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24話:例えようのないネバり気




森に入った。

入って早速、先頭を歩くリタから小声で知らせがくる。


「あっちの木の上に居るね~。2匹だね~。」

「もう見つけたのか?流石だな。」

「ありがと~。でも過信しないでね~。ボクは盗賊になったばかりだよ~。」


せっかく褒めたのに。

十分凄いと思うけどな。

まぁまだ自信がねぇっつー気持ちも分かるけどな。

もしかして、ダンジョンに行きたがらない理由はそれもあるのか?


リタの指差した方を見る。

今回は僕でも魔物が居るのが分かる。

まぁ、方向を教えてもらわないと分からんが。


そいつらは隠れているつもりなんだろうか?木の上でじっとしているようだ。

だが、此方から丸見えである。

何故なら、そいつらの体は・・・どぎついピンク色だからだ。


奴等は桃モモンガーという、この森に生息する魔物だ。

桃なんて名前についてるが、桃色なんてもんじゃないくらい、どぎついピンクだ。

普通は保護色とかいって環境に適応したりするんじゃないんですかねぇ?

あのショッキングピンクでは全く周囲に溶け込めてない。

神様のイタズラですかね?あっ、ルナ様か。カワイソス。ルナちゃんモモンガーと名付けよう。



「あいつらは奇襲が得意なんだよ~。先手を打とっか~。」


奇襲?

冗談は色だけにしろよ。

あの色でどうやって不意をつくんだよ。


リタが早速持っていたナイフを桃モモンガーに向かって投げた。

1匹の胴体に見事命中して、木から落ちてくる。

もう1匹はこっちに向かって飛んできた。


「・・・・・・どすこ~い。」


気の抜ける言葉とともに、イムがブーメランを投げた。


「覚悟しなさい!!」


続いてセリスもブーメランを投げる。

・・・何してんのこの天使?


イムの投げたブーメランは、木のあいだを縫って桃モモンガーに向かって飛んでいき、桃モモンガーに直撃する。

桃モモンガーは此方に近づく事も出来ず、ブーメランとともに地面に落ちた。


お、おいおい。

イム、上手過ぎない?

今日初めてブーメランに触ったんだよね?


「・・・・・・しっぱい。」

「失敗!!?あれでか!?」

「本来なら、複数、攻撃するもの。・・・・・・いっしょに落ちたら、だめ。」


そ、そうか!

ブーメランってそういうもんだよな!


「2人共~、最初の1匹~まだ生きてるんだよ~?」


リタの注意と同時に、体から血を流した桃モモンガーが此方に飛んで突っ込んで来る。

マジかよ!?

モモンガって滑空するんだろ!何で地面から飛ぶんだよ!


「・・・・・・落ちろ。」


だが桃モモンガーの健闘むなしく、イム自慢の触手針で串刺しになってしまう。



「わ~お~。イムって強いんだね~。」


イムの触手が抜かれ地面に落ちた桃モモンガーを見て、リタがそんな事を言う。

そうでしょうそうでしょう。

僕の従魔ですよ?つまり僕は凄い。


「ちょっと待っててね~。魔石と~皮を取るよ~。」

「・・・・・・イムも、やる。」

「え~!?・・・まぁ、出来るんならやってね~。」


え?イムもするの?

