30話:ルナちゃん印の健全なお薬
銀色の狼の後を追って、森を歩く。
木々の隙間からは山が見える。やはり銀色の狼はオシリ山に向かっている。
銀色の狼の歩くペースは丁度いい。アイツならもっと速く移動できそうだが、全く負担に感じない。寧ろ、歩くペースを合わせられてる気さえする。
「なぁ?・・・やっぱ帰っていいか?」
パーラさん、突然ネガティブになる。
何かキャラ変わってないですか?そんなこと突然言い出す人じゃないでしょ?
「パーラさん、頑張ってください。それにオシリ山を案内してくれるって約束してくれたじゃないですか?」
「そうだったな・・・・・・いや、やっぱりおかしい。何故あの魔族は喋らない?魔族なら意志疎通できるはずだ。」
さりげなくオシリ山を案内する事になったのはつっこまないらしい。
「そうですね。僕も考えている事が何となく分かっているだけで、話し掛けられては無いですね。」
「そうだろう?それに、さっきから他の魔物が出てこないんだ。これだけ歩いたんだぞ?1匹くらい居てもいいだろう?でも気配すらしないぞ。」
確かに・・・。
僕は魔物の気配なんて分からないが、銀色の狼に先導してもらってからは1匹も会ってないな。
「あの魔族の仕業なのか?いったい何をしたらそんな事ができるんだ?何か特殊な魔法なのだろうか?・・・そもそも、何故あの魔族に付いて行く事にしたんだ?何かリョウには確信めいたものがあるのか?それもお前の特殊な魔物使いのせいなのか?いや、まずあの魔族は・・・」
「ちょ・・・パーラさん!?」
「何だ? ・・・・・・。 はぁ・・・いったい何をしているんだ私は。」
どうしよう。パーラさん、凄く面倒くさい人だ。
疲れてるのかな?無理に誘っちゃって悪い事したなぁ。
「パーラさん、すみません。疲れてるところを無理して付いて来てもらって。」
「いや、この程度で疲れなどしない。ただ何故かあの魔族が時々ブレて見える。」
それは疲れてるんですよパーラさん。参ったなぁ、一番しっかりしてもらわないといけない人なのに。
「それと、私はオシリ山の中まで案内するとは言ってない。 ・・・着いたぞ。オシリ山の登山口の1つだ・・・魔族は中に入るようだな。」
あ、やっぱり聞いてました?
やっと調子が戻ったパーラさんが、ここがオシリ山だと教えてくれる。
ここがオシリ山かぁ。
・・・なんて感激に浸ってる場合じゃないか。ここにエリオ達が居ればいいんだけど・・・。
銀色の狼は、入口で止まる僕達を置いてドンドン先に行ってしまう。
「ここからは森の魔物とは段違いの魔物が出る。気合を入れろ。」
なんだかんだ言いつつ結局付いて来てくれるみたいだ。
もうツッコミを入れるのも野暮だな。パーラさん、ありがとう。
「だが、本当に道中は魔物に会わなかったな。山に入っても、もしかしたら・・・。」
「リョウさん、その考えは危険ですよ。」
そんな事は分かってる。・・・ただ、何となく大丈夫じゃないかなって思うんだよね。
「分かってるよセリス。さぁ、銀色の狼が待ってる。みんな、行こう!」
僕達が付いて来ていないのを察して、ある程度進んだところで待っていた銀色の狼がまた歩みを進めた。僕達もそれに付いて行く。
遠くからみても高い山だと思っていたが、オシリ山はかなり標高で、険しい山のようだ。
登山用の装備なんて全くしてないが、大丈夫だろうか。
だが幸いにも、登山口の1つとパーラさんが言うだけあって、人が歩いたであろう道がしっかりできている。
岩肌をロッククライミングするような道じゃなくてよかったよ。そんな道だったら悪いけどリタイアしてたかも・・・。
案の定、魔物は出ない。やっぱり気配すらないと、パーラさんもセリスも言っている。
もしかしなくても銀色の狼が原因だろう。いったい何なんだろう?
