22話:必要悪
僕はセリスとイムにこの天才的なナイスアイデアを説明してやった。
「なるほど。それでしたらイムさんの特性を活かせるかもしれませんね。問題は、イムさんが武器を扱えるかどうかといったところでしょうか。なにしろ、スライムに武器を持たせるなど、聞いた事ありませんから。」
「・・・まぁ、その辺はイムの頑張り次第ってとこかな。」
「・・・・・・震えて、まて。」
何言ってんだコイツ。
まぁスライムっていっても、イムはレア種だ。
会話できるくらい知性はある訳だし、武器くらい使えるんじゃないかな?
「それと・・・毒針とは何なのですか?リョウさん?」
「え?・・・攻撃すると一定確率で相手の息の根を止める武器・・・かなぁ?」
「いえ。私に聞かれても困ります。強力な武器みたいですが、魔導武器ですか?」
・・・いや、セリス。そんな強い武器じゃないと思うぞ?
その辺の武器屋で売ってんじゃねえか?・・・売ってないか。そうか。
この世界じゃ、特殊な効果のある武器なんて全部、魔導武器になるか。
まぁ普通に考えて、どうやって針で即死させんだ?って話だよな。
常に針に即効性の猛毒を塗っていなきゃ駄目な訳だ。その毒はどこから調達するのよ?
そんな毒の代わりを何かしらの魔法にさせて、武器に付与させる訳だ。
そうなると、毒針は魔導武器って事になるな。
う〜ん。いいアイデアだと思ったんだが駄目か。
まぁ毒針じゃなくても、何か武器を持たせるのは有効かもしれない。
何かいい武器が無いか、武器屋でみてみるか。
それに僕、さっきの怪力ベアーとの戦いの時に銅の剣置いてきちゃったんだよな。
元々、孤児院の備品?なんだけど・・・。
流石に無くしたまんまなのはマズいかな?
でも、取りに行きたくもないしなぁ。
銅の剣っていくらするんだろう?
クソみたいなガチャやったから、金貨1枚しかないんだけど、足りるかな?
・・・なんであんなガチャやったんだろう。
今は、もう街の中だ。
あの後、ちょっと魔物を狩って早めに引き上げた。
僕は武器を無くしていたので、セリスが予備にと買っていた銅の剣を一応貸してもらっていた。使ってないけど。
・・・いや、嘘だ。使った。
使ったけど、もちろん敵にダメージが入ってる感じは無かった。
何でだ?
やはり、僕のステータスのちからが0なのが影響しているのか?
大体、何?ちから0って?
それって生きてるの?
僕、孤児院で力仕事とかしてるよ?
じゃあさ、百歩譲ってちから0は仕様がないとしようや。
銅の剣はどうしたんだよ?銅の剣自体にも攻撃力はあるよね?ゲーム的に言えば。
仮に、銅の剣の攻撃力が5とすればさ、0+5で僕の攻撃力は5になるはずだよね?
5だよ?5。
そりゃ野菜の星の戦闘民族から見たら、ショットガン持った農夫程度の攻撃力かも知れないけどさ。
スライムくらいなら倒せないとおかしいだろう?
イムと戦った時なんか、一時間くらいやったんだぞ?
一時間で何発イムに銅の剣を打ち込んだと思う?
打ち込んでも打ち込んでも平気な顔してさ!顔無かったけど。
しかも本人は「遊んでもらった、だけ。」とか言うだろ?あーおじさん傷付いたなぁ〜、傷付いた。うん、傷付いたぞ。うん。
あっ、でもイムのとくせいに物理軽減があったな。
それの影響で攻撃が効いてなかったのかも・・・いや、それだと普通のスライムとタイマンした時に攻撃が効いてなさそうだったのは何なんだよって話だ。
あ〜・・・もういいよ。
へなちょこなんだろ?もう知ってるわ。
「リョウ、落ち込んでる・・・・・・どうしたの?」
イムが顔を覗きこんでくる。
何だこの子は。天使か?