リタもビックリしている。


先程イムが串刺しにした桃モモンガーを、リタが解体していく。

イムはそれをじっと観察している。


「あ~・・・残念~。魔石は壊れてるねぇ~。」


そう言ってリタは、毛皮を剥ぎ取りにかかる。

どうやら魔石は、最後のイムの触手針の攻撃によって壊れてしまったようだ。


そう。魔石は壊れちゃう時があるんだよね。

魔石の壊れやすさは魔物の強さによって変わる。

勿体ないがこれは仕方がない。

魔石を壊さまいと手加減して、命の危険があるよりはいい。


逆に魔石が目当てではないなら、魔石は魔物の弱点になる。

魔石を壊せば一撃必殺だ。

だが、さっきも言ったが魔石の壊れやすさは魔物の強さによって変わる。

強い魔物とか、魔族の魔石なんてカッチカチに硬いらしい。

結局そんな奴等は普通に倒すしかないので、魔石が弱点ってのはあまり使えない戦法ではある。

まぁ、戦闘中に壊す心配もないし、価値も高いので、悪い事ではないな。



「は~い、終了~。じゃあナイフ貸してあげるから~、もう1匹お願いね~。」


リタが1匹目の解体を完了し、イムにナイフを差し出す。


「・・・・・・ナイフ・・・・・・いらない。」


イムはそう言ってナイフを受け取らず、その場から動かずに触手を伸ばし、桃モモンガーの死体を拾い上げた。

そして、何故か服を捲り上げた。

いや、何故脱ぐ?魔物を解体するんやぞ?

イムの可愛いお腹が見える。触りたい。

そして何を思ったか、桃モモンガーの死体をイムは自分の腹にぶちこんでしまった。


何の抵抗も無くイムの腹の部分に入った桃モモンガーの死体。

イムの青く色のついた水のような体の中でプカプカと浮いている。

そしてイムはいつもの顔である。


「え、えぇ~?・・・な、何が起こっているの~??リョウ~、説明してよ~。」


リタの言う事も、もっともである。

が、僕も知らん。

じっと見てないで説明して欲しい。


「・・・・・・。」


する気は無いらしい。もはや狂気を感じる。

ねぇ?僕はこの子の主人としてどうすればいいですか?

取り敢えず頭を撫でてやろう。

・・・もっと撫でろと言わんばかりに、背伸びしただけだった。




1分たっただろうか。

イムが腹から桃モモンガーの死体を取り出し、此方に差し出してきた。

いや・・・差し出されても・・・。


・・・ん?い、いや。何かこの死体、変だぞ?

やけにボリュームが・・・?


「え~?こ、これって~?」


リタがビックリした様子で、イムから桃モモンガーの死体を受け取る。


「リョウ~!凄いよ~これ~!!解体できてるよ~!!」


はぁ!?マジか!!?

それって・・・自分の体の中で解体したって事か?

どうゆうことなの・・・。


僕はリタから桃モモンガーの死体だった物を受け取った。

いや、死体じゃないわ。魔物の皮だけだ。

中身は綺麗に無い。ちょっとヌルヌルするけど。


これは・・・毛皮だけ残して、その他をイムの体で溶かしたって事か?

んなアホな。

しかも毛皮の下にが魔石まであった。

毛皮に加えて、魔石まで解体していたのか。

最初にリタの解体を見てたのは、どこを解体すればいいか分からなかったからか?


「凄いね~!イムちゃん~!ボクがするより全然上手くできてるね~!ちょっとヌルヌルするけど~。」


いや、1分しかたってないが?

1分で溶かせる物なのか?しかも毛皮と魔石だけ器用に残してか?

イムのステータスのとくぎに吸収ってのがあったな。あれを使ったのだろうか?

いや、吸収だろうが溶解だろうがどっちにしろ1分じゃ無理じゃね?

・・・う~ん。この世界に現代の知識をもってきてもなぁ。

まぁ化学とかにも詳しいって訳でもないんだが。


・・・イムは魔物の解体までできる凄い子だ!

それでいいか。もう。

解体した素材がちょっとヌルヌルするけど。

これ・・・とれるよね?



「え~・・・イムちゃんめっちゃ凄いじゃ~ん。・・・魔物だった時はカティナにすぐやられてたから~、大したことないのかと思ってたよ~。」


魔物だった時って、今でも魔物だけどな。

今はまぁ半分人間みたいな格好してんだけど。


「・・・・・・イムが、すごいのは、リョウのおかげ?」


僕に聞くな。

是非言い切って欲しかったですね。


「イムがこんなに凄いんなら~・・・ちょっと不安だけど~、ダンジョン行ってみる~?」


お!?マジか!!?

ついにリタもやる気出ました?

