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俺が異世界転生したら女魔法使いだったが、新制服がエロすぎたので全力で抵抗することにした  作者: 竹屋 兼衛門


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15/23

第15話:王子様のお茶会 ― 開戦

……遅すぎた。


これはもう――話し合いじゃない。


戦いだ。


生徒会室の前に立つ。


もう、引き返せない。


【ヴェーラ】

「では、入ります」


ヴェーラはドアのノックする。


【総書記長】

「どうぞ」


生徒会室に入る。


巨大なカエルが新制服を着て椅子に座っている。


【ヴァトリナ】

「へぇ。ペット同伴のお茶会か」


俺はカエルの頭をペチペチ叩く。


【総書記長】

「ひぇ」


【ヴェーラ】

「ちょ、ちょっと。ヴァトリナ!殿下!それ殿下」


【ヴァトリナ】

「へ?」


ペチリ。


俺はカエルの頭に手を載せて固まる。


【イーシア】

「やっぱり変身系の魔法使いだったのね。」


カエルは目だけ動かし総書記長を見る。


総書記長は俺を剥がそうと近づいてきていた。


【王子】

「…よい」


【ヴァトリナ】

「喋った!?」


【王子】

「余がカエルの姿をしていたのだ」


【王子】

「余の行いのためだ」


カエルがグルグルと声を出す。


【王子】

「…だが、余と判ったのだから、手を退けよ」


俺は急いで跪く。


【ヴァトリナ】

「王子様と知らず、失礼な事をしてしまい、大変申し訳なく――」


【王子】

「許そう」


【王子】

「しかし、これほどカエルに親しみを覚える者がいるとは」


【王子】

「ヴァトリナ・リンドストレーム。つくづく不思議な女だ」


確かに怖がる人もいるが

前世での男子高校生の魂を持つ俺なのだ。


カエルを怖がる事はない。


むしろ


【ヴァトリナ】

「とても、可愛らしいかと」


【王子】

「ほう」


【王子】

「分かるか、この姿の良さを」


カエルが興味深そうに俺を覗き込む。


【ヴァトリナ】

「はい。ですから、つい撫でてしまいました。」


ウソは言っていない、はず。


【イーシア】

「叩いてたじゃない」


イーシア、ここは黙ってて。


【ヴァトリナ】

「カエルとはこう撫でる物です。皮膚が伸びますゆえ」


【王子】

「なるほどな」


カエルは考え込むような仕草をする


【王子】

「そなたとは、話が合いそうだ」


カエルは総書記長に向かって手をかざす。


【総書記長】

「はっ。」


【総書記長】

「皆様、こちらの席へ」


着席を促される。


【総書記長】

「紅茶を用意いたします」


――


俺が紅茶をすするとイーシアが肘でツンツンしてきた。


ああ、流し込むんだったな。


カップを傾け口に含む。


あまり飲んだ気がしないな。


【王子】

「聴きたい事がある」


【王子】

「制服の事だ」


【王子】

「何故、拒む」


いきなりだな。


【ヴァトリナ】

「俺は、この旧制服が好きだ」


【ヴァトリナ】

「そして、新制服が嫌いだ」


【ヴァトリナ】

「それだけです」


沈黙。


【王子】

「それだけか?」


【ヴァトリナ】

「はい」


【王子】

「本当に?」


【ヴァトリナ】

「王子様に嘘は言いません」


カエルは俺を不思議そうに見る。


【王子】

「カエルの良さがわかる感性なのにか?」


この新制服はカエルがモチーフだったのか?


