宝探しツアー
本格ミステリーのつもりです!
読んで頂けると小躍りして喜びます!
良く晴れた五月某日。白鐘卯月は、走るバスの中から外の風景を眺めていた。つい先程まで商店がいくつも立ち並ぶ道を走っていたのに、もう人家はほとんど見えない。
少しひび割れたアスファルトの道を進む度に、ガタゴトと車体が揺れた。左右に見えるのは、生い茂った木や草だけ。その隙間から、辛うじて昼下がりの日差しが差し込んでいる。
ここは、和歌山県にあるとある山の麓。卯月は、ゴールデンウィークを利用してとあるバスツアーに参加していた。
その名も、『寂れた洋館を探検しよう! ミステリーバスツアー!』
廃墟同然の洋館を探検しながら、お宝を探すというコンセプトのツアーだ。まあ、お宝と言っても、旅行会社が用意したお菓子や少し高価な雑貨だろうが。
それでも、卯月はこういうツアーが嫌いでは無かったし、多忙を極める生活の中でリフレッシュしたいと思っていたので、今回のツアーを楽しみにしていた。
バスの一番後ろに座っていた卯月は、ふと車内を見渡す。今バスの車内にいるのは、卯月を抜かすと七人。
卯月のすぐ前に座っているのは、二十代らしいカップル二人。男性の方はライトブラウンの髪をショートカットにした、すこしチャラそうな雰囲気だ。女性の方は、ダークブラウンの長い髪を揺らしながら男性の話に笑顔で頷いている。
カップルの二つくらい前の席には、女性が一人座っている。黒いロングヘアをひっつめにした眼鏡の女性で、この人も二十代後半くらいに見える。
彼女はスマホを弄りながら、時々顔を上げて添乗員の話を聞いている。
その添乗員も、彼女と同じ二十代に見える。黒髪をボブカットにした女性添乗員は、笑顔を振りまきながら淀みなくこれから向かう洋館についての話を続けていた。
バスが出発した直後の自己紹介によると、彼女の名前は野々宮美智留。添乗員だが、バスガイドのような業務も兼ねているらしい。コスト削減の為だろうか。
美智留の話を黙って聞きながら運転するのは、バス会社所属の運転手である大道進。体格の良い中年男性という事以外は取り立てて特徴の無い男性だ。
しかし、バスに乗り込む際丁寧に乗客の荷物を収納スペースに入れる姿は、彼の人柄を感じさせた。
そして、卯月は自身から見て斜め左前に座る二人連れに目を向けた。通路側に座っているのは、眼鏡を掛けた二十代後半くらいの男性。黒髪を爽やかなショートカットにしていて、柔和な笑顔を浮かべていた。
窓際に座っているのは、黒髪ロングヘアの女の子。小学校高学年くらいだろうか。バスに乗り込む際彼女は無表情だったが、眼鏡の男性と話している今は少し表情が和らいでいる。
最初は親子かと思ったが、少女は男性と話す時に敬語を使っている。この二人、どういう関係なんだろう。
まあ、同じツアーに参加しているだけの他人を気に掛けても仕方が無い。卯月は、また自身のすぐ右にある車窓に視線を移し、景色を楽しむ事にした。
◆ ◆ ◆
それから約十分後。バスは、とある門の前で停まった。バスを降りた卯月は、門の向こうにある洋館を無言で見上げる。
白いレンガのような壁に少し蔦が絡まっていて、趣がある洋館だ。見た所、三階建てらしい。広い庭には小さな花壇があり、ピンクや黄色の花がチラホラと自身の存在をアピールしていた。
近くの壁には小さな蛇口が取り付けられており、青いホースが放置されていた。水やりをしたり掃除をしたりするのに使うのだろう。
館の周りは木々が取り囲んでおり、森の中にある神秘的な洋館といった雰囲気を醸し出している。
添乗員の美智留はツアー客達の前に立つと、右手で館を指し示して言った。
「ここが、今回のツアーの舞台である『人形館』です」
客室に荷物を置いた後、卯月達ツアー客は、洋館の一階にある広いリビングに集まった。美智留は、皆を見渡すと笑顔で言う。
「それでは、これからツアーの日程、注意点などについて説明させて頂きます」
このツアーは、一泊二日で行われる予定だ。一日目はこの館の歴史について説明を受けながら館全体を回る。
二日目は、このツアーのメインである宝探し。ツアー客は、館の敷地内を自由に歩き回って、旅行会社が用意したコインを探す。コインをゲットしたツアー客は、同じく旅行会社が用意したプレゼントを受け取れるというわけだ。
おおかたの説明が終わった所で、美智留が笑顔で言った。
「それでは、この屋敷の中をご案内致します」
果たしてどんなツアーになるのでしょうか……?




