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ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!  作者: らず&らず
第2章 ピースフルデイズ
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第53話 紳士兼淑女は引き篭り始めました!

 目が覚めるとそこは知らない部屋のベットの上だった。体を起こし室内を見る、広い。

 だだっ広い正方形に近い部屋で、入り口から入ってすぐに靴を入れる棚が設置してある。これはボクがクラン本拠地に定めたルールで、室内では靴を脱ぐ。当たり前だけどこちらの世界では当たり前では無い。

 靴棚から1mも離れたらそこからベットになっている……部屋全体がベットになっており、タイガーベアの毛皮が何枚も敷き詰められてある。見た感じリトルエデンのクラン員は男以外全員ここで眠っているようだ。

 そうロッティに何故かマーガレットまで居る……


 いつも通り吸い付いているルナを揺すって起こすと、最近は右腕に抱きつくだけになったメアリーをそっと離す。

 昨日の事をゆっくりと思い出すと、幸せな時間が脳裏に思い浮かぶ。


「確か昨日は皆で展望露天風呂に入ってそれから……その下の階に作られた寝室で眠ったんだっけ? おかしい……移動した記憶が無い?」


 プテレアに魔力を上げたあと、大浴場に向うと湯船にはお湯が入れてあり、全員お風呂の脱衣所で待機していた。

 そして展望露天風呂と書かれた暖簾をくぐって入ってきたボクは、脱衣から体の洗浄に全身のマッサージまで皆の手でおもてなしされた。

 その後皆と洗いっこしたり、ヌル蔦を刻んで作った入浴剤を入れたお湯でヌルヌルーしたり……皆とキャッキャウフフしたり。


 ロッズ師匠……本当にありがとうございました!


 ボクは紳士兼淑女だし女だ。それに決してヤマシイ事をしていたわけじゃない。

 法律には触れていないどころかこちらの世界では一四歳くらいから普通に成人として扱われる、つまり合法だ。

 それにボク的にはロズマリーの様なお姉さん系が好みなので……少なくとも一八歳になるまでは待ってもらっている。

 一八歳まで待ってねと言った所、メアリーからトンでもない事を聞かされて驚愕するも、もう覚悟は決まっているので問題無い。


 この世界は結婚適齢期が一四歳から一八歳、二次結婚適齢期が一九歳から二五歳。一般的には前者で結婚する者がほとんどだそうで、冒険者や有力貴族の娘が後者に当たる年齢で結婚するそうだ。

 冒険者は財を築き安定した生活を望み結婚する者が多いみたいで、有力貴族の娘は己が一番高く売れる時・場所・相手に嫁ぐ為、少し遅くなる傾向があるとの事。売れると言っても奴隷的な人身売買では無く、純粋な政略結婚の為だったりする。

 あちらの世界で過ごしてきたボクとしては愛が無い相手と結婚して、幸せになれるのか? と言う疑問が出てくるので皆に聞いて見たところ……全員から濃厚なキスをされ質問が失敗だった事を知る。

 考えてみればルナが攫う様にして連れて来て、自動的に嫁になったこの子達に聞く質問じゃないね。でも今幸せで居るとの事なので、皆と今後ともがんばっていきたい。


 愛し愛されて結婚し、幸せになる事など……こちらの世界では望める者は少ないそうだ。


 メアリーは言った『一八歳まで待つとなると、もうお断りする事は出来ないと思うからね?』そう一四歳から一八歳で結婚する理由の一つに、元気なうちに子供を産むと言う重大なイベントがある。どうもこの世界の普通人は五〇歳まで生きれたらラッキーなくらい短命らしい?

 食糧事情や衛生面での原因なら何とか出来ると思うので、もっと長生きできそうな気がするけど。

 元気な内に元気な子供をたくさん産む、それを一八歳まで待つという事は生涯を背負う覚悟が有ると言う事みたいだ。

 そこまでお話ししてトンでもない地雷が足元に有る事に気が付く。ロズマリーはマーガレットが同期の冒険者と言った。つまり同い年、二七歳だと思われる……二年ほど過ぎちゃってるね!