いや、違うだろ。


【ヴァトリナ】

「人には人の良さ

 カエルにはカエルの良さがあるかと存じます」


カエルは考え込む。


逆に聴いてみよう。


【ヴァトリナ】

「では、こちらからもよろしいでしょうか?」


【王子】

「許す」


【ヴァトリナ】

「何故、新制服はあのような物なのですか?」


ここだな。


人に合わせて理由を変える王子だ。


警戒せねば。


【王子】

「そうだな」


王子は指をパチンと鳴らす。


するとカエルの姿がゆがんでゆく。


そして


人間の姿になった。


青い髪をした美形の青年。


【王子】

「どうだ?」


俺の様子を観察している。


ここで俺が何に反応するかを見ている。


なら


【ヴァトリナ】

「人に戻りましたな」


と、とぼけてみる。


王子は俺を観察し続ける。


【王子】

「この制服の伸縮性は素晴らしいだろう?」


【王子】

「ムスカールの筋肉肥大にも耐えられる」


確かに服は破れていない。


そういえばムスカールの奴の新制服も破れていなかったな。


少し考える。


生徒会長に、こんなの実用性が無いと文句を言った事を思い出す。


なるほど。


おそらく王子はそこを付いてきている、はず。


【王子】

「余のような変身魔法の使い手には有用だろう」


【ヴァトリナ】

「それならば同じ素材で旧制服を作れば良いでしょう」


王子は紅茶を口にする。


【王子】

「この布は魔法を帯びている」


【王子】

「高価なのだ」


【王子】

「大量には使えぬ」


ヴェーラにも言った価格の話。


どうやら裸の王様の方だったか。


スケベ王子でなくて良かった。


【ヴァトリナ】

「旧制服へ伸縮するのに必要な部分を作り、そこにだけ使えばよろしいかと」


王子は俺の制服を見ている。


【王子】

「…デザインが嫌、という事か」


【ヴァトリナ】

「はい」


【王子】

「はい、か」


王子は、少しだけ目を細める。


【王子】

「つまらぬな」


【王子】

「もっともらしい理屈を並べるかと思ったが」


【王子】

「結局は、好き嫌いか」


【ヴァトリナ】

「ええ」


【ヴァトリナ】

「それだけです」


王子はカップを置く。


その音が、妙に重く響いた。


【王子】

「その“それだけ”で」


【王子】

「学園の方針を変えようとしているのか?」


【ヴァトリナ】

「はい」


【王子】

「その“それだけ”で」


【王子】

「多くの者の利を損なうかもしれぬのだぞ」


【王子】

「平民に行き渡る布も減る」


【王子】

「戦闘時の安全性も下がる」


【王子】

「それでも、か?」


少し、間が空く。


……なるほど。


これが、この男のやり方か。


正論を、積み上げてくる。


【ヴァトリナ】

「それでも、です」


【王子】

「理由は?」


【ヴァトリナ】

「簡単です」


一拍。


【ヴァトリナ】

「俺は――」


【ヴァトリナ】

「嫌なものを“正しい”と言われても、従えません」


王子の視線が、わずかに変わる。


【王子】

「……ほう」


【ヴァトリナ】

「機能があろうが」


【ヴァトリナ】

「理屈が通っていようが」


【ヴァトリナ】

「嫌なものは、嫌です」


【ヴァトリナ】

「それを飲み込めるほど、俺は出来た人間じゃない」


【イーシア】

「……」


【ヴェーラ】

「……」


【王子】

「つまり」


【王子】

「己の感情を、理より優先する、と」


【ヴァトリナ】

「ええ」


【ヴァトリナ】

「その通りです」


王子は、少しだけ笑った。


【王子】

「愚かだな」


【王子】

「だが――」


ほんのわずかに、愉しそうに。


【王子】

「嫌いではない」


王子は椅子にもたれかかる。


【王子】

「では、もう一つ問おう」


【王子】

「もし」


【王子】

「その“嫌い”を押し通した結果」


【王子】

「国が損をするとしても」


【王子】

「それでも貫くか?」


来たな。


一番、重いやつだ。


……正直、重すぎる。


だが。


ここで濁すと、負けだ。


【ヴァトリナ】

「はい」


【王子】

「迷いはないか?」


【ヴァトリナ】

「ありますよ」


【ヴァトリナ】

「めちゃくちゃあります」


【ヴァトリナ】

「今も、逃げたいですし」


【ヴァトリナ】

「出来るなら、他国に亡命したいです」


【イーシア】

「ちょっと!?」


【ヴェーラ】

「えっ」


【ヴァトリナ】

「でも」


一度、息を吐く。


【ヴァトリナ】

「それでも」


【ヴァトリナ】

「自分の着る服くらい、自分で決められないなら」


【ヴァトリナ】

「その先にある“正しさ”なんて」


【ヴァトリナ】

「俺は、信用できません」


王子の手が震えた。

カップの縁が、かすかに鳴る。


沈黙。


今度は、さっきより長い。


王子は、しばらく俺を見ていた。


そして――


王子は静かにカップを持ち上げた。


【王子】

「なるほど」


紅茶の香りが、わずかに揺れる。


【王子】

「面白い」


ゆっくりと、口元へ運ぶ。


【王子】

「実に、面白いな」


その視線は――俺だけに向けられていた。


値踏みするでもない。

敵を見るでもない。


ただ、観察する目。


【王子】

「だが、残念だ」


わずかに、声の温度が落ちる。


【王子】

「巨星とは――二つ並び立たてぬ物なのか……」


王子の目が、わずかに細くなる。


【ヴァトリナ】

(巨星?なんだそれは?急にスケールが大きくなったぞ)


【ヴァトリナ】

(もしかして強く輝く星が巨星か?)


【ヴァトリナ】

(なら一つは俺、もう一つに相反する人間がいるのか?)


【ヴァトリナ】

(それが王子様なんだろうか?)


【ヴァトリナ】

(…わからんな)


俺もカップを取る。


ズズ、と音を立てて紅茶をすする。


マナー?

知らん。


俺の言いたいことは、言い切った。


これで、説得して止まるような人間じゃないことくらいは――

理解したはずだ。


【ヴァトリナ】

(さて……)


この男は、どう出る?


