第65話 えっ?健全ですよ??
夜の勉強会!?
ふわふわと温かい感触が顔を覆い、甘いミルクのような香りが鼻腔をくすぐる。
光りも届かない深い海の底から、水面の光りを――底からじゃ見えないモノを目指して浮き上がって行くように……眠っていた意識がはっきりとしていく。
体が動かない、一四四時間も眠っていたのなら体が少し鈍っても不思議じゃない。
右手を確かめるように広げ軽く握りる、何か柔らかい感触のモノが指からこぼれ落ちる?
段々と耳が聞こえてくる、近くで荒い息遣いが聞こえる。背中に柔らかいタイガーベアの毛皮の感触がする。
もしかしたら寝過ごしてベットに移されたのかもしれない、皆怒ってるかもしれない?
非常にまずい気がする、ただでさえ勝手に死に掛けて皆を放置したまま一四四時間も部屋に篭っていたのに、その上寝坊して――ベットに移動してもらいそのままぐーすか惰眠を貪っているとか……
ん? 体が動く?
急にスイッチが切り替わった感じがして体が動くようになる。急いで目を開けるとタワワに実った桃のような――プリンのような柔らかい物体が目の前に二つぶら下がっている、右手がつかんだのはこの物体のようだ。
視線をそのまま上に上げると……マーガレットと目が合う、少し頬を赤く染め愉悦を覚えたその顔をただ眺める。眠った状態のボクにまたがり、顔を掻き抱くように左手で後頭部を支え、右手で優しく頬を撫でるマーガレット。
左手を動かそうとすると小さな悲鳴が耳元で聞こえる、視線を移すとロッティがボクの左手を太ももで挟むように抱きついている……これは夢?
「どうなって、むぐぅっ!? んー? んー?」
どうなっているのか聞こうと思ったらマーガレットに口を塞がれた。そのまま体を下へずらしていくマーガレット……動く間もマーガレットの舌がボクの口内を蹂躙する。
「ふぁっん!?」
ロッティがボクの首筋に舌を這わせ耳たぶを軽く噛んでくる、その後も吸ったり舐めたり転がしたりボクはオモチャにされる。
マーガレットが体を密着させてくると同時にシビレルような甘い感覚が背筋を――全身を支配していく。
ゆっくりと小刻みに体を揺すり始めるマーガレット……触発されたのか、ロッティはボクの左手を抱き締め体を揺すり始めた。
次第に他の事がどうでも良くなってきて、全身に広がった甘い感覚に身を任せてしまう。
何故かルナやメアリー、リトルエデンの皆(男三人を除く)が近くに居るような……安心する感じがして目を閉じる。
次第に意識が薄れていく……ただ、薄れていく意識は目覚めの時とは違い――天にも昇るような、ふわりふわりとした温かな浮遊感と共にボクを眠りへと誘って行くのだった。
――∵――∴――∵――∴――∵――
目が覚める。それはタイマーをセットした目覚ましが鳴る前に飛び起き、目覚ましタイマーを止めた時のような急激な目覚め。
今どこに居るか、ボクは何故眠っていたのかを瞬時に確認し思い出す。
ここは秘密基地の一番奥の寝室、ベットに眠っているのはボク一人。タイガーベアの毛皮が少しシワになっている部分があるので、他に眠っていた誰かはもう起きた後なのかもしれない。
体がだるい、心は元気なのに体はだるい……どうなってるの?
誰かの視線を感じて部屋の入り口を見る、目があった――知らない女の子?
プテレア擬態仕様の扉は普段収納されていて外から中が丸見えだ。女の子は顔半分をギリギリ出しこちらの様子を窺っている、そしてその顔が増えた!?
先ほどの位置より少し下に、同じ顔が――やはり半分出てこちらを見ている……んんん!?
またその下に同じ顔が半分出てこちらの様子を窺っている……良く見ると一番上の顔より一つ下の顔は幼い感じがする?
一番下からこちらの様子を窺う顔は一番上と比べると大分幼さの残った童顔だ。
一瞬、あちらの世界で見たドレミファソ・ソファミレドーで始まる有名な怖い話を思い出し少し肩に力が入った。
一番下の女の子が天使御用達の服を持って近寄ってくる、ちゃんと足は二本有るし血の通ったかわいらしい女の子だ。ボクは何を考えていたのかと馬鹿らしくなる。
無言で服を渡してくる女の子、ルナが新たにらち――保護した子供だろうか?