いや、天使はその隣だわ。めっちゃキョロキョロしている。まだこの街に慣れないのだろうか。
「大丈夫?・・・・・・揉む?」
「ブッッ!!!?」
なっ・・・何を?
いったい何を!!?
くっ・・・チェリーボーイな反応をしてしまった!
不覚っっ!!一生の不覚っっ!!!
「あっ、ありましたよ!この前の武器屋さん・・・リョウさん?何してるんですか?」
「はっ・・・え!?い、いえいえ!!何でも御座いませんで御座いますよ!セリス様!!」
「はぁ・・・?指の運動ですか?」
「ええ!ええっ!そうで御座いますとも!けして公衆の面前で、おっぱじめようなどとは・・・だ、ダジャレじゃないですよ!!そんなしっぱい・・・いっぱい・・・。」
「は、はぁ・・・??」
だ、駄目だ。
このメンバーじゃツッコミ役が居ないから終わらないぞ。
「ほらっ!行こうセリス!イムも!」
「え?・・・ちょっ、押さないでください!行きますから!」
「・・・・・・。」
セリスの背中を押して、無理矢理でも切り上げてやった。
武器屋に入った。
いろんな武器が所狭しと並んでいる。
他の客も何人か居た。
ん・・・防具もあるんだな。
武器防具屋といったところか?
なんせ、ここの武器屋どころか、武器屋というものに入る事すら初めてだ。
流石にこの世界で、この歳になっても初めてなのはヤバかったかも知れない。
・・・まぁいいじゃん。生きてるんだし。
「リョウさん。こっちですよ、ブーメランは。」
セリスが先導してくれるようだ。
何で知っているんだ?
いや、ここの武器屋にはこの前来たんだろうけども。
でも凄い品数よ?ここ。
その中でも特殊な武器っぽいブーメランのある場所をよく知っていますね?
まさか昨日、ハルバードとブーメランどっちを買うか悩んでたりしてませんよね?
ハルバードを選んだのって、あの大鎌に使い勝手が似ているとかそんな理由じゃないの?
どっちの武器も使った事無いけども、ブーメランだけは絶対違うよね?
「ここですよ、ブーメランは。木のブーメランと鉄のブーメランがありますよ。私はすっごく悩んだんですけど、ハルバードにしました。」
ブ ー メ ラ ン だ け は 絶 対 違 う よ ね ?
「イムさん。どっちにしますか?」
「・・・・・・わからない。」
イムがじっとこちらを見てくる。
どうしたのかな?惚れたのかな?
・・・めっちゃ見てくるよ。ツッコめよ。
駄目だぞ。早急にツッコミ役のメンバーを補充しないとこのパーティーヤバいぞ。
「鉄のブーメランは・・・15000イェンか?駄目だイム、買えないよ。木のブーメランにしてくれ。」
木のブーメランは4000イェンだ。
これでもキツい。
今、僕は金貨1枚とちょっとしかない。
金貨1枚が10000イェンだから、買えない事もないが、すっからかんになる。
因みにイェンってのは通貨の単位な。
銀貨1枚が1000イェン、銅貨と鉄貨が100イェンと10イェンだ。
非常に聞き覚えのある通貨単位である。覚えやすい。
「イムは、わからない・・・・・・リョウが、きめて。」
任せてくれるらしい。
良くできたモン娘である。
木のブーメランを手に取って見る。
さっき、セリスが壊してたブーメランとは作りが全然違うな。
まぁ、こっちは武器で使うんだもんな。当たり前か。
鉄のブーメランの方は刃が付いていて、投げて当てたら敵を切りつける事ができるようだ。
ただその分、扱いは難しいだろうな。
慣れていないと、自分を切りつける事になりそうだ。
やっぱり木のブーメランで正解ではないだろうか?