権力でねじ伏せるか。


それとも、別の理屈を積んでくるか。


……だが。


俺は新しい材料は、出していない。


ただ、嫌だと言っただけだ。


駄々っ子みたいにな。


だから

まあ、何も出ないだろう。


あとは――選挙で勝つだけだ。


王子は、カップの中身を飲み干した。


静かに、置く。


その音だけが、妙に響く。


【イーシア】

「じゃあ、私にも発言させてくれないかしら?」


ああ、そうだった。


これは一対一じゃない。


三対一だ。


【王子】

「許す」


【イーシア】

「別に、この新制服」


【イーシア】

「防御力、高くないわよ」


淡々とした口調。


だが、その言葉ははっきりしていた。


そうだ。


俺は何度も戦った。


だが、防御が上がっている実感は――ない。


【王子】

「……」


【王子】

「そうなのか?」


【イーシア】

「ええ。伸縮性があるだけ」


イーシアは自分の肩の辺りの布を引っ張る。


【ヴァトリナ】

「イーシア、それはやめろ」


【イーシア】

「なんでよ?」


【ヴァトリナ】

「……普通にドキドキするだろ」


【イーシア】

「ちょっと、何言ってんのよ!」


イーシアは少し顔を赤くする。


まったく、イーシアは自分の魅力に無自覚すぎて困る。


仲間からの一撃とは、予想外だ。


……いや、今はそれどころじゃない。


俺は王子の様子を探る。


王子は、わずかに視線を落としていた。


考えている。


【ヴェーラ】

「殿下、私にも発言を許してください」


【王子】

「許す」


【ヴェーラ】

「布は、供給不足ではありません」


【王子】

「なにっ」


【ヴェーラ】

「上級貴族アルトワール家と御用商人が、

 私腹を肥やすために価格を吊り上げていました」


【王子】

「……確かか?」


【ヴェーラ】

「はい。調べました」


【王子】

「アルトワール家が……」


……やるな。


さすが、平民の星。


仕事が速い。


【ヴェーラ】

「お望みでしたら、資料をお渡しします」


【王子】

「……よこせ」


ヴェーラはマントの内側から封筒を取り出し王子に渡す。


王子は一通り目を通す。


【王子】

「……」


資料を机の上に置き、俺に視線を移す。


王子は、何も言わない。


黙ったまま、考え込んでいる。


……勝った、か?


理屈は崩れた。


逃げ道もない。


これで――


そう思った、その時。


【王子】

「ヴァトリナ・リンドストレーム」


静かに、名を呼ばれる。


【王子】

「何故、新制服が嫌いなのだ?」


……まだ、来るか。


俺はイーシアを見る。


期待している目だ。


“諫めろ”と。


……まあいい。


ここまで来たんだ。


一つくらい、本音をくれてやる。


ストレートにな。


【ヴァトリナ】

「格好悪いからです」


【王子】

「……格好悪い?」


【王子】

「最新式が?」


【ヴァトリナ】

「王子様は、騙されているのですよ」


空気が、凍る。


【ヴァトリナ】

「防御力も、価格も、格好良さも」


【ヴァトリナ】

「全部――ウソだ」


【王子】

「――黙れ」


低い。


怒りではない。


もっと別の――

触れてはいけないものに触れたような声だった。


【ヴァトリナ】

「平民にも、政治家にも、他国にも」


【ヴァトリナ】

「いい笑い種だ」


次の瞬間。


胸倉を掴まれる。


息が詰まる距離。


【王子】

「……」


その目。


怒りか。


それとも――


別の何かか。


【ヴァトリナ】

「黙らせたいなら、決闘でもしましょうか?」


【ヴァトリナ】

「貴方が作ったルールです」


【ヴァトリナ】

「決闘も、選挙も」


【ヴァトリナ】

「貴方が作った」


王子は、しばらく俺を見ていた。


そして――


ゆっくりと、手を離す。


【王子】

「……」


沈黙。


何も言わず、席に戻る。


落ち込んでいる――ようにも見える。


だが。


【ヴァトリナ】

(……本当に、そうか?)


違和感が、残る。


だが――


……ここで、決める。


【ヴァトリナ】

「王子様、この新制服は国のためにはなりません」


【ヴァトリナ】

「私が替えてみせましょう」


王子は国益を語った。


だから、これが効くはずだ。


王子は俺を見る。


その目には怒りのような物が宿っている。


【総書記長】

「権力は振るうたびに、権威が傷つきます」


総書記長が、静かに言う。


【王子】

「総書記長。発言を許した覚えはない」


【総書記長】

「失礼しました」


――だが、退かない。


わずかに、口元が緩む。


【総書記長】

「本当の理由を、お話になられては?」


【ヴァトリナ】

(本当の理由?)


王子はゆっくりと総書記長を睨みつける。


【王子】

「総書記長」


【王子】

「発言は許さぬと言ったはずだ」


総書記長は動かない。


ただ、口元を緩ませて王子を見ている。


沈黙が流れる。


重い空気だけが、場を満たす。


そして――


王子は天井を見上げる。


【王子】

「帰れ」


【王子】

「お茶会は終わりだ」


短く、それだけ。


俺たちは、追い出された。


……。


扉が、閉まる。


【ヴァトリナ】

(……勝った、のか?)


そう思った。


だが――


胸の奥に、小さな棘が残る。


【ヴァトリナ】

(あれは――負けた顔じゃない)


王子の最後の表情が、胸に刺さる。


【ヴァトリナ】

(何かを……決めた顔だ)


不穏な予感だけが、静かに残った。


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