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俺が異世界転生したら女魔法使いだったが、新制服がエロすぎたので全力で抵抗することにした  作者: 竹屋 兼衛門


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第1話:その制服、問題ありすぎだろ

正直、最初に思ったのは――


この魔法学園、制服おかしくないか?


魔法学園の制服は、やたら布が少なく、意味のわからない切れ込みや装飾が多い。

動くたびに飾りがひらひらして、主張だけは一人前。

だが、実用性がまるで感じられない。


防御用にも、儀礼用にも見えない。

少なくとも、俺の知っている「学校の制服」ではなかった。


強いて言うなら――

サキュバス学園かよ!?


俺の名は――ヴァトリナ・リンドストレーム。


元はごく普通の男子高校生。

今は下級貴族の娘として、この世界に生まれ変わっている。


母も通っていたというこの魔法学園に入学したのだが……。


聞いていた話と、だいぶ違う。


母の時代の制服は、もっと落ち着いていて、動きやすくて、

何より「服として」成立していたらしい。


だから俺は、その旧式制服を受け継いだ。


――気に入っていたからだ。


この制服。


丈は長め、装飾は控えめ。

動きやすくて、落ち着く。


正直、可愛い。


前世で見たお嬢様高校みたいな優雅さがある。


この制服だから、この魔法学園に入学を決めたくらいに好みだった。


誰だって女に生まれ変わったら、

こんな制服を着たがるはずだろう。


※個人の意見です。


だから俺は、この制服で登校した。


結果――


学園の中で、明らかに浮くことになった。


そして案の定、入学初日で生徒会長に呼び出された。


生徒会室。


扉をくぐった瞬間、空気が変わった。


静かすぎる。


俺と同じように旧式制服を着た生徒たちが、

ずらりと並ばされている。


誰も喋らない。

誰も目を合わせない。


――怒られる前の教室みたいだ。


目の前には――


サキュバスみたいな制服を着た、生徒会長。


金髪縦ロール。

背筋はぴんと伸び、笑顔は完璧。


完璧なお嬢様。


――人形みたいに整いすぎていて、逆に怖い。


【ヴァトリナ】

(ああ、これ――逆らっちゃいけないタイプのやつだ)


生徒会長は、ゆっくりと扇子を閉じた。


【生徒会長】

「貴方達。その制服は規定制服ではありませんわね」


静かな声。


だが、部屋の空気は凍っていた。


旧制服の生徒たちは、みんな下を向いている。


空気が重い。


でも――


俺は男だ。魂だけは。


言うべきことは言う。


【ヴァトリナ】

「いや無理だろ」


全員がビクッとした。


【ヴァトリナ】

「そもそも、なんであんな服が“規定”なんだよ。

 胸元開きすぎだろ。脚も出過ぎ。どう見てもハイレグだ。

 どんな実用性があんだよ!?」


【生徒会長】

「まあ」


生徒会長は少しも動じず、扇子を閉じた。


【生徒会長】

「時代の進歩ですわ」


【ヴァトリナ】

「……は?」


【生徒会長】

「身体を隠すことが“品位”だと考える価値観こそ、旧時代的ですのよ。

 露出=卑猥、という発想は、とっくに乗り越えられていますわ」


理路整然。

その言葉には、ためらいも、揺らぎもなかった。


【ヴァトリナ】

(これが、この世界での“最新の常識”なのか……)


【ヴァトリナ】

(だとしたら――だいぶ終わってるな、この世界)


だが、元は男子高校生だった魂を持つ俺には、刺激が強すぎる。


【ヴァトリナ】

「いや無理だろ

 見せる自由とか以前に、目のやり場がねえんだよ」


【生徒会長】

「それは、貴方の主観ですわ」


生徒会長は、やはり微笑んだままだった。


【生徒会長】

「この学園では、最新式制服こそが“正しい”。

 規則は、全生徒に平等に適用されます」


【ヴァトリナ】

「視線が気になり過ぎるだろ」


【生徒会長】

「自意識過剰では?」


一刀両断だった。


【ヴァトリナ】

(ああ、駄目だ。)


【ヴァトリナ】

(この人、理屈が完全にキマってる。)


