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ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!  作者: らず&らず
第3章 トランジションステージ
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SS ルナと不思議なおじちゃん!

 朝目が覚めると皆まだベットで眠っていた。

 うちはスマホを出し時間を確認する、六時丁度やね……誰も起きて来ない。

 昨日はカカオマスを捕まえて戻ってきてからカナタの様子がおかしかった。ご飯も食べずに眠ってしまい、うちらは困惑する。

 マーガレットが『今はそっとしておいて上げて』とか言ってたけど何かあったんかな?


「メアリー朝やで? 昨日そんなに疲れたんか?」

「んむぅ……」


 メアリーに声をかけても起きない、肩を揺すったら丸まってうちの手から逃げる。仕方ないのでアンナの肩を叩く……反応が無い。


「もう六時過ぎてるで? 朝ご飯の前にひとっ飛びするで?」

「むにゃ、ボス……今日はお休みの日です、私はもう一眠りしますよ~」


 忘れてたけど一週間の最後の日はお休みになったんやね。一週間の最初? どっちやろ。

 一人で飛ぶよりも二人で飛ぶ方が楽しい、アンナの足を引っ張って連れて行くことにした。ベットから降りる時に頭をどこかにぶつけたらしくアンナが呻いていた。

 仕方ないので部屋を出てからアンナを背負い一番出入り口へ向う、一日の始まりは一番出入り口から滑空して始めるのがうちの習慣や!


「気のせいか日に日に一番出入り口が高くなってきてる気がするな……」

「ボス~ジャンヌを誘ってください……この前羨ましいって言ってましたよ~私は眠ります!」


 アンナはそう言いうちの背中から逃げようとする、最近レッティが一緒に飛んでくれないのでジャンヌが飛びたいなら誘うしかない。


「それは良い事聞いたで! 明日からはジャンヌとアンナの三人で飛ぶで!」

「あぅ、失敗しました……ボス、私が言った事は黙っておいてくださいね……」


 急にアンナが大人しくなる、やっぱり飛びたいんやね。

 プテレア擬態仕様の階段は勝手に進むから立っているだけで良い。でもこれって高くなって行く一番出入り口を誤魔化す為に自動階段にしたんやとうちは思っている、今ではうちらくらいしか一番出入り口を使わないけど。

 プテレア擬態仕様の階段を一番上まで昇ると町を一望出来るようになっていた。


 朝日が昇り大通りを冒険者達が行き来している、見習いや新人に混ざってヒヨッコ達が西門の外組みと一緒に冒険者ギルドの入り口から出てきた。リリーの姿も見える、皆を連れて西門の外にラビッツ狩りに行くみたいやね。


 北門はモウモウの襲撃以降、いつもの見張りの他に日雇いの冒険者PTが一つ待機するようになっていた。オルランドが『門の外に座ってノンビリしているだけでお金がもらえて美味しいぜ!』って言っていたけど普通に狩りした方が美味しいと思う。


 南の方には門が無い、隣の町にくっ付いてるからやってマリアンが話してくれた。朝から夕方まで人通りが少ない町で五回目の最後の鐘がなった後から賑やかになる、綺麗なお姉さんがいっぱいいるみたいやね。

 昨日夜、何と無く眠る前の滑空がしたくなりここにあがって来たら遠くに偶然ロッズを見つけた。冒険者ギルドから出てきたロッズはそのままこそこそと物陰を歩き、アルフとユノ&ユピテルを連れて南の町へ歩いて行った。うちが戻って眠りかけてた皆にその事を話すと皆凄い顔でロッズを罵ってた……マーガレットが『ロッズは勉強を教えに行ったのだから大目に見てあげて』と言ってたけど今朝五時頃戻ってきた四人はお酒臭かった。


 東門の外でマイケルが作業している、ノアの箱舟が通った後に出来た道に切った石を並べているみたいやね。

 マイケルの周りにはギリギリ新人冒険者を卒業したくらいの冒険者達がいる。マイケルが手塩にかけて育てた元見習い達で、最近は訓練と東門の外でPT狩りをしているって本人から聞いた。

 男二人女四人のPT二個を団結した編成で前衛後衛の訓練をしているみたいやね。マイケルは皆に好かれているし実力もあるからすぐにBランクに上がりそうってマーガレットが話しているのを聞いた事がある、今はCランクらしい。リトルエデンの皆はカナタ以外ランクを上げる申告をしてないから多分アヤカのCランクが一番上やと思う、上げた方が良いのか良く分からない。


「ボス~結び終わったので何時でも大丈夫ですよ~」

「飛ぶで!」


 アンナは心配性なのか飛ぶ時必ずアウラ紐でうちと自分を結ぶ、落っことした事なんて一回も無いのに心配性し過ぎやと思う。

 一番出入り口から飛び降りるとすぐに【滑空】を使用して風に乗る。初めは滑り降りる事しか出来なかったけど、上手く風に乗ると上昇出来る事に気が付き最近ではかなり遠くまで飛べるようになっていた。


