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67話:復ッ 活ッ




街の人に道を聞きながら、インチキ商会の本部へ。

一際大きい建物がそこにあった。

だが今回ここに用はない。ロリさんに挨拶も必要ないだろう。


インチキ商会の裏手に回ると、雰囲気がある小さな通りに出た。

馬車が通れるか通れないかくらいの幅の通りに、左右にこじんまりとしたお店が並んでいる。



更に聞き込みをして、セジウィックさんのお店を発見。

看板にはトンカチがクロスしたマークだけしか描かれていないが、間違い無くセジウィックさんのお店らしい。


中を覗くと・・・誰も居ない。

思ったより中は広い。商品と思われる武器や防具、雑貨らしきものが綺麗に整頓されて置いてある。

ここは武器屋か?それとも雑貨屋?


「すいません〜!誰かいませんか〜!?」


大声で呼んでみると、上の方からバタバタと足音が聞こえだした。

どうやら2階に居たようだ。無用心だね。


暫く待つと奥の扉が開いた。

そこから現れたのは・・・知っている少女だった。


「はいはい〜。お客さん?どうぞ見てって〜。」


中性的な顔立ちに薄着のドワーフ。

一度見た素敵なおヘソや太腿をこの私が忘れる訳がない。

間違い無い。この人は・・・


「・・・貴女がシュリ先輩ですか?」

「ん?何処かで会ったかな?ごめんね〜、ボクは憶えてないや。」


僕っ娘キター!ヒャッハー!新鮮な僕っ娘だーー!!

男の娘とは訳が違うぜーーー!!


「いえ、初対面ですよシュリ先輩。」

「ん?そうなの?じゃあ学園の誰かから僕の事聞いたの?」

「えぇ。そうです。・・・シュリ先輩、勇者はここに居ますか?」


それを聞いたシュリ先輩は、はにかみながら答えた。


「カティナの事?カティナは此処には偶に来るけど、今は居ないよ。」

「嘘ね。」


すると、食い気味で会話に入って来る者が。

勿論ルナ様である。外でモン娘達と一緒に待たせていたのだが、いつの間にか店に入って来ていた。


「えっと・・・何を根拠に言ってるの?あんまりしつこいと衛兵呼ぶよ?」

「オモチとかいう無礼な娘の時にも言ったでしょう?今の王国で、真に勇者ちゃんの事を思って動いている人間は少ないのよ。」

「モチちゃんを知ってるの!?貴方達、何者なの!?」


そらもう命の恩人ですかな。

恥ずかしい姿も見た事あるぜ・・・えっちな姿ではなく、情けない姿ですけど。


「どうせ2階に居るのでしょう?さぁリョウ、行くわよ。」


ちょっとちょっとルナ様。人の家ですぜ?

えらく強引に行くじゃないですか。


「何勝手に・・・って、今リョウって言った!? ち、ちょっと待って!話をさせて!」


奥に行こうとするルナ様を身体で阻みながら、シュリ先輩は僕とルナ様の顔を交互に見る。


「・・・貴方が、カティナの言っていた幼馴染のリョウ君?で、この人が仲間のセリス? ・・・聞いてた話と全然違うよ?それにリョウ君はパイマーンに居る筈だって。」


聞いていた話と違う?何が違うというのか?

カティから何を聞いたのか知らんが、魔物使いの筈なのにイムを連れていないとかだろうか?

イムならすぐ呼べるぞ?セリスは無理だけどな。

そうか、セリスの事を言っているのかもしれん。セリスはもっと、エロスが服を着ているようなもっこり美女だ。こんなチンチクリン美少女ではない。




「実は・・・」


僕が口を開くと、2階からドタドタをさっきよりも激しい足音が聞こえた。


・・・ああ、さっき僕の名前が聞こえたのか、下りてきたみたいだ。僕の探していた大馬鹿者が・・・


「リョウ!!?」


壊れんばかりに扉が開け放たれる。

そこには・・・この世のものとは思えない美少女が立っていた。



・・・・・・だ・・・誰だコイツ!!?


