28話:ごめんなさい
2日後。一大事である。
アンドニ達のパーティーが帰ってきません。
アンドニ達が街を出発したのが、ゲバルド氏が帰って来た前の日の朝。
今日の朝で72時間が経過してしまった。
門番には何も言っていなかったらしい。
つまりは、72時間以内に帰って来る予定だった。それが帰ってきていない。
帰ってきていないのは、アンドニ、モルガンさん、小判鮫先輩、エリオ、リタ、マルタ。
僕達がクラスを授かってから、よく組んでいたアンドニのパーティーだ。
今日の朝の孤児院は大騒ぎだ。
ゲバルド氏は朝早くに冒険者ギルドに行き、アンドニ達の捜索クエストを依頼し、知り合いの冒険者と捜索に向かって行った。
コニーさんのパーティー、百舌鳥の羽ばたきのおねいさん達も捜索に協力してくれる事になった。
僕はですね・・・孤児院に待機です。
歯痒い。僕だって心配なんですよ!?
でも銀色の狼のせいで、街の外に出れないんですよ。
まぁね、正確に言えば僕だけなら外に出れますよ。
でもそんなん無理じゃん。セリスとイム無しで何処まで行けるよ?
森にすら入れんぞ。
でもね、僕だってただ待機しているだけじゃありませんよ?
重要な仕事があるのです。
悲しみに暮れるヨハンナさんを慰める仕事である。
我が子同然のように育ててきた子供達6人が、一気に行方不明になってしまったのだ。
72時間過ぎても帰ってこない新人は、まぁ生き残ってる奴もいるが、だいたいは死体で発見されるか、見付からないかのどっちかだ。
その可能性を捨てきれず、ヨハンナさんは僕の胸の中ですんすんと鼻を鳴らして泣いている。
いやぁ。これ役得じゃね?
いいの?僕がこんな役やって?
・・・いかんいかん。エリオ達が死んでるかも知れないってのに。
つーか、僕を慰めてくれよ。何で子供の僕が慰める側なんだよ!
僕だって辛いんだっつーの!
くそっ・・・アンドニめ・・・エリオ達が死んでたら絶対許さねぇ。
僕がお前を殺してやるからな。
◆◆◆
翌日。
エリオ達はまだ見付からないらしい。
ヨハンナさんはもう流石に泣いていないが、上の空で窓から外を見ている。
食事も全然手を付けないし、見てられない。
エリオ達・・・早く見付かればいいんだけどな。
多分、魔物が原因なんだろうな。上手く逃げ延びているだろうか?
食糧はあるのだろうか?・・・まぁ魔物を狩ればいいのか。その元気があればだが。
もしかして道に迷った?・・・いや、でもリタが居るし・・・。
誰か怪我をしているとかじゃないよな?もし小判鮫先輩が怪我してるんだったら囮にしてくればいいのに。
・・・何で帰ってこれないんだろう。
上手く逃げ切れたなら帰ってくる筈なのに。
・・・・・・・・・。
「・・・リョウさん。」
「・・・・・・リョウ。」
いつの間にか隣にセリスとイムが居た。
セリスは最近よく見るシスター服姿ではなく、いつもの胸当てを付け、フードがついている外套を着ている。
イムもブーメランを持っていて、いつものやる気のない顔で此方を見ている。
二人共、冒険に行く格好だ。
セリスが僕の外套を差し出してくる。
これはこの前買った物だ。紫煙の風と会った時、メンバー全員が着ていたので、冒険者ならやっぱこういう外套着てるよね!って事で、セリスに借金してまで買った古着の外套だ。
僕とセリスとイムので3着買ったが、銀色の狼のせいで未だに活躍していない。
「・・・セリス・・・イム。どうしたんだよ?そんな格好・・・。」
「・・・リョウさん。探しに行きましょう。皆さん必ず生きてますよ。」
「でもよ。セリス達は外に出れないだろ?」
「大丈夫ですよリョウさん。私達は何とかします。・・・案外、あの魔族も空気を読んでくれて、居ないかもしれませんよ。」
・・・ふっ。セリスめ、似合わない冗談を言うじゃないか。
「リョウ、探しに、いこう。・・・・・・リタと・・・・・・マルタ・・・・・・。」
・・・・・・出ないっ!エリオの名前!!
イムちゃん!アンドニ達はいいけど、エリオット君は覚えてあげて!!
「・・・分かった。ありがとう二人共。・・・あいつら僕達に心配かけさせたんだ。連れて帰って何か奢らせようぜ!」
「ふふっ。そうですね。私もまだこの街の屋台を制覇してません。」
「・・・・・・串焼き、パン、おまんじゅう。」
・・・すまんな。エリオ、リタ、マルタ。こいつらめっちゃ食うぞ。
セリスから外套を受けとり、僕達は街の門に向かった。
◆◆◆
街の門まで来ると、見知った連中を見付けた。
今まさに冒険から帰って来たであろう、紫煙の風とトントロさんのパーティーだ。
「おっ?ボウズ、どっかで見た顔だなー?」
「ラーク、“悪霊の屋敷”の場所を教えてもらっただろう。」
「おおっ!そうだ!あの時の魔物使い様かぁー。」
ラークってリーダーは相変わらずのようだ。
パーラさんも呆れている。
「これから外に出るのか?気を付けて・・・あれっ?もう1人居なかったか?」
「えぇ、ラークさん。実は・・・。」
丁度いい。多分、捜索クエストの事も知らないだろうし、話をしてみよう。
もしかしたら協力してくれるかも。
僕は今回の事についてラーク達に話した。
リタ達がアンドニ達と冒険に出て帰ってきていない事、行方不明になって96時間が経過した事、探索クエストがギルドで出ている事。
一応、ラーク達は真剣に聞いてはくれた。
「・・・あー。ボウズ、多分そりゃあもう・・・。」
「ラーク、確かめもせず言うな。」
ネガティブな事を言おうとするラークをパーラさんが止めた。
不謹慎だぞコイツ。やっぱ協力してもらおうなんて間違ってたかな?
「アンドニというのはあの戦士かのぅ、メントよ?」
「・・・あぁ、悪霊の屋敷で魔剣を手に入れたと自慢してた奴か?」
後ろに居たケントとメントがアンドニの事を知っていたようだ。
ていうか、この人達喋るんだ・・・。
「あぁー!あの図体だけは立派なガキか?アイツちょっと運がいいからって調子に乗りやがってよー。俺のワカバちゃんにもちょっかい出してんだぜ。」
「ラーク、ギルドの受付嬢はお前のものではない。」
いや誰だよワカバって。
随分、日本っぽい名前の人だな。
「いやいや、パーラ!俺とワカバちゃんはなぁ・・・おお!?思い出したぞ!そういやあのガキのパーティーにその盗賊の子が居たな!悪霊の屋敷で何度か見たぞ。」
ラークもアンドニの事を思い出したようだ。
さっきから“悪霊の屋敷”と言っているが、会話から察するに、この前リタと向かおうとしていた新しいダンジョンの事なんだろう。
しかも有用な情報を得た。アンドニ達は悪霊の屋敷に居るかも知れない。
「ラークさん達は今まで何処に居たんですか?」
「ん?そりゃ悪霊の屋敷に居たよ。まぁあんまり収穫は無かったんだけどなぁ。やっぱ小規模ダンジョンは運がいるなー。・・・あーっと、期待させといて悪いが、今回はあのガキのパーティーは見てないぞ。なぁパーラ?」
「あぁ、見ていない。悪霊の屋敷は小規模だ。そいつらが居たとして、私達が出会ってないという事はまず無い。」
ま、マジかよ・・・。
悪霊の屋敷が唯一の手掛かりだったのに・・・。
どうする?あてもなく探すのか?
