第9話 神って誰?
壁面には何やら鳥のような白い羽根が付いた人と、魔法使いのような恰好をした人が互いに魔法のようなもなものを打ち合いっている絵が描かれていることが分かった。
「これ何の文字かしら? ん-読めない。あんた読める?」
「なんかあっちの世界の英語に似た文字だな…どれどれ?」
壁面の文字を翻訳してみると次のように書かれていた。
『もし、この文字が読めて、意味が理解できるならここに記す話はなるべく外に漏らさないようにしてくれ。この話の始まりは、まだ”神”と呼ばれる人物が存在した時代の話だ。当時、私はその神に関する研究と魔法に関する研究の両方をやっていた研究者だった。その過程で多くの魔法使えたので、大魔法使いともい言われていた。そして、当時の世界を収めていた”神”と呼ばれる人物は、ゴルドナ中のいたるところに神殿を作り崇拝させていた。当時この”神”と呼ばれる人物には謎が多くあり、いつからいるのか、どうしてそのように名乗るのか、どうして人間を支配していたのかである。ちなみに、人間を支配していたことは研究の中で知ったことなので、私以外知る者はいない。それはさておき、研究では、その魔力はその”神”からもたらされていること、その神との親和性の高いものだけがその魔力を使役することができること、当時かなりの数を誇った魔法使いが消費した魔力を全て”神”が吸収し、それを循環させるシステムがあったことが分かっている。そして奇妙なのが、その魔力が人間の体を通して魔法として消費され、神に還元される際、元々あった魔力より多い量となって還元されるという点だ。つまり、”神”が人間に魔力を使わせ、そのあと魔法として消費されたものを吸収することで自身の魔力を底上げできるのだ。これは、まるで”神”という人物が更なる力を欲しているという可能性があると当時の私は考えた。そして、神との親和性は神に対して尊敬、憧憬、希望などを感じていればいるほど親和性が上がり、魔法が使いやすくなる。このことから、”神”が神殿を作り、崇拝させているのはこのためであることが推測された。
魔力に関してはこれ以上の情報が得られなかったので、今度は”神”なる人物に関しての研究を深めた。神は、当時の過去の文献から推測するに、その時代から3000年以上前から存在していたことが分かっている。過去から現在まで、ずっとゴルドナは東西南北で気候が異なりながらもどこもその地方に特有の植物や動物がたくさん生きていた。どこもかしこも豊かな土地だった。
しかし、神の研究の中で大まかな”神”の目的が分かってきた。それは、自分の支配領域を増やすことだ。どうも神という人物は、神殿や人々の前に現れるときはそれは聖人のように人々に接していた上に、人には全くと言っていいほど危害を加える存在ではなかった。だが、裏では人間を利用し、このゴルドナがある”星”と呼ばれる場所以外にも自分の魔力が循環できるような環境を作り、さらに自身の魔力を増幅させ、最終的にはその星を覆う”宇宙”を全て支配しようと企んでいたようだ。さらに、外の星に循環の環境を作る際、その膨大な魔力消費から、このゴルドナにいる人の半分程度の人間が体内にある魔力を吸い尽くされ、魂を破壊されるという副作用が存在するのだ。さらに、この膨大な魔力は、星に漂わせるものであって、自身がその魔法を発動するときにはまた別の魔力が必要となる。その魔法を発動させるのと、人間から直接吸収した魔力を運ぶための魔力を貯めていた。したがって、”神”はゴルドナの半分の人を犠牲にして別の星にも魔力循環装置を作ろうとしていた。私にはたくさんの人に慕われ、そして私もゴルドナの人々を愛していた。その半分の人がいなくなってしまうことは到底考えられず、私はたった一人で神の計画を阻止することにした。みんなに見つからないように町が比較的少なかったエンゲル地方の山奥で戦いを挑み、結果勝った。しかし、その時道連れとして呪いをかけられてしまい、この文章を書いているときも、その呪いの効果をせき止めながら書いている。私も戦いで多くの魔力を消費したことで、そう長くはもたない。だから、これだけは伝えさせてくれ、この”神”の呪いは人類を滅ぼすのに使われていると考えるのが妥当であろう。そして、私が死んだあとこの呪いがどうなるか分からない。だから、その解除方法と”神”の正体について私の代わりに研究を進めてくれ。やつがいなくなった後もその残骸は各地に残されているだろう。健闘を祈る。
