気絶
気絶
高速道路では戦車が中央分離帯を破壊し、乗り越え上に乗る三人を振り落とそうとするが、三人は戦車の主砲と体を銀色の紐で括りつけ衝撃を耐えていた。
高速道路は完全に封鎖され、前後には走っている車の姿は見えない。
「勇司さん、相変わらず便利な特技ですね。全く羨ましくは無いですが。」
「たしかにな、だけど服に臭いがついてるじゃねえかよっ。勘弁してくれよな。んっ?」
久信と昴の言葉を無視して、未だ甲冑姿の勇司は戦車の走る振動と煙草の臭いの前に敗北を喫し、ふらつき足を踏み外した。
すると昴の長い手が伸び、勇司を掴むと片手で引き寄せ抱え込む。
「大丈夫かよ新米くん?乗り物酔いなんて気合だよっ、気合い。仕方ねえなー、手っ取り早く済ますぞ。」
「ええ。ですかその方はどうしましょう?地面にでも放りましょうか?」
昴は少し考えると、残っていた真銀煙の紐を使うと背中に勇司をのせ、おんぶ紐の要領で自らの体と縛っていく。
戦車の上には燕尾服の女性が甲冑を背負う図が出来上がっている。
「これは何というか、なかなか普段見れない構図ですね。」
「言うな言うな。変なのは重々承知してるよっ。」
一人意識の遠くなった勇司は煙草の臭いの残る鼻孔に女性の香りを感じながら、少しだけの多幸感を感じながら完全に意識を手放していく。
昴の背中には完全に力の抜け、首が後ろへと折れそうな程に曲がった甲冑が載っていた。
「とりあえずこれを試してみましょう。」
久信はロングコートの中から手榴弾を取り出すと、戦車の前方に投げキャタピラが踏み爆発するが、戦車には何の影響も与えられない。
「全く効果ねえみたいだな。」
「手持ちの武器では歯が立ちませんね。乗降口もしっかり補強されていますし、開けて止めるというのも困難ですね。」
「しょうがねえな、あたしがやってやるよ。お前目いいんだろ?力貸しな。」
「それなりには。ですが少し急いだほうが良さそうですね。ここのインターチェンジで降りるようです。」
戦車は左に曲がり高速道路から降りていく。道路を封鎖していた警察車両に突っ込み、戦車は我が物顔で警察車両を破壊しながら直進を止めない。
「じゃあ軽くこれ止めてやるか。」
甲冑を担ぎながら、燕尾服姿の昴は軽くそう言うと回り続けるキャタピラを眺めるのであった。
頑張れ主人公
なかなか出番がないぞ。
ここまで読んで下さった方、感謝です。




