第52話 宴会?イイエ違います!
ビックWARビーの巣を解体し終わり、一同戦利品を抱え階段を上がる。何往復した事だろうか?
終わりの見えない作業に皆疲れきり、一言も喋る気力は残されていない。
「どうしてこうなった……」
一言ならいけました!
思い起こすのは二時間前……
――∵――∴――∵――∴――∵――
キングWARビー襲来の後。蜜を採取する冒険者達を眺めていると増え続ける瓶に焦るボク、途中瓶が足りなくなり買い足す事の五回。
初めは元気いっぱいだった冒険者達も次第に口数が少なくなり、終いには蜜を採取するマシーンの様にただ手を動かすだけとなