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俺が異世界転生したら女魔法使いだったが、新制服がエロすぎたので全力で抵抗することにした  作者: 竹屋 兼衛門


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第十二話:決闘と新制服、そしてサキュバス

俺が生徒会長をぶっ飛ばしてから、十六日後。


その日、俺はヴェーラと決闘することになった。


学園の決闘場。

観客席もない、ただの広い石の広場だ。


冷たい風が吹き抜けていく。


その中央で、俺は腕を組んで待っていた。


ヴェーラはまだ来ていない。


今この場にいるのは――

俺とブラーサル、ムスカール、そしてサーブルだ。


【ブラーサル】

「って、なんでサーブルさんが居るの?」


ブラーサルが首を傾げる。


【サーブル】

「ん? ヴェーラに見届けろと言われたのだが」


【ブラーサル】

「どんな関係なの」


【サーブル】

「わからん。士官学校の連中とランニングをした程度だ」


【ムスカール】

「……恋やもしれぬ」


【サーブル】

「はぁ? そ、そそそそそんな訳ないだろうが!」


サーブルは顔を赤くし、慌てて腕を振り回した。


【ヴァトリナ】

「んな訳ねーよ。ヴェーラは王子様に夢中だからな」


【サーブル】

「そ、そうなのか」


あからさまにガッカリするなよ。


そんなバカ話をしていると――


石畳を踏む足音が響いた。


視線を向ける。


ヴェーラだ。


【ヴェーラ】

「お待たせしました」


ヴェーラは新制服の上に、大きなマントを羽織っていた。


風が吹き、マントがわずかに揺れる。


その目は、いつものように真っ直ぐだ。


【ヴェーラ】

「準備は完了しています」


【ヴェーラ】

「この体に、あなたが操れる水分はありません」


なるほど。


俺の戦いを見ていたのだ。


当然の対策だろう。


汗すらかいていない。


完全に水魔法対策だ。


【ヴァトリナ】

「そうか。条件は?」


【ヴェーラ】

「あなたが新制服を着ること」


【ヴァトリナ】

「なら、旧制服を支持すること」


【ヴァトリナ】

「それと王子様について話してもらう」


ヴェーラは一瞬だけ目を細めた。


だが、すぐに頷く。


【ヴェーラ】

「……いいでしょう」


【ヴァトリナ】

「始めるか」


【ヴァトリナ】

「ブラーサル、合図を」


【ブラーサル】

「わかった」


ブラーサルは大きく息を吸い込む。


決闘場の空気が、ぴんと張り詰めた。


そして――


【ブラーサル】

「レディ――ファイト!!」


俺は水の盾を前方に展開し、そのままヴェーラへ突進した。


石畳を蹴る。


距離は一気に詰まる。


だが――


ヴェーラは動かなかった。


マントの中から、一本の杖を取り出す。


それを空へ放った。


杖は地面に落ちない。


空中で止まった。


魔力の糸で、ヴェーラと繋がっている。


次の杖。


さらにもう一本。


三本。


四本。


まだ増える。


そして――


十本。


空に並んだ杖が、一斉にこちらを向いた。


まるで銃口だ。


【ヴェーラ】

「一斉射撃」


次の瞬間。


空気が弾けた。


金属弾が雨のように飛んでくる。


ドンッ!!