【生徒会長】

「ですから」


生徒会長は一歩前に出る。


床を叩く靴音だけが、やけに大きく響いた。


【生徒会長】

「決闘しましょう」


【ヴァトリナ】

「待て待て待て」


【ヴァトリナ】

「話が飛びすぎだろ」


【生徒会長】

「この学園では、力で示された正しさが最終結論。

 勝った者に、従う。それが規則ですわ」


逃げ道は、最初から無かった。


【生徒会長】

「皆さんもご覧なさい」


旧制服の生徒たちを見回す。


【生徒会長】

「逆らう者がどうなるか」


――こうして俺は。


制服の是非を賭けた決闘に

立たされることになった。



廊下。


さっきまでの重苦しい空気が、少しだけ薄れる。


俺たちは、風紀委員長を名乗る男に連れて行かれていた。


【ブラーサル】

「なんだか大変なことになっちゃったけど、大丈夫?」


こいつは

ブラーサル・リンドベリ。


美少年系。やたら純粋。

そして遠い親戚。


……だが男だ。


【ヴァトリナ】

「そもそもだ」


【ヴァトリナ】

「なんでこんなサキュバスみたいな制服なんだよ」


【ブラーサル】

「男性向けはインキュバスだよ」


前を歩く風紀委員長を見る。


【ヴァトリナ】

「まるで笑えないコメディアンの裸芸だな」


【風紀委員長】

「おい、聞こえたぞ」


【風紀委員長】

「この格好良さ、田舎者には判らんのも仕方ない」


【風紀委員長】

「だがコメディアン扱いとは無礼がすぎるだろう?」


風紀委員長は不良みたいに

ポケットに手を突っ込んで睨みつけようとした。


だが、この制服にはポケットが無い。


行き場を失った手が

妙に腰のあたりをさまよう。


ハイレグが激しい。


【ヴァトリナ】

「がははは! まさにコメディアンだ」


【ブラーサル】

「笑えたじゃん!」


風紀委員長は俺の胸倉をつかむ。


【ヴァトリナ】

「おい、俺は、これから生徒会長と決闘なんだぜ?」


【ヴァトリナ】

「お前が俺を痛めつけないと、生徒会長は負けるとでも言うのか?」


風紀委員長は、ゆっくり手を離した。


【風紀委員長】

「……ふん」


【風紀委員長】

「今だけだ。好きに言え」


再び歩き出す。


ケツがプリプリしている。


【ブラーサル】

「じゃあさ」


声を落として話しかけてくる。


【ブラーサル】

「目のやり場がないって、どこに?」


【ブラーサル】

「あのお尻じゃないの?」


【ヴァトリナ】

「くっくっく。あんなプリケツ、笑えるだけだろ」


【ブラーサル】

「笑いすぎて目のやり場が無いって事?」


【ヴァトリナ】

「違う。困るのは、女性用だ」


【ブラーサル】

「ええ?じゃあ視線が気になり過ぎるってのは?」


【ヴァトリナ】

「俺は男の視線を感じたくない」


男子高校生の魂を持つ者として、

俺は知っている。


男子が女子を見るとき、

最初にどこを見るのかを。


なにしろ前世の俺も、

同じことをしていた。


……今は反省している。


実体験に基づく知識だ。


だから嫌なのだ。


【ブラーサル】

「それ、なんだか男みたいな感想だね」


背筋がヒヤッとした。


危ない危ない。

転生者だとバレたら説明が面倒だ。


【ヴァトリナ】

「なんだよ。って事はブラーサルも同じって事か?」


切り返す。


【ブラーサル】

「まあ、そうだね。僕も同じ感想かな」


【ヴァトリナ】

「じゃあ仲間だな。」


よし、誤魔化せた。


【ブラーサル】

「……ヴァトリナも相当変わってるよ」


まあそうだろう。


俺の中の男子高校生の魂ゆえの行動は止められない。


奇異の目で見られるのは慣れている。


だが。


サキュバスみたいな服を着て見られるのだけは勘弁だ。


俺達は風紀委員長の後について行く。


やはりケツがプリプリしていた。


――決闘場。


学園の敷地の一角に

当たり前のように用意されているその場所を見て、俺は思った。


……この学校、どれだけ決闘してるんだ。


【風紀委員長】

「では、これから旧制服派の粛清を開始する」


【ブラーサル】

「ええ?決闘じゃないの!?」


【風紀委員長】

「同じ事だ」


【生徒会長】

