第1.6章:灰の王冠(1)
すべての挑戦、すべての血と涙は、心の中に逆流する思い出の奔流と化した。
*ガタガタ、ガタガタ。*
馬車の車輪の音が、磨かれた石畳の道にリズミカルに響き、AlwenとRonanを王国の中心へと徐々に運んでいった。
少年はRonanとともに周囲を見回した。
この場所は実に華やかだった。
雨後のキノコのように軒を連ねる店々、陽光の下で金色に輝く土色の家々が、目がくらむほど温かな光を反射していた。大人も子供も色鮮やかな服をまとい、絶え間ない笑い声や話し声が響き合っていた。空高く、鳥のさえずりが清らかに響き、そよ風が花の香りを鼻先に運んでくる。すべてが、Alwenの目の前に生き生きとした絵画を描き出しているようだった。
…あまりの美しさに、彼はこの馬車に乗っていることすら忘れてしまった。
その瞬間、赤いビロードのカーテンを突き抜けた一筋の陽光が、目に直接差し込んだ。
「くっ…!」
Alwenは驚いて手を上げ、短い夢想から覚めた。光に目を細めながら、その一瞬で彼は何かに気づいた。
手がそっと握り締められる。
心の中で…まるで後戻りできない決意が灯されたかのようだった。
視線をゆっくりと対面の暗い影へと向けると、Ronanもまた、何日も眠れずに狂気じみた目で彼を見つめていた。
二人は何も言わなかったが、互いが伝えたい言葉を理解しているようだった。
「グゥゥ…キィィ…」
馬車の重々しい軋む音が響き、目的地が目の前にあることを告げた。
「王子殿下、宮殿に到着しました。」
御者の低い声が響き、どこか冷たくも、王子に対する最低限の敬意を保っていた。
Ronanはその口調に目を細めた。
「よし、行くぞ!」
AlwenはRonanをなだめ、共に馬車から降りた。
二人の目の前には、宮殿の巨大な門が、あらゆる視線に挑戦するかのようにそびえ立っていた。龍がうねるように彫刻された二本の石柱が空に向かって伸び、鋭い龍の頭が獲物を狙うように見えた。黒鉄の門は威厳を放ち、朝の淡い陽光を反射していた。
通路の両側には、青銅の騎士像が槍を手に直立し、果てしない彼方を見つめ、足を踏み入れる者を息をのむほど圧倒した。遠くには、高くそびえる城壁が、精巧な彫刻が施された冷たい灰色の石でできており、一つひとつの石に物語が宿っているかのようだった。
空には、王家の紋章が描かれた旗が風に揺れ、優しくたなびいていた。王宮の庭から漂う草木の香りが、厳かな雰囲気に生き生きとした彩りを添えていた。少年は深く息を吸い、門から放たれる力と権威を感じた。まるでこの門をくぐることは、勇気と資格を持つ者だけが許される、まったく別の世界への一歩を意味するかのようだった。
「何年もの放浪の末…ようやく帰ってきた…なのに、なぜ心はこんなにも重いんだ?」
Alwenの感慨が響き、はっきりしているがためらいも混じる。それは小さな小川が冷たい石の上で砕けるように、感情をすべて吐き出したいのに、源に戻ることを恐れているようだった。
「落ち着け、殿下!」
Ronanは無関心な口調で、少年の王子としてのためらいを打ち砕いた。
「ガチャン…ドドドン!」
巨大な門が不気味に軋みながら開き、その音はAlwenの周囲の静寂な空間を目覚めさせる重い鼓動のようだった。内側から吹き出す風が、草花と冷たい石の香りを運び、少年を招き入れる…だが同時に、過ぎ去った年月を思い出させた。
巨大な門の向こうには、輝く鎧をまとった二人の騎士が、生きる彫像のように直立していた。彼らの兜は陽光を反射し、精巧な彫刻が威厳と冷酷さを放っていた。剣を手に、剣先は地面に触れ、宮殿の確固たる鼓動のようなリズムを生み出していた。