「ありがとう」
「シャルロットは小さいけど一番社交的なの!」
「シャルロッテも社交的なの! マリヤ姉様は人見知りなの!」
一番小さな女の子と真ん中から覗いていた女の子が近寄ってきて抱きついてくる、自分の頬をボクに押し付けるように擦り寄る姿は可愛い子猫を思い浮かばせる。その様子を見て、一番上のお姉さんと思われる女の子は少し頬を赤く染め急いで走ってくると妹二人? ごとボクを抱き締めてくる。
「お帰りなさいカナタ、初めから無茶ばかりする人でしたけど、その指輪……何回死ねば気が済むんですか? 神話級の宝物を四個も壊した事のある人は多分カナタだけですよ?」
「ごめんなさい……」
本当にごめんなさい……今名前聞いても誰かわかりませんでした。ちょっと記憶を遡らせると確かにカルキノス討伐後にちゃんと顔を見た覚えがある……名前聞いたり『誰?』とか言わなくて良かった。
内心冷や汗を滝の様に流しながら、顔を見られないように三人まとめて抱き締めると頭を撫でて寛ぐ。
「「ドキドキしてるの?」」
「!? マリヤが可愛かったからドキドキしたんだよ? 二人も一八歳になったらさぞ立派なレディになるよきっと!」
強引に話しをずらそうと頑張ってみる、マリヤが震えている?
「あんなの見せられて一八歳までお預け出来ません!」
「んんん!?」
「何の事を言って「カナタが起きてるで!!!」おはよう」
濡れた瞳でこちらを見てくるマリヤを問いただそうとした瞬間、ルナが猛然と突っ込んできて三人を押しのけ抱き付きチュッチュの嵐をお見舞いしてくる!?
「「「「「「カナター!!!」」」」」」
「えええ???」
雪崩の如く部屋へ走りこんでくる皆、男の子三人は居ないようだ。
順番にチュッチュの嵐をお見舞いしつつ泣きながら体中のあちこちをペシペシ叩いてくる、痛痒いそれを甘んじて受け入れつつ思考を加速させる……これ何かおかしくないかな?
どう考えても反応が過剰過ぎる気がする、ブリギッドは置手紙を置いてくれてたはずだしちゃんと一四四時間経ったら起きると書いてあったはず……もしかしてブリギッドがうっかり時間を書き忘れたのかもしれない?
疑問には一応の理由をでっち上げて納得する。
現状を打破するには取り合えず謝って許してもらおう。こう言う事は早ければ早いほど効果が高いし、この感動の再会的な雰囲気であれば案外すんなり許してくれるかも知れない。
抱き付く皆を撫でてから離れるとベットの上で全裸土下座(着る暇が無かった)の体勢へ移行する。
「勝手に死に掛けて一四四時間――六日も眠ってごめんなさい。これからは無茶する時はちゃんと皆に相談するし、基本無茶しないように頑張るから許して欲しいな~とか思ってるんだけど……」
チラリッと顔を上げ様子を窺うと……何故か皆、顔を真っ赤にして目をそらしている。
意味がわからない、でも許してくれるようでメアリーが『いつもより長くチュッチュ全員一回ね!』と言って、全員順番にキスをして服を着る事を許された。
マリヤとシャルロッテとシャルロットにはドサクサに紛れて【眷族化】と【才能開花】を使ってみる、眷族化は反応が無くすでに眷族になっていたようだ。問題の才能開花はちゃんと使えた――もとい使えてしまった……危なかった。ちょっと前に皆の前で全員の眷族化と才能開花を終えたと宣言した気がしていたので少し冷や汗が出た。
そしてこんなドサクサに紛れて【才能開花】を使ってしまった三人には今度お詫びに何かプレゼントを渡そうと心に誓うのであった。
「あれ? 誰?」
まだ部屋の外からこちらを見ている女の子がいて素で言葉に出してしまう。
しまったと思った時にはもう遅い……口から出た後だった。全身からジットリとした汗が吹き出てくる、もし……皆から失望の目で見られたりした日には大声で泣いてロズマリーさんの部屋へ特攻するかもしれない。ロズマリえもんなら何とかしてくれそうな気がする。
女の子は部屋に入るとルナを抱っこしこちらに頭を下げてくる。
「お初にお目にかかりゅます……キャロライン=ヘルヴォルと申します! 先日の緊急依頼では姉がお世話になったようで妹のワタクシかりゃも……是非会ってお礼がしたいと思っておりました!」
どうやら初めて会う人のようだ。鼓動が収まり回りを気にする余裕が出てくる、何故か家名がヘルヴォルだと思ったらどうやらクリスの妹のようだった。
それにしても二回噛んだ、いや、噛んだのは良い――何故ボクから目をそらして尻尾を垂れるままにしているルナを抱っこして挨拶しているのか?