 ボクは結婚の口約束をしてしまった。もう後が無いマーガレット的には、あの生きて行けないは本当の事だったのだろう……


 性格の良い女性だし、好感が持てる。ちょっと強引過ぎるところもあるけど、共に歩いていけると思える人だ。もう一度じっくり話しをして将来について考えよう――と思っていたら……当の本人がお風呂に乱入してきた。

 興奮気味だったので生活魔法のアクアスプリングラーで水玉を上空に飛ばしてシャワーの様に放水しマーガレットを冷やす。ちゃんと体を洗ってから入る様に言いくるめるとボクは逃走の準備を始める。

 体を洗っているマーガレットの後ろを静かに通って先に出ようとしたボクは、器用な尻尾で足を掴まれて体を洗い終えたマーガレットに抱っこされたまま湯船に戻り、全身丹念なマッサージを施されて気絶した。




「何かスッゴイ事された記憶がある……変な声も出てた気がする、そして皆熱心に見ていた気がする」


 恥ずか死しそうだ。幸いまだ皆眠っている、とりあえず逃げよう……

 ルナか誰かがベットまで運んでくれたみたいなので、今度お礼を言わないといけない、今はただ逃げる……

 そっとベットの上を這う様に進み扉から外に出て天使御用達の服を着る、昔から恥ずかし過ぎて穴が有ったら入りたいと言うし……今日は引き篭る予定だ。外に出ると地下の部屋に干渉しない位置を、魔法で作った振動で探り、実験室兼引き篭り部屋の製作にかかる。


 ……思った以上にプテレアの根だと思われる物が張り巡らされており隙間が無い、畑に移動し相談してみる事にする。


「何でプテレアの方から出向いてくるの? テレパシーとか送った記憶無いんだけど……」

「主殿の魔力が篭った振動がここらへんの根に当たったので確認に♪」


 畑の方へ一歩歩き出すと相手から来てくれた。地下室の話をすると二つ返事で畑の真下地下50mの地点に空間を空けてくれるそうだ。


「酸素とか色々大丈夫なの? そんなに深いと怖いんだけど……」

「全てお任せください主殿! 既に根で掘り起こしており、後は地上と繋げるだけですよ? それに酸素や熱その他もろもろは、私の分身が周囲を丸ごと覆っているので安心してください!」


 気になる事が一杯あるけどここはプテレアを信じよう。


 プテレアに促されるまま畑に移動して、グリーンジャングルな畑へと足を踏み入れる。幸い小さな虫や昆虫系は一切居ない、蜘蛛の巣とかあったら嫌だと思っていたので安心する。


「害虫の類は全部土の栄養になって貰っているので、安心してくださいね~」

「やっぱり何かテレパシー的な物を受信してない? 心が読めるとか?」

「主殿何を言っておられてるんです?」


 畑を分け入って奥へ進むと地面に開いた直径60cmくらいの穴が見つかる、どう見ても秘密基地の入り口だ。高鳴る心音を抑えつつプテレアの顔を見ると無言で肯いている!


「あっ、靴は脱いで入ってくださいね!」

「予想外のところから常識が出たよ! じゃあ行って来るね~」


 靴を脱ぎスマホに入れるとちょっと表面が柔らかい穴へと身を乗り入れる、結構滑る。

 ウォータースライダーを思い起こす滑り台的な穴を、ヌルヌルと滑り降りていくとやけに広い空間に出る。ボクはプテレアの力を見誤っていた事に気が付く。


「天井が発光している? ヒカリゴケの類かな、それにしても広い。学校の体育館の倍くらい広さがありそう」


 何と無く空気が動いた気がして後ろを振り向くと、目を真っ赤に輝かせるルナがいた。


「ルナ!? 付いて来てたのなら声をかけてくれてもっ!?」

「フゥー、フゥッー!」


 突然腰にタックルをかましてくるルナ。思わず後ろに手を付き腰を地面に下ろす。


 何故かルナに押し倒された?

 荒い息を吐くルナはボクの服の胸元に顔を突っ込んでペロペロしてくる!?