まだ登山をし始めて間もないところで、銀色の狼が道を逸れた。
おいおい、そっちは道がないけど?人が通った跡がないもの。獣道じゃん。文字通り。
いよいよロッククライミングですか?マジか・・・エリオ、今までありがとう!君の寝床に隠されているもっこり本は僕がありがたく使わせてもらうよ!!
・・・まぁそれは冗談としてだ。ここまできたら、あの銀色の狼を信じるしかない。
ブツブツ文句を言うパーラさんを説得して、道なき道を行った。
しばらく歩き難い道を進む。
前を行く銀色の狼は軽やかに跳躍して進んでいるが、人間の僕達はそうはいかない。
・・・いや、僕達じゃないですね。僕ですね。悪かったな!どんくさくて!
いや!僕は悪くねぇよ!おかしいんだよ、この世界の人間が!!何でこんな足場の悪いところをスススーっと行けるんだよ!
これでまだ魔物に遭遇したら、戦おうってんだぜ?この酷い足場でだ。
・・・いや、これから冒険者になろうってのにこれはまずいな。
何か対策を考えないと。
・・・イムに大きくなってもらって、背負ってもらうか。
悪戦苦闘しながらも進んだ先には・・・洞窟があった。
銀色の狼はそのまま洞窟に入って行く。
「!? ・・・こんなところに洞窟・・・それにもしや?」
「はい。魔力の密度が濃いです。魔力溜まりの土地みたいですね。」
パーラさんの問いにセリスが答える。
どうやらこの洞窟は、魔力スポットらしい。
盗賊の人でもある程度分かる・・・のかな?セリスのように魔法に長けた者の方が魔力スポットが分かるそうなので、セリスに聞いたんだろう。
僕?僕は分からんよ。言うまでもないですか?
「精霊も沢山居ますね。間違いないでしょう。」
「何?・・・セリス、貴方は“精霊使い”か?」
「え?・・・あっ!?い、いえ私は魔法使い・・・ですよ。す、少し特殊でして・・・。」
セリスが何かやらかしたらしい。パーラさんに凄い見られている。
話から察するに、精霊はクラス“精霊使い”にしか見えないのだろう。天使であるセリスにはこっちの常識は通じないのだよパーラさん。色々と。
因みにルナホのつよさでのセリスのクラスは空白だ。
イムも空白になっているので、セリスとイムにはクラスって概念が無いのだろう。
まぁ今まで地味に決まってなかった、セリスの表向きのクラスだが、ここで魔法使いに決まったようだ。
「・・・・・・。はぁ・・・、特殊な魔物使いに、特殊な魔法使い。それと特殊なスライムの従魔か?全く・・・はぁ・・・。」
今日何度目になるか分からんため息を吐き、またブツブツと言いながら、パーラさんは先に洞窟に入って行ってしまう。
罪悪感に苛まれながらも、僕達も急いで洞窟に入った。
洞窟の中は、鍾乳洞だった。
溶けた石灰岩の壁や柱がいくつもあり、大自然の不思議の神秘が・・・と言いたいとこだが、薄暗くてよく見えない。
あっちの世界の鍾乳洞ではライトアップをしたりしているが、かなり大事な事なんだな。
これでは肌寒くて気味悪い洞窟である。
「リョウさん、私が魔法で明るくしましょうか?」
「セリス、私が魔導具を使う。それよりもだ・・・。」
魔法で明るくできるみたいだが、パーラさんが魔導具を使ってくれるそうだ。
パーラさんが自分の荷物から野球ボールくらいの球を取り出し、それを両手で捻る。
カチッという音が鳴ると、球が宙に浮き、光を放った。
そのまま球は頭上で浮遊する。まるで家の電気のようだ。
「おおっ!!すげぇ・・・。」
「感動している場合ではない。リョウ、あの魔族が居ない。」
「えッッ!!?」
光を放つ魔導具のおかげで、鍾乳洞が明るく照らされた。
実に神秘的な光景である。・・・が、それどころではない。
この鍾乳洞はそんなに広くない。それこそ僕達が立っている場所で内部のほぼ全体が見渡せる。
パーラさんの言う通り、先に入って行ったはずの銀色の狼は何処にも居なかった。
いったいどうやって消えた?