・・・い、いや、あの深紅の髪。そしてあの声。

間違い無くカティだ。そうだ、間違い無い・・・筈だ。

コイツまた綺麗になったぞ!?あのハナタレ小娘がどうやったらこんな美少女に?

天はカティに何物与えるんだ?教えてくれよ女神様!?



「ああ・・・リョウ。ホントにリョウだ!!!」


だが、感動の再会も束の間。

興奮した大馬鹿者は、僕の胸目掛けて飛び込もうと走り出す。


あッ、ヤバいこれ!!!?

命の危機を素早く感じ取った僕は、店を飛び出し一目散に逃げる。

突然の幼馴染同士のおいかけっこが始まる。走り抜けた僕とカティを、モン娘達が唖然として見ていた。


「ちょっと!!何で逃げるの!!!?」

「おおおおおおお!!ちょっとスピード落とせ馬鹿!殺す気かああああああ!!!」

「4年振りなんだよ!!ちょっとくらい強くてもいいじゃん!!」

「馬鹿かああああああ!オマエのちょっとは人を殺せるんだよよおおおおおお!!」

「あたしを受け止めてよおおお!!リョウーーー!!!」

「おおおおおおおおお!!!頑張れ僕の背骨ええええええええええええ!!!」


身体能力で僕がカティに勝てる訳も無く、間もなく追い付かれた僕は、背中に重すぎるカティの愛を受け取る。

2人して地面を勢いよく滑っていく。勿論、下は石畳さ。そして勿論、顔面からだよ・・・。






「・・・夫婦コントは終わったかしら?」


・・あのねルナ様。こんなふざけたシーンで死ぬところだったんですよ?

いいから回復魔法して下さい。お金はいくらでも出すんで。

つーか、何でルナ様がここに?結構街中走り回りましたけど?


「・・・貴方達が一周して此処に戻って来たのです。それを含めてコントなのかと言っているのですわ。」


・・・僕が床ペロしてたのは、どうやらシュリ先輩の店前だったようだ。

道理でシュリ先輩の甘い味がすると思ったぜ・・・いや、嘘。全くしません。


「・・・・・・コレが、カティナ。」


僕の腰に抱きついて離れないカティを、コレ呼ばわりで他のモン娘達に紹介しだすイムちゃん。


「なるほど・・・失礼を承知の上で申し上げますが、ご主人様の幼馴染なんだなという事が大変良く分かります。」

「確かにね。リョ〜君そっくりだもん。」

「・・・疲れる人間がもう1人増えたのね。最低だわ。」


おうおう。言うようになったじゃねぇか。

ちょっと最近、従魔達は調子に乗ってませんか?これは躾が必要ですね。グェッヘッヘ。


「グスッ・・・リョウ、会いたかったよぅ。もう離さないもん。ぜったい・・・ぜったい離さないから・・・。」


うん、もう分かったから。

でもまず一旦離そうか勇者様。まず立ち上がって話しません?



