車酔い
車酔い
待ち構える昴はカツカツと革靴を鳴らしながら歩いてくると、思わず勇司は昴との訓練で自らの惨状を思い出し、足が勝手に後退っていく。
しかし目の前まで迫る昴は、勇司のオデコを軽く指で弾くと片方だけ口角を上げ、笑顔を見せている。
「なーにビビってるんだ?あたしにビビってるようじゃ話になんねえぞ、新米くん。」
訓練室内で原付バイクに乗った昴に追われながら逃げ惑う記憶を勇司は振り払うが、その記憶は夢にまで出てきて、一度は原付き恐怖症になるほどであった。
なんとか原付きへの愛情を取り戻し、今は愛する自分の原付きで特局に通勤できるまでに回復している。
「今回は御一緒させていただきます。昴さんが御一緒ということは容疑者を追跡でしょうか?」
「そうゆうやつだよ。さっき届け物したばっかってのに勘弁して欲しいもんだ。さっさと終わらせるぞ。」
久信の言葉に答えると、さっさと昴は車の運転席へと乗り込んでいく。その車は白い軽自動車のバンであり、横と後ろにはデカデカと特殊技能犯罪捜査局の文字が入っていた。
「何だこれ?社用車っぽい雰囲気が全開すぎるだろ。」
「確かに普通ならこれで追い掛けるのは難しそうですが、昴さんですからね。気にせず乗り込みましょう。」
二人が白いバンに近付くと、自動で後部のドアがスライドして開き、後部座席に並んで座るとドアは閉まっていく。
「じゃあいこうか。運転の邪魔だけはするなよ。」
昴がハンドルを握り、アクセルを踏み込むと白いバンは地下駐車場から飛び出していく。サイレンを鳴らしながらスピードを上げていく白いバンは、一般車両の間を縫うように走り抜け、高速道路の横の道を高速を走っている車両を抜き去りながら進むと、一気にハンドルを切った。
後部座席では手に汗握りながら手摺を握る勇司、表情一つ変えずに前方をみつめる久信を乗せながら、白いバンは段差を乗り越えジャンプすると、激しい衝撃と共に高速道路へと着地し、すぐにバランスを整え走り出していく。
「これが一番近いんだよな。後ろ大丈夫か?」
バックミラーを軽く覗きながら、昴はさらに笑みを深く浮かべていた。
「私は問題ないです。」
「多少心臓に悪かったくらいで、体は無事みたいだけど、あまり車を揺らさないでいただけるとありがたいです。」
一応の無事を確認すると、更に白いバンはスピードを上げ高速道路を進んでいく。
そして高速道路に残る轍を見ながら久信は状況を掴んでいき、横では昴の運転に恐怖とさらには車酔いに襲われている勇司の姿があった。
「勇司さん、これは前方に派手な物が走っているようですよ。」
「そうなのか?だがそれどころじゃないかも。・・・最近人の運転が苦手だ。それにしても何走ってるんだよ?」
白いバンは軽自動車の小さいエンジンパワーを振り絞りながら進んでいくと、緑色の高速道路には不釣り合いな車両が、幅広く車線を占領しながら走る姿が見えてきていた。
「見えてきたようです、あれはまた古い型ですね。九六式の大戦車ですか。男心を鷲掴みにされますね。」
恐怖と酔いに負け下を向いていた勇司は、なんとか前を見て戦車らしき物を視認するが、すぐに窓を開けると顔を外に出す。しかし風圧にも敗れ、すぐに座席へと戻りぐったりと座り込んでいた。
「久信よ、後はもう任せた。釜戸炊きのご飯の匂いは腹一杯の時にはキツイよな・・・。」
「何頭の悪い発言しているんですか?多分ですがあれを止めるのは我々の担当ですよ。準備して下さい。」
二人が後部座席でくだらない会話をしている間に、すでに白いバンは戦車の真横につけられ、窓枠に足を掛けた昴が戦車へと飛び移ろうとしている姿が見えるのであった。
ここまで読んで下さった方お疲れ様でした。感謝です。
気分の向いた方は感想、その他話も落ち着いてきましたので、特技のリクエストなどあればお待ちしております。