入口は1つしか無かったはず・・・あっ!?
あそこにまだ道があるじゃないか!?この鍾乳洞、もっと奥がある!
「おいっ!あっちだ!!まだ道がある!」
「いや、奥に居るのは・・・先客だ。」
先客?
パーラさんが言うのとほぼ同時で、先に鍾乳洞に居た者から声が上がった。
「だ、誰ッッ!!?」
魔導具の光が何者かを照らす。
そいつは・・・、
「エリオッ!!」
「え?・・・リョウ・・・セリスさん・・・。」
探していた人だった。
やった・・・見付けたぜ!
やっぱり生きてたじゃねぇか!?くそっ!心配掛けさせやがって。
僕は急いでエリオに駆け寄った。
「エリオッ!お前・・・心配掛けさせやがってよぉ・・・。」
「リョウ・・・探しに来てくれたの?こんな所まで・・・。」
「当たり前だろ!!お前達だって、クラスを捨ててまで僕を探してくれただろ。」
「あ・・・うん。そうだったね・・・。ありがとう。」
何か遭難してた割にはエリオは元気だな。
そうなんですか?
詳しく事情を聞かないと分からんな。
「随分元気そうだな?リタとマルタは?」
「うん、一緒だよ。・・・えっと、アンドニさん達は・・・。」
「あ、そっちはどうでもいい。」
「ええっ!!?よくないよ!大変なんだよ!アンドニさんが・・・。」
「そうか。惜しい人を亡くしたな。」
「し、死んでないよ・・・多分、きっと・・・アンドニさんなら・・・。」
あら?冗談じゃ済まない感じだったか?
だいたい何で一緒じゃないんだろう?
「エリオットさん、ご無事でなによりです。」
「セリスさんも・・・ありがとうございます。・・・えっと。この人は?」
セリスにもお礼を言ったエリオが、パーラさんを見て警戒する。
「パーラだ。」
「あぁ、エリオ。パーラさんは僕の知り合いでな、今回特別にここまで道案内してもらったんだ。」
「道案内?・・・まぁいい。エリオとやら、他の者は無事か?」
本当は銀色の狼が案内してくれたんだけどな。
パーラさんもそこに引っ掛かったんだろうが、面倒になったようだ。
あぁ、パーラさんがドンドンやさぐれていく。
「あっ!そうだ!セリスさん、助けてください!リタが大変なんです!!」
「えっ!?私ですか?」
エリオの口から聞き捨てならない言葉が出てくる。
リタが大変だと?
「おい、エリオ!リタに何があった?」
「と、取り敢えずリタのところへ。マルタもいるから。」
エリオに案内されて鍾乳洞の奥に向かった。
「あ、イムも来てくれたんだね。ありがとう。」
「・・・・・・お前、だれ?」
「ええっ!!?まだ覚えてくれてないの!?エリオットだよ!」
イムに弄られるエリオ。
何か知らないうちにイムはみんなと仲良くなっているらしい。
鍾乳洞の奥には体育座りしたマルタと、横になっているリタが居た。
リタはスースーと寝息を立てているみたいだが、何が大変なんだ?
