仮面騎士 第2話。
ある日、帝王である父から呼び出しを受けた彼は父の執務室に入る。いつもは机に向かって仕事をしている父であったが、この日は立ち上がった状態で彼のことを待っていた。
「来たか。」
「はい。何用でしょうか?」
「…そうだな。要件を伝える前にお前に言っておく事がある。」
「何でしょう。」
父の物言いに彼は少し違和感を感じた。
帝王である父は常に激務であるため彼に何かしらの仕事を与える時は時間短縮のために前置き無しにさっさと話を始める。そんな父がすぐに要件を伝えないばかりか何やら言いづらそうにしている様子に気になったが、彼はひとまず父の話を聞いてから深く考えるようにしようと決めた。
「これからお前に見せるのは極秘のものだ。それを見た後、お前には何があっても告げ口は許されない。その上でお前は知る覚悟はあるか?」
「…!」
本気の目だ。
父から仕事を受ける事は今まであったがここまで真剣な目で話された事がなかった彼は少し怯むが、すぐに気を持ち直す。
「…はい。たとえ何があっても口を割らない事をここに誓います。」
彼は父の問いに対してそう答えた。無論安請け合いではない。例えどのような責め苦にあったとしても彼は口を割るつもりはないし、する事もない。
覚悟を持って答えた彼に対し父は頷く。
「ならばついてこい。」
そう言うと父は携帯型のランプを手にし扉ではなく本棚に近づきいくつかの本に触れていく。
彼は父は何をしているんだと疑問に思いながらも口は挟まない。父が無駄な行動をする人ではないと彼は知っているからだ。
父が最後にひとつの本を奥の方へと押すと、その本棚が突然小刻みに揺れた後、ゆっくりと奥へと向かっていく。本棚の後ろは壁のはずなのに本棚は壁の向こう側へといき、そして次にゆっくりと横へと移動していく。本棚の向こう側には光のない暗い道があった。
「これは!?」
「隠し通路だ。」
驚きを隠せない彼は思わず大きな声を出してしまうが父は構わず慣れた様子で通路の奥の方へと向かっていく。彼は不安な気持ちを抱えながら父の後を追う。通路の長さはさほどなかったが明かりが父の持つ小さなランプだけであるため心許ない。さらにどこに向かっているのか分からない事が彼の不安をさらに増幅させる。通路の長さが彼が思っていたものよりも短かったのがせめてもの救いだった。
道の行き止まりには扉があり父が扉の前に手をかざすと扉は自動で開いていく。扉の向こうは床に描かれた魔法陣しか目立つものがない部屋だった。
「行くぞ。」
父は魔法陣の真ん中に立ち彼に向けて手を差し伸べる。父もまた魔法の才能があり、転移魔法が使える。父が自分を連れてこの魔法陣を通じてどこかに移動する事に気がついた彼は疑う事なく父の手を取り転移を待つ。
彼がしっかりと手を握っているのを確認した父は転移魔法を発動し、目的の場所へと移動する。
転移先で彼がまず目にしたのは石造の壁に床。そしてここにも床に大きな魔法陣。そして出入り口のための大きな扉しかない部屋。灯りは父が持つランプのみ。
父はランプで部屋を照らし無事に転移した事を確認すると扉を開けて部屋の外に出る。彼も続いて部屋から出るとまた石造の壁に床。父の持つランプだけがこの場を照らす灯りのためできる限り父から離れないよう彼はついていく。ここの道もそれほど距離はなく、ある程度歩くと父は今度も扉の前で立ち止まる。
父が扉を開けるとランプ以外の灯りが扉周辺を照らす。どうやら扉の先はランプよりも強い光があるようだ。父が入ると彼も続いて扉の向こう側へと行き、その先にいた人物を見て思わず目を見開いた。
「待たせたな。」
「いいや。時間通りだ。」
父はその人物と親しげな様子で会話をしている様子を見て彼はさらに驚く。仮面がなければその人物と父に驚愕で強張っている表情を見られてしまうところだ。
「彼が君の息子か?」
「あぁ。まだ若いが騎士団の団長を務めている優秀な男だ。」
「おぉ。それはすごいな。」
「…父上。これは、いったい。」
ここに来てようやく彼は声を出した。何とか声に表情は乗らないようにして冷静に装うが内心、驚きと不安が入り混じって彼は混乱している。目の前にいる人物の存在とこうして相対するこの状況に彼は混乱している。
「紹介しよう。彼は私の古くからの友人。今は連邦の最高主導者だ。」
父が友人だと紹介した人物は世間からは魔王と呼ばれている人物だ。




