小さな因縁
小さな因縁
日本刀は綺麗ではない軌道を描きながら振られるが、そのスピードは並ではない。さり気なく振られる一振り一振りが全て殺意の塊のような一撃であった。
突き、そして払う大振りながらも鋭い剣戟を久信は全て見て対処する。
日本刀の形状を見た時から久信は受ける事を最初から諦め、躱す事に専念していた。
「よく動くな、兄貴達がやられたのも仕方ないか。」
「その刀こそ普通ではありませんね。そこまで硬い金属を加工するのは普通のやり方では無理ですよ。」
「貰いもんだ。こんな使いにくいもん使ってもしょうがないか。」
すると本藤は惜しげもなく日本刀を放り投げ、武器を捨てると軽く両手を振る。するといつの間にか小型のナイフが三本ずつ握られ、計六本のナイフを一気に飛ばした。
久信は下がりながら特殊警棒を抜き、伸ばすと同時にナイフを弾く。特殊警棒の先端を本藤に向けると、すでに大振りのサバイバルナイフを持ち掌で弄んでいた。
「何処から取り出したのかは知りませんが、器用な方ですね。」
「ただ相手を切り刻めるだけだ。」
サバイバルナイフを右、左と持ち変えながら細かく連続で振られるナイフを久信は特殊警棒で受け止めるが、腕にスーッと何か通る様な感触が走り思わず特殊警棒を落とす。
サバイバルナイフを持つ逆の手に現れたカミソリから血が滴り、久信のロングコートの袖を赤く染めていた。
「一傷目だな。」
「そう簡単に切れるコートでもないのですが。」
気付くと両手にカミソリを持ち、刃と刃を打ち合わせながら獲物を見定める本藤に対し、久信は腕の傷を気にする素振りを見せることなく、血を流しながらも腕をだらりと下げ、極めて自然な立ち姿で待ち構えるのであった。
ドアをくぐった勇司は思わずその場に立ち尽くす。そこには仰向けに寝かされる三人の動かなくなった遺体と、額にナイフが刺さったままの恰幅のいい派手なスーツを着た遺体が転がされていた。
少し離れた場所では、パイプ椅子に座り見覚えのあるオールバックの男が下を向きながら、笑いを噛み殺しきれずにいる。
「クックックッ、こんな馬鹿らしい事がありますか。ここまで無駄に馬鹿らしく命を落とす事も逆になかなかありませんよ。」
「黒山、一体何したんだよ?こんな騒ぎまで起こして何したいんだ?」
「ああ、橋中さんの息子さんですか。それが傑作な事に結末だけを言うのならば、何もしてないって事になりますよ。こんな笑ったのは久しぶりです。薬を飲み、命を削った結果が何もない。こんな事があるんですね。」
勇司に気付き黒山は少しだけ顔を上げると、その顔に笑みを張り付けている。
その表情を見た途端に勇司の鼓動は跳ね上がり心がざわつくが、荒くなろうとする呼吸を強引に飲み込む。
「いまいち笑えないな。もうちょい笑えそうな状況なら遠慮なく笑うんですがね。」
「そう言わずに理解して笑ってください。この結末もない、そして何も残らない内容のない話しをね。」
勇司は倒れている四人を横目に、この状況を長引かせる自分を恨めしく思いながらも黒山の話しに耳を傾けるのであった。
なんとなくゴールに向かっているような気がします。
とりあえずここまで読んで下さった方お疲れ様です。そして感謝感謝です。