あの森の中をか?めちゃくちゃ広いぞ・・・。
「・・・まだそのパーティーが悪霊の屋敷に行っていないと決まった訳じゃない。」
「おいおいパーラ、お前がさっき言ったんだろ?俺達は3日もあの辛気臭いダンジョンに居たんだぜ?あのガキのパーティーが居たんなら、会わない訳ねーだろ?」
「ラーク、私はまず無いと言った。可能性はある。」
パーラさんの言っている事も分かる。
小規模ダンジョンってのがどのくらい小規模なのかは知らんが、紫煙の風とアンドニ達が鉢合わせてない可能性もあるか。
行き先なんて聞いてなかったし・・・手掛かりが無い以上、やっぱり悪霊の屋敷に行く必要があるな。
「紫煙の風の皆さん、ありがとうございます。僕達は悪霊の屋敷に行ってみる事にします。」
「魔物使いの・・・リョウと言ったな?悪霊の屋敷の場所は分かるのか?」
「え?・・・あっ!そうだった・・・。」
リタが居ないじゃん。
場所が分からねぇ・・・。くそっ!パーラさんに言われるまで分からんとは。
やっぱ当てもなく探すしかないか・・・。
もしかして、僕達が行方不明になったりしないよな?
全然笑えねぇぞ・・・。
「・・・良ければ私が案内しよう。報酬はもらうがな。」
なっ!?何だって!!?
パーラさんが僕のハーレムにッッ!!!
「おいおいパーラ、俺達は今帰ってきたばっかじゃねーか。」
「私1人で行く。ラーク達は休んでればいい。」
「いや、パーラ・・・マジで行くのか?そんな奴等生きてる方が珍し・・・。」
「ラーク、レアクラス様にコネを作っていた方がいいのだろう?」
「・・・あー・・・分かったよ。まぁ世話になったのも事実だし、乗りかかった船ってやつだな。・・・俺達は冒険者ギルドと街で情報集めてみるわ。」
「分かった。メント、ラークを頼む。」
おいおい、ラークってパーラさんに完全に尻に敷かれてんな。
パーラさんはメントから自分の荷物を受け取り、此方に来た。
「リョウ、ラークが快く協力してくれるそうだ。」
「・・・はい。紫煙の風の皆さん、ありがとうございます。」
僕は全力で頭を下げておいた。
「あー・・・いいよ別に、これも冒険者の仕事だ。」
最初は気恥ずかしそうに頭を掻いて答えいたラークだが、急に難しい顔になる。
「・・・ボウズ達よぉ、気を付けて行けよ。相手は魔物とは限らんからな。」
・・・ん?魔物じゃない?
他に何かあるのか?
「ラークさん、どういう事ですか?」
「あのガキ・・・アンドニの事だがな。アイツは悪霊の屋敷で運よく魔剣を見付けた。子供を4人も連れてよぉ、まだペーペーの冒険者がダンジョンの浅いところでよく見付けたと思うぜ?まぁそれはいい、運も実力のうちだからな。だがその後な、その魔剣を冒険者ギルドの酒場でこれ見よがしに自慢してたんだよ。大勢の冒険者が居る前でな。」
「えぇ。孤児院でも自慢は凄かっですよ。」
「まぁあのガキの性格ならそーだろうなぁ。んでよ、普通の冒険者・・・特に駆け出しはそんな事するもんじゃねぇ。何故だか分かるよな?」
「そりゃあ・・・自分の手の内を晒してるようなもんだからですか?」
「それだと半分正解だな。」
ん?他にデメリットがあるのか。
・・・これ見よがしに・・・大勢の冒険者の前で・・・。
「・・・まさか、他の冒険者に狙われる?」
「ハハハ!正解だ!なんだよボウズ、お前あのガキより全然冒険者に向いてるぞ。」
ハハハじゃねーよ!大事じゃねーか!
何でそんな冒険者が居るんだよ!