「貴方達、何しにこの街に来ているのか分かっているのかしら?あまり目立つ行動はしないでもらえますか?」


悪態をつきながらもルナ様は指を鳴らし、僕とカティの傷を治してくれた。

こんな事でも回復魔法を使ってくれるルナ様、マジ女神。


「良かったねカティナ。折角だから、リョウ君とセリスさんにも話聞いてもらおうよ。今日はもうお店閉めちゃうからさ。」


シュリ先輩はお店まで閉めてくれちゃうらしい。何か悪い事したね。

まぁ、カティにもシュリ先輩にも山ほど聞きたい事はある。

現状をよく把握しとかないとな・・・。





◆◆◆





店の2階は、シュリ先輩の生活スペースになっているようだ。

ここに上る時に店の奥を通ったが、そこは鍛冶工房になっていた。

シュリ先輩は自分でモノも作って販売までしているのか。まだ若いだろうに、立派な店を持っている。

そして鍛冶場だというのに小綺麗にしている。店の方も武器を売っているっていうのにオシャレだ。

女子力高過ぎるぞシュリ先輩。お嫁に来て欲しい。ていうか僕がお嫁に行きたい。それか僕のママになって欲しい。ていうかママにしたい。



モン娘達は店の中まで入れてもらって、シュリ先輩は店を閉店させた。

ルシルは台所を貸してもらって、人数分の茶を用意してくれている。


シュリ先輩の部屋で楽にさせてもらってから、まずは一番に気になる事を聞いた。


「・・・で、カティ。その腕はどうしたんだ?」


カティの利き腕である右腕には、力が入っていなかった。

さっきおいかけっこになった場面でも、右腕は全く振っていなかったのだ。


「うん。あたし去年ね、武術の大会にでたの。」

「それは知ってる。4位だったらしいな。おめでとう。」

「ありがとう!スゴいでしょ!?」


カティは満面の笑みで答える。無理した感じでもなく、純粋に嬉しいようだ。

・・・じゃあ原因はあの試合か。準決勝のアントニオ=ピッコリとかいうおっさんと戦った時に折られたまんまと言う事か。


「何故、治してないんだ?」

「え?治したよ?」

「・・・カティ、力が全然入ってなかったじゃないか。それじゃあ不便だろ?」

「リョウ君、カティナの怪我は運が悪かったの。回復魔法では今はここまでが限界なんだって。」


シュリ先輩がカティを可哀想な目で見ながら、詳しく教えてくれる。

・・・あの武術大会で一生物の傷を負ってしまったというのか。何でゲバルド氏はこの事を言わないんだよ。カティのダンジョン探索が捗ってないのはコレのせいじゃないか。


「大聖堂に回復魔法をしてくれる人が居るの。その人に治してもらってるんだ。前はもっとヒドかったんだけど、ようやくここまで動かせるようになったんだよ。」


カティはルシルが持ってきてくれたカップを持って見せる。

・・・そうか。大聖堂で見掛けたというのはそういう事か。あの少年達の情報は正しかったらしい。


「高位の回復魔法を使えるクラス“僧侶”の神官が快く治療を引き受けてくれたんだけどね・・・完治にはまだまだ掛かるみたいなんだ。」


だが、これではダンジョン探索も満足に出来ない。シュリ先輩の言う高位の回復魔法使いがどれ程のものか知らないが、ソイツがやれないのなら、うちの癒し手にやらせればいい。



隣で一人だけ持参の茶菓子を食べている女神様の目の前に、金貨を置く。文句を言われたらめんどいので、最初から2枚置きだ。


「頼めますか、ルナ様。」

「・・・んふふふふっ。リョウは彼女の事になると決断が早いのねぇ。いいわ、やってあげる。」


いやらしい笑みを浮かべながら、金貨に手を伸ばすルナ様。


「や、やだなぁ、婚約者だなんて。そんな・・・あたし達まだ子供なんだよ・・・だ、ダメだよぅ//////」


誰が婚約者などと言ったのか。

カティは美しくなったのはいいが、頭の中も更に美しくなったみたいだな。馬鹿過ぎる。


「まったくよね〜。僧侶だかなんだか知らないけど、こんな怪我も治せないようじゃまだまだ未熟よね〜。」


貴方のとこの神官ですよね?

流石に女神様と比べられたら誰も敵わんでしょう。



ルナ様は金を持ちはしたが、此方に指で弾いてくる。

どうやら今回もロハでやってくれるらしい。つーか金を投げんな。

・・・いや普通金なんて取らないからね。パーティーメンバーなんでしょ?セリスの代わりで入ったんだもんね?おかしいよ!


「は〜い、勇者ちゃん、ドワーフちゃん。仙台名物のお茶請けですよ〜。よ〜く味わってね〜。」

「わぁ!いただきま〜す!!」

「せ、センダイ?・・・あ、あの頂きます。」


・・・この女神は何をしている?

誰が食べている菓子を配れと言ったのか。こっちは傷を治してくれと頼んだんですよ。

つーか僕も萩の月は食いたいよ!何で僕にはくれないの!?