 風が気持ち良い、頬をくすぐる温かい風の感触の堪能し、全身をブルブル震わせ抜け毛が無いかチェックする。うちはまだ背中と尻尾にかけてしか毛が生えてない、この前スコールに『抜ける毛も生えてないくせに、笑うはほんま~』って馬鹿にされた。何故かガルワンが変わりに怒ってくれたのか、その日の夜ガルワンの愛の巣からスコールの悲鳴が何度か聞こえた気がする……


「ん? アンナ、あの東門の少し外に出てダンジョンの入り口を後ろに回った辺りに家がある? ちょっと見に行くで!」

「もう戻ってご飯の用意しましょうよ……」


 アンナが戻るって連呼するので『紐を解くで?』と言いつつお願いすると満面の笑顔で謎の家行きを了解してくれた。

 風に乗り少し高くまで上がり、皆に見つからないように東門の外に出ると謎の家の真上に着地する、音も無く着地出来たのでなかなか気分が良い。


「何の用かな?」

「声が聞こえる、おじいちゃんどこにいるん?」


 声は聞こえるのに姿が見えない?


「ボスの足元……」


 アンナは紐の分だけ先に下りて家の下からこちらを窺っている、足元?

 うちが謎の家の屋根を良く見ると……


「草の服? ごめんなさい。おじいちゃんこれあげるから着ると良いで……」


 足元には草の固まりのような服を着たおじいちゃんが寝そべっていた。緑のヘルムにも葉っぱがいっぱい刺さっているし顔中にも緑と茶色の土が塗ってある、着ている服は大きめの葉っぱに色々な色の枯れ葉をくっ付けた手作りの服やね……


 踏んでいた事に気が付いたうちはすぐに横にどいて、謝る。すぐにタイガーベアの毛皮を尻尾から出すと畳んで屋根の綺麗な場所に置く、おじいちゃんが立ち上がる前に屋根から飛び降りた。


「え? いや、えぇ? これはわざとで……ギリースーツって聞いた事――無いよね」

「良いよ? うちら全て分かってるから、大丈夫やで? おじいちゃん気配消すの上手いから良い斥候に慣れると思うで? 何ならうちがマーガレットに頼んで冒険者ギルドに口利きしてもらっても良いで?」


 きっとお金が無いからこんな危ない場所に家を立てて住んでるんやね……

 カナタは困っている人が居たら助けてあげるようにって言ってた。うちらは手持ちのラビッツの毛皮とカナタ芋三個と取って置きのラビッツの干物一個を布のバックパックに入れると、謎の家の玄関に置き朝ご飯を食べに戻る事にする。


「あっ、ちょっと待った! おじいちゃんじゃないからな? そんな哀れみの目で見るなよ!? 町の中に住んでないのは趣味だからな!」

「ボス……もう戻りましょう、あまり弄ると可哀相ですよ? その……臭いますし」

「あーーーっ! もう傷ついた! おじちゃん心に深い傷を負っちゃったー! このまま見捨てられたら寂しくて死んじゃうー!」


 いきなり騒ぎ出し屋根から下りてくるおじちゃん?


「おじちゃん悲しくて泣いちゃうから帰らないでくれ……」

「もうすぐ朝ご飯の時間やから戻るで?」


 本当に泣きそうな顔のおじちゃんを見たら帰るに帰れなくなりアンナと顔を合わせる。このおじちゃん貴族語で喋ってるけど服装は大自然の恵みやね……


「よし、ここで会ったのも何かの縁だ。朝ご飯を食べたらまた来てくれよな?」

「ボス~そろそろ戻らないとメアリーに朝ご飯抜きにされちゃいますよ!」


 正直メンドイ、今日はキャロルと必殺技を考える為に冒険者ギルドの地下へ行く予定になっている。

 急かすアンナの手を取り戻る事にした。


「今日は必殺技考えなあかんから時間無いねん。また今度な~」

「へへぇ~良い必殺技教えてやろうか?」


 振り返り戻るうちらの背中にそんな声がかかる、一瞬考えるも大自然系おじちゃんやし信用出来ない。


「次元斬! この技を扱えるようになると多分注目の的だぜ?」


 歩いて戻るうちの目の前の木が何かによって切断される。手に取って断面を見るとカナタ結晶のナイフと同じくらい綺麗に切れていた。


「ご飯食べたらすぐ来るから待っててや!」

「おっと、タダじゃ無いぜ?」


 アンナの手を引っ張り走り出したうちの背におじちゃんの声がかかる、振り返るうちら。

 今教えてくれるって言ったのに酷いと思う。


「な~に、報酬は簡単だ。オレの分も飯を頼む……その姿から見るとお前ら最近噂のリトルエデンのクラン員だろ? 王族並みに豪華な朝ご飯食べてるって噂だからな~」


 おじちゃんのお腹が凄い音を鳴らす、ご飯もろくに食べてないと思ったらうちは涙が出て来た。


「うぇっ!? 何で泣いてるの!? おじちゃん何か悪い事言った?」

「あぁ、気にしないでください時々あるんですよ、ボスの発作みたいなモノですから」


 ギョッとして焦るおじちゃんにアンナがそう言うとうちの頭を撫でてくれた。


「美味しい物いっぱい持って来るな……保存食も持って来るな……必殺技頼むで?」

「あ、あぁ、何か釈然としないモノもあるがよろしく頼むな、いまいち町の中には入る気にならないんだよな……意味不明の言葉で喋りかけてくるし、貴族語がどうとか言ってくるし、日本語で喋れっての……」