「ラーク、また余計な事を・・・。」
「そうかぁ?俺はガキどものパーティーが生きてる事より可能性があると思うがね。残念ながらそんな冒険者が居るのも事実だろ?悪いが俺達はその線の方で情報を集めるぞ。もし賞金首だったら儲かるしな。」
パーラさんが注意するが、ラークは全く気にした様子がない。
・・・まぁ確かにあり得る話だ。
この世界で冒険者が行方不明になっても、最初のラークみたいにどっかで死んでるって思うのが普通なんだろう。
僕の両親なんていい方だ。魔物に襲われ殺されたところを、偶然死体を見付けられて、墓まで作ってもらったんだからな。
死体でも見付からないと、死因も分からん訳だ。
防壁の向こうは広大な世界。冒険者の誰かがオイタしたって、簡単に死体を始末できるだろう。
それをやった犯人が魔物なのか同じ人間なのか・・・そんなの分からん事の方が多いだろうな。
孤児院の子供達も、両親を魔物に殺されたって言ってる奴が多いが、本当のところはどうなのか分かったもんじゃないな。
冒険者の中にも紫煙の風や百舌鳥の羽ばたきみたいな真面目な良い人達も居れば、裏で何やってるか分からん底意地の悪い人間達も居るだろう。
そんな色んな人が集まって居るところでアンドニは挑発した訳だ。
本人は挑発したつもりは無いのかもしれない。
そもそも、大勢の前で自慢したいなんて概念が僕には無いから、アンドニの気持ちは全く分からん。
名声が欲しいのか、優越感が欲しいのか。小判鮫先輩のような尊敬してくれる子分でも欲しいのか。まぁ分からんよ。
だが自慢を聞いていた側はどうだろうね。
面白くないだろうね。それこそさっきラークが言っていたような感想ばっかりだろう。
そのアンドニの自己満足が終わったら何て思われるだろう?
面倒くせぇガキだ、ほっとけ、関わらない方がいい。
生意気な奴だ、若僧が調子に乗るな、その鼻っ柱を折ってやる。
良い剣を持ってるじゃないか。その剣、代わりに使ってやるよ。
・・・はぁ・・・アンドニのクソめ。
どこまで疫病神なんだ。
「リョウ、すまん。ラークも悪気は無いんだ。」
「分かってますよパーラさん。大変勉強になりました。」
そう言ってのけてやると、ラークは鼻で笑った。
「ふっ。やっぱボウズに借りを作ってた方がよさそうだな。・・・俺達もすぐ捜索する。パーラ、ボウズ達に怪我なんてさせるなよ。」
「誰に言っている。」
パーラさんかっこええなぁ。
常にフード被ってるのが中二心を擽るよね。
綺麗に纏まったところで、今まで黙って見ていたトントロさんがズイッと前に出てきた。
え?どうしたんこの人?
「私も一緒に行こう。なに、足は引っ張らん・・・。」
「絶対イヤです。」
「ふっ・・・。これが若さか・・・。」
トントロさんは肩を落として去っていった。
「お、おいボウズ。トントロさんの好意を・・・。」
「ラークさんが何と言おうとイヤです!!」
「え!?・・・お、おう・・・。」
冗談じゃねぇ。関わらせるもんかよ。
僕はセリス、イムのいつものメンバーにパーラさんを加え、街を出た。
門で僕達を対応してくれたのが、いつもの脚フェチ門番だった。
一応、アンドニ達の事を聞いたが、通った門がここだという事しか分からなかった。
相変わらず脚しか見てなかったけど、ちゃんと聞いてくれていたのだろうか?
「リョウさん、すみません。」
森に向かっていると、セリスが突然謝ってきた。
「何だよ、急に?」
「いえ・・・ああいった交渉は、いつもリョウさんにやってもらっていると思いまして。」
あぁ、そんな事か。
適材適所じゃないかな。
・・・と言っても、僕も交渉に自信がある訳じゃないが。
確かに今回は、紫煙の風に協力してもらえる事になったので、交渉成功って事でいいんだろう。
セリスに任せていたらどうなっただろう?
