表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

運命の出会い


「はじめまして、美しい姫君」


「……あなたは?」


言葉が詰まる。

整った顔立ち、吸い込まれるような眼差し。

気圧されるほどの存在感。

まるで、私の心を見透かすような瞳。


「アルセリオ王国の第一王子、レイヴェル・アークヴィスと申します」


レイヴェル――

その名を繰り返した瞬間、胸の奥が小さく震えた。


彼は私の手を包み込むように握り、そっと唇を寄せる。

すぐそばで感じる温かな吐息に、心臓が大きく跳ねた。


「……イレーネ・ヴァルディナと申します」


手のひらがじんわりと汗ばむのを感じる。

彼の鋭い琥珀色の瞳が私を射抜くたび、心臓が痛いほどに高鳴ってしまう。


「こんなに美しい姫君と出会えて、今日はいい日だ」


その声音は低く、甘く、心を揺さぶる。


不思議だった。

彼の言葉に、媚びたような響きはない。

ただ、ごく自然に――

まるで心の底からそう思っているかのように、優しく、囁く。


「この人が、もしかしたら運命の相手なのかもしれない」


そう思った瞬間、胸の奥にじんわりと熱が広がった。

指先から伝わる温もり、耳に響く低く甘い声。


心の奥に小さな火が灯るように、彼の存在が私の中に染み込んでいく。


だが――

これは、すべて仕組まれた出会いだった。


優雅に微笑み、甘い言葉を紡ぎ、まるで偶然のように差し出されたその手。

けれど、それは最初から張り巡らされた罠だったのだ。


私が彼に惹かれることも、心を乱すことも、

すべて彼の計算のうちだったのかもしれない。


この男に出会った瞬間から、私は運命の軌道を狂わされていた。

なのに――そのことに、どうして気づかなかったのだろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