66話:1000回遊べる横穴
検問の順番になるまでに、ロリさんによる偽従魔紋の付与が完了した。
ロリさんの計らいで、長くなる事確定のインチキ商会の検査より先に、僕達の検査をさせてもらった。
持っている荷物は全部ひっくり返されたが、ロリさんの言う通りアイテムボックスの中身まで検査される事はなかった。
そして従魔4匹とも、しっかりと従魔紋まで見られた。偽造された従魔紋には何も言ってこなかったので、ロリさんに感謝しないといけない。
そのロリさんだが、別れの際に挨拶をした時は物憂げな様子であっさりとした別れとなった。
・・・仲良くなったと思っていたのは気の所為だっただろうか。それとも色々バレた事で呆れられたか?もしくは4匹分の従魔紋を描かせた事で疲れさせてしまったのか?
いずれにしろロリさんにはまた関わる事になるだろう。
インチキ商会は手広くやっているみたいだしな。ロリさんも暫くはアノールに居る事になるって言っていたし。
というか、ロリさんとはお近づきになりたい。そう、美女とは何人でも関係を持ちたい。リョウ君ですどうぞよろしく。
モン娘達を取り敢えずはモン娘形態にし、アノールの街を歩いて行く。
「スっゴいわね〜。リョウ君の街もスゴかったけど、この街はもっと人間が多いわ。」
ピノが辺りを見ながら感想を言っている。
まぁそうだな。色々不自由な制限が掛かっている割には、街の中は活気に満ち溢れている。
カティが苦しい思いをしている街とは思えないな・・・カティの事がなければ、楽しく観光でもしたいんだが。
「あら〜?思ったより早かったじゃない。」
突然、横から声を掛けられる。
まぁ何回も聞いた事ある声なんですけどね。
紙袋の中に入った菓子をモリモリ食べながら現れる。我らが女神、ルナ様である。
「ルナ様。何処までお花摘みに行ってたんですか?」
「デリカシーないわね〜。まぁいいわ。」
ルナ様はそう言いながら、菓子を1つ差し出してくる。
いや、いらんけど。
「私も通行許可書なんて持っていませんからね。こうするしかないでしょ?」
そう言って僕が受け取らなかった菓子を指ではじく。その菓子はイムが首を伸ばしてキャッチしていた。
「それだったら最初から言ってくれればいいじゃないですか。」
「あら?言っていたらどうにかしてくれたのかしら?」
「・・・いや、なんも出来ませんけど。」
「そうよねぇ。私もあのマークを描かれるのは嫌だわ〜。」
当然というかなんというか。やっぱりルナ様は一部始終見ていたらしい。
だったら最初から居てくれれば・・・まぁ助けてくれるか分からないけど。
「・・・で?これからどうするのですか?宿より先に飯かしら?」
「ルナちゃん様良いコト言うじゃ〜ん。もっと言ってよごはんよ!ご・は・ん!」
「そうよねぇハーピーさん。甘味よ!か・ん・み!」
そう言ってピノに菓子を1つ差し出すルナ様。
ピノは喜んで受け取っている。
・・・あれ?僕の従魔、餌付けされてませんか?
「それを言うならメシより宿。ですよルナ様。それに観光でアノールに来たんじゃないんですから。先にカティと合流しますよ。」
「んふふっ。笑わせないでちょうだい。リョウが一番観光気分じゃないのかしら?」
・・・なん・・・だと?どういう事だ?
まさかあの計画がバレているのか!?
そんな事は・・・いや、ルナ様ならあり得るか。
しかしこの計画に変更は無しだ。どうせバレているのはルナ様だけ・・・計画の進行に支障はない!
「・・・何の事か分かりませんね、女神様。」
「ふぅん。まぁ私は興味無いわ。 で?勇者ちゃんは何処に居るのかしら?」
・・・それは知らん。
ゲバルド氏やリュドミラちゃんより早くアノールに来てしまったので、カティに僕が来る事は伝わっていないだろう。
故にお出迎えも無し。僕達はこれから、この大都会の中で1人の少女を探さねばならない。
まぁ当てがない訳ではない。
マントパンツァー学園に居るか、課題のダンジョンに入っているかだろう。
先ずはダンジョンから行ってみるかな。学園は入れてもらえるか分からないし。
この2つに居なかったら情報収集か。勇者だから目立つだろうし、すぐ分かるだろう。
「イム、勇者とはどんな方なのですか?」
「・・・・・・イムもよく、しらない。少ししか、おしゃべりしてない。・・・・・・でも、強い。イムは、すぐやられた。」
「マジで!?イムがあっさり負けんの!?そりゃ〜あのおっs・・・リョ〜君のお父さんの子供なだけあるわね。」
・・・そういえば、イム以外はカティに会うの初めてか。一応ルシルは小さい頃に会っているが、あれはノーカンかな。
あの時のイムは1対6だったからなぁ。レベルが上がった今ではどうなるかな?