そうそう。リタが行く気にならないと誰も行かないからな。

だって盗賊が居ないと絶対危ないでしょ。


「それは是非行ってみたい。でも・・・大丈夫だと思うか?この4人で?」

「大丈夫なんじゃない~?別にダンジョンを制覇しようって訳じゃないし~。危なくなったら逃げればいいよ~。入り口付近で探索してさ~、運よくお宝を見付けたら儲け物~って事で~。今後の経験にもなるし~、ボクも行きたいのは行きたいんだよね~。」


それもそうか。

多少のリスクは覚悟しないとな。お宝のためだ。

しかし遂に僕もダンジョンに・・・ワクワクするな。


「・・・ん?でも、リタはダンジョンの場所知らないんじゃないか?」

「そうだね~。今日もダンジョンの場所探しかな~。」


まぁそうだな。

今日はここまで時間もかかってるし、それでいいだろう。



「・・・プハッ!!み、見付けました!!」


近くの茂みから何か出できた。

・・・セリスだ。

身体中に葉っぱやら木の枝が引っ掛かっている。

そういえば居なかったな。何してんだ?


「リョウさん!やっと見付けましたよ!もう見付からないかと思っていました!・・・私のブーメラン!!」

「・・・あっそ。」





◆◆◆





森の中を暫く冒険した。

リタが居るだけでうちのパーティーはかなり安定した。

相変わらず僕は何もしていないが。


パーティーの安定といえば、セリスがやっとハルバードを出して戦ってくれている。

何故こんな事を態々喜ばないといかんのか。

最初から出しとけと。


なんかどんどんネタキャラになっていってねーか?

確かにな、カティが抜けた穴はデカいぞ?

でもそんな穴の埋め方はないだろ。

誰がネタキャラの穴を埋めろって言ったんだよ。戦力的に埋めろよ。


「リタさん、最近リョウさんが私を雑に扱うのです。何故だか分かりませんか?」

「あぁ~、それはね~。リョウみたいな年頃の子は~そういう事しちゃうんだよ~。好きな子に素直になれなくって~、つい冷たく当たっちゃうんだよね~。リョウは特にそれが強いから~。ホントはボクやセリスさんの事が大好きなんだよ~。」

「ふふっ。やはりそうなのですか。」


うっさいよ。小声で話しても全部聞こえてんだよ。

何がふふ、やはりそうなのですかだよ。お前、僕が中身おっさんなの知ってんだろ?そんな難しいお年頃とっくの昔に卒業しとるわ。



イムは完全に魔物解体機と化していた。

そりゃね、便利ですよ。イムに入れれば解体してくれるんだもん。

魔物の解体なんてそりゃ大変ですよ。

僕はいまだに逃げてますよ。魔物の解体から。

中身は現代っ子ですよ?できねぇって。動物の解体なんかした事ねぇもん。


リタもセリスも魔物を倒したそばからイムに突っ込んでいくんだよ。

でもイムはそれを受け入れちゃってるのよね。

モン娘形態だと効率悪いからって、魔物形態に戻っちゃうし。

サイズも足りないとか言ってデカくなっている。

今、僕は3メートル級のスライムと一緒に歩いてます。

何ですかこのパーティーは?


「なぁ・・・。流石にこれはマズイだろ?こんなデカいスライム連れてるのを他の冒険者にでも見られたらどうするんだ?」

「ん~?何か変かな~?確かに珍しいと思うけど~。リョウは心配しすぎだよ~。」


と、リタさん仰ってますが。

だから何で疑問に思わねぇんだよ!

確かにね、街の人もそんなに反応しなかったよ。

リタだって今日、出発する時に人間形態からモン娘形態に変わるイムを見ても無反応だった。

何でだ?セリスとカティは最初驚いてたって!


・・・まさかルナ様?

マジか。万能過ぎない?いやまぁ神様なんだけど。

都合よすぎだろ。


ん?でもアンドニはイムを人間として見てた気がするぞ。

これはもし今アンドニに会ったらマズイんじゃないか?



「いや、あの・・・アンドニとかさ。会ったらマズイんじゃない?」

「ん~?・・・あ~、そうだね~。アンドニ達もダンジョン探してるだろうし~、会うかもしれないね~。でも大丈夫だよ~、またセリスさんとイムが守ってくれるって~。」

「いや、リタ。僕が会いたくないから言ってるんじゃなくてだな。」

「ボクも会いたくないから~、ちゃんと見てる・・・・・・。」


突然リタが黙り、手で止まるように合図を送ってくる。

・・・アンドニが居たんだろうか?