「風紀委員長」


静かな声。


【生徒会長】

「決闘ですわ」


杖を向け威圧する。


【生徒会長】

「我ら魔法学園は、圧政ではありません」


【風紀委員長】

「も、申し訳ありません」


こいつ、へこへこしすぎだろ。


【生徒会長】

「では、ヴァトリナさん」


【生徒会長】

「決闘では、何を賭けて戦うか宣誓します」


【ヴァトリナ】

「ほう、例えば?」


【生徒会長】

「ワタクシは貴方に新式の制服を着て貰う事を賭けます」


【ヴァトリナ】

「なるほどな。」


【ヴァトリナ】

「だったら俺は、アンタに旧式の制服を着てもらう」


【生徒会長】

「よろしいですわ。」


【生徒会長】

「風紀委員長、合図を」


風紀委員長は息を吸う。


【風紀委員長】

「レディ――」


【風紀委員長】

「ファイト!!」


そして。


決闘が始まった。


ざわめきが、一瞬で消える。


俺が使えるのは、低レベルの水属性魔法だけだ。

熟練者なら大気中の水分を集めることもできるらしいが、今の俺には無理。


つまり――この水筒に入っている分が、すべて。


【ヴァトリナ】

(これで仕留めないと終わり、か)


【生徒会長】

「ワタクシは、土属性が得意でしてね」


生徒会長が杖を構える。

展開される魔法陣は、無駄がなく、理屈が通っている。


――完成されすぎている。


見ただけで分かる。――強い。


次の瞬間、地面が弾け、土の弾丸が飛んできた。


速い。


俺は即座に水を引き寄せ、盾を作る。


ぶつかる。


衝撃が腕に響き、水が弾け飛ぶ。


……防げた。だが――


【ヴァトリナ】

(削られてる)


……防ぐだけで、削られていく。


魔法で撃ち合っても勝ち目はない。


なら、距離を詰めて――

殴り合いだ!


俺は弾丸をかわしながら、前に出た。


その瞬間。


足元の地面が、せり上がる。


【ヴァトリナ】

(しまった――)


土の壁だ。


【生徒会長】

「ふふ」


生徒会長は、動かない。


【生徒会長】

「このワタクシに、近づけると思いまして?」


確かに。

この壁では一歩も踏み込めない。


……だが次の瞬間。


土の弾丸が――


壁を貫通して飛んできた。


【ヴァトリナ】

「はぁ!?自分で壊すのかよ!?」


【ヴァトリナ】

(魔法力でゴリ押しするタイプかよ!)


俺は水盾で防ぐ。


防ぐ。


防ぐ――。


そのたびに、水は散り、減っていく。


やがて。


水筒は、軽くなる。


【ヴァトリナ】

(……もう、残ってない)


次の一撃。


防げない。


土弾が直撃し、

俺の身体は地面に叩きつけられた。


視界が白く弾ける。


呼吸が止まる。


――ダウン。


【ブラーサル】

「ヴァトリナ―!!」


【風紀委員長】

「だから言っただろ」


【風紀委員長】

「粛清だと」


風紀委員長は嫌らしい笑みを浮かべる。


【ブラーサル】

「何がおかしい!」


【風紀委員長】

「生徒会長は学園最強だ」


【風紀委員長】

「いや――」


【風紀委員長】

「学園最強の者が、生徒会長になる」


【風紀委員長】

「決闘なんてのは建前だ」


【風紀委員長】

「強いやつが正しい。それがこの学園だ」


【風紀委員長】

「王族だろうが関係ない」


【風紀委員長】

「ここではな」


王族すら関係ない?


……なんだこの学園。


【ブラーサル】

「でも…!」


【ブラーサル】

「ヴァトリナはまだ負けてない!」


【ブラーサル】

「ヴァトリナ!立ってよ!ヴァトリナー!」


……すまんな、ブラーサル。


完全に詰んだ。


【生徒会長】

「おーほっほっほ」


生徒会長はゆっくり歩いてくる。


【生徒会長】

「もう終わりですわね」


完全に勝利を確信している顔だ。


【ヴァトリナ】

「……まだだ」


【生徒会長】

「諦めなさい」


【生徒会長】

「力の差は歴然ですわ」


そして。


くるりと回る。


最新式制服がひらりと舞う。


【ヴァトリナ】

(くそ。目のやり場に困るってレベルじゃない)


【風紀委員長】

「うほほ」


【ブラーサル】

「おい!