弾丸が水の盾に叩きつけられた。


衝撃が腕に伝わる。


ひびが走る。


なんて威力だ。


サーブルの魔法とは、明らかに違う。


【ムスカール】

「サーブル……ヴェーラは士官学校生なのか?なぜ黙っていた!?」


【サーブル】

「俺も知らなかった」


【ブラーサル】

「なんでだよ!? こんなすごい人なら有名になってるはずだって!」


【サーブル】

「そもそも、男性と女性はクラスが違う」


【サーブル】

「確かに成績上位者なら交流もあるが……ヴェーラという名は聞いたことがない」


【サーブル】

「家名はなんだ? どこの家の者だ?」


【ブラーサル】

「……ヴェーラは平民だよ」


サーブルは絶句した。


【サーブル】

「平民が……俺の十人分だと……」


俺の水の盾は、水を停止させて作る防御だ。


だが弾丸相手なら――


俺は盾を回転させる。


水流を高速で回し、円錐状に変形させた。


弾丸を逸らす水流の盾だ。


【ヴェーラ】

「次弾装填」


足元の土が弾丸状に変形し、金属化していく。


杖へと装填された。


【ヴェーラ】

「一斉射撃」


弾丸が再び飛ぶ。


水流の盾に弾丸が触れる。


思った通り、弾丸は逸れた。


【ヴァトリナ】

「弾丸じゃ俺は止められない」


サーブルが悔しそうな顔をした。


【サーブル】

「俺との闘いで使わなかった技ではないか」


【ブラーサル】

「舐められてたって事じゃない?」


【サーブル】

「お前は見た目と反して口が悪いな!」


ヴェーラは俺を観察していた。


冷静な目だ。


【ヴェーラ】

「次弾装填。順次射撃」


今度は一発ずつ。


弾丸が飛ぶ。


盾に当たる。


弾かれる。


……軌道を見ている。


【ヴァトリナ】

(バレる前に倒す)


俺は距離を詰めた。


近距離戦の間合い。


水流を圧縮し、回転する水の刃を作る。


水の回転ノコギリだ。


それを振り上げ――


ヴェーラへ斬りかかった。


だが。


手応えがない。


消えた。


【ブラーサル】

「上だ! ヴァトリナ!」


見上げる。


ヴェーラは空にいた。


マントを固定し、風魔法の風を受けて浮遊している。


杖が、俺の周囲へ広がる。


まずい。


包囲された。


俺は流水の盾を広げ、全身を覆う。


【ヴェーラ】

「包囲殲滅陣、交互射撃」


ヴェーラの十本の杖が、まるで生き物のように俺を追い詰めてくる。


クソ。


これじゃファンネルだ。


【ヴァトリナ】

(……まずい)


包囲殲滅陣の弾丸が、水流の盾を削り取っていく。

流水の盾を広げたせいか

一発一発が、逸らせない。


水が悲鳴を上げている。


【ヴァトリナ】

(このままじゃ押し切られる……!)