「フッ。先々代の魔王様を倒した勇者ですか・・・。相手にとって不足はありませんね。」
フッ。じゃねーよ。
何する気なんだよ駄犬。やっぱり魔王の手先なんじゃねーだろうな?
「・・・あんたって、恩人である司祭の娘に手を出したの?最低ね。」
・・・あれ?僕、最低かもしれん・・・。
いやまて、これは蜘蛛女の罠だ。
まだ手を出してねーんだよ!これからいっぱい出すんだからな!邪魔すんなよ!!
取り敢えず、ダンジョンの場所を調べる為に冒険者ギルドへ。
道中、やはり屋台に惹かれて足が止まるイムやピノ。しかしその中で、パイマーンではあまり見なかった海産物屋があった。
乾物なら見てもいい筈なのにあまり見なかったな。アノールは海も近いらしいので、海産物も多く売っているらしい。
乾燥昆布は確保しておこう。これで良い出汁が取れる。後は味噌や醤油があれば完璧なのだが。
冒険者ギルドで目的のダンジョンはすぐに見付かった。
アノールの近くにはいくつかダンジョンがあるらしいが、先代の勇者オルダタの伝説が残る、オシリ王国最古のダンジョンまで分かっていたので簡単だった。
場所も、冒険者ギルドを出てすぐらしい。
というか、最古のダンジョンの近くに冒険者ギルドを建てたというのが正しいのだとか。
冒険者ギルドを出て、さっきとは別の城門から街を出る。すると見える場所に建物や小屋が建ち並んであった。
あれはダンジョンの前に建てている公共施設らしい。大都会になるとダンジョンの目の前にも建造物を建てるらしいわ。
「うっわ〜。ここにもスッゴい人の数よ。メイコのダンジョンとは人気が違うわね。」
「・・・あれは私のダンジョンではないわ。」
ピノよ。あんまりデリカシーが無い事言うんでないよ。あとで当たり散らされるのは僕なんだからな。
ファンタジーにはド定番である、大きな横穴がある。ここがこの洞窟型ダンジョンの入口らしい。
その入口の前で何組もの冒険者が屯している。若い人からベテランっぽい人まで幅広く居るが、カティが居る様子はない。
「・・・・・・リョウ、ここのダンジョン、なまえ、なに?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「リョウ?」
「・・・イムちゃん。名前なんてなんでもいいじゃないか。」
そう、これから考えていけばいいのさ。僕達でこのダンジョンの名前を創っていくんだ。素晴らしいだろイムちゃん。
「・・・んふふっ。私が教えてあげましょうスライムさん。このダンジョンの名前はね、“オシリの横穴”っていうのですわ。」
「ん。・・・・・・おしりの、よこあな。」
・・・・・・・・・・・・。
それはさておき、このダンジョンは初心者にも上級者にも長年愛される素敵ダンジョンらしい。
理不尽なトラップは殆ど無く、迷路と魔物で勝負してくる潔くもド定番っぽいダンジョンだそうだ。
トラップが無いという事は、それだけ安全にダンジョン探索が出来る。少々刺激が足りないという奴等は、他にいくらでもダンジョンがあるのでそっちに行けばいい。
だが安全だけでは人気のダンジョンとはなり得ない。このダンジョンは他のダンジョンとは違い、実入りがいい部分がある。
それが、異常な宝箱の発見率だ。一度潜れば、どんな初心者でも最低1個は発見すると言われているそうだ。
僕達も、悪霊の屋敷では運良く2個見付けたが、アヌルス鉱山では0だったからな。どんな初心者でもと言われている事から、浅い階層でもポンポンと宝箱が復活しているのだろう。
そんな人気のダンジョンならいつ制覇されてもおかしくないと思うのだが、このダンジョンの底はまだまだ知られていない。
今の最高記録が100階層らしいので、それよりももっと深い穴なんだそうだ。
因みに、その100階を踏破したのは、勇者オルダタのパーティーだ。おそらくだが100という切りのいい数字に満足して帰ったと言われている。
そして、パーティーでの探索推奨といわれるダンジョン探索にて、ソロで30階と60階のダミーダンジョンコアを取って来たのもオルダタだ。
厄介な奴だよ君は。そんな不思議のダンジョンクリアしましたみたいな訳分からん記録のせいでカティは苦しんでいるというに。
