切り裂き放火魔
切り裂き放火魔
久信が最小限の動きで躱し、カミソリが壁に傷をつける。壁に出来た傷が小さく燃え上がり、焦げ後が残ると久信の表情に変化が見えた。
「刃物だけの特技だと思ったか?こうゆう事も出来るんだよ。」
「そうですか、あまり嬉しくない知らせですね。・・・ですが少しばかりモチベーションは上がりましたよ。」
同時に高速回転しながら飛んでくるカミソリを久信は二本とも空中で掴み、横に投げ捨てる。
直ぐ様本藤は手の中に鉈を出現させると感触を確かめるように振り、側にあったロッカーの扉を分厚い刃で切り破るが納得といった風情で、鉈を手の中から消した。
更に続けて匕首を手に出現させると、慣れた手つきで操りタバコを一本取り出すと咥え、煙草の先に匕首で切れ目を入れると小さな炎があがり、火がつく。煙を吸い込みながらタバコの火のついた先端を久信に向けた。
「こっちもいい感じだ。切り刻んで仕上げに燃やしてやるよ。」
「あまりその特技には好感が持てませんね。」
突きにくる匕首を下がって躱し、久信は距離を詰めずに安全圏を確保する。逆の手に持つ火のついたタバコを視界に入れつつ、刃にかすることすら許されない慎重な体捌きを強いられていた。
(妙にあのタバコが目につきます。あの方の特技が刃渡りの長くない刃物と、切り口から燃やす特技とすれば逆もありますか。そして最適化してもなかなか近付く事すらできませんし、明日の事を考えてる場合ではなさそうですね。)
久信はハンドガンを抜くが、すぐに匕首が迫り銃に傷をつける。炎に包まれるハンドガンをすぐさま手放す久信を狙い、タバコを指で弾きロングコートに包まれる足に衝撃もなく当たった。
瞬間的にタバコの火種が燃えあがり、小さな炎がロングコートの上で燃え尽きると熱さとは違うものを久信は感じていた。
(・・・鋭すぎて逆に痛くはないですか。ですが出血量に問題ありですね。)
太腿を炎によって切られ血が濡らす感覚を無視して、迫る刃を足を使い動きながら捌く。匕首を持つ手首を横から払い、傷のある足で前蹴りを放つと思い切り突き放すが、すぐに足を引き迫る刃から逃れると同時に距離を取った。
「二傷目だな。その足で蹴ってくるのか、お前も多少どっか頭の線が一本切れてるな。」
「一緒にされても困りますね。あなた達の相手をするために、かなり無理をしてますので。」
久信は軽く眼鏡を上げ、位置を調整すると腕と足の傷を見るが気にした様子もなく、足を前に出す。
【思金神の眼鏡・譲渡】
その動きを見た途端に本藤は再びタバコを咥えて火をつけ、更に両手に匕首を持ち距離を詰める久信に突きを入れるがギリギリの所で刃は届かない。
もう片方の匕首を横に大きく振り距離を取ろうとするが、振られる前に久信から下がり距離を取りながら何かをしようとしていた。
距離の出来た久信に向かって咥えたタバコを吹き出し、それと同時に匕首を二本放った瞬間に本藤は嫌な予感に襲われる。自分が投げたと同時に血に濡れたロングコートが飛来し、すでに目の前まで迫ってきていた。
ロングコートはタバコが当たった部分が切り裂かれ、匕首が刺さった場所から燃え上がりながら本藤を包んだ。
視界を塞がれ、炎に包まれながら暴れる本藤に、シャツの袖と片足を血に濡らした久信が一気に近付くと、燃えるロングコートの上から綺麗にハイキックを決める。
意識を失うと同時にロングコートの炎は消え、本藤は倒れていく。ゆっくりと傷付いた足を降ろす久信は、この時になって初めて表情を少しだけ歪ましていた。
「ロングコートがボロボロですね、予備は特局ですか・・・。ロングコートを素早く脱ぐために特技使ったなど報告書に書きたくないものです。」
ネクタイを少し怠そうに外し足の傷に巻き、シャツの袖を裂いて結ぶと止血を施していく。少しふらつきながらも本藤を手錠で確保すると切られたドアノブを見た。
「さて、少し開けるのには苦労しそうですが、火を見ると熱くなってしまうのはよくありません。せっかく滝にうたれて山伏検定一級を得たというのが無駄になってしまいます。」
心を強引に意志の力で落ち着け、周囲を見渡し落ちていた日本刀を手に取るとドアの前に立ち、様になった構えを見せるのであった。
予定よりかなり書くスピードが落ちてしまいました。
なかなかに脳みそ回っていませんので誤字脱字大量発生の予感です。




