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銀髪の猫はなにを願う  作者: 熊猫
第二部

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第六十章:本音を言う場

挿絵(By みてみん)

ギルドの大広間は、珍しくのんびりとした空気に包まれていた。

依頼は休み扱いの日で、掲示板は閑散としている。

冒険者たちはテーブルを囲み、酒や軽食を手に他愛もない雑談に花を咲かせていた。

 

扉の鈴が軽く鳴った。

 

「おー、今日はおデートか~?」

からかう声が真っ先に飛ぶ。

メルとファナが並んで入ってきた。

ファナは思わず肩をすくめ、耳まで真っ赤になる。

 

「ち、ちが……ちょっと買い物なだけです!」

 

慌てて言い返すその声に、別の冒険者が笑いを堪えた。

「いいねぇ、休みに二人で買い物とか!」

「お幸せになー!」

 

ファナは顔を真っ赤にして、メルを見上げる。

メルは無言で舌打ちし、目を逸らした。

 

「……うるせぇ。」

 

「……もう、行こ。」

 

ファナが小声で言うと、メルは短く頷いた。

二人はそそくさと出口へ向かう。

冒険者たちの笑い声は背中に浴びせられたままだったが、ドアが閉まる音がそれを切り取った。

 

静寂が落ちた。

残ったのは、銀月の風のリクトとセナ、そして暁鋼の牙のラゼルとバルクだけだった。

リクトは肘をついて机をトントンと指で叩き、不機嫌そうに吐き捨てた。

「……チッ。あの騒ぎ、ムカつくな。」

セナは小さくため息をつき、彼を横目で見た。

「でも、事実だよ。」

「もう、あの二人はそういう関係なんだ。」

短い沈黙がテーブルを覆う。

誰もがその言葉を否定できず、視線を落とした。

 

ラゼルが腕を組み、低く切り込む。

 

「……さて。」

「当人同士が決めたことだ。」

「問題は、俺たちだ。」

 

バルクは無言のまま頷き、視線を鋭く走らせた。

ラゼルは目を細めて、続ける。

「……あいつは変わったな。」

「今までの自分を捨ててまで、欲しいものを取りにいった。」

「……本気だった。」

 

リクトが噛みつくように声を上げた。

「……分かってんだよ。」

「でもムカつくもんはムカつく。」

 

セナは静かに目を伏せた。

「僕もだ。」

「結局、動けなかったのは僕たちだ。」

 

バルクが低く短く呟いた。

「……あの顔は嘘つけない。」

「本気だったな。」

 

ラゼルは全員を鋭く見渡し、声を落とす。

「だからこそ問題なんだ。」

「二人が組むなら、私情を持ち込まない覚悟が要る。」

「……俺たちもそれを受け止める覚悟を決めろ。」

 

リクトは俯いたまま、震える手で拳を握り締めた。

「……チッ。」

「分かってるけど、そう簡単に飲み込めるかよ。」

「ムカつくし、悔しいし……でも、分かってる。」

 

セナがゆっくりと目を閉じ、苦く吐き出す。

「負けたよ。」

「僕たちは、自分を変えられなかった。」

 

短い沈黙が落ちる。

日差しがゆっくりとテーブルを照らす。

その光の中で、全員が影を伸ばしていた。

 

バルクが視線を落としたまま、ぼそりと漏らした。

「気持ちを捨てるんじゃない。」

「自覚しろ。」

 

ラゼルが少しだけ息を吐き、鋭さを緩める。

「気持ちを持ったまま組めるか。」

「それを決めるのは、ここにいる全員だ。」

 

セナが頷き、真剣な目をリクトに向けた。

「……だから話そう。」

「本音を。」

「今のうちに。」

 

リクトは鼻を鳴らし、苦笑交じりに目を伏せた。

「……言わねぇと終わっちまいそうだしな。」

 

全員が黙ったまま、だが視線を交わした。

そこにあったのは、わずかな決意と、逃げ場のない本音。

 

言葉はなくても、その空気がすべてを語っていた。

設定資料ページを作成しました。

キャラや用語の確認用として少しずつ整理していく予定です。

気になる方はシリーズ一覧からどうぞ。

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