第18話 ゴルドナについて
ウラリーさんに連れられて初めに向かったのは、メインラボであった。
「リオさん、こちらがメインラボになります。基本的にはゴルドナの地質、気候、植生などの研究を行っています。情報は、各観測地点から1週間ごとに情報が送られてきます。ちなみに、その情報の伝達もクエストにて行われています。」
「へ~そういう風に情報交換をやっているんですね。そうなると、エンゲル、メクシーからは結構大変なんじゃないですか?」
「そうですね、たまに1か月来ないときもあります。そういう時は、直属の冒険者を使って情報伝達を行っています。もちろん、この二地方に関しては報酬もそれなりの物を用意しています。なので、比較的人気のクエストだったりするんですよ」
「そういう仕組みだったんですね、ちなみに直近の大きな噴火はどんな感じだったんですか?」
「ひと月前にアパランティアを襲った噴火は、エンゲル地方北部で発生したもので、その発生場所では動物の群れ50匹程度の亡骸があったと報告されています。被害は、エンゲルとグレープレーズの北部、アパランティア全域とメクシーの一部に広がりました。海を越えていますので、私たちが観測を始めた200年間で最大の噴火です。ここまで被害が少なかったのが幸運でしたね。」
「そんなに大きな規模の噴火だったんですね。本当によく若干の通行止めと土砂崩れ程度で済みましたよね~ちなみに、この間ボスティール付近であったものは?」
「あの規模ならエンゲルなら1日に1回程度、メクシーなら半年に1回程度起きる最小規模の噴火でしたが、個のアパランティアで観測されたのは50年ぶりですね。珍しい現象でしたので、本日から早速その海域の安全が確認でき次第、調査に向かっているところです。」
「早いですね。他にここでは何をしているんですか?」
「先ほど述べた通り、気候と植生などを調べています。そういえば、依頼の物はお持ちですか?」
「はい!ここにありますよ」
そういって、自分のリュックバッグの中から、マリースとカボンドを取りだした。それを受け取ったウラリーさんは驚いた表情をしていた。
「マリースの花は要望通りかなり鮮度のいい状態で届いて居るのですが、カボンド岩が普段よりも純度がいいように見受けられ、さらに採掘してからの時間がとても少ないように感じます。一体どうやってこのようなカボンド岩を?」
「山の山頂付近を探し回っていたら、地面にむき出しでありましたよ。なんか火山灰がそのあたりだけ積もってなかったので何とも不気味でしたけど」
「ということはかなり奥のほうまで進んでいった可能性が高いですね。あの辺りは野生の凶暴なモンスターが溢れかえっているので、上位のパーティーぐらいしか近づかないんですけどね~大丈夫でした?」
「そういえば、道中1匹だけクマの親子に会いましたけど、お腹が減っていたようなので川まで誘導して魚食べさせて帰りましたよ。」
「ん??? クマって?どんな特徴でした?」
「黒に近い青色の毛に爪が4本、丸い耳がついていましたよ。」
「それって…『ビッググリーズ』じゃないですか!? あのアパランティア山脈で最も恐れられているモンスターの一種ですよ!それ!え!? 出くわして逃げながら誘導して殺さずに餌を与えた? ちょっとどういうこと?……あ、失礼しました。言葉が乱れてしまいましたね。まあ、とりあえずご無事で何よりです。それ以外にモンスターに出くわさなかったんですか?」
「特に…」
「あのあたりのモンスターなら人を色んな感覚を使ってすぐにこちらの位置を特定してあっという間に寄ってくるんですが一体どいうことなんでしょうか…まあ、とりあえず以来の品に関してありがとうございました。」
「そういえば、これいったい何に使うんですか?」
「興味がありますか?では一部だけお見せします。マリースの花はここで新たな回復薬の作成に使うために依頼しました。ちなみにマリースの花の効用はご存じですか?」
「いえ、全く…」
「マリースは、疲労回復、筋持久力の向上、筋出力の増加、心肺機能の向上、解毒作用、代謝効率の向上など、様々な体にいい影響のある効果も持っています。しかし、摂取しすぎると、中毒症状が現れ、吐き気、めまい、鼻血、動悸などが現れます。今回は、この効用のメリットの部分だけ抽出する実験と、その他の効用の調査が目的です。」
「この間、1日中飲まず食わずで元気だった日があったんですけど、もしかしてこれですかね?どうも前に食べた草と見た目が同じだったんで」