ルナが小声で『違うんや…違うんや…』とぶつぶつ言っているのが聞こえる。
「ワタクシ――私キャロラインはルナの嫁となりカナタ様の隣でルナと一緒に一生支えていく事にしましたわ!」
「成り行きやねん……違うんやで……「運命です!」らしい……」
ルナの言葉はキャロラインにバッサリ切られて、切られたルナは諦めの篭った目でこちらを見ると『うちはカナタの嫁やから、それだけは代わらんから!』と小声で呟き、抱っこされるままとなっていた。
ボクは愛姉の嫁だし別にルナに嫁が出来ても本人が納得しているなら――ボク達皆と仲良くしていけるのなら問題無いと思う、急に妹が出来たような感じがして逆に嬉しいかもしれない。
もし……旦那が出来たとか言われたら相手を殺すかもしれない、草の根掻き分けてでも探し出し誰にも見られない場所へ連れて行って監禁するかもしれない……イヤ、そんな事はありえないしあるはずが無い。
「そう言われて見ればクリスと雰囲気と言うか……何か似ている気がするね~。ボクはカナタで良いよ? これからはよろしくね!」
「クリス!? あ! そうですね、カナタこちらこそ――末永くよろしくお願いします!」
んん? 今挨拶が若干おかしかったような?
ボクがクエスチョンを浮かべキャロラインの方を見ると、何故か『それ以上何も言わなくても結構です、全て分かっておりますわ』と自信満々で喋るキャロラインが居た。
とりあえず一難は去ったようだ。予想以上に汗をかいているのでお風呂に入ってさっぱりしてからご飯を食べよう。
ボクがお風呂へ移動すると全員一緒にぞろぞろと付いて来る、よっぽど寂しかったみたいだね。
脱衣所からお風呂に入って体を洗っている間、凄く視線を感じた。視線の方へ顔を向けるとそこに居たジャンヌは顔を背け口笛を吹き始める。気のせいかと思いまた体を洗っていると次はマリヤの視線が真横からボクに突き刺さる……チラリッと視線を浴槽に向けるとルナを始め全員がこちらを見て生唾を飲んでいる? よっぽどお腹が空いたのかもしれない。
ボクは急いで体を洗い終えると浴槽に入り、体が鈍ってないかチェックしてからカラスの行水の如くお風呂から上がる。
水分をプテレア特製繊維で編んだタオルでふき取ると下着を着け天使御用達の服を着る、いつの間にかマーガレットが用意した下着はシルクのような滑らかな手触りの高級感あふれる物へと変わっていた。上下の一セットで銀貨3枚もするらしい……あちらの世界で過ごしていた時には3万円もする下着を着ける日がこようとは夢にも思わなかった。左右で結ぶタイプの紐パンだしね……
マーガレットとロッティの姿がお風呂に入る前から見当たらない、メアリーに聞くとご飯を準備してくれているらしい。
食堂として使っている部屋を目指す、まだ視線が突き刺さっている? ボク……何かしたかな?
途中ダイヤ製造部屋で宙に浮いたままのダイヤの盾? を回収してする、何故か二個あったけど材料が余ったのかな? 増える分には問題が無いのでスマホに収納しておく。
食堂では優雅にお茶を楽しんでいるマーガレットとロッティが居た。なんと言うか、凄く自信に満ち溢れている感じがする?