「落ち着いて! あんっ、ちょっとルナ! そこはこそばいよ、ん」


 ルナが落ち着くまで背中を撫でてされるがままになる。次第に呼吸も戻り尻尾をフリフリし始めるルナの顔を見て話をする。


「落ち着いた? どういう事か話してくれる? マーガレットに嫉妬しちゃったの?」

「うちは何で子供ができないん?」


 思考が停止する、ボクは無実だ。


「一緒に眠ってるのに……うちはカナタの事が好きや! カナタはうちの事好きじゃないん?」

「大好きだよ? あのね? ルナは子供の作り方とか知ってる?」


 ルナはボクの目を見つめ『好きあってる者が一緒に眠ると出来る!』と本気で答えている。どれくらいの期間か分からないけど、親と離れて森で生きてきたのなら、そう言う情報が入ら無かったのは仕方ないのかもしれない。

 こちらの世界ではどういう風に教育しているか分からないけど、これはボクが答えていい事じゃない気がする……全部メアリーとロズマリーに丸投げしよう。


「メアリーとロズマリーに内緒で聞いてみてね? それと一八歳まではそう言う事はダメだからね?」

「うち行って来る! 出口どこなん?」


 言われて気が付くけど、入り口以外にそれらしい穴は見当たらない。入り口の穴も滑って上れるような気がしない。


「プテレアー多分聞いてるんでしょ? どうやって出るのか教えて~」

「入り口横にある蔓を握ってください~」


 ルナが蔓を握ると腰に巻き付き穴から引っ張り上げられていく。降りて来るのは良いけど戻りは結構つらそうだ……


 とりあえず場所の確保は出来た。あと部屋を改造する資材と、材料を保存する部屋も作らないといけないし、完成品を置く低温の部屋も必要だ。灯りももっと良いヤツにしないと暗過ぎる。

 そろそろ一回目の鐘が鳴る時間なのでボクも蔓を握り地上へと戻る。

 思っていた通り、行きはヨイヨイ帰りはツライだった……内臓が圧迫される感じが酷い、今度地上に出る時は通路を掘ろう。


 何か忘れてる気がするけど、早く食堂に行かないと朝ご飯を逃してしまう。




 食堂に入るといつに無く熱い視線がボクを貫く?


 何故かぐったりしているメアリーと尻尾をフリフリしているルナ。他の者はずっとこちらを見ている、どういう事?


「おはようさん! 昨日から眠る時は皆一緒やから寝起きも一緒や! 元気に一日がんばっていこー」


 元気過ぎるルナを不審に思いメアリーに聞いてみると……


「何て事言ってくれるの……ロズマリー母さんと二人、ルナに質問攻めにされたんだよ? ルナが一八歳になった時楽しみにしてるといいよカナタは……」


 藪を突いたら蛇が出ました!


「今日の予定はどうするんカナタ?」

「あー今日はボク、ベヒモス袋作りと新しい商品開発の為に少しプテレアの畑の下に篭るから、何かあったらプテレアに連絡してね~。皆は各自3~4名くらいで行動するように! 後は自由で~」

「うちはレッティとアンナ、三人一緒に帰らずの森に行くで! すっごいの見せたるで!」


 早速滑空を自慢する気満々のルナ、ラビイチ・ラビニ・ラビサンの三匹も一緒に連れて行ってもらう。たまには森の木々も食べたいと思うしね。


「私とレイチェルは、カナタの作った天然酵母がようやく販売の軌道に乗ったから、お得意様に卸しに行くついでに試供品のパンを配ってくるね~」


 天然酵母もアレから数日で急激な進化を続けている。蜂蜜を入れた時の瓶の大きいサイズの物に【空気調和】を使い、腐らない様に温度調整して天然酵母の液体を量り売りしている感じだ。メアリーの案で瓶は特殊なラベリングを行い、レイチェルが瓶のリサイクルで値段割引を考え付いた。ここまで一切ボクは助言していないので才能だろう……