「よし。木のブーメランにしよう。後は・・・銅の剣だな。」
「リョウさん。別に私の剣を使ってもらっても・・・。」
「駄目だセリス。そこははっきりさせておこう。」
「はい・・・。」
駄目だ駄目だ。俺はお前、甘えは許さんからな。
絶対セリスには甘えないからな!・・・いや、できるだけ甘えないからな!・・・多分な!
「いらっしゃい。何かお探しですか?」
振り返ると、気の優しそうなおじさんが居た。
言葉から察するに、店員だろう。
「おじさん、このブーメランと銅の剣が欲しい。いくらだ?」
「ブーメランは4000イェン、銅の剣は2700イェンですね。」
銅の剣の方が安いのか。
ブーメランなんて木なのに・・・いい木を使ってるのかな?
まぁいい。お金は足りるしな。
これで僕も金欠である。
本当にあのガチャが痛かったな。
しんどい。
「店員さん。ブーメランは2つ貰えますか?」
はぁ!!?何さりげなく2個注文してんのこの天使!?
いや・・・新しいブーメラン買ってやるからって言ったけどさ・・・。
お前がぶっ壊したのは子供の玩具だろう!?
何でそれが銀貨4枚になるんだよ!
・・・流石だよセリスさん。
流石ルナ様の部下なだけあるよな。
優しい言葉とか凄い掛けてくれるのにコレだもん。
しかも恐ろしいのは、ルナ様と違って別に悪気は無いとこだよね。
ルナ様ならニヤッって悪い笑みを浮かべているところなのに、セリスはニコニコしてるもんね。
ほらっ。「ありがとうございます!私頑張ります!」って言ってるよ。
もう後からお金は払いますって線も消えたよね?
いいよいいよ。払えばいいんだろ。
その代わり今以上に戦闘ではおんぶに抱っこしてやっからな。
ふひひ。
これでもう僕も手持ちは銀貨1枚だぁ。
最高に金欠ってやつだ!
もう僕に奢らせようとしても無駄だからな!だって無いもん!!
また今日から短編小説書いて変態おやぢ達に売る作業が始まるんだ。
くっそー。他にねぇのかよ!金を稼ぐ方法はよ!
この世界の子供はどうやって稼いでんだよ。
全員、小遣いか?
エリオ達はどうやってんだよ?
くっそー!金!金欲しー!!
「リョウ・・・・・・ありがとう。イムは、つよくなる。」
うむ。頑張りたまえ。
まぁ、イムは魔物だからこれ以上ステータスが上がらないらしいが。
それを言うのは野暮ってもんだろう。
そうだ。せっかく店員も居るんだから聞いておこう。
買う気は無いけど、良い物があったら、セリスに金を借りよう。
「おじさん、探してる武器があるんだ。刺突用の武器が欲しいんだが、何か無いかい?」
「刺突用・・・レイピアですか?」
「あー、レイピアはちょっと・・・。もっと取り回しが良い物がいいな。ナイフとか、針とか。」
「針だと、護身用の物ならありますが・・・。ナイフならダガーですかね。オススメですと、この黒く色を塗ったナイフがありますよ。夜や迷宮などの薄暗い時に効果を発揮しまして・・・。」
黒いナイフ?
ああ、リタが使ってるやつか。あいつここで買ったんだな。
まぁ良さそうだが、別に黒く無くていいし、数も何本かいるしな。今日はいいか。
イムもブーメランの練習で手一杯だろう。
「ごめん、おじさん。今日は剣とブーメランだけでいいや。」
「え?そうですか?またのご来店を。」
ブーメランと銅の剣だけ買って、店を出る事にした。
◆◆◆
孤児院に戻った。
どうやら、エリオ達も戻っていたようだ。
ということは、会うのも面倒な奴も居るという事だ。
「おっ!?セリスさん・・・リョウとパーティーを?」
「何だよ、へなちょこ!お前、セリスさんと狩りしてたのか!?いったいどんな弱味握ったんだよ!?」
最初に喋ったのが、アンドニだ。
体格が良くて、“戦士”のクラス。それにわりと童顔でイイ男だ。
恵まれた人間ってのはこういう奴の事を言うんだろうね。
学校のクラスに1人は居る、わりと何でも出来ちゃう奴だな。
まぁ孤児になってる時点でそうでもないのか?