・・・いやぁ、怖いなww
やっぱ僕がするわ。
「セリス、人には得手不得手というものがある。それが得意とする者が居るなら、そいつにやらせておけばいい。」
「・・・そうですねパーラさん。パーティーというのは、そういう事なんですね。」
パーラさんの言葉にセリスも納得したようだ。
ああ!!やっぱいいな、パーラさん。
美人で、クラス盗賊で、もっこりで強そうだし、完璧じゃん。
もう紫煙の風に返さなくていいよね?ね?
「私達、紫煙の風もそんなものだ。私は敵を見付け・・・・・・。」
パーラさんの動きが急に止まる。何かを見付けたようだ。
「くっ!?な、なんだこの魔物はっ!!?」
「や、やはり現れますか・・・。」
「・・・・・・。」
パーラさん、セリス、イムが揃って反応しだす。
やっぱり今回も出てきたようだ。
銀色の狼だ・・・。銀色の狼が遠くから此方を睨み付けている。
パーラさんとセリスは苦しそうに膝をつき、イムはもう水溜まりみたいになっている。
あの狼・・・いったい何なんだ?
毎回毎回現れては殺気を放って僕の仲間を攻撃して・・・例に漏れず、僕はガン無視なようだし。
いつもはここで帰っていた。仲間に無理させちゃいけないと思って帰ってた。
・・・だがな、今回は引く訳にはいかねぇんだよ!
エリオと!リタと!マルタを連れて帰るまでは絶対だ!!
僕は銅の剣を取り出した。
いつまでも馬鹿にしやがって。何が魔族だ。
邪魔するんなら、退いてもらうまでだ。
「り、リョウさん!何を!?危険です!!」
僕はセリスの制止を聞かず、銀色の狼に向かって走った。
「うああああああああ!!!この犬っころおおおお!!!」
銀色の狼に向かって叫ぶ。
完全に虚勢だ。
スライムにすら勝てないのに、魔族に勝てる訳ない。
それでも走る。
別に勝たなくていい。一筋の希望ならある。
僕のクラス“魔物誑し”だ。
アイツは何故か僕にだけ危害を加えようとしない。僕が昔、拐われた時もそうだった。体当たりを食らって、巣に持ち帰られた時も僕は無傷だった。手下の犬には噛まれたが。
1ヶ月前に再会してから今までもそうだ。
アイツは僕に殺気を放とうとしない。更に僕1人だった時は逃げだしたのだ。
でも偶々だったのかも知れない。今回は逃げてくれないかも知れない。
だが、止める訳にはいかない。
もうあの子達には時間があるかどうかも分からないのだから。
僕の虚勢を聞いた銀色の狼の体が、ビクッと大きく跳ねた。
「邪魔ばっかしやがってぇ!!!どけええええええええ!!!」
僕が更に声を上げる。
それと同時に走るスピードを上げ、剣を構え直す。
逃げないんなら一発かましてやる!!
僕の声と様子を見た銀色の狼は・・・なにやら精神的ショックを受けたようだ。
凄く動揺している感じに見える。
いったい銀色の狼の中で何があったか知らんが、その隙を見逃すほど僕は甘くない!やってやんぞ!