「私とミリーはプテレアから分けてもらったスプライトを野菜の苗に移して育ててみるね!」


 ロニーとミリーはまた怪しげな事をしようとしている、野菜が沢山取れる様にとの事なので好きにさせるけど、プテレアには注意して見て貰っておこう。


「私とロッティは冒険者ギルドへ出勤ですね……代わりの者を他の冒険者ギルドから雇うか、新規採用すればいつでも一緒に居られるのに……寿退社、夢ですね」


 マーガレットさんはもう我慢する事を止めたみたいだ。これ以上のコメントは危険だ……新しいフラグが立ってしまう。ロッティは早番みたいで羨ましげにマーガレットを見つめ、もう冒険者ギルドに向って行った。


「私達は西門の外の見回りと、林の中に溜まったラビッツを狩ってきます。ガルワンの巣の扉用木材も帰りに確保してきますね!」


 ジャンヌは名前がまだ分からない四人を連れて狩りに出るようだ。後残るのは姉妹さんたちだけかな?


「私とおねえちゃんはカナタの護衛とお手伝いをします~」

「「「「!?」」」」


 ガタッ! と音を立てて椅子が引かれる。例の四人組みは、その手があったか! と言いたそうな顔だ。


「分かってると思うけどな? 功績も上げずに名乗ろうとすればどうなるか……」


 右手で何かを振るう仕草を見せるルナは姉妹さんを脅しにかかっている、そこまでしなくても良いと思うけど本人達が決めた事なので干渉しない。


「大丈夫だよ? それにキセイジジツは一八歳になってからじゃないとダメだってマーガレットが言ってたよ?」


 子供に何て事を教えているのか……マーガレットを睨むと失敗したって顔をして窓の外を見ていた。


「姉の私も色々お世話させていただきます、雑用はお任せください。何だったらその他の事も……アノ時のカナタは綺麗でした。ポッ」


 姉の反応と同時に皆頬を赤く染める、何の事を言っているのか……あ、アアッッッー!


 マーガレットは手に付いた蜂蜜をこれ見よがしにベロンベロンと舐め取っている。

 何故忘れていたのか、急にボクも恥ずかしくなる……ご飯を急いで食べて逃げ出したい。


「じゃあ皆がんばってね! えっと、妹さんとお姉さんは冒険者ギルドから、蜂蜜をもてるだけ回収してきてプテレアの畑の前で待機ね! 借り物の荷車使って良いから。それじゃあ解散! の前に各自の装備に【超硬化】かけるから待ってね」


 【超硬化】は効果の程がまだ良く分かっていないスキルだけど、冒険者ギルド前のかまどがまだ現役で昼時の露天に使用されているところを見ると、数日で切れるようなモノじゃないみたいだ。

 念には念を入れて防御は強化しておく。


「狩り組みは決して一人にならない様に! 命大事にだよ? あとガルワンはジャンヌ達についていってあげてね」

「ワンワンワン」


 食堂の外から返事が聞こえたので大丈夫だろう。ルナでさえガルム達と会話は成立していないけど、ボクは普通にコミュニケーションが取れている。これは推測になるけど、魔王の首輪に付いている【意思疎通】のスキルは本当に字のままの効果なのかもしれない。

 相手が人間以外でも、互いに考えていることを伝え合い、理解を得る事ができ認識を共有する事が出来るのが本来のこのスキルの使い方で。どんな相手でも話し合いが出来る可能性が生まれたのは凄まじいアドバンテージだ。長い年月を生き、強力になった魔物ほど賢くなるみたいだし、最悪ボクが戦っても勝てない様な相手が出てきても対話できるなら話は変わってくる。


「早く行くで! 昼ご飯はサンドイッチ持って行くから、夕方までには戻るな~」

「ちょっとボス! 私だけなんでバックパック二個なんですか!」

「アンナが一番大きいやろ? 小さいレッティに持たせば良いとか言うんか?」

「ボスが自分の分を持てば良いだけです!」

「「「ラビラビ」」」


 一番騒々しいPTが出て行くと食堂は少し静かになる、ボクもロッズの黒鉄杉置き場から廃材を貰って地下に急ごう。


 今日中に全部ベヒモス袋にしちゃうよ!

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