厳格ながら、彼らの目は敬意と警戒心を露わにしていた。
二人の騎士が声を揃えて言った。
「王子殿下、大広間へお進みください。すべては殿下をお迎えする準備が整っております。」
Alwenは不安ながらも、すぐに中へ進んだ。
Ronanがまだ足を踏み出す前に騎士に制止されたが、Alwenが素早く説明し、共に宮殿へ入った。
中は、広大な大広間の圧倒的な光景だった。天井は高くそびえ、金色の装飾が龍のようにうねり、精巧に輝いていた。無数のクリスタルシャンデリアから放たれる光が、白い大理石の床に反射し、少年の足音に合わせて光の欠片が踊った。
廊下の両側には、鮮やかな花模様が刻まれた石柱が天井まで伸び、貴族の青銅像がその動きを追うように見つめていた。木の香りと燃えるロウソクの匂いが漂い、Alwenの足音の軽い反響と混ざり合い、厳かで静かな雰囲気を生み出していた。
二人は廊下を進み、*コツ…コツ*と音が広大で孤独な空間に響き続けた。
Alwenは無表情で、何かを深く考えているようだった。
それを見たRonanは、*バシッ!*と背中を叩き、少年が驚いて魂が抜けそうになった。
「なんでそんなに緊張してるんだ?!」
「う、うん…別に、ちょっとした問題があるだけだよ。」
「どんな問題でも、解決するしかないぞ、殿下!」
「そんな深刻な顔するなよ。」
その言葉に、Alwenは少し緊張が和らいだ様子で、短く答えた。
「うん。」
こうして二人は、誰もいない廊下を進み、己の望みへと向かった。
突然、Ronanは左側の廊下に立つ一つの彫像に目を留めた。
黒曜石で作られた、父と子のような二人の像が、3メートルの高さで堂々と立っていた。精巧に彫られたマントをまとい、王は赤い水晶の松明を高く掲げ、その光は本物の炎のようにきらめいていた。足元では、若者が跪き、炎を抱きしめ、琥珀の目が決意に燃え、頬には一粒の真珠が流れていた。台座にはかすれた文字が刻まれていた:「炎は王冠を鍛える。」
Ronanは立ち止まり、目が一瞬揺らいだ、何かを思い出したかのようだった。近くの騎士が、低い声でつぶやくように言った。「国王陛下はかつて、炎を乗り越えた者だけが王座にふさわしいとおっしゃいました。」
「Ronan、早く行くよ!」Alwenが少し急いた声で呼んだ。
Ronanはハッとして像から目を離し、急いでAlwenの後を追ったが、その言葉は頭の中でこだまし続けた。
◇
巨大な扉は、堅牢な盾のように、Alwenの前にそびえる山のように立ちはだかっていた。
Alwenは扉に手を置き、何かを考え、ため息をついた。「はぁ…」
Ronanを振り返ると、彼はただ親指を立てた。シンプルな仕草だったが、その燃えるような目は、言葉を必要としない誓いのようだった。
Alwenは小さく頷き、ゆっくりと巨大な扉を押し開けた。
扉は重々しく軋みながら、徐々に開いた。大広間から眩い光が溢れ出し、Alwenを包み込んだ。心臓が激しく鼓動し、額に汗が滲んだが、足は止まらなかった。
中では、王座が高台にそびえ、国王がそこに座していた――黒と赤のマントに身を包んだ威厳ある姿、目は剣のように魂を貫くようだった。両側には貴族や重臣がずらりと並び、みな一斉にAlwenを見つめた。彼らの目は冷たく、疑わしく、軽蔑に満ち、まるで針のように肌を刺した。
Alwenは深く息を吸い、力強く膝をつき、頭を大理石の床に近づけた。声は震えながらも、断固として響いた。
「父上…私、Alwenが戻りました。」
空間は静まり返った。少年の心臓の*ドクドク*という音だけが聞こえた。すると突然――
*ドドン!!!*
