67話ヴァンパイア
グレンとキリーの一行は、ヴァンパイア出現したという森の付近にある村に向かうためその道中にある荒野を突き進んでいた。
「ヴァンパイア。
己の身体を霧状に変え高い再生力を持つ魔物。弱点は日光であるため、昼間は隠れ、夜に活発になる。。ヴァンパイアは人に噛み付き眷属にする。・・・だったかなー?」
キリーは、昔、兵士の魔物の授業で習ったことを口に出していた。
「どうした、急に?」
グレンは、後ろに振り向きながらキリーに聞く。
「いやね。これからそのヴァンパイアを狩ろうとしてるんでしょ?だったら、その魔物関することを少しでも知っとけば役に立つじゃん。」
「そうして、思い出すことは結構だが・・・それは少し間違っているな。」
「えー?どこがよ?」
座学では、常にトップであったキリーは自分の記憶力に自信がある。それを間違っていると言われ少し腹がたった。キリーはどこが間違っているのかグレンに聞いた。
「ヴァンパイアは魔物ではなく魔族だ。」
だが、グレンの答えはキリーの斜め上をいっていた。
「いや・・・ちょっと待って・・・おかしいよ。だって、私が持っていた兵書はもうずっと長い間の年月をかけて研究者が書いた書物に書かれていたことなのよ?そこに、ヴァンパイアは魔物って書かれている・・・それじゃ、研究者たちは間違ってたことを世に出したことになるじゃない!?」
「いや、それ自体が間違っているわけではない。だが、合ってもいない。」
「もう、わけわからない。じゃあ、正解は何なのよ。」
「簡単に言えばヴァンパイアは、魔族から魔物に近づいた者だ。」
「そんなの答えになってないわ。」
グレンの言った答えに納得がいかないキリー。それを見たグレンは1つため息をつくと話し出した。
「500年前に強い魔族がいた。その魔族はそれで満足せずに力をさらに求めて続けた。その者は力を手に入れるために何をしたと思う?」
「何をって?」
「強い魔物の血を飲んだんだ。」
グレン言ったことにキリーの背筋に怖気が走った。
「そしたら、魔族の身体の内側から力が漲った。それに、歓喜した魔族は次々と魔物の血を飲んでいった。後に真祖と言われた者が誕生した。」
真祖。
300年前の勇者一行が倒したと言われるヴァンパイアの祖。他のヴァンパイアとは比べものにならないほど強く残酷な性格を持っていたを言い伝えられている。
「魔物の血に満足出来なくなった。真祖は、次に同族を襲った。そして、真祖に血を吸われた者は真祖と同じように同族を襲った。・・・そして、人にも危害を加え始めた。とは言っても襲ったのは真祖自身ではなく血を吸われた奴ららしいがな。」
「・・・・・・・・・」
「襲撃を何とか退けた人はその者らを研究し魔族ではない魔族というとこまで調べがついたのが勇者が召喚される数年前の話だ。そのころには魔族と人がどのような関係だったかは知っているだろう?」
勇者が召喚されたのは魔族と人、亜人の戦争の後期。その数年前としたら魔王が軍を率いて人の国に戦争をしかけ長い戦乱の時代だったはず。
「その時点で既に魔族と同族とみなしていなかった人は、ヴァンパイアを魔物と記し軽蔑した。・・・これが、ヴァンパイアが魔物となった経緯だ。」
昔語りが終わった時にはキリーは何も言わずただ、ずっと立ち止まっていた。
グレンの話に証拠は無い。普通なら鼻で笑って否定していたかもしれない。だが、哀しそうに話をするグレンを見てると嘘を言っているようにはキリーには見えなかった。
グレンには謎が多い。魔法という失われた技術を使う黒鎧を身につけている男。今、キリーがわかっているのはこれだけだ。しかし、グレンはもっと何か重要なことを隠している。キリーには、そう思えてならなかった。
「さて、長話で少し時間をくった。さっさと先に進もう。夜になる前にはここを抜けたい。」
だが、キリーはそのことについては聞くことは無いだろう。先に歩くグレンの背中を見ていつか自分から語ってくれると信じてキリーはグレンの後を歩いた。