「可能性は高いです。あまりそのまま食べる人はいないんですけど、なにせ味に結構抵抗がある人が多いので、ちなみに私は好きではありません。」
知らない間にマリースの効果を受けていたらしい。この間の元気さはそれが原因だったのか。とりあえずマリースのおかげで助かったので、感謝しておこう。そして、ウラリーさんに奥の部屋に連れられた。
「ここは、ゴルドナマントルラボです。ゴルドナ中の地質、特にこの地下のことを深く研究しています。今回カボンド岩はこのラボで使われる予定になっています。リオさん、この岩が発見された時、そこだけ火山灰が無いとおっしゃっていたと思います。それが、この岩の特徴です。実は、カボンド岩には火山灰を溶かして水に変換するという機能があります。この岩を加工することで、より早く便利に火山灰が除去できるのではないかと研究しています。他にも、この岩の発する光の原因と、その作用についても研究しています。これ以上は、機密事項となりますのでここまでということで。本日はありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとうございました。あ、でも少しだけ聞きたいことがあったんですが、前に、この呪いについて少し気になることがありまして、分かっていることがあれば、教えていただきたいのですが」
「ほう、”神”のことですね。私たちもそのことについては後を追ったり、研究をしているのですが、現時点で分かっている情報としては、”神”がこの噴火の呪いをもたらしたこと、一定範囲は半径200m程度であること、それが2年であるということですね。それ以上は分かりません。申し訳ありません。」
「いえ、ありがとうございます。それでは、そういえば遺跡ってどこにありますか?」
「この近辺ですとフィランデルにある『トレン遺跡』、トゥーロンにある『デーガ遺跡』、デントロンにある『オートマ―遺跡』ですね。是非参考にしてください。」
「分かりました!情報ありがとうございます!」
こうして、他の遺跡の情報を聞いて研究所を後にした。今の時間は大体お昼を過ぎたあたりだったので、おやつの時間に何か頂くことにした。街を歩いてみると、みるからにお高いフレンチのお店があった。このようなお店に興味があったのと、高収入のクエストをこなしたことで、路銀に余裕があったので、入ってみることにした。入ってみると、店内はザ・フランスといった雰囲気を醸し出すインテリアが置かれていた。しかし、メニュー表を見ると、普通のお店よりもむしろ安い値段をしていた。さっそくクロワッサンとキノコベースのクリームスープ、グリルチキンステーキを頼み、食べた。味は、互いが互いに打ち消し合わず、ほどよい噛み合いとなるような味をしており、食べ終わった後にはかなり満足をしてしまった。思わず――
「料理おいしかったです、ごちそうさまでした。」
と厨房スタッフに言ってしまうほどだった。僕はその『フィレンツェ』という名前のお店満面の笑みで後にした。
どうも、winger86です。いつもこの作品をご愛読いただきありがとうございます。昨日は急な休刊報告申し訳ございませんでした。今日以降は、また通常のペースに戻りますのでよろしくお願いします。さて、今回のお話は研究所の見学がメインの話でした。いかがだったでしょうか?私自身研究所にはあまり立ち寄ったことがないのですが、読者の皆様はどうでしょうか?見学ツアーとか行ったことがありますでしょうか?いつか行く機会があったら訪れてみたいですね。それでは、明日以降も毎日更新してまいりますのでよろしくお願いいたします。それでは、また。
メモ
ボスティール総合研究所:
ゴルドナで最も大きい研究所。その研究分野は多岐に渡る。その中で今回理鳳が受けた依頼は、植生と呪いに関するものであった。基本的に、この研究所はボスティールのギルドを通して依頼品を受け取るが、今回の依頼品は時間が求められた珍しい依頼であった。そのため、報酬額もやや大きい。そして、今回の依頼により、本文内の二つの研究が大幅に進むことになったのはここだけの話。
ビッググリーズ:
大型のクマ型のモンスター。体長は成獣で5mを優に超えてくる。冬明けに出産をし、春から夏にかけて子を持つ成獣は凶暴化するため、アパランティアの危険モンスターの一種に指定されている。基本討伐には依頼達成数40程度のパーティーもしくは単独で100個達成したソロ冒険者(戦闘系無保持)が必要だが、フィランデル流剣術上級保持者に対しては動じるほどの強さではない。