しかも残念な事に、今年は孤児院から3人の人間にレアクラスが出ちゃってるんだよね。
カティとアンドニの後ろで俯いてるメガネちゃん、そして表向きは“魔物使い”になっている僕、リョウ君です。どうぞよろしく。
表向きは魔物使いにするっていうのは、さっきセリスに聞いた。
ルナ様からそうするように言われたそうだ。
まぁそれの方が面倒が無くていいかも知れない。
魔物誑しだと知っているのはカティ、エリオ、リタ、マルタとゲバルド氏にセリス。
ディーノ氏は知らんらしい。ルナ様が直々に、なんだかよく分からんレアクラスは魔物使いだったと説得したようだ。
ディーノ氏かわいそす。
話を戻そう。
アンドニ・・・まぁ、アンドニに限らず孤児院に居る奴はカティやマルタ、そして僕がレアクラスなのは知っている。
ここで問題なのが、僕がレアクラスだって事だ。
常に僕を下に見ていたアンドニは、自分より良いクラスを貰った僕が許せないらしい。
今朝、エリオ達を連れて冒険に行く前のアンドニに会った時、何かいきなり「調子に乗るな。」とか「お前が勝った訳じゃない。」とか言ってきたんだよね。
いや、勝った訳じゃないって・・・なんの勝負よ?
僕が言ったか?どっちが良いクラス取れるか勝負しましょうとか言ったか?
何勝手に始めて、勝手に負けてんだよ。
心配しなくてもお前に勝てるとは思っとらんよ。
関わらないで欲しい。僕の考える未来にアンドニは居ない。
勝手に精神的に勝ったと思ってればいいのに。
クールぶってるアンドニと違って、汚い罵声を浴びせてきた小物はチャズって奴だ。
僕の4歳上で、いつもアンドニに小判鮫みたいにくっついている。
冒険にも、だいたいは一緒に行っているようだ。
強いんだろうか?口が先に出る人なのでよく分からない。まぁ僕よりは強いのは明らか。
ゲーム的に言うと経験値は稼いでそうよね。アンドニに寄生する形で。
アンドニがジャ◯アンだと、チャズはス◯夫だろうな。
あんなに可愛いものじゃないけど。
もう1人。アンドニとよく一緒に居るおねいさん、モルガンって人がいるのだが、今は居ないみたいだ。
まぁ、あの人もスタイルはいいけど性格悪いしなぁ・・・どうでもいいか。
「セリスさん。戦えたのですか?でしたら、俺のパーティーにお誘いしましたのに。・・・何故、こんな奴とパーティーを?」
アンドニは僕を一睨みした後、セリスに色目を使いだした。
こんな奴とは何だ?こんな奴とは。
それに、何さりげなくワシの天使に手出そうとしてんねん!
セリスもさぁ、普段からもっこりな格好してるから、孤児院のヤりたい盛りの男共に目を付けられるんだろぉ?
まぁ、それも今日からはちょっと大人しくなったけどな。
それでも溢れ出るエロスは抑えられませんなセリスさん。
もう何を着たって君からはエロスを感じずにはいられないんだよ。
しかも今度、孤児院に居る時はシスター服を着る事を検討中だとヨハンナさんから報告を受けている。
おいおい、最高かよ。
流石我らのヨハンナママ。素晴らしい。
やっぱ聖女は淫乱じゃないとな(真理)
「お疲れ様です。えっと・・・アンドニさんでしたかね?・・・こんな奴とは何方の事でしょうか?」
・・・おっとぉ?セリスさんちょっと怒ってない?
