66話クズなる者の末路
屋敷の中に走る音が響く。
「クソ!何なんだアレは!?」
ヘンゲルは怒りを現しながら走る。私兵は全滅。高い金を払って手に入れたゼルも簡単に殺された。
「だっ旦那様。いっいかがしましょう?」
「うるさい!今、考えてる!!」
後ろから指示を求める執事に苛立ちながらも策を考える。
(あの化物の狙いはあの女だ。ならば、アイツを人質にして逃げる!逃げきれた後はペンドラゴンの騎士団で拘束して首を切り落としてやる。)
「だっ旦那様。」
「何だ!?」
「リーオ様はおられませんがどうなさいましょう?
執事が自分の息子の名前を出したことでここに息子がいないことに気づく。
「捨て置け」
「しかし!」
「構わん。元々の原因はあいつにあるんだ。これ以上面倒見きれん。」
アイツは失敗だった。元々、妻が子供を産む前に病死し愛人の女から生まれたアイツに魔術師の素養があったから育ていただけで親としての愛情を注いでなかった。
(アイツは失敗だった。今度はちゃんと選ばなくては。)
そのようなことを考えながらヘンゲルはさらに、足を速めて牢屋まで急ぐ。地下に続けく階段を駆け下りると鉄でできた扉が見える。ヘンゲルは扉に近寄り扉の鍵を開けようとして牢屋の鍵は執事が持っていたことを思い出す。
「牢の鍵をよこせ!」
「はっはい!」
手だけを後ろに回し鍵を出すように命じる。しかし、待っても手に鍵の感触はこない。早く逃げなければならないのに手間取っている執事にさらに苛立ちを募らせる。
「鍵を出すくらいで何を手間取っている!?早くよこさんか!?」
怒鳴りながら後ろに振り向くと首から上がなくなっている執事がいた。首から血が噴水のように噴き出しながら執事は力を無くし身体が崩れ落ちる。そして後ろには先程、私兵を全滅させた黒い化物がそこに立っていた。
(見つけた)
グレンはヘンゲルの自分を見る滑稽な表情に笑いをこらえる。
「初めてましてかな?ヘンゲル。」
すぐ近くに死体があるのに軽快にグレンはヘンゲルに話しかける。
「ヒィ!」
小さい悲鳴を上げヘンゲルは地面に座り込む。
「どっどうしてここに!?」
「いや、何、先に母親を助けようと牢屋を捜してしたら運良くきさまがいただけさ。」
ヘンゲルは自分の不運を呪った。人質にしようと考えずさっさと逃げればよかった。
「まぁ、先にきさまの始末でもしようか?」
「待て!!お前の目的はあの女だろ?もう、二度アイツの息子にも近づかない!だから、なぁ!?」
「ダメだ。その約束が守られるとは限らない。」
そう言うとグレンはおもむろにノートゥングを振り上げる。
「死ね。」
「いっや」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ノートゥングをヘンゲルの頭蓋に叩きつけようとした時。後ろからリーオが叫びながら剣でグレンを斬りつけようとするがグレンは途中で軌道を無理矢理変えて剣を叩き落した。勝てないと悟ったのかグレンの横を通り過ぎヘンゲルの前に両手を広げて立ち塞がった。
「殺すなら俺を殺してください!!」
リーオの発した言葉にグレンは振り上げた腕を止まった。
「全て、俺が悪いんです!俺がステロに決闘をして負けちまったから父はこんなことをすることになったんです。お願いします!!俺は殺しても構いません。でも!!どうか!どうか!!父だけは見逃してくれませんか!?」
涙を流しながらお願いしますお願いしますと言うリーオの姿を見て振り上げた腕を静かに下ろした。その姿を見てリーオは安堵の笑みを浮かべ・・・そしてリーオの体から剣が突き抜けグレンの腹に刺さった。
「・・・え?」
リーオは恐る恐る後ろを振り向くと血走った目をした父親が叩き落された剣リーオを貫いていた。
「そんな・・・どうして?」
「良くやった!!この愚息!?お前は失敗作だったが最後の最後で役に立った!!褒めてやる!!」
「こんな・・・こんなことって・・・」
絶望した表情を浮かべながらリーオの身体から力が抜け床に倒れる。
「ははははははは!!!俺は!!こんなところで終わる奴ではない!!いずれこのペンドラゴンの頂点に立ってみせる!!そのためなら、どんなことでもやってみせる!!」
ヘンゲルは、剣から手を放し高らかな笑い声が廊下に響きわたった。
「・・・とんだクソ野郎だな。きさまは。」
温度の無い声にヘンゲルは笑い声を止めた。無理もない。その声は今、聞こえてはおかしいものなのだから。ヘンゲルは、冷や汗を垂らしながら後ろを向く。するとグレンが腹から剣を抜いていた。
「ばっばかな!?どうして!!アレは致命傷だったはず!!生きているはずがない!!」
グレンが刺さった箇所に手を触れるとそこにあった鎧の傷があたかも存在しなかったかのように綺麗になっていた。
「ありえない・・・ありえない!?お前は!!一体!?何なんだ!?」
「単なる愚か者だ。力を欲して。差し伸べては決していけないモノに手を触れた最強の愚か者だ。」
だが、とグレンは続ける。
「きさまは、俺よりも下のクズだ。きさまは本来、護るべき息子を手にかけあまつさえ笑う。そんなきさまに死は生ぬるい。苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで絶望しながら死んで行け。」
グレンはそう言うと淡々と詠唱する。
「地獄よりさらに下、奈落の底で阿鼻叫喚を耳にしろ。己の罪を嘆き後悔しても許すまじ。死者たちの声聞きながら外道の最期に相応しい末路を与えよ。」
『ブトゥーム・タップ・ホール』
グレンが詠唱し終えるとヘンゲルの下に突如黒い穴が現れ、そこからおぞましい顔をした者たちがヘンゲルを捕まえ下に引きずり下ろそうとする。
「ヒャァァァ!?!?なんだ!!何だこれは!?ええい!!離せ!!離せ!!」
「冥土の土産に教えてやる。それは魔法の中でもさらに兇悪とされ禁忌にされた魔法だ。それにかかった者は死ぬことを許されずそいつらの声をずっと聞いていなければならない。」
「そんな!!そんなことって!!」
「自業自得だ。」
「嫌だ!?死にたくない!!俺はこんなところで終わる男では・・・」
「いや、きさまはここで終わりだ。」
「そんな・・・」
首から下が黒い穴に飲まれたヘンゲルを見ながらグレンは呟く。
「目には目を。剣には剣を。そして・・・悪には悪を。」
その言葉を最期にヘンゲルは穴に飲まれそして黒い穴が消える。グレンはヘンゲルの末路を見るとリーオの死体に近づく。目を開けたまま死んでいるリーオに手をかざし目を閉じさせる。
「きさまの父親を守る姿は見事だった。叶うなら次、生まれ変わる時、真の親子の元で生まれることを。」
グレンは、そう言うと立ち上がりステロの母親が捕まっている扉をノートゥングで切り開く。中には怯えている女性がいた。
「ステロの母親だな?」
グレンが質問するとその女性は首を頷ける。
「安心しろ。何もしない。ステロに頼まれ助けに来た。」
そう言ってグレンは手を差し伸べた。