マーガレットの尻尾の毛並みが凄く良い、気のせいか肌もプルルンともち肌で、二着合わせて着ている天使御用達の服を押しのけるかのごとく主張する胸も張りがあり重力に逆らっている。
簡単に用意されたご飯は、カナタ芋を乾燥させて粉にした後クレープ状に焼いた物に、フレッシュな野菜やラビッツの燻製をお好みでサンドイッチしてお好みでケチャップやマヨネーズをつけて食べるみたいだ。こちらの世界に来て初めてケチャップとマヨネーズを見た。
一度ご飯を食べている時にケチャップとかマヨネーズとかソースが欲しいと漏らした事がある、覚えている限りの作り方を簡単にレイチェルに教えておいたのが完成したみたいだね。
皆すぐに席に着くとボクが食べるのを待っている、適当に野菜を挟んでラビッツの燻製をスライスして載せるとまずはマヨネーズを試してみる事にする。
「美味い! 懐かしい味がする、少し卵の味が濃い気がするけど――程よい酸味とマッチしていてなかなかどうして、あちらの世界で食べてたマヨネーズより美味しいんじゃないのこれ!」
「自信作ですの!」
マーガレットも協力したみたいで微笑んでいる、横ではレイチェルがガッツポーズを取っていた。
二口目には口に広がる濃厚なマヨネーズの味にも負けないラビッツの燻製の香りと新鮮な野菜を堪能する、思わずマヨネーズだけで食べ尽くしてしまう所だった。
「危ない危ない、ケチャップも試さないといけないよね!」
ヨダレが出そうになるのを堪えケチャップをつけて大きく口を開け頬張る……
「あ!? あま…しょっぱ? トマトジャム……」
「うちオリジナルやで!」
どうやらルナも手伝ったようだね……驚いたレイチェルも自分の分にケチャップをかけて味を見ている、そのしかめた顔を見る限りルナオリジナルは失敗しているらしい。
でも、初めからトマト塩ジャムとして食べれば……無理だ。何か口の中でトマトと岩塩がタイマン張って殴り合っているかのような味だよ……誰だよルナにお手伝い頼んだのは!
他の人の反応を見ると、マーガレットがビックWARビーの蜜をケチャップに注いでいる……何やってるのこの人!?
そのままおいしそうに食べている所を見ると蜂蜜で誤魔化せるみたいだ。
早速皆蜂蜜を手に取りケチャップに混ぜて食べていた。たしかに蜂蜜の濃厚な甘さがしょっぱさを軽減させてくれるしトマト本来の味を引き立たせている。
チラリと横目で見ると、ルナがどこから出したのか15kgほど入りそうな瓶の蓋を開け中に蜂蜜を注いでいる、やっぱり食べてからまずいと思ったのか隠すように行なうその姿を誰も咎めたりせず、無言で見守っていた。多分あの瓶にトマトジャムが入っているのだろう……
それにしてもまだ視線が突き刺さる、ご飯も食べ終わって皆、食後の蜂蜜ミルクを飲んでいる。
マーガレットなら何かわかるかもしれない、そっとマーガレットの耳元で聞いてみる事にした。
「マーガレット、何故か皆に見られてる気がするんだけど何故かわかる?」
「さぁ……昨日の勉強会の事ですか? それとも二四時間寝過ごした事かもしれないですね」
満面の笑みでそう応えたマーガレットは何故か頭をナデナデしてくれた。
勉強会? は置いといて、二四時間寝過ごした? 冗談だよね……
スマホを確認するとばっちり一日ずれている、マジで……
「二四時間寝過ごしてごめんなさい! もうどうやって謝れば良いのか……」
「それほど大変やってんな、うちらは大丈夫やで? でも次からはちゃんと報連相やで!」
額から頬へと汗が流れる、隣に居たルナがその汗をぺロリと舐めて許してくれた。それより報連相って誰が教えたのか……あぁ、アヤカしかいないよね。
こちらに向けて握り拳から中指と人差し指を出しVの字を作るアヤカに『ありがと』と言うと何故か顔を真っ赤にされた。
起きた時から思ったんだけど何故皆顔を真っ赤にするのか、思い当たる節が……無い…わけじゃない。でもあれは夢じゃなかったのか……
「マーガレット、勉強会って何の勉強したの?」
「ナニに決まってるじゃないですの?」
自分の口の周りについたケチャップを長い舌で舐め取るマーガレット、その瞳は肉食獣のそれだった。
「ナニって何? アレ夢じゃなかったの? マジ? リアリィ!?」
「必要でしょ?」
当然の如く言い切るマーガレット、アヤカに方に視線を向けると左手でワッカを作り右手人差し指で貫く仕草をしていた。妙に嬉しそうだ……
「ボク眠っていたよね?」
「丁度目を覚ましましたね、それに眠っても体は正直でしたよ?」
「もしかして……皆見てた?」
「勉強会ですから~」
つまり全員見ている前で夜の勉強会が行なわれたという事ですね、何それ恥ずかしい!?