「り、リョウ君!!!?・・・う、うぅ・・・。」
此方に気付いたマルタが、顔を歪ませポロポロと涙を流す。
「あーもう泣くなよ。僕が来たからもう安心だぞ。」
「は、はいぃ~。うぅ・・・もう駄目だと・・・。」
別に僕が来たから何だ?って話ではある。
まぁ、雰囲気に流されて言っちゃったんだぜ。
「リタは・・・どうしたんだ?寝ているみたいだが?」
「はい・・・。実は・・・。」
マルタとエリオから、ここまでの経緯を聞いた。
4日前だ。
アンドニと小判鮫先輩、モルガンさん、それとエリオとリタとマルタ。最近いつも組んで冒険に出ている6人組は、いつものように冒険に出た。
今回の目的地はここオシリ山。
何と、最初からここが目的地だったらしい。
パイマーンから行ける狩場どころか、王国領内の中でも屈指の狩場であるここをだ。
何故そんな無謀な事をしたのだろう。
それはパーティーのリーダー、アンドニにしか分からん。
おそらく、悪霊の迷宮で魔剣を手に入れ、気を大きくしたのだろうな。
悪霊の迷宮でも問題無く戦える。はぐれ魔物ではあったが、オシリ山に生息する魔物を倒す事もできた。
その辺の事で自信がついたのだろう。それで自分が何処まで行けるか確かめたかったのか。
まぁ僕の妄想である。真実はアンドニしか知らん。
オシリ山に冒険に行く事は事前に言っていたようだ。
当たり前だよ。パーティーメンバーの了解も無しに行ってたら、たまったもんじゃない。
だから、生息する魔物はしっかり対策していたようだ。
それでも無謀だと思うがね。
んで、パーラさん達紫煙の風も滅多に寄り付かない、危険な場所での冒険の結果であるが・・・成功だったらしい。
流石のアンドニさんも無理はしなかった。
運も良かったんだろう。山の魔物をそこそこ狩る事ができ、素材も魔石もそこそこ採れた。
いい稼ぎになるだろう。パーティーみんな笑顔で帰るところだった。・・・だが、ここからだった。
覚えていらっしゃるでしょうか?
紫煙の風リーダーのラークが言った忠告だ。
ビンビンに立ったフラグがここで発動した。
オシリ山からの帰り道。魔物ではなく、人間に襲われたのだ。
相手の目的は勿論、アンドニが冒険者ギルドでこれ見よがしに自慢していた魔剣。そしてみんなで一生懸命採った素材と魔石。
相手はアンドニ達パーティーが狩りをし、疲弊するところを待っていたのだ。
更に魔剣と一緒に貴重な魔物の素材もまとめてゲットと。良い作戦ですなぁ。今度使わせてもらいましょ。
・・・いやいや、使わんけど。
相手は4人。人相の悪い女のリーダーと、子分のような男が3人。
数ではこちらが勝っていた。だが、冒険者としての年季が違う。
いくら自称天才のアンドニでも苦戦した・・・が、やはり最近のアンドニは一味違う。
彼は運が良かった。憎たらしいほどに。
苦戦し、防戦一方のアンドニ達。このまま続けていても負けるだけ。そんなアンドニ達に転機が訪れたのだ。
突然、相手の後衛をしていた子分が頭から真っ二つになる。
突如飛び散るケチャップと肉団子に慌てる両パーティー。
その子分を料理した者の正体は・・・巨斧を持ったミノタウロスであった。
ミノタウロスはこのオシリ山に生息している魔物で、人間の体に牛の頭を持つお馴染みの魔物だ。
筋骨隆々の怪力で、巨斧を振り回して攻撃する。純粋なパワータイプの魔物で、シンプル故に厄介な魔物である。
しかしこのミノタウロス・・・何やらおかしいかった。
ミノタウロスの体は緑色をしている。だがこのミノタウロスは人間と同じ肌色で、タトゥーのような青い線の模様が体中にあったらしい。
それだけではない。何とミノタウロスの背中から2本の腕が生えていたのだ。
更に、ミノタウロスの武器である巨斧。それを何と4挺もそれぞれの腕に持っていたと言うのだ。
1つ1つのサイズは小さくなってはいるが、人間から見たらまだまだ重そうな鉄の塊を、軽々と扱っていたそうだ。
「・・・それは間違いなくレア種だな。」
パーラさんが苦々しい顔で言った。
「え?パーラさん、レア種に遭遇したら普通喜ぶものでは?」
「・・・ラークが居てもそう言うだろうな。だが私やメントが殴ってでも止める。絶対危険だ。」
・・・でしょうね。
ちょっと分かってて聞いちゃった。ごめんよパーラさん。
「・・・で?結局何でこいつは寝てるんだ?」
僕はそう言いつつ、起こすつもりでリタの尻を叩いた。
「あんっ♡・・・う~ん♡」
「リョウ君止めてください!リタちゃんホントに辛いんですよ!!」
・・・はたしてそうでしょうか?
