七話「今の私たち」
私たちが修行してから十年が経過した。テーブルの上に写真立てが置いてある。そこにはレッドアイさんの姿が写っていた。もう彼はここにはいない。
「あれからもう三年経つのですね、団長さん」
私は写真にそう問いかけた。
「何してんのよ、ボケっとなさんな。私だって恋しいんだから、副団長と別れて」
雪下さんは私に向かって言う。副団長である彼女もまたレッドアイさんと共に消えたのである。
「うっせぇな。屋根の下でお前と二人っきりって案外恥ずかしかったんだからな?」
「あら、そう?警察もいないこの世界で二人っきりなのよ?私をあんなことやこんなことなんて出来たのに」
「そうだな、段々あの鬼女に似てきてるもんな?」
「なーに?聞こえなかった」
「だからなんでもねーよ。帰るぞ、俺たちの本当の家に」
私たちは身支度を済ませて宿を出る。どうやら、やたら今日は雲が多くて陰っているようだ……いや、違う。これは……。
「やっと見つけたぞ?十年前以来だな?ん?あの女はいないのか?死んだか?」
「ふっ、懐かしいなぁ。腹ごしらえにちょうどいいよ、剛雲のギザイア」
「じゃ、死ね」
ギザイアは傍にあった大きな岩を私たちに向かって投げてくる。十年前の私たちだったら何も出来なかっただろう……しかし今は違う。
ギザイアの投げた岩を「カウンターパラソル」と雪下さんは言って当てる。傘は岩に出来る限り沿うかのように当たると、その勢いのまま直進してギザイアに跳ね返った。
「んだっと?」
「あばよ、デカ物。インフェルノウィザード」
私は体を回転させながら両手にいつもの傘を持ち、その傘の先端から炎を出した。そして私が止まった頃、ギザイアの姿は薄く橙色に染まった火の中に炙られていた。
「お前……ダブル……ブレイカー……」
「雪下さん、どうやら十年もこんな所で暮らしてたら妙な異名が付いてしまったみたいだ、ダブルブレイカー……二つの切り裂く者……かな」
「よかったわね、早く帰りましょ。レッドアイさんたちが待ってるわ」
彼女の言葉に賛同して森の中を抜けていく。レッドアイさんたちがいる赤傘団の宿に帰るために。




