プロローグ
人間とは戦争の理由を見つける天才である。
にもかかわらず、第三回目の戦争だけで宇宙世紀に突入できたことは行幸である。
少なくとも私はそう思う。
戦後二十年目、今から十八年前に生まれた人間として。
私が幼少期だった時代はまだ戦争の色が濃く残っていた。戦後処理のために資源は不足していたし、復興のために周りの大人は色気だって働いていた。
『戦後ではない宣言』がされたころには私はもう物心がついていて、戦争というのがあったのだなあと思いつつも、それが現実とつながっているとは思わず、暫らくを生きていた。
でもこの先八十年後に生まれる子供よりは、ずっと身近であるかもしれない。
そんな私にとっても、二回目の大戦は大昔だ。
それは二十年前までの宇宙における勢力図を決定づけた戦争。
銃を持って地を這う、もしくは地表スレスレを飛ぶことしかできなかった人々による戦い。
そんな中でよくも戦争をしようと思ったものだなと思う。飛行機だってプロペラ機だった時代だ。
もしかしたら、これと同じように、八十年後の子供たちは、この戦争を奇妙に思うのかもしれない。しかしその時々の人たちにとっては戦争というのはすべてを賭けた真剣なものになる。
とくに、第三回目の戦争は、それまででは考えられないほどに多くの技術が投じられた戦争だった。
そんな戦争を、私は過去のものだと思いつつも、どこかで現代にあったものだと思っている。
なにより私の親たちにとっては確かに存在した実在の瞬間。
彼らから聞かせられたものが、私により身近さを与えた原因だったのかもしれない。
戦争は私の仕事にも影響を与えた。私の仕事は、戦争が生み出したと言ってさえいいのかもしれない。
宇宙を調査する仕事。それが私が身を置いている職場だった。
それはかつて人類が駆け抜けた無限の戦場だ。
いくら人がいても足りることはない、無限の調査現場。
蒼穹の向こうに広がる悠久のフロンティア。
そこにおけるあらゆる不祥事を、私は解明していく。
『宇宙航空機事件事故調査事務所』
それが、私の仕事だ。
全貌の分からないほどの無限の不祥事を、できる限りの範囲でゆっくりとそれを解き明かす。
永年に積み重なるジグソーパズルを繋げて遊ぶようなもの。急がずしかし素早く確かに、無限に続く謎解きをプレイしていく。
これが私にはとても合った仕事だった。
もう十六で就職してから二年目になる。
いろいろ不安定な時期もあったけど、今になっても続いていた。
これは私のそんな仕事の、一つの航行日誌のようなものだ。
暖かい目でゆっくりと見届けてくれると嬉しい。