そういう事にしておこう。大人しくマルタから続きを聞くとする。
レア種のミノタウロスの登場で戦場に転機が訪れる。
混乱する相手パーティーの隙を突いて、モルガンさんが前衛の子分を切り伏せ、もう1人の子分もアンドニが重傷を負わせる事に成功した。
この出来事で此方がかなり優勢になったが、相手は人間だけではなく、魔物も居る。此方にも凶刃が向けられる事になった。
レア種のミノタウロスが次に狙ったのはエリオ。
ミノタウロスがエリオ目掛け突進していったところで、アンドニから指示が飛んできた。
それは相手パーティーとミノタウロスの分断。
もう相手パーティーには勝てると判断したアンドニが、レア種のミノタウロスをエリオ達に引きつけさせ、相手パーティーに確実にトドメを刺そうって作戦だ。
作戦自体はいい。不確定要素であるレア種のミノタウロスをこのまま無差別に暴れさせても勝てるものも勝てない。
たが、エリオ達は明らかにキツい方を押し付けられた感じになった。
ミノタウロスにチマチマ攻撃し、注意を引きつけ、アンドニ達から離れるエリオ達とミノタウロス。
初めてやった戦い方だった。ヒヤヒヤした部分もあったが、思いの外上手くいったそうだ。
十分に距離を取った後は、ミノタウロスから逃げなければいけない。
当然ながらエリオ達に勝てる相手ではない。
だが偶然にもマルタが魔力スポットを見付けた。それがこの鍾乳洞の魔力スポットだった。
急いで鍾乳洞に逃げ込むが、相手はレア種だ。ミノタウロスも中に入って来てしまった。
しかしそこは魔力スポットである。レア種の魔物は魔力スポットに入れはするが、何故か戦意を削がれ、戦う事はない。
ミノタウロスはエリオ達の居る側で、ドカッと胡座をかいて休憩しだしたのだ。
流石に先程殺そうと追ってきた魔物と一緒に居る訳にはいかないので、今居る鍾乳洞の奥で隠れていたのだとか。
一向にリタの話題が出ないのですが・・・。
と催促しようとしたら出てきた、リタは鍾乳洞に入ってすぐ倒れたらしい。
外傷を調べると横腹から血が流れていたそうだ。
傷自体はたいした事がなかったのでマルタの回復魔法で治ったが、苦しそうにしているのは治らなかった。
もしやと思ってマルタが使ったのは毒を治療する魔法だ。
予想は当たったようで、リタは回復したが、暫くするとまた苦しそうにするらしい。
どうやら完全には治ってない様子だ。
マルタの回復魔法が未熟なのか、毒が特殊なのか分からず、ミノタウロスも動く気配がないのでここから動けず・・・と。
リタが苦しそうにする度に回復魔法を掛け続け、ここで救助を待っていたんだとか。
食糧などは大半はエリオ達が持っていたし、この鍾乳洞には小さい湖があって、そこには魚が泳いでいた。
食糧、水に困ることはなかったらしい。
むしろアンドニ達が心配だとか言っていたがスルーしてやった。
「・・・成る程ね。セリスならリタの毒を治せるかもしれないと?・・・で、どうなんだセリス?」
「そうですね・・・。症状が一時でも収まっているなら、毒を治療する魔法は成功しています。これは毒の方が特殊みたいですね。」
どうやら特殊な毒を受けているらしい。
困ったな。セリスでも治せないのか?
「だいたい何処でそんな毒を受けた?レア種のミノタウロスか?」
「レア種ならそうかもしれません。いろんな特性を持って生まれますからね。」
と、リタに何やら魔法を掛けながらセリスが答えた。
色違い、腕4本、斧4挺の他にまだ毒属性があるかもしれんらしい。
いったいそのミノタウロスは何個属性があるのだろう?