まさか僕の為に?
・・・ハッ!これが愛か!?
「リョウの事ですよ。リョウと組むより俺と組みませんか?俺と組めば魔物なんて雑魚です。セリスさんには指一本触れさせませんよ。」
アンドニが僕を親指で指差しなら自慢気に言う。
「そうですよセリスさん!こんなへなちょこ放っておいて俺達とパーティー組みましょうよ!」
小判鮫先輩もヘラヘラと、僕を馬鹿にした顔で見てセリスを誘う。
ムカつく。そして最高にメンドクサ。
イキッテるねぇ。下心もバッチリ見える。
そんなにセリスとお近づきになりたいか?
セリスともっこりしたくて堪らんのだろう?僕もまだしてないのに!クソがっ!!
・・・まぁ、クソ胸糞悪い奴等ではあるが、セリスに冒険の誘いをする事は僕がどうこう言える問題じゃないしなぁ。
セリスは僕のものだ!・・・って言い張りたいがそんな関係じゃねぇし。
セリスがDQNに絡まれてます!助けて!って顔でもしてりゃあ僕が間に入ってもいいんだが、そんな事しそうにないよな。
アンドニとチャズくらい簡単に捻っちゃいそうだもんな。
セリスが決める事だろう。
できれば僕を選んで欲しい。
だいたい、セリスはルナ様に言われて僕とパーティー組んでるんだし、アンドニと組む訳無いじゃん。
・・・え?組まないよね?
え?もしかしてイケメンがいいとかそんなの言う訳無いよね?
いや、いやいや!セリスは僕の虜な筈だ!絶対そうだ!ぬうううううん!!
頼むーー!セリスーーー!!行っちゃヤダよおぉぉぉぉぉん!!!
「お気持ちはありがたいのですが、私はリョウさん以外とパーティーを組む気はありませんので遠慮させていただきます。」
・・・フ、フフフ。
ヨッシャアアア!!どんなもんじゃい!!
ザマァ!ざまぁみろ!
あードヤ顔してぇ~。
まぁやらないけどね。こんな奴等煽ったって何の徳も無い。
どうせ冒険者ギルドでは引く手数多なんだろ?自分で言ってたじゃん。
あのAランクだかBランクだかの冒険者と一緒に狩りをしただとか、あの有名な冒険者に稽古をつけて貰ったとか、いつも言ってんじゃん。
学校の悪い奴はだいたい友達みたいな事が言いてぇんだろ?
はいはい、良かったね。
そっちで我慢しろよ。僕は関わって欲しくないんだよ。
「へぇ・・・そうですか。」
「は?・・・冗談っすよね?」
クールに受け答えするアンドニだが、顔が一層険しくなる。
小判鮫先輩は理解すらしてねぇ。
「いやいや、セリスさん!絶対俺達と行くべきっすよ!こんなへなちょこなんかより、絶対俺達の方が楽しいっすよ!ねぇねぇ、一回だけでもいいから行きましょ~よ~。」
小判鮫がしつこく誘ってくるが、セリスは目を瞑って微動だにしない。
「・・・なるほど。何方か存じませんが、私は貴方の想うような破廉恥な女ではありませんよ。」
「はっ・・・?何を・・・!?」
「ブフーーッッ!!」
おっ?セリスのやつ、小判鮫先輩の心でも読んだのかな?
ほれみろ小判鮫め!性欲を拗らせてるからそうなるんだよ。
因みに、最後に笑いを我慢できず吹き出したのは僕じゃなくて後ろで見ていたリタだぞ。今はマルタに取り押さえられてるが。
だいたいセリスは妄想するまでもないぞ。
元から破廉恥・・・ひっ!!凄い速さで振り向いて睨んで来たぞ!
心を読むのは不得意じゃないのかよ!