最後に、この文字から先に進むと呪いが発動する。決して進まないように。』
”神”って誰のことだろうかね。というか、危な!この文字読んだ後進むところだったじゃんと安堵したのも束の間であった、なんと暇を持て余していたティアがちょうど今、文字から先の場所に足を踏み入れていたのだ。
「あっ!! ダメだよ!!!! 何やってんの!? この文字から先に入っちゃいけないんだって!!!! 先行っておけばよかった…」
「本当よ!!! 早く言ってよ!!!」
そうこう焦っている内に道の奥のほうから「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォ」という轟音とともに黒と赤の煙が高速でこっちに迫ってきた。
「逃げろー!!!!!!!!!」
僕はあらかじめ呪いが発動することを知っていたから、すぐに反応できたものの、ティアのほうは不意打ちだったために一瞬反応が遅れた。このとき、今まで迷路だった壁が集まり、この呪いを防ぐように動き始めていた。位置的に間一髪僕は間に合いそうだったが、ティアはまだ届いていないところにいた。そこで、僕はティア少しスピードを落とし、ティアの腕が届いてからすぐに腕を引っ張って壁に空いている通路を通らせた。その結果、僕は完全に間に合わなくなってしまった。
「ティアだけでもなんとか逃がす!!!!!」
「あんたはどうすんのよ!!!」
「なんでもいいから行け!!」
壁が完全に閉じられてしまって万事休すかと思いきや、その外側にさらに壁がやってきて、間一髪のところでおそらく火砕流から逃れることができた。少しして、火砕流が収まり静かになると壁の向こうから声が聞こえてきた。
「私は家であんな態度取ったのにどうしてあいつは助けたのよ…それじゃああんたが浮かばれないじゃない…ううっっ…ぐす…ごめんなさい…もっと冒険者の先輩の私が早く反応できていればよかったのに…」
どうも、僕がこの火砕流で死んだと思い込んでいるようだ。
「助けてくれてありがとう…あんたのことはしっかりお父さんやお母さんに伝えておくわ…もっとたくさん話しておけばよかった…ぐすっ…うっ…」
どうも自分の行いを反省して、オキシールさんやチャコルドさんに報告してくれるようだ。いや、最初は態度良くなかったけど、ちゃんと話聞いて誤解を改めてくれたんだから反省する必要ないと思うんだけど…と思っていると――
「あの~どうもこんにちは、僕は山下理鳳って言います…」
「あんた生きてたの!!!! 心配したわよ!!!!」
壁がとても悪いタイミングで開いたのだ。すると僕を見てすごい勢いで抱き着かれたのだ。なにせ女性経験がない僕である、心臓の鼓動が一気に加速した。
「ご心配かけてごめんなさい。どうしても助けなきゃって思ったら体が勝手に動いちゃって…てへへ」
「体が勝手にじゃないわよ!!!! この壁が守ってくれなかったらどうするつもりだったのよ!!」
「おっしゃる通りですね、気を付けます、す、す。」
「あと、ごめんなさい。一回でもあんた、いやリオのこと変態なんて言ってしまって…本当にとんでもない誤解だったわ…リオって優しくてかっこいいのね」
「そんなことないよ。人ならこれぐらいできたほうが良いって言うし、し」
「それは言い過ぎねさすがに。とっさにそれができるのは優しいの!そしてかっこいいの!自信持ちなさい!!」
「は、はい分かりました!」
そういって『トレン遺跡』を後にした。
どうもこんにちは、winger86です。今回もお読みいただきありがとうございます。今回の話は、読んでわかる通り物語で重要な事柄が登場する回となっています。私自身もかなり楽しい回だったので筆が進みました。明日以降も引き続き投稿していきますのでよろしくお願いいたします。
メモ
”神”:1000年前までゴルドナ中で信仰されていた人物。1000年経った今でも謎が多い。
大魔法使い:1000年前に生きていた最後の魔法使い。他の人より神との親和性は高くなかったものの、研究の成果により、他の魔法使いより大幅に多い魔力量と魔法の種類を誇った。”神”に歯向かったことで、怒りを買い、呪いを受けて理鳳が読んでいた文章のところで亡くなっている。ちなみに、トレン遺跡の迷路は大魔法使いが作ったものである。