萌キャラなら属性過多で逆に萌えない。・・・いや、嘘。萌える。
因みに、レア種に同じものは存在しない。
セリスが言ったが、レア種は生まれる度にいろんな特性を持って生まれる。
こんな話を聞くだけで恐ろしい萌えミノタウロスは他には居ないし、イムだって唯一無二の存在だ。
もし、またスライムのレア種に会う事があっても、クラゲのような回復魔法ばっかりするスライムかもしれないし、出会っただけですぐ逃げる硬いメタリックなスライムかもしれない。
「あの・・・リタちゃんが意識が戻った時に言っていたんですが、どうやら毒は襲ってきた冒険者の女性から受けたそうです。」
どうやらちょっとは起きたらしいリタが、マルタに犯人を教えていたようだ。
じゃあ萌えミノタウロスの属性じゃないのか。な~んだ、普通のミノタウロスじゃん。
その賊のリーダーである女が、武器に毒を塗っていたのだろう。
運悪く、その攻撃を腹に受けてしまった訳だ。くそっ、小判鮫先輩に当たれば良かったのに。
「・・・なら、その冒険者の女が解毒剤も持っている筈だ。」
パーラさんが実に冒険者の先輩らしいアドバイスをくれる。
成る程ね。毒を扱うなら、当然その毒の解毒剤も持っている訳か。
もし自分が受ける事になったらどうしようもないもんな。
「じゃあやっぱりアンドニさん達を探さないと・・・でも外にはミノタウロスが・・・。」
いや、アンドニはどうでもいいが。
「何言ってるんだエリオ?ミノタウロスなんて居なかったろ?」
「え?・・・そういえばさっき居なかった・・・。も、もしかしてリョウ達が倒したの!?」
「お・・・おう。あ、あたぼうよべらんめえ!」
「リョウ、分かりきった嘘をつくな。」
もうっ!パーラさんはお堅いね!居なかったんだから倒した事にすればいいじゃん。その方がカッコいいでしょ!
・・・銀色の狼もミノタウロスも消えてしまったのか。
ミノタウロスはまぁ、エリオ達が気付かないうちに鍾乳洞から出ていった可能性があるが。
銀色の狼はマジで分からん。どうやって消えた?
「いえ、それよりもっといい方法があります。リョウさん、ル・・・あの御方からいただいた薬を使いましょう。」
セリスは魔法を掛けるのを止めて言った。
どうやらあまり効果は無かったようだ。そして薬をご所望の様子。
で?薬って?
あの御方ってルナ様でしょ?何か貰いましたか?
僕からあげたお金は沢山ありますけど、何か貰うような事がありましたかね?
・・・ああ。ルナちゃんガチャのハズレで貰った回復薬か?
上級回復薬でしたっけ?銀貨数枚で買えるってカティも言ってたじゃないか。
ハズレだよあんなもんは。いや、詐欺だよ。プレミヤガチャでノーマルが出たようなもんだよ。
まぁリタの助けになるのならジャンジャン使ってくださいよ。いちおう肌見離さず持ってるんですよ。回復薬ですからね。
・・・あれ?この回復薬、シールなんて貼ってたっけ?
またデフォルメされた可愛らしいルナ様が書いてある。
・・・ルナちゃん印の上級回復薬だって?
なんか微炭酸だとか、プリン体ゼロだとか、ハリウッドセレブもご愛用だとか色々書いてあるんだけど。
売上ナンバー1とか何処での売上だよ。
終いには特定保健用食品のマークまでありますけど・・・いいんですか?
「・・・リョウさん。あの御方もリョウさんの身を案じておられるのですよ。そんな金貨1枚と銀貨数枚の物を交換するなど・・・・・・そ、そんな酷い事をするわけ・・・・・・リョウさん、その薬でリタさんは完全に治りますよ。」
どういうことなの・・・。
セリスはルナ様をフォローしようとしたんだよね?
なんで途中で諦めるのよ・・・。
ほらっ、他のみんなも微妙な顔をしているだろうよ。
「え、えーっと。リョウ君、そんな凄い薬を持っているんですか?」
「リョウ!早くリタを助けてやってよ!」
「馬鹿な。そんな薬、聞いた事も無い。」
マルタとエリオは何の疑いも無いみたいだが、パーラさんは全く信じて無い様子。
この辺がアレだよね。長年の、信頼・・・的な?