国王の手にした巨大な槍が地面に叩きつけられた。雷のような音が響き、地面が揺れ、石の埃が光を曇らせた。凄まじい圧力が爆発し、Alwenの背を重く押し、両腕が震え、膝が砕けそうになった。
「お前…このような姿で戻る気か?」
父王の言葉は、Alwenの心にハンマーのように打ち下ろされた。
「お前は王家の血を捨てた!」国王の声が重く響き、空気を押し潰すようだった。
「お前は王座を捨て、泥の中に生き、高貴な血を汚物の塵で汚した!」
「汚らわしいもののために血を流し、この血筋を穢した!」
「お前は乞食のよう放浪し、王家の名誉を世に嘲笑させた!」
国王は立ち上がり、目に怒りの稲妻が光った。
「そして最悪なのは…あの薄汚い民のために、自身の血と肉を差し出したことだ! 王子が…卑しい者の苦しみに膝を屈するだと?!」
大広間にざわめきが広がった。
「なんたる恥辱…!」
「王家の血統に汚点だ。」
「恥さらし…何しに戻ったんだ?」
「王子が民のために?」
「ここに座る資格はない…」
「滑稽だ…まるで安っぽい芝居のよう…」
囁き声は、恐ろしい速さで突き刺さる槍のように、少年の体の隅々に突き刺さった。
Alwenの肩が震えた。胸が張り裂けそうだった。しかし、抑圧された目に、突然火花が散った。少年は強く手を床につけ、*バン!*と立ち上がった。
「もう十分です!!!」
少年の叫び声は轟き、すべての囁きを一瞬で止めた。空気が裂け、息が詰まった。
Alwenは父王を真っ直ぐ見つめ、目が燃えた。
「なぜ私が旅立ったのかとお尋ねですか? ではお答えします! 幼い頃から、飢えて死ぬ子らを、子を亡くして泣く母を見てきました。私は失敗を抱き、立ち上がることを学びました。私の名誉は、誰も守らない者を守ることです。」
言葉を重ねるごとに、声は確固たるものになった。一語一語が、沈黙に投げつけられる石のようだった。
声が低くなり、記憶を引きずるように重くなった。
「私は彼らと共に生き、彼らの叫びを聞き、この王国が目を背ける深い苦しみを見ました。私は倒れ、血を流し、立ち上がりました…そして理解したのです。王子の価値は王座にあるのではなく、誰も守らない者を守る勇気にあると。」
少年は拳を握り、胸が上下した。
「苦しむ民の懇願、骨と皮だけになった者たちの微かな絶望の声、無垢な子らが喜びを知る前に震える小さな手…それらが私の心を千の破片に引き裂きました!」
少年はあまりにも多くを見てきた。
決意を胸に宮殿を去った日から、どんな反対があろうとも進み続け、Ronanと共に手を尽くし、血を流し、危険な獣と戦い、人々を守り、死の淵にいる者たちに希望の種を蒔いてきた。
少年は思い出した:
焦げる匂い、村を飲み込んだ炎の轟音、響き、そして消えた叫び声。
そしてあの瞬間、Aliceの泣き声と「ママ…」という言葉。あのあまりにも純真な言葉、人生の美しさを知る前に地獄の門をわずか数ミリ先に感じていた子。Ronanに救われたものの、その光景の中で少年は何もできなかった。
なぜなら、少年自身も飢えた狼の前に倒れ、絶望の中でその叫びを聞いていたからだ。
その無力感、自分がただ見ているしかなく、手を伸ばして救えない感覚が、少年の心に深く刻まれ、今ここに立っている。
「私は打たれ、刺され、野獣の残忍さと人の無関心を味わいました。しかし、私は退かず、穢れず、富も名誉も捨て、日々成長し続けました。学び続け、弱者のために立ち上がり、泣き声が響かなくなるためだけに!」
Alwenは頭を高く上げ、父の目を見つめ、恐怖を完全に払拭した。
「すべてを捨てて彼らを守るなら、私はそうします! これが私の選んだ道、私が掲げる名誉です…」
言葉を終える前に、少年は喉が力尽きたように止まった。