 自分の後ろ頭をかきながら独り言を呟くおじちゃん、うちらは急いで戻って今日の予定を組みなおす事にする。


 東門を入り、大通りを全力で走るうちとアンナ。最近じゃカナタ印の食料品や消耗品の矢など大漁に町のお店にも卸しているので顔見知りが増えていた。


「おはようルナとアンナ一つ持ってきな! また今度ラビッツの燻製買いに行くからヨロシクたのむよー」

「ありがとなおばちゃん! うちのラビッツ燻製は絶品やで!」

「いつもすいませんー」


 果物屋の前を走りすぎる瞬間、おばちゃんがバナの実を房から千切って投げてくれる。空中でキャッチしたうちとアンナは皮を剥きすぐに頬張る、バナの実は房から千切るとすぐに痛んでくるので時間との勝負やね。


 バナの実は黄色くて30cmくらいある細長い果実の中には白っぽい濃厚な甘さの果肉が隠れている果実やね。カナタが特製の暖かい部屋を作り実験的に育てて大成功した物で、元々はそんなに甘くならず炒め物に使う野菜だった。

 実験に使った温かい部屋はそのまま果物屋が引き取り、今もバナの木を大切に育てている。


 リトルエデン本拠地に戻ってきてもまだ誰も起きて来ない様子なので、うちらは先に用事を済ませる事にする。

 食べ物の事ならプテレアに相談とアンナが言ったので戻ってすぐに畑に急ぐ、畑には緑の人形がウロウロしていて水を撒いたりシェルトマトを収穫していたりする。

 プテレアを探すうちとアンナは、ラビッツ達の巣になっている畑の中心に向って歩いていく。


 ラビイチ・ラビニ・ラビサンが仲良く並んで地面に埋まり顔だけを外に出して眠っていた……


「何度見ても慣れへんな……」

「ラビッツの本能じゃないですか?」

「ラビッ?」


 うちらの声で目が覚めたのかラビイチが地面から飛び出て甘えてくる、可愛いけど土だらけになるので頭を撫でるだけにしてプテレアを探す。


「良い子でしゅね~キレイキレイしましょうね~」

「ボス、これは見なかった事にして戻りましょう……」


 プテレアが葉っぱの服を着た緑の人形とお話ししながら葉っぱの服を脱がそうとしていた……

 アンナは顔を引きつらせてうちの手を引っ張り戻ろうとする。


「何か用ですか? もう少しで終わるのでちょっと待っててくださいね~」


 既にプテレアに見つかっていたみたいで、蔓が集まり椅子に擬態してうちらの目の前に置かれた。


「この事は誰にも言いません……」

「え? アンナは何言ってるんですか?」


 一歩後ろに下がったアンナにプテレアは首を傾げていた。うちは緑の人形は見なかった事にして師匠の事を事細かく話し少しカナタ芋を分けてもらえるように頼む事にした。


「今日へんな師匠に出会ってん……」


 うちが師匠の事を話し始めると、何故かプテレアは時々肯き遠くを見る仕草で時々ボーっとする……

 軽く三分ほどに凝縮して話し終えた時には、プテレアの顔は涙鼻水で凄い事になっていた。


「……分かります、そのおじちゃんの気持ち分かりますよ! 私も主殿の元に来るまでは『夢魔の楽園』でも端っこの荒れた地に追いやられて大変だったんです……先輩ドリュアスにはいびられるし、ちょっと気を抜くとラビッツ達にかじられるし……酷いですよ!? あいつら一口で私を食べる事が出来るのにわざと一日で回復する量しかかじらずに翌日また来るんですよ!! 逃げようにもその荒地しか私の居場所は無いし……アウラ様に拾っていただかなかったら今頃もラビッツ達の奴隷になって搾取される草生(じんせい)でしたよ!?」


 酒樽の蓋を外してひっくり返したように止まる事無く話し続けるプテレア、よっぽど辛い時期があったんやね……

 葉っぱの服の着せ変えを行なっていたプテレアは、緑の人形に頭をナデナデされていた。


「それで食べ物やけど――」

「とりあえず持てる分だけ渡します、あまり一気に持って行っても食べきれずに痛ませるといけないので」


 そう言ったプテレアは何処からか大量の食べ物を調達してくる、プテレアの蔓は働き者やね。


「主婦連盟からも手を回して、その人が冒険者ギルドに来ればすぐに登録できるようにしておきますね!」

「わ、分かったで!」

「私は知りませんからね……」


 何か話しが大きくなってきた。後は流れに任せるしかない、うちとアンナはそのまま大量の物資を黒バックに詰めると畑を後にしてご飯を食べに行く事にする。

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