20話グレンの力
身体中に、激痛がはしる。この感覚も久しぶりだ。魔物の皮膚が身体から抜かれる。
「ぐっグレンさん・・・?」
リーザが、呆然としている。いろいろ言いたいところだが、身体の修復に専念する。鎧の穴から黒い影のようなものが溢れ、身体から徐々に鎧へと修復されていく。わずかな時間で身体と鎧の修復が完了する。
「いくぞ。暴食の魔物。」
自分の『魔力』を少し解放し、大剣に『魔力』を入れ詠唱する。
『脈打て、ノートゥング』
黒い大剣の刀身に血のような線が描き込まれまるで、生きているかのように鼓動を始める。おれは、魔物の右足に斬りつける。羊皮紙のようにすんなりと足が斬れる。
「ブモォォォォォォ!!?」
魔物が、リーザ時よりも悲鳴をあげ、倒れこむ。魔物が、四方八方から攻撃してくるが、全て斬り捨てる。足に『魔力』を込め、跳躍し、その巨大な胴体に飛び移り大剣を胴体に刺しこむ。
「痛てぇよ。助けてぇくれー」
「死にたくない。死にたくないよー」
「ママー。怖いよー、痛いよー」
「誰でもいい。殺してくれーおれを殺してくれー。」
胴体に乗ってさらにヒトたち声が聞こえる。
聞こえてないとわかっていてもおれは、答える。
「あぁ・・・。今、楽にしてやる。」
そして、大剣に唱える。
『吸収せよ。ノートゥング。』
大剣がさらに赤く輝き魔物が苦し始め、鳴き叫ぶ。その叫びもだんだん弱々しくなっていき最後にはその巨体さえ大剣に吸収された。
『鎮まれ。』
そう唱えると赤い線が消えていき元の大剣に戻る。
「グレンさん・・・あなたは一体」
レンズが、警戒しながら聞いてくる。
「悪いが、それは言えん。」
「グレンさん。私は、あなたを信頼できるヒトだと思っている。これからも信頼したい。それでも、教えてくれない?」
「・・・それでもダメだ。言えない。」
「・・・そう。わかった。」
そこで、レンズは聞くのをやめてくれた。次に、リーザがおれの前に立つ
「グレンさん。お礼を言わせてください。・・・また、助けてくれてありがとうございます。」
リーザが深々と頭を下げる
「はい!暗い話は、このくらいにして早くいきましょ!パナウェイに!!」
ハナが話を切り替え歩き出す。レンズもそれ以上、何も言わずハナに続いていく。
おれも、歩き出すとリーザが小声で言ってくる。
「正直、私も知りたいです。けど、今は、言わなくてもいいです。いつか、言える時になったら教えてくださいね。」
その言葉に、おれは、黙っていることしか出来なかった。