「・・・・・・あ、あれ?・・・治ってる!治ってるよーーーーーー!!!?」


カティが右手でお茶請けを受け取り、腕が元通りになった事を実感したようだ。

えぇ・・・?いつの間に?

指パッチンすら要らなかったんだなぁ・・・。もはやこれは魔法なのか?


「え?そんな訳・・・?」

「見て見てシュリ先輩!?ほらっ!こんなに動かせるよ!!」

「な、何で?何がどうなったの?」


大聖堂の神官様が1年かけても治せなかったものを、ルナ様は一瞬でやってみせた。

回復魔法のレベルが違い過ぎるんだ。多分ルナ様は、死人を復活させたセリスと同じレベルの回復魔法が使えるだろう。



「あ、あの。セリスさんがやったんですか?それにさっきルナ様って・・・。」

「シュリ先輩!この人はセリスじゃないよ!この人はルナ様なのよ!」

「えぇっ!!?・・・な、何言ってるのカティナ?ルナ様って女神様の事だよ?」

「・・・あッ!!?・・・しゅ、チューてんぱい!!これ誰も秘密にょって!!!」


・・・チー聴牌?

カティお得意の誰にも秘密してが飛び出したが、秘密にしてって言ってしまったら本当の事言ってるって分かるんだよなぁ。

それに先にやらかしてんのは僕なんだよな。シュリ先輩の前では言うんじゃなかった。


「んふっ。私の両親がね、女神様のように大変美しくなって欲しいと、女神様と同じ名前を付けたのよ。よくあるでしょ?歴史上の人物の名前を付ける親って。」

「え、えぇ??あるの?だって女神様と同じ名前って・・・。」


ルナ様の適当な言い訳に、シュリ先輩は混乱しているようだ。

・・・正直、ルナ様は偽名でも使った方がいいんじゃないかと提案しようと思っていたのだが、どうやらルナ様のままでいく事になりそうだ。

まぁ、ルナ様がそれでいいんならいいんですけどね。



「あぁ〜〜・・・もう分かんない〜。何がどうなってるの? カティナがいよいよ危ないと思ってたら、いきなりパイマーンに居る筈の彼氏が現れるし、カティナの腕を一瞬で治しちゃう回復魔法使いが現れるし・・・このお菓子は信じられないくらいおいしいし! 突拍子もない事が起き過ぎだよ〜。頭パンクしそう・・・。」

「あらあら。いくら頭の良い貴女でも、考え過ぎはよくないわよ。ほ〜ら、もう一箱あるわよ?」

「う、うま・・・なんなのこのお菓子ぃ・・・?」


・・・ルナ様はシュリ先輩を餌付けしてどうするつもりなんだ?ていうか、もう一箱空けたのかよ。20個くらい入ってたぞ?



僕が菓子に手を伸ばすと、ルナ様にピシッと叩かれた。

なんでやねん・・・。

僕は食べる事が許されてないらしいので、カティとシュリ先輩の話をまとめる事にする。




・・・カティの現状は、今迄の聞いていた情報で間違い無いようだ。


伝説のクラス勇者と女神様から授かったチートで武術大会を頑張り過ぎちゃったカティは、マントパンツァー学園の学園長から特別な卒業課題を出される。嘗ての勇者オルダタも成し遂げたその課題に、張り切るカティ。

だがその話は、国王陛下を含む王国内の有力者から支持を得るまでに肥大し・・・いつしか学園や冒険者ギルドの関係者から、パーティーを組む事を拒否されるように・・・。


「・・・ボクは商人ギルドにも登録してあるんだけど、商人ギルドからも御達しが来たよ。“勇者とパーティーを組む事を禁ずる”って。」

「そうですか。商人ギルドにも来てるんですね。」


こりゃ主だったギルドには、全部達しが行っているだろう。

徹底的だな。国は何を考えているのか。


「ボク個人はカティナを助けてあげたいんだけど・・・ギルドの命令だから逆らったらどうなるか・・・。」

「いや、無理はしないでくださいシュリ先輩。こうやって世話して頂くだけでありがたいんですから。」


シュリ先輩にはパーティーを組む以外の事で大変世話になっているだろう。あのくノ一ちゃんもそうだし、感謝せねばなるまい。



「・・・ねぇ、何の話なの?パーティー組むの禁止されたとかどうでもいいじゃん。オルダタ様は1人でダンジョンを探索しているんだから、あたしも1人で行かなきゃダメだよ。」