「そう言う事は一八歳からって言ったよね?」
「だから一八歳までにちゃんと知識を蓄えないといけないんですよ?」
何か間違ってます? と言いたげなマーガレット、もしかして……こちらの世界じゃそう言う知識を教わる場がどこかにあるのかもしれない?
「そう言う知識って普通はどう教わるの?」
「自分の母親か同性の先輩冒険者ですの」
何と無く納得がいった。ここに居る子供はメアリー以外血の繋がった母親が居ない……んだと思う。ロッティとかアヤカはどうか分からないし、キャロラインは多分両親が居るけど。
「つまりです、本来なら一三歳にもなれば母親から教わる知識をこの子達はまったく知らなかった。このままでは、いついかなる時に薄汚れた手がこの子達に迫るとも限らないんですよ? もしそんな不幸が訪れた場合……この子達は立ち直れると思います? カナタが一八歳からって言ったんですよ? これは責任です、もし勉強会が嫌だと…見られるのが恥ずかしいと言うのなら全員抱いてあげてください。一人ずつ抱くのはロッティの事もあるのでダメです、全員一緒でお願いしますの」
「でも……」
「でも何です? アヤカから聞きましたけど……カナタの生まれた世界ではそうなのかもしれません。でもここはイデア=イクス世界です! 一三歳にもなれば成人ですよ? ちゃんと見てあげてください、もう子供じゃないんです」
凄い剣幕でまくし立てられる、そうは言っても…一三歳で成人かぁ……だから皆生き急いでるのかもしれない。肉食系の女性が多いのもそういった理由?
アヤカの方を見るとこちらを見て肯いている、他の皆を見てみると同じく肯いていた。
「これ以上ぐだぐだ言うのなら……考えがあります」
絵に描いたように両頬を持ち上げた満面の笑みを浮かべマーガレットが言う、悪い予感がする。
「何かな~とか聞いても良いのかな……」
「カナタ以外の全員に生やします」
「!?」
マーガレットがボクの胴体に両手を回し自分の膝の上に据わらせてくる、万力のような力で捕獲されて動けない。
冗談だよね?
「もしくはプテレアに頼んでカナタを蔓でグルグル巻きにして、全MPを注ぎ込んでカナタに生やします……それだけMPを注ぎ込んだら全員順番にナニしても消える事は無いでしょうね?」
本気だよこのマーガレット!?
左手を脇から服の中へ侵入させつつ右手で下腹部を撫でるように擦り、耳元で『毎日勉強会します? それとも……』と呟くマーガレットにボクは無言で肯くしか出来なかった……
「うちらは待つで? それに今は強くならんとダメや! カナタを守れるくらいに――」
「レオーネは一八歳だから別に抱いて貰っても良いんじゃない?」
「フェルティ何を言って!?」
ルナの宣言をぶった切りフェルティが突然レオーネの歳をばらす、驚き声を上げたレオーネは確かに少し背が高く子煩悩優しいお姉系だ。
「ずるい! あっ、アヤカは別に何でも無いわよ?」
素で言葉に出たみたいで、アヤカは必死に取り繕っていた。
「私は皆と一緒が良いです、それに……昨日見たアレはまだ入りそうにありません」
「アレくらい余裕ですわ!」
「でも初めての時マーガレット結構痛そうにしてましたよね! 血もどっぱどっぱ出てたし~」
「ロッティ! 貴女は言って良い事と悪い事が!」
ボクを解放しロッティを追い始めるマーガレット、そしてもうお手上げだ。
「ボクは皆大好きだよ! 全力で皆を守るから皆もボクを守ってね」
「「「「「「サーイエッサー!」」」」」」
予想外の返答に椅子から滑り落ちるもいつも通りの雰囲気に戻って良かった。
平穏な日々の始まり、そしてダイヤの盾をスマホから出して性能を見ようかと思った時プテレアが血相を変えて現れる。
「外壁を突破されました! 冒険者が畑に向って歩いてきます、ガルワンとスコールが時間稼ぎしていますが思わしくありません! あとシェルトマト大盛況ですよ! あっ、主殿おはようございます~」
前半と後半の温度差が酷い、そして何故かプロポーションが良くなったプテレア……
やっぱり平穏無事なマッタリライフは都市伝説だったのかな。