「で、どうするの?まさかこのままダンジョンに入るとか言わないわよね?」
「流石にそこまでバカじゃないですよルナ様。」
「ま、そうね。だったらそこら辺の者に勇者ちゃんの事、聞いてみたらどうですか?」
「教えてくれるんですかね?冒険者って口が堅いイメージですけど?」
「冒険者の口が堅い?そんな訳ありませんわ。ちょっと酒でも奢ってやったらベラベラ喋るわよ。」
・・・そんなもんなのか。
まぁ普通はそういうイメージだよな冒険者って。
やっぱり初めて冒険者ギルドに入った時のケモ耳受付嬢のせいなんだよな。あの人が真面目過ぎたんだよ。多分。
つーか、あの人はギルドの職員か。なら冒険者とはちょっと立場が違うな。
そういえば、九尾のおねいさんの事もあったな。
僕の事もベラベラ喋られたんだろうし、やっぱり冒険者一人一人はそうでもないんだろう。
モン娘達とルナ様をその場に待たせて、すぐ近くにあったテント屋根の中に入る。
ここは休憩所か?飲み物や軽食なんかも提供しているみたいなので、情報収集にはうってつけだな。
さて、どいつが口の軽そうな奴かなとキョロキョロしていると、偶然にも勇者と言っている声を拾った。
声のした方を見ると、2人組の男の子だった。年の頃は僕と同じ位の、ツンツン頭とメガネが特徴の2人だ。
「ちょっといいですか?聞きたい事があるんですが?」
2人は僕の顔を見て、怪訝な表情をする。
僕は間髪入れず金をテーブルに置いた。
「・・・いや、よくねーけど。どっか行けよ。」
あれ?ツンツン頭君、思いの外冷たい・・・。
同じ冒険家だろぉ?義理人情に溢れろよ!
だが、僕も引き下がる訳にはいかない。コイツらは今唯一の手掛かりだ。
更に金を置く。倍プッシュだ……!
「いや、金の問題じゃねーし。」
なんと!お金ではない!?
ではなにか?身体かね!?
なんという事だ。オシリの横穴というのはフラグだったというのかね!?
「まあまあ、いいではないですかアルミーン。これも勉強ではないですか?」
黙っていたメガネの方が、そう言って金を受け取った。
ほう、分かるメガネだな。やはりメガネは冷静で知的。
「は?何の勉強?」
「冒険者の勉強でここに居るんでしょう?では冒険者の方との交流も勉強でしょう。」
「だとしてもコイツはどうなの?明らかに変な奴だぞ?」
「服は魔導具かもしれません。」
「魔導具でもこんなピンクだったら俺は着ないね。裸のほうがマシだろ。」
・・・最近の若いもんは礼儀ってもんを知らないね。
目の前にその変人がいるってのに、失礼な事ばっかりいいやがって。
・・・ああ、そうだよ!この服は魔導具さ!
僕だって速攻で脱いださ!初日にな!
でも駄目だったんだよ!夜に白い服に着替えて!寝て起きたらピンクの服に変えられてるんだよ!
替えるじゃねぇんだよ!変えるだぞ!白い服がピンクの服に変えられてるんだ!
そこにピンクの服が2組あるんだぞ!次の日には3組になった!!
・・・もう全部ショッキングピンクなんだよ、僕の服は。まともな服はなくなっちまった・・・。
「な、なんだお前!?何で泣いてんだよ!? 分かったよ。話聞いてやるから泣くなよ!」
思わず涙が出ちゃった僕を見て憐れんだツンツン頭が金を受け取った。
良かった。僕の涙は無駄にならなかったよ。
「失礼。私達は学園生なもので、まだ冒険者ではありません。あまり良い情報は持っていないと思いますが、何が聞きたいのですか?」
あ、学園生なんだ。だから勉強とか言ってたのね。
そいつは上々。
「という事はマントパンツァー学園の?」
「他にないと思いますが?言っておきますが、パーティーを組むのは御免蒙ります。」
メガネがクイッとしながら偉そうにそんな事を言う。
何故僕が冒険者でもない学園生なんかと?
・・・そうか。学園生って事はエリートなんだよな。
コイツらはレアクラスか、上級国民の息子って事だ。前者ならまだしも、後者なら面倒なだけだ。
「僕が聞きたいのは勇者の事なんですけど。」
「勇者?エカテリーナ=トクレンコの事ですか?」
「カティナがどうかしたか?」
おいこらツンツン頭。何カティを呼び捨てにしてんだ?