「・・・何の為に僕達がパイマーンから来たと思ってるんだカティ?明日から僕達とダンジョンに潜るぞ。」

「え・・・・・・エエーーーーーーーーー!!!!??」


椅子から立ち上がりながらデカい声で騒ぐ馬鹿。

普通にうるさい。


「だ、ダメだよ!!パーティー組むの禁止されてるもん!!?」

「カティ自身は禁止されていないだろ。王国は、回りくどく周りの人間にパーティーを組むなと言って回ってるだけだ。」

「・・・り、リョウにはダンジョンは危険なの!!リョウの実力じゃ死んじゃうよ!?」

「もう既に何回もダンジョンは経験している。冒険者の人と一緒にも行った事があるし、自分らだけで行った事もある。」


なんだったら制覇した事もある。証拠は・・・コアは全部フィリップさんにあげたから無いけど。



「・・・確かにカティ自身はパーティーを組む事、禁止されてないね。ねぇ、リョウ君。これはリュドミラが考えた事?」

「そうです、シュリ先輩。彼女がパイマーンまで来て教えてくれたんです。」


それを聞いて、シュリ先輩は顔の前で手を組んで難しい顔をする。


「でもさ、元はと言えば、嘗ての勇者オルダタ様がたった1人でダンジョンコアを取って来たって伝説があるから、今の勇者のカティナに同じ様な課題を課したんだよ?」

「な〜るほどねぇ。いくらどこのギルドにも属していない者を探して来ても、パーティーを組んでダンジョンコアを手に入れた時点で、国のお偉いさん達は納得しないだろうと・・・そう言いたいのですね、ドワーフちゃん。」


と言いながら、最後の菓子を口に運ぶルナ様。

だから食うのはえーって。ちゃんと噛んでんのか?


「そうですよ!下手したらリョウ君・・・犯罪者になるんじゃないですか!?」




・・・・・・・・・あれ?

それは聞いてないなぁ。どゆこと?

僕は課題も満足に出来ねぇお馬鹿ちゃんを助けてくれって、ここに来ただけなんですけど?


「その時はその時よ。ねぇリョウ?」


ねぇリョウ。じゃねーよ。

なんですかその笑顔?全部分かってて言ってないですかルナ様!?

おいおいこの世界大丈夫だよね?懸賞首になったら問答無用で衛兵が斬りかかってくる世界じゃないよね?名前が強制的にどろぼーになったりしないよな?


「り、リョウ・・・そこまでしてあたしの事・・・わ、分かった!!リョウの気持ち無駄にしないもん!!!一緒にダンジョン行こうね!リョウ!!」


待てよ早まるな馬鹿!

一旦無かった事にしよう!そこまで考えてなかったんだ!どうせ捕まるならセクハラとかで捕まりたい!!


「カティナ・・・良かったね。こんな立派な彼氏が居て。」

「えへへ。シュリ先輩だってヴァリー先輩が居るじゃん!」

「え!?そ、そんな!ボクとヴァリーはそんなんじゃ・・・。」


おい。僕が犯罪者になるかもって話終わり!?そしてシュリ先輩に彼氏が居るなんて二重にショック!!?

もう恋バナはいいから、犯罪者のくだりはしっかり話そうや!このまま行っても意味無いかもしれないんだろ!?



「貴女達。彼氏自慢は程々にして、ダンジョン探索の準備をするわよ。勇者ちゃんの腕が治ったのだから、本来の戦い方が出来るでしょう?」


嫌あ!!ルナ様あ!!!ちゃんと犯罪者の方の話に戻して!!!