・・・と思ったのだが、あと少しのところで銀色の狼は急に反転し、一目散に逃げていってしまった。
一旦逃げだした銀色の狼は全く追い付ける気配がない。
めっちゃ速いなアイツ・・・ただ、その耳と尻尾は下に下がっていた。
「リョウさん!!」
「リョウ!」
銀色の狼が居なくなった事で、セリスとパーラさんが立ち直ったようだ。
此方に慌てた様子で駆けてくる。
「リョウさん!大丈夫ですか!?お怪我はありませんか!?もうあんな無茶はしないでください!私はもう心配で心配で・・・。」
「わ、分かったよセリス。大丈夫だって!」
何じゃこの天使は。
確かに無茶だったけども。
「リョウ、あんな強大な魔物に無策で突っ込むな。何を考えている。」
「パーラさん・・・す、すみません。」
いや全くの無策って訳でも・・・。
どっちかって言うとギャンブルですね。
・・・すみません。
「・・・私もラークも依頼を安請け合いしたな。あんな魔物が出るとは。・・・それに一緒に行動するパーティーリーダーがこれではな。」
うぅ・・・。パーラさんからの評価が下がっていく・・・。
辛口レビューされそう。
「リョウさん、もうパーラさんを巻き込んでしまったのですし、銀色の狼の事を話してあげた方がよいのではありませんか?勿論、全てを話す必要はありませんよ。」
・・・そうだな。
それくらいは話さないと、パーラさんも困るだろう。
全てを話すなってのは、魔物誑しとかルナ様の事だろうな。
僕はパーラさんに今までの銀色の狼との話を話した。
勿論、魔物誑しは隠し、魔物使いとして話した。ついでにイムの事も。
「・・・それは是非、先に聞きたかった。」
「・・・すみません。」
やっぱり評価が下がるじゃないか!!
「まぁいい、おおよそ理解した。リョウのクラスは少々特殊で、あのスライムも変わった方法で従魔になったと言うのだな。」
「そうですパーラさん。このイムは・・・あれ?セリス、イムは?」
「え?・・・ああっ!?気絶されたままです!回復してきます!」
そう言ってセリスは慌ててイムのところに戻っていった。
「・・・しかし、あの魔物は本当に魔族なのか?・・・もしや、最近貼り出されていたレア種の討伐クエストはあれか?」
「僕は冒険者ギルドに行ってないので分かりませんけど、多分そうです。」
「・・・運よく見付けれたらラッキーだとラークが言っていたが、見付けなくてよかったよ。相手が魔族ならAランクやSランクのクエストだ。」
パーラさんはよっぽど銀色の狼が怖かったのだろうか、クールに振る舞っているが少し震えている。
紫煙の風がCランクのパーティーなんだっけ。
銀色の狼の討伐がAランク相当のものなら、それは恐ろしかったろうな。
「それで、あの魔族はリョウにだけ敵意が無い。それはリョウのクラスが原因かもしれないと?」
「そうです。現に今日初めて会ったであろうパーラさんには敵意を向けた訳ですし、僕だけ自由に動けたでしょう?」
「そうだな。・・・私は魔物使いに詳しくないが、あの魔族は従魔になるのか?リョウから逃げたみたいだが?」
「それが・・・分からないんです。まだ僕も自分のクラスの事が分からなくって・・・。」
何とも頼りないが、仕方ない。本当の事だもんな。
「いや・・・そもそも魔族は従魔にはならないか。」
「えっ!?それは本当ですかパーラさん!?」
「いや、ただの予想だ。確証は無い。だが、魔族になら会った事がある。ソイツは人類と殆ど変わらない。容姿も、知能も。だからソイツが魔物と同じように従魔になるのか疑問だ。」
パーラさんは実際に魔族と会った事があるのか。
その人間とのあまりの変わらなさに、魔物として扱いたくないのだろうか。
という事は、パーラさんが知ってる魔族は人型か?
魔物に知性がプラスされたのが魔族って聞いてたし、初めて見た魔族が狼だったから、人型って居ないんじゃないかなって思ってたけど、やっぱりちゃんと居るんだな。
「・・・パーラさん。従魔になるかは分からないんですが、魔物が考えている事ならある程度分かるんです。それであの銀色の狼が逃げた時に考えていた事は分かりました。」
「何?・・・リョウ、魔族は何と言った?」
「えぇ。・・・ごめんなさい~~!!と謝りながら涙目で逃げました。」
「・・・・・・は?」




