プロローグ
タイナノド平原。
それは、リターナーとパナウェイの
中間地点にある平原である。
その平原に2つの軍が互いを睨み合うように
陣どっていた。
西側にある軍がリターナー軍
東側にある軍がパナウェイ軍である。
リターナー軍の張るテントの中でも一際
大きいのが今回の軍を指揮する代々、武力を
培ってきた名家トゼン家当主テレド侯爵が
いるテントである。
今、そのテントの中でテレド侯爵を含む
軍官が会議をしていた。
「野蛮な獣共め!!タウ伯爵を殺すどころか我が国を殺すとは!」
1人の軍官が手にしたコップをテーブルに
叩きつけ怒りを露わにしていた。
「まったくですな。今まで、良くしてやった
というのに恩を仇で返すとは畜生にも劣る
存在。許せるものではありません。」
軍官たちが騒ぎ合っている中、1人静観
している者がテレド・トゼン侯爵である。
「・・・少し静かにしろ。」
テレド侯爵の一言に軍官たちはとたんに
静かになる。
「ここに集まったのは、仲良く悪口を
言い合うためか?」
「いえ!けっして、そのようなことで。」
「言い訳はいい。それよりも、もっと
有益な話があるだろう。悪口を言う時間が
あったら作戦の1つでも考えたらどうだ?」
「は!!」
そうやって、急いで作戦を立て始める。
軍官たちを見てテレド侯爵は小さくため息を
つく。
(リターナー軍も落ちぶれたものだ。手柄を立てることしか考えていない。果たして
うまくいってくれるか?)
そう、考えているうちに軍官たちの会議が
終わる。
「よいか。あそこの獣共を徹底的に
蹂躙せよ。2度とふざけた考えを持たせない
ようにな。」
《は!!》
「父上!!」
そう言って軍官たちがテントから
出て行くと同士に1人の鎧を身につけた
女性が入ってくる。
「おぉ!ナナリア来たのか。座りなさい。」
「はい。失礼します。」
そして、ナナリアはテドレ侯爵の対面の
椅子に座る。
「父上。お話とは何でしょう?」
「うむ。お前の配置についてだ。どこが
いい?」
「父上、私は最前線を希望します。」
「最前線だと?」
テドレ侯爵の眉が吊りあがる。
「・・・理由を聞いておこうか?」
「私は、自分の実力がどこまで通用するか
知りたいのです。」
「・・・なるほど。確かに自分の実力を
知るのはいいことだ。」
「では!?」
「好きになさい。だが、騎士学校で首席で
卒業したとはいえ甘くみるな。相手は
亜人だからな。」
優しい笑みをしながら言う。
「はい!!それでは、父上!私の活躍を
しかと、見てください。
「楽しみにしている。」
嬉しそうな顔でテントを出て行く。
テントの中は、テドレ侯爵のみとなった。
「あぁ。楽しみにしているよ。お前らが
無様に殺し合うのな。」
先ほどの優しい笑みとは違い残酷な笑みを
しながら言った。