一体どういうご関係ですか?お母さん許しませんよ。
「さっきお二人は勇者の事を話していませんでしたか?」
「してたけどよ。別に大した事じゃないぜ?」
「勇者の事はどこまで知っていますか?」
メガネが逆に質問をしてくる。
これはカティがダンジョンでやっている事でいいんだよな?
「勇者は1人でダンジョンコアを取りに行く事になったと聞いています。」
「では説明は要りませんね。私達が話していたのは、その勇者がダンジョン探索に苦戦しているという話です。」
メガネがそう答えると、今度はツンツン頭が半笑いで喋る。
「カティナは方向音痴で地図も見えないんだってよ。課題が与えられてから半年以上経つのに、まだ3階までしか行けてねぇって話。俺達でも最高7階は行ってるのによ。」
うわぁ・・・あったなぁそんな設定。
アイツまだ地図も見えないのか。このダンジョンって迷路のダンジョンらしいから相性激悪じゃん。
「トクレンコさんの実力ならもっと下に行けるでしょうけど、戦闘力だけではダンジョンはどうにもならないという事ですね。」
「もうカティナは課題無理だろ?ダンジョンコアって最低でも2〜30階くらいだろ?」
・・・ふ〜む。やっぱりカティは苦戦しているか。それも思った以上に。
まぁでも関係無いかな。合流したら最初から行くし。
それに、コイツらにはこんな事を聞きたいんじゃない。カティの居場所を教えてもらわなくては。
「お二人共、ありがとうございます。最後に、勇者には何処に行ったら会えますか?」
「ダンジョンの中か、学園寮だろ?」
「貴方は学園生ではないですよね?でしたら学園には入れませんよ?」
やっぱり学園には入れそうにないか。
くそっ!制服着た女子見たかった!!!制服着た女子メッチャ見たかったっっ!!!!!!
・・・まぁ仕方ない。ダンジョンの中を探すと入れ違いになるかもしれないし、入口で待つしかないか。
「・・・あぁ、そうだ。カティナって大聖堂でよく見るって聞いたことあるぜ。」
と思ったら有力な情報をツンツン頭が教えてくれた。
「大聖堂ですか?」
「そうそう。カティナって実家が神殿らしいから、それで行ってるんじゃねぇかな?」
そういう私も実家が神殿でしてね。
・・・そうか、大聖堂ね。ホームシックなんかね?
「・・・そろそろいいですか?私達もツレがやって来たようなので。」
メガネが外の方を見ながら言った。
どうやら仲間を待っていたみたいだ。
「ええ、お時間とらせて申し訳ない。」
これ以上、貴族の可能性のある奴と関係を持たん方がいい。
僕はさっさとその場を去った。
モン娘達の待っている場所に戻ると、ルナ様がダウンしていた。イムにおんぶされながら、ヨダレを垂らして寝ている。
どこに疲れる要素があっただろうか。菓子食ってただけじゃねぇか。姿だけじゃなく体力まで幼女なのだろうか?
「ご主人様、エカテリーナ様の所在は分かりましたか?」
・・・ルシルはカティのことは様付けなのか。
まぁどっちでもいいけど。
「ダンジョンを探索しているか、学園に居る事が多いらしい。だが、学園には学園の関係者しか入れないそうだ。」
「そうでございますか。ではダンジョンへ入られますか?」
「いや、カティは大聖堂でよく目撃されているらしい。先にそっちに行ってみよう。」
もう日が傾きかけている。今日は大聖堂に行って終わりだな。
「・・・大聖堂?」
と思っていたらルナ様が顔を上げた。狸寝入りだったらしい。
「カティは大聖堂によく顔を出しているらしいです、ルナ様。」
「そう・・・でも大聖堂には行きたくないわ。」
「は?」
「・・・大聖堂には行きたくないの。」
・・・なんだ?大聖堂って、女神の立場では行きづらい場所なのか?そんな事はないと思うが。
「そんな所より、リョウ。インチキ商会の本部に行きましょう。」
「そんな所・・・って、何でまたインチキ商会に?」
「具体的に言うと、インチキ商会本部の裏の通りにあるセジウィックさんのお店に。」
すっごい具体的に言ったなぁ。インチキ商会ですらないじゃん。
これはもうアレだ。ルナ様飽きたんだぞ。我慢出来ずに答え言っちゃってるでしょ?
確かに僕に任せてたらいつまで経ってもカティを見付けれないだろうけどさぁ・・・。
まぁ、いいや。取り敢えず言う通りに行ってみるか・・・。
また来た道を戻って行く。
オシリのよk・・・このダンジョンに来るのは明日以降だ。