「ハァ…ハァ…」
少年は深く息を吸い、暗い目で父を真っ直ぐ見つめた。
そして大声で叫んだ。
「私の名誉は、忘れられた者たちの灰の中から立ち上がることです!」
少年の咆哮は、完全に目覚めた獅子のようで、もはや何も恐れなかった。
一瞬、部屋全体が静寂に包まれた。少年を軽蔑していた者たちは、驚愕と恐怖の表情でただ見つめた。
大広間は、Alwenの気迫ある言葉に凍りつき、静まり返った。
まるでこの命がある限り、どんな危険を冒しても目標を達成する決意がみなぎっているかのようだった。
国王は完全に沈黙し、目に複雑な光が宿った。感情を抑える手がわずかに震え、いつ爆発してもおかしくなかった。先の叱責が鋭い刃なら、この沈黙は静かな死刑宣告のようだった。
後ろの者たちは、この凄まじい圧力に息をのんだ。
Alwenは予想していたものの、全身が制御できないほど震えた。
だが、少年は自分の足でしっかりと立ち、決して倒れなかった。
国王の目に複雑な光が宿った。その小さな黒い瞳の奥で、何かが揺れ動いているようだった。
奇妙な光が、暗い瞳に現れ、まるで冷たい雲を散らし、道を探す生き物を照らす星のようだった。
Alwenは頭を低くし、最悪の事態を覚悟した。
突然、国王が大声で笑い出した!
「ハハハハ!! ついに、お前は私が待ち望んでいた言葉を口にした!」
国王は槍を下ろし、力強いが誇りに満ちた声で言った。
興奮した手が手すりを叩き続けた!
「Alwen…お前は私を失望させなかった。それどころか、兄を超えた! 長年、私はこの瞬間を待っていた…お前が王国全体の前で自分の道を宣言する日を!」
部屋は驚愕に包まれ、ざわめきが広がった。
「どういうことだ???」
「国王は何を言っているんだ??」
「なぜあんな汚点を称えるんだ?」
「一体何が起こっているんだ?」
Alwenさえも呆然とし、思わず言った。
「え? これはどういうことですか???」
「まさか…彼は本当に無能ではないのか?!」
国王は手を高く上げ、雷のような声で言った。
国王は声を低くし、軽く笑って言った。
「お前の兄は、まれに見る完璧な天才だった。この王国を導く理想の人間だと思われ、大きな希望であり、私の誇りだった。」
その言葉に、部屋全体が言い表せない重い雰囲気に包まれた。
国王の声はさらに低くなり、失望を込めて続けた。
「だが、彼は栄光と富を愛するだけで、進取の気性も、勇気もなく、恐れから逃げる臆病者だった。ほとんど無能で、この広大な国を導く力はなかった。」
「だが、お前は違う。弱く病気がちな子で、木の枝につまずくだけで倒れるような子だった。」
「それでも、お前は転んでも立ち上がり、進む決意に満ち、優しく勤勉で、勇敢な心を持ち、誰かのために犠牲を払う子だった。」
「お前が去った日から、私は今日を待ち望んでいた。お前が世界に自分の決断が正しかったと証明する日を!」
「だから!」
「この王座はお前のものだ。お前は私の誇りであり、この国に生きるすべての人を導く者だ。」
「そしてお前、Alwenこそ、この王国の未来なのだ!!!」
Alwenは立ち尽くし、目を見開いた。父の言葉が信じられなかったが、震える手で左胸を叩いた!
「父上、誓います! この信頼を決して裏切りません!」
国王は頷き、燃えるような目に珍しい優しさが宿った。
「行け。民に見せろ…彼らの真の後継者を。」
「彼らに、本当の王が誰かを示せ。」
Alwenは最後に一度跪き、声が詰まった。
「父上に感謝します…」
そして振り返り、歩き出した。扉がゆっくり開き、輝く光が溢れ、少年が自らの血と骨で築いた色鮮やかな未来へと彼を迎えた。
(続く)