「チャズ、もう止めとけ。別にセリスさんとどうしても組みたいって訳じゃねぇし。後から後悔すんのは向こうだろ。」
ダセェなぁ。何だその台詞?負け惜しみか?ツンデレか?
しょーもないプライドがあるから悔しがったり負けを認めたりできん訳か。
難儀な事だなアンドニも。
まぁ、僕がプライド無さすぎるだけか。
「アンドニの兄貴!コイツが絶対セリスさんの弱味でも握ってるに違いないんすよ!!このへなちょこ野郎!すました顔しやがって!!」
すました顔って・・・。お前らを挑発しないためにこんな顔なんだよ。
どうせ勝ち誇った顔しても怒るんだろ?どっちにしろ正解なんてねぇんだ。鬱陶しい。
だいたい弱味ってなんだよ?
そんなもんあるなら握りたいものだわ。
決して小説では表現しきれない事をやってやるんだぁ!
何だセリス?教えてくれ!弱味を!教えてくれぃ!!
「小ば・・・えーっと、先輩。僕は何もしてませんよ。セリスには助けて貰ってるんです。」
「呼び捨てぇ!?お前セリスさんの何なんだよ!?何きたねえ事しやがった!?言えよ!!」
小判鮫先輩が何を思ったか僕に掴み掛かろうとするが、ある人物が僕の前に出て守ってくれた。
人間形態のイムだ。
・・・あれ?何で人間形態?・・・あぁ、孤児院に居る時は人間形態で居るようにとかゲバルド氏と話してたな。
「何だよ!お前は・・・ってマジで誰だお前!?」
当然の反応である。
そりゃそうだよ。小判鮫先輩が知ってる訳ないよね。
後ろで見ているエリオ達もポカーンだわ。
「・・・・・・イム。お前、イムのリョウに触るな。」
イムさん格好いい!抱いて!!
まぁ、嬉しいのは嬉しいのだが、僕がちょっと我慢してればいいんだから、そこまでしてくれなくていいのに。
あー、でも小判鮫先輩とどっちが強いんだろう?
危ないかな?これは救いの手を出してやらんと。
「あー、小判・・・えーっと、先輩。コイツはイムって言いまして、今日から孤児院に・・・。」
「お?・・・おお??イム・・・イムちゃんって言うのか?へ、へぇ~。」
「・・・おい、リョウ。今日から孤児院に住むのか?このイムって子は。」
「は?・・・ええ、そうですけど。」
何だ?アンドニまで入って来たぞ?
あっ!コイツら、イムの胸ガン見じゃねーか!
バカヤロー!それは僕のパイパイだぞ!!なに勝手に視姦してんだよ!?僕が先にぱふぱふしてもらうんだぞ!!
「イムちゃんかぁ~!可愛いね!俺はチャズって言うんだ。よろしくねぇ!」
「・・・・・・。」
ソッコーで色目使ってんじゃねーか。
イムはやる気なさそうな顔だ。いつもの顔だけど。
小判鮫先輩とよろしくする気は無いらしい。
「イム。リョウなんかより俺と組まないか?リョウと居たってろくな事にならないぜ?」
ハァ??
アンドニの野郎、性懲りも無くまた僕のパーティーから引き抜こうってか?
エリオ達を引き抜き、セリスとイムまで寝取ろうってのか!?
冗談じゃないよ。
何で僕ばっかり目の敵にするかね?
そんなに女っ気が欲しいのか?