「あっそうだ!これでまた両手に武器が持てるよ!」

「んふふっ。勇者ちゃんは何故二刀流にしたのかしら?」

「そんなの簡単ですよルナ様!1本より2本の方が強いに決まってるから!」

「んふふふふっ。(馬鹿)可愛い理由ね。」


・・・二刀流の姿を見た時にそんな事だろうとは思ったが、やはりそんな理由か。どっかの主人公みたいな事言ってるよ。


「そういう事なら、重要になるのは魔剣だね。」

「あっ・・・リョウ、ごめんなさい。実は・・・。」


シュリ先輩の言葉に反応して、シュンとなるカティ。


「僕があげた魔剣、折ったんだろう?知ってるよ。武術大会見たんだから。」

「うん・・・コレ・・・。」


カティは机の上に折れた魔剣を置いて、鞘から抜いて見せた。

見事に中程から折れている。もう半分はシュリ先輩が持っていたようで、引き出しから取り出して来た。


「これリョウ君のだったんだね。カティナを怒らないであげて。仕方なかったんだよ、相手はあの・・・」

「怒りませんよ別に。それより、シュリ先輩は鍛冶師ですよね?武器は修復出来ますか?」

「え?そりゃもちろん・・・でも、あるアイテムが無いと魔剣は・・・。」

「ここにあります。これで直せますか?」


脇にしっかりと控えて居たルシルが、アイテムボックスから赤い鉱石を取り出す。

シュリ先輩が、口をあんぐりとさせて固まっている。


「ご、ゴーレム血石!!?そ、そんな!何処でコレを!?」

「1年前、アヌルス鉱山で。」

「み・・・密輸入!!?」


・・・そんな言い方すんなよシュリ先輩。せめて裏技を使ったとか言って欲しい。


・・・・・・あれ?

従魔紋の偽装、ゴーレム血石の持ち込み、ルナ様の密入国・・・。

・・・僕、もう犯罪者かもしれんな。



「リョウ君、知っているの?今ゴーレム血石って・・・。」

「知っていますよシュリ先輩。全部聞いてます。」

「・・・それでも持って来たんだね。」


シュリ先輩は折れた魔剣とゴーレム血石を持って、葛藤に苦しんでいるようだ。

・・・そうか。密輸が犯罪なら、コレを修繕させると、シュリ先輩も犯罪に加担した事になるか。


「あー、やっぱり・・・」

「ううん。ボク、やるよ。もう決めたから。止めたって駄目だよ。2週・・・いや、1週間で仕上げる。」


・・・シュリ先輩はどうしてここまでカティの事をやってくれるのかねぇ?くノ一ちゃんもそうだよな。



「ところで、オモチさんという娘は知ってますよね?あの娘もゴーレム血石を探していたみたいですが、誰かが頼んでいたんですか?」

「あー、あの子ね。あの子は〜・・・ねぇ?カティナ?」

「はわ〜〜♡♡♡リョウ、カッコいいよぅ・・・。」


シュリ先輩が呼んでいるのに、カティは目がハートになってて聞こえないようだ。

・・・コイツ、こんなに馬鹿だったかな?ただタイミングが良かっただけだっての。


「カティ!!」

「ハイッ!!? も、モチちゃんには何も頼んでません!!」

「頼んでないだぁ?そんな訳ないだろ。だってあの娘は・・・」

「リョウ君、ホントだよ!あの子と何を話したのか知らないけど、ボク達からモチちゃんに何も頼んではいないよ。」


シュリ先輩が慌ててフォローしてくる。


「寧ろボク達は止めたんだ。王都の外でゴーレム血石を手に入れたとしても、王都の中に持って入る事は出来ないでしょ?だから、アヌルスに行くのは辞めた方がいいって言ってたんだけど・・・。」

「モチちゃん、人の話聞かないの。何も考えずに突っ込んて行っちゃうから。ちゃんと止めたんだよ。」


くノ一ちゃん・・・カティにそこまで言われるなんて、終わってるぞ?