決してアイツ常識ねぇからなぁとかそんなのではないはずた。
「でも、リタちゃん衰弱していますし・・・薬なんて・・・。」
マルタの発言に、その衰弱して寝ているはずのリタが僅かに反応した。
そしてひょっとこの面のように口をすぼめた。
は?何こいつ?
・・・どうやらこの病人は口移しをご所望の様子だ。
「・・・じゃあマルタが口移しでしてやれよ。」
「えぇっ!?私ですか!?・・・その、私、口移しなんてした事・・・そ、それにリタちゃんはいちおう男の子・・・。」
「・・・・・・むにゃむにゃ~・・・リョウかエリオ~・・・・・・。」
・・・コイツうるせえな。寝言のつもりか?
お前ホントに病人なんだろうな?
「分かった分かった。僕がすればいいんだろ?ほらっ、選べよリタ。ケツの穴か?それとも鼻の穴か?」
「・・・・・・んも~!何で口でしてくれないの~!」
我慢できなくなったリタがガバッと起きて、文句を垂れた。
「り、リタちゃん!!起きてたんですか!!」
「起きてるよ~!!何で気が付かないかな~。」
リタの元気そうな姿に、マルタが涙を浮かべてリタに抱きつく。
エリオとセリスはそれを微笑ましく見ている。
「随分、元気そうだなリタ。」
「セリスさんのお陰かな~。でもホントにボク危なかったんだからね~。リョウなんて夢に出てくるしさ~。川の向こうの綺麗なお花畑で手招きしてたよ~。」
勝手に殺してんじゃねーよ!誰だよそれ!?
・・・まぁ今こんなに元気なのはセリスの魔法のお陰なんだろう。
ルナちゃん印の回復薬・・・。はっきり言って胡散臭いが、セリスが言うんだし、効果は間違いないんだろう。
「ほらっ、これを飲めリタ。」
「うん~、これで治るんだよねぇ~・・・。」
リタが僕から回復薬を受け取り、ゴクゴクとそれを飲んだ。
パーラさんが険しい顔でこちらを見ているがスルーしておこう。
「・・・・・・。なあにこれ~?すっっっごくおいしいね~。」
どうやら美味なのは美味らしい。
良薬口に苦しと言いますが、旨いっていうのははたして大丈夫なのでしょうか。
飲ませといてなんですが、僕も不安です。
「どうだリタ?毒は治ったか?」
「え~?・・・分かんないよ~。今はセリスさんの魔法のお陰で苦しくないも~ん。ねぇねぇそれよりリョウ~、さっきの薬もっと無いの~?」
「は?いや、もう1本あるが・・・。」
「ちょっ!ちょ~だい!!!ねぇ!!お願い~!!!」
な、何だこの食い付きは?
そんなに美味しかったのだろうか?
いちおう薬ですからね。1本飲めば十分だろ。
それとも依存性の禁断症状か何かだろうか?おいおい、やべーやつじゃん。
「おいリョウ、それは本当に薬なんだろうな?」
「え!?・・・や、やだなぁパーラさん。薬にきまってるじゃないですか。」
何で僕が言い訳をしなければならないのか。
悪いのはルナ様なんや。僕は悪くねぇ。
「大丈夫だよ~パーラ姐~♡ボク今すっごく身体が軽いんだよ~♪な~んか強くなった気分~☆今ならドラゴンだって倒せそ~!」
リタが飛び跳ね、元気さをアピールしている。
それを見てパーラさんも僕を怖い顔で見るのを止めた。
どうやら上手くいったのだろう。まぁセリスが言ったんだし間違いないだろうけど。
しかし、良い薬を貰ったみたいだな。
まぁ金貨1枚も出したのだ。チートの方がいいけど、これくらいは貰わないと。
「・・・リョウさん・・・あの・・・言いにくいのですが・・・、もう1つの回復薬は普通の回復薬です・・・。」
んがああああああ!!やっぱくそ女神じゃねぇかああああああああ!!!!