胸の奥が冷たくなる。

こんな感覚は久しぶりだ。


【ヴァトリナ】

「距離を取らねば」


【ヴェーラ】

「させません」


ヴェーラは杖を一本掴み、俺の前へ降りてきた。


そして――


流水の盾の流れに合わせて杖を振り込む。


水流の勢いを利用した一撃。


杖が盾を抜け、俺の体へ叩き込まれた。


【ヴァトリナ】

「ぐあっ!」


俺は地面に転がった。


【ヴェーラ】

「さあ、敗北を認めてください」


風に揺れたマントの影から、ヴェーラの視線がまっすぐこちらを射抜く。


【ヴェーラ】

「私は、できればアナタを傷つけたくありません」


【ヴァトリナ】

「甘いな。そんな気持ちで平民の希望の星なんてなれるのか?」


平民の希望の星、か。


中央の平民が、

冬を越すための布すら買えない。


そんな話は、

俺も知らなかった。


正直、なかなかショックだった。


中央は――違うのか。


【ヴェーラ】

「アナタは私に優しくしてくれた」


ヴェーラは少しだけ視線を落とした。


【ヴェーラ】

「貴族なのに、平民の私に」


【ヴァトリナ】

「なら俺の大事な旧制服を取り上げてくれるなよ」


【ヴェーラ】

「……ですが私は、殿下の希望の星でもあるのです」


殿下の希望の星、か。


その言葉を口にする時だけ、ヴェーラの声は少し強くなる。


忠誠か。

それとも――憧れか。


【ヴァトリナ】

「なら、なんで王子様は俺から旧制服を取り上げる?」


【ヴェーラ】

「そ、それは……」


言葉が止まる。


口止めでもされているのか。


ヴェーラの視線が揺れた。


悩んでいる。


もう一押しだ。


【ヴァトリナ】

「理由次第なら、負けを認めてやってもいいぞ」


一瞬、空気が止まる。


ヴェーラは小さく息を吸った。


【ヴェーラ】

「……布です」


【ヴァトリナ】

「布?」


【ヴェーラ】

「新制服は布が少ない」


【ヴェーラ】

「需要が減れば、平民に回る布も安くなる……そう言われました」


王子様が何を考えているのか、分からなくなった。


生徒会長には「進歩」と言い、

ヴェーラには「価格低下」と言う。


相手によって理由を使い分けているのか?


それとも――


【ヴァトリナ】

「ヴェーラ、お前は騙されているんじゃないか?」


【ヴェーラ】

「な、なにを」


【ヴァトリナ】

「多分、それじゃ布は安くならない」


【ヴェーラ】

「どういうこと?」


【ヴァトリナ】

「俺の領地なら、それほど高くはない」


【ヴァトリナ】

「貴族も平民も、同じ値段で買える」


【ヴァトリナ】

「流通してるんだ。物不足じゃない」


【ヴァトリナ】

「つまり中央は、平民を搾取する価格にしているだけだ」


ヴェーラの表情が固まった。


【ヴェーラ】

「ウソ……」


【ヴェーラ】

「でも、それなら……なんで」


言葉が続かない。


信じたいものと、聞かされた現実。

その間で、心が揺れているのが分かる。


――怒らせるか。


【ヴァトリナ】

「多分、お前のそのサキュバスみたいな格好を見たがってるんだろうな」


【ヴァトリナ】

「王子様は」


【ヴェーラ】

「サ……サキュバス」


ヴェーラは、自分の新制服を見下ろした。


布が少ない。

体の線を強調する服。


【ヴェーラ】

「ウソだ!」


【ヴェーラ】

「私の体に、そんな目的で見る価値なんてない!」


【ヴァトリナ】

「ある!」


思わず声が大きくなる。


ヴェーラがびくりと肩を震わせた。


【ヴァトリナ】

「おい!野郎ども!」


俺は後ろの三人を指さした。


【ヴァトリナ】

「ヴェーラの姿を見てどう思ってるか、正直に言え!」


【ヴァトリナ】

「まずはブラーサル!」


【ブラーサル】

「ええ!? 僕!?」


【ブラーサル】

「その……もっと慎み深い服装の方が――」


【ヴァトリナ】

「違う!もっとストレートに!」


【ブラーサル】

「エッチです!!」


【ヴァトリナ】

「よし!次はサーブル!」


【サーブル】

「卑猥だ!」


【サーブル】

「正直、この魔法学園に来たとき!娼館かよ!ってツッコミを入れたかったぞ!」


【ヴァトリナ】

「よし!ラスト!ムスカール!」


【ムスカール】

「美しい筋肉だ!」


【ムスカール】

「良く鍛えられている!」


【ヴァトリナ】

「よし!お前に聞いた俺がバカだった!」


ヴェーラの顔が一瞬で赤くなった。


耳まで真っ赤だ。


慌ててマントを引き寄せ、体を隠す。


【ヴェーラ】

「見るなー!」


【ブラーサル&サーブル&ムスカール】

「ぎゃあああああ!!」


ヴェーラの一斉射撃が、三人に降り注いだ。


石畳が弾け、砂煙が上がる。


その騒ぎを横目に、俺は魔力を流した。


腰の水筒。


その中の水を震わせる。


細かな水滴が霧のように広がった。


それを魔力で押し広げる。


白い霧が決闘場を覆う。


視界が閉ざされた。


場所を変える。


こんな遮蔽物のない場所では、俺が不利だ。


背後で弾丸が石畳を砕く音がする。


俺は走った。


霧の中を、足音を殺して一直線に。


目指す場所は決まっている。


俺が絶対有利になれる場所――


水がある場所だ。


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