エリオと同レベルだ。女エリオットだな。


「止めたって、彼女がアヌルスに行く事をか?だったら止めれてないぞ。オモチさんと会ったのは街の外だ。タマティーの町の辺ですよ。」

「ええッ!!?モチちゃん行っちゃってたの!?あれだけ言ったのに!」


2人がどれだけ止めたのか知らんが、くノ一ちゃんは無視して行ってしまったようだ。

それがあんな目に遭う事になるなんてな。自業自得・・・と言ってしまうのは流石に可哀想か。運が悪かったんだよ。


「もうっ!カティナの事になるとすぐ暴走するんだから!!すぐに捜索依頼を・・・」

「大丈夫よドワーフちゃん。オモチには全部説明済みですわ。今はアノールの外には出ず、大人しくしているわ。」

「えッ!!?ルナさん、あのモチちゃんを説得したんですか!?」


僕が絶対無理なのは分かるが、カティやシュリ先輩でも話を聞かないのか。どんだけ困ったちゃんなんだよあのくノ一・・・。

結局はルナ様にも噛み付いてたしな。説得出来る人なんて居るのだろうか?

つーか説明済みではないよね?ゴーレム血石の事は言ってないし。あの様子なら、またアヌルスに向かって行ってしまいそうなんだが。



「あの娘の事は放っておいていいんじゃないかしら?魔剣の目処も立ったし、今日はもうおひらきにしましょう。」


3箱目の茶菓子が空になったところで、ルナ様が立ち上がった。

何処に消えたんだよ、そんな胃もたれする量。結局1つも食えなかったじゃん・・・。


「え?でもモチちゃんは・・・?」

「だから大丈夫よ勇者ちゃん。オモチが街に入っているのは確認済み。それに暫くアノールからタマティーへの道は封鎖されるだろうから出られないわ。」


ん?なんでそんな事をルナ様が・・・・・・あっ、そうか。ドラゴンが出たって言ってたからか。


「・・・あれ?じゃあ、司祭様とリュドミラちゃんはアノールに来れなくないっすか?」

「そうねぇ。後から来るって行ってたのに、残念な事なったわね。そこは私も想定外でしたわ。」


薄く笑いながらルナ様がそう言う。ルナ様がこんな事言うのも珍しい。


「ええ!?パパが何で来るの!?それにリュドミラちゃんはパイマーンに戻ってたの!?何で!?」

「カティの為に、だよ。司祭様もリュドミラちゃんも、シュリ先輩もオモチさんも、みんなお前の為に動いてるんだ。」


僕はそう言うと、カティの頭を撫でてやる。


「あっ、うん・・・ぐへへ、うへへへへ・・・・・・。」


気持ち悪い笑みを浮かべて、こっちを見るカティ。

なんだこのおっさん(美少女)



「ねぇ、それは道すがら話してくれない?お腹すいたわ。」


・・・え!?さっきのお菓子は!!?


「・・・甘いモノは別腹っていうでしょ?今日は泊まる宿もまだ決まってないじゃない。此処で油を売ってる場合じゃないわ。」


・・・甘いモノは別腹って、お腹いっぱいの時の台詞では?シメに甘い物食べる時の話でしょ。


「・・・いちいちマジレスしなくていいのよ!早く行くわよ!」


そう言ってルナ様は、偉そうにふんぞり返りながら部屋から出て行く。



「すみません、シュリ先輩。勝手な人なもんで。」

「いいよいいよ。今日は久しぶりの再会でしょ。みんなでゆっくり食事しなよ。」

「えー!シュリ先輩も行こうよー!」

「ごめんね〜カティナ。ボクはコッチの方に専念したいの。」


と、僕が渡したゴーレム血石をキラキラした目で見ている。

そこまで急いてもらう事でもないのだが、どうやらそういう風でもないみたいだ。初めて手にした素材と初めての魔剣の修復に、ワクワクが止まらないって顔をしている。

食い気よりも好奇心が勝つタイプのようだ。まぁ、気も遣ってくれているだろう。


「そうですか・・・ではシュリ先輩、また。」

「シュリ先輩、また明日ね!」


特に明日会う予定はないのだが、カティは明日会うつもりらしい。

まぁ、明日いきなりダンジョンに潜る事はないだろう。装備の事でシュリ先輩に相談してもいいかもしれない。




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