さん、行きますよ。」
「了解っと、ちなみになんだがあの人形のお盆の上何乗ってるんだ?」
特技を使い前方と後方に注意を払う久信は、ロングコートの中からハンドガンを取り出すと、装填しながら軽く言う。
「C4ですね。接触式ですので当たったらドカンですよ。」
「ぶっそうなお話しでっ!」
ハンドルを切り茶運び人形の突進を躱すと、後方に抜けた茶運び人形はUターンし、からくり人形とは思えないスピードで追いかけてくるが、久信の放った銃弾が命中し爆発を引き起こす。
サイドミラーにうつる爆発に気を取られながらも、必死に勇司はハンドルを握り茶運び人形を避け続けていた。
「当たったらこりゃあ終了だな。それにしても長谷島さん落ち着いていますね。」
後部座席では周囲を気にする様子もなく、仕事の残りを片付ける長谷島の姿があり、慣れた様子でパソコンに向かっている。
「ここは私の戦場ではないからね、君達に任せるよ。戦うべき場所は各々違うものだからね。」
「ですね、いっちょ頑張ります。一番近い出口は五キロ、なんとかしますかね。久信、しばらくハンドル任せた。」
助手席から手を伸ばしてハンドルを握り、久信は器用に車を操っていく。銀色に輝く煙草に火をつけ、勇司は運転席の窓を開けた。
【真銀煙・纏】
窓から吐き出された銀色に輝く煙は、車の黒い外装を這うように進んでいく。黒い外装から銀色の外装へ完全に変わる終わると、勇司は真銀煙を灰皿に捨てる。運転席と助手席の窓以外は全て真銀煙に覆われ、準備は終わったとばかりに勇司はハンドルを握った。
「これで多少の爆発くらいは何とかなる、久信よ後は任せた。」
「では真っ直ぐに参りましょう。」
銀色に輝く車体は爆発に巻き込まれながらも突き進んでいく。久信の正確な射撃で撃ち抜かれる茶運び人形は数を減らしていき、勇司は再び咥えた真銀煙から煙を時折吐き出し、爆発に合わせて仮窓を作っていた。
三人の乗るスピードを上げた車は黒いバンを抜き去ると、あっという間に置き去りにしていく。
警戒を続ける久信の支持により、車の真銀煙を解き見通しがよくなると近くに見えていた出口から高速道路を降りる事が出来た。
「先程の黒いバンですが、まだ様々な物を載せているようですね。車重が相当に重いようでスピードを出せなかったようです。」
「たしかにあんまり追ってくる気配もなかったな。そして案外とこの車走る走る。」
後部座席では未だ仕事を続ける長谷島を乗せながら、無事ホテルへと到着する。意外にもその場所はビジネスホテルであるが、一棟貸し切りであった。
「ご苦労さん、しばらくはゆっくりしてくれ。明日までよろしく頼むよ。」
部屋まで長谷島を見送り、二人はようやく一息つく事になる。しかしここから眠れない夜を迎えようとは、まだ二人は知る由もなかった。
とりあえず最終章がぼちぼち進んでいます。
たいして最終章っぽさはないですが、これが最終章です。
ここまで読んでいただき感謝です。