 あんたスケベな目で見てるじゃないか!

 格好良さを誇ってだろ!?」


鼻の下を伸ばした風紀委員長は怯まない。


【風紀委員長】

「スケベ格好良いだろ」


【ブラーサル】

「勝手な概念作るな!」


【風紀委員長】

「だがお前も分かるだろ?」


ブラーサルは赤面した。


【ブラーサル】

「学園でやるな!」


舞が終わる。


生徒会長は微笑んだ。


【生徒会長】

「この制服の美しさ。

 貴方も、そろそろ袖を通したくなったのではなくて?」


余裕の見せつけ。

だが、今の俺には、立ち上がる力すら残っていない。


【生徒会長】

「ごらんなさい。

 窮屈なコルッセットに縛られない、自由な姿」


【生徒会長】

「身体を誇る自由。それが新制服の理念ですわ」


【ヴァトリナ】

「こっちの旧式の制服にもコルセットなんて無ねよ」


生徒会長は小さくため息をつく。


【生徒会長】

「アピールが足りませんわ」


【生徒会長】

「このように斬新な服でなければ

 世界は変えられません」


制服で世界を変える?


何を言ってんだ。


【生徒会長】

「……王国の未来を担うお方も、

 そう仰っていましたわ」


【ヴァトリナ】

(誰のことだ?)


生徒会長は、ふっと微笑む。


【生徒会長】

「貴方にはまだ分からないでしょうけれど」


【生徒会長】

「世界は、今変わろうとしているのです」


土の弾丸がかすめた額から、遅れて血が流れ落ちてきた。

痛みは鈍いが、確実に削られている。


滲む視界を瞬きで振り払い、周囲を探す。

水は――ない。


条件は、完全に向こう有利だ。


――本当に、打つ手はないのか?


【ヴァトリナ】

「……なあ、知ってるか」


俺は、時間稼ぎのつもりで口を開いた。


【ヴァトリナ】

「人間の身体って、六割くらいは水でできてるらしいぜ」


生徒会長は、一瞬だけ考え、すぐに小さく息を吐いた。


【生徒会長】

「でしたら、なぜ流れている血を使わないのですか?」


……正論だ。


彼女の杖が、静かに俺の喉元へ向けられる。


【生徒会長】

「降参なさい」


【ヴァトリナ】

(終わり、か……?)


――いや。


【ヴァトリナ】

(まだ、ある)


思考が、必死に回る。


水。

水。


――あった。


【ヴァトリナ】

(体内の水分……)


【ヴァトリナ】

(なら――条件は満たしてる)


【ヴァトリナ】

(……最悪の手だが)


【ヴァトリナ】

(これしかない)


【ヴァトリナ】

「……悪いな」


次の瞬間、即席の刃とした水を、視界の外から生徒会長に叩きつける。


【生徒会長】

「きゃっ……!」


予想外の衝撃に、生徒会長の身体が揺らいだ。


【生徒会長】

「そ、そんな……。

 どこに、まだ水が……?」


【ヴァトリナ】

「あったんだよ」


【生徒会長】

「どこにですの……?」


俺は答えず、ゆっくりと視線を逸らした。

そして、ためらうように自分の下腹部を指さす。


【ヴァトリナ】

「……この水筒の中だ」


一瞬。


時間が止まった。


――誰も、すぐには意味を理解できなかった。


【風紀委員長】

「今、俺の新しい性癖の扉が開かれた…」


【ブラーサル】

「あんた、おかしいよ!

 風紀委員長やるべき男じゃない!」


生徒会長は頬を拭う。


【生徒会長】

「そんな下品な……

 恥を知りなさい!」


【ヴァトリナ】

「知ってるさ」


だからこそ、言い切る。


【ヴァトリナ】

「だから、その制服が嫌だって言ってんだよ」


【生徒会長】

「世界を変えるためだと――」


【ヴァトリナ】

「世界がどうなろうが知った事じゃない!」


【ヴァトリナ】

「俺は――」


【ヴァトリナ】

「俺が着たい制服を、着るだけだ!」


――生徒会長は、初めて言葉を失った。


空気が、止まる。


【ヴァトリナ】

「さあ……立てよ」


【ヴァトリナ】

「第二ラウンドだ」


――まだ、終わってない。



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