いや、なんか違うな。雰囲気的に。


リタが少し緊張しているのが分かる。

セリスもハルバードを握り直し、険しい顔をしている。

沈黙が怖い・・・。いったい何が起こったんだ?



「・・・ん~??あれ~?気のせいだった~?何だったんたろ~?」

「リタさん、私も感じました。間違いではないでしょう。」

「セリスさんも~?・・・まぁ~いっか~、もう消えちゃったみたいだしね~。」


・・・は?おい、僕は何も感じなかったぞ。僕にも説明プリーズ。

・・・いや、ここは僕も感じました的な雰囲気でいた方がいいか?

だってその方が絶対カッコいいじゃん。

いや~、あれは絶対強敵だったわ~。この森のヌシだねアレは。この私に恐れをなして逃げたみたいだからもう安心だよ仔猫ちゃん達。


「少し異質なようでしたね。」

「う~ん、ど~しよ~?」


おい。二人とも無視すんなや。

聞けよ僕にも。リョウさんも感じましたよね?って。

僕が感じる訳ないって決め付けてるよね?

よくないよ、そんな先入観は。色んな可能性を潰す行為だよ。

例え感じていなくても聞くべきだよ。傷付くだろ。


「リョウ~?ど~しよ~?」

「ンアッ!!?・・・そ、そうねー。吐き気を催す・・・的な?何も知らぬ無知なる~・・・的な?そんな感じのぉ・・・う~ん、邪悪だったねぇ~。」

「何言ってんの~?」


くっ!

リタの奴!何故分からん!!

これでは僕が何も感じて無いみたいじゃないか!!

感じて無いけど。


(・・・・・・ンアッって、なに?)


うるせぇぞスライムううぅぅぅぅぅぅ!!!



「そうじゃなくて~。上位種やレア種だといけないから~、できるだけ調べてギルドに報告しなきゃって話だよ~。まぁ~ボク達はまだ冒険者じゃないから~、そんな義務守る必要ないんだけどね~。」


な、なんだよ。

そんな事かよ・・・。


冒険者ギルドに入ると、上位種やレア種を見付けるとギルドに報告する義務が課せられるらしい。

上位種は群れを作って街を襲ってくるかもしれないので危険だしな。

その反面、レア種はあまり報告されない。

何故ならそのまま倒してしまう奴が多いから。

自分で倒す自信が無い奴だけがギルドに報告するので、レア種の情報は必然的に少なくなる。

折角、自分で見付けたんだもんな。そりゃ誰だって自分で倒すわ。僕だってそうする。


4年前にありましたな。

僕が魔物共の縄張り争いに巻き込まれた時だ。

アレは子供が魔物に拐われるっていう、なかなかの大事件でしたので、ディーノ氏とギルドマスターが態々孤児院に集まって報告会みたいな事になったのだった。

まぁ報告したのはいいが、結局狼の群れは来なかったし、ハーピーの群れはその2年後に来る事になったな。



そんな訳で、義務なんてないし、関わらない方がいいんではないでしょうか?

もうあんな事は御免である。


「んなもん放っておけよ。安全に狩りした方がいい。」

「え~?そうなの~?レア種だったらラッキーだし~、上位種を見付けたら~ギルドから報償金がでるかも~・・・。」


な、何?

金が出るのか?

・・・そうだよな。リタの言う通りか。

それにレア種だったら、イムと同じく僕の従魔になる・・・かも?


「・・・うん、そうだな。行ってみるか。慎重にな。」

「りょ~かい~。」

「レア種だといいですね。」

(・・・・・・。)



・・・ん?もしかして・・・?


「おい、もしかしてイムがデカいから、その魔物に先に見付かった訳じゃないよな?」


リタの動きがピタッと止まる。


「・・・まっさか~。そんな訳ないじゃ~ん。」

「おい、僕の目を見て言え。」

「ダメだよ~♡こんな明るいうちから盛らないでよ~♡」

「いいんだな?人生最後の言葉がそれでいいんだな?」


コイツほんま。

毎回、色気を出せば許されると思っているのか?

・・・まぁ、許すけど。




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