アンタにはモルガンさんが居るじゃねーか。
・・・まぁ、モルガンさんってアンドニの事、踏み台だって言ってたけどな。
それが本心なのかは分からないが、まぁ概ね嘘ではないんじゃないかな。
アンドニよりもっと高ランクの冒険者のイケメンと組みたいとかよく言ってるけど、それがモルガンさんのキャラに合ってると思う。
後、エリオの事をよく聞いてくんだよな。
アンドニより性格いいし、イケメンだし、剣の腕もいい。目を付けているんだろう。
僕の事は眼中になさそうだ。フンッ!別にいいもん!エリオが可哀想なくらいだよ。
多分、今回エリオ達をパーティーに誘ったのもモルガンさんの差金なんだろうな。
アンドニはマルタと、モルガンさんはエリオと繋がりがもてるし、双方にメリットがある。
リタは知らん。オマケだろう。今だってアンドニ達の後ろでニヤニヤしている。
本当にコイツは人の不幸が好きだな。理解できん。
「・・・・・・。」
「イムちゃん、大丈夫だよ!俺とアンドニの兄貴が手取り足取り教えちゃうからさ!もうこんなへなちょこと一緒に居なくていいんだよ!」
好き勝手言ってくれる。
アンドニが居ないと何も出来ないクセに。
・・・まぁ、こんな小判鮫にも僕は負けるし、人が居ないと何も出来ないのは僕も同じか。
はぁ・・・。嫌になるぜ、自分が。
小判鮫先輩がそう言いながら、我がリョウ家の家宝、イムの肩に触れようとするが、イムはそれを避けた。
「やだ・・・・・・イムは、リョウ以外と、いかない。」
「・・・はぁ??」
「・・・プッ!ブハハーーッッ!!もう無理~モゴモゴ。」
そりゃそうだよ。
小判鮫とアンドニは知らんだろうが、イムは僕の従魔だ。
僕を放っておいて行く訳が無い。
・・・まぁ、ちょっとイムが答えるまでドキドキしていたのは内緒だ。
因みに後ろで我慢できず吹き出した男の娘は、今度はエリオも加わって取り押さえられ、引き摺られて退場していった。
さて、自分達の期待に反して、二人の女の子にフラれたDQN共ですが。どうするんでしょうね?
僕としてはもう金輪際、関わって欲しくない。
悲しい事に、僕にはこの実力主義の世界で二人を守る力が無い。
この子を賭けて俺と勝負しろ!って言われても、僕には受けないって選択肢しか無いもんな。
黒い三戦士の時はセリスが勝つ自信があるって言うから、乗っただけだし。
だから早くチートが欲しいんだよ。
HEY!女神!プリーズ!!チート!!
「リョウ・・・。テメェ、きたねぇマネばっかしやがって!そうじゃなけりゃあセリスさんとイムちゃんがお前の言いなりになる訳ねぇ!絶対二人を取り戻してみせるからな!」
何その名推理?
何気取りよ?ヒーローか?
小判鮫先輩から見た僕はいったい何者なのよ?
どれだけ調子に乗ればこんな自分に都合がいい考えに行き着くのか。
理解が全くできんな。コイツ、本当に人間か?
ここが異世界だからか?なるほど。異世界では常識に囚われてはいけないのですね。
「チャズ、もうやめとけ。セリスさんにもイムにも事情があるんだよ。別に俺はどっちでもいい。」
「アンドニの兄貴ぃ・・・。クソッ!リョウ!調子に乗るなよ!!」
アンドニが小判鮫先輩を収めてくれる。
小判鮫先輩は捨て台詞を言い残して去っていった。
アンドニも僕を憎悪のこもった目で睨みながら去っていった。
何が「別に俺はどっちでもいい。」だよ。
未練タラタラじゃねーか。
・・・・・・はぁ~。
めんどくせぇ奴等が出しゃばってきたもんだ。
僕は前から目を付けられてたけど、空気みたいに扱われる事も多かったからな。
まさか、セリスとイムが目を付けられるとは。
セリスはあいつら二人に遅れを取る事は無いだろうが、イムは分からんな。
しっかり関わらないように言っておかないと。
「・・・・・・リョウ、あいつら・・・・・・ころして、いい?」
「イム、物騒な事言うな。何とか事故に見せかけて葬るんだよ。」
「リョウさんが一番物騒ですよ・・・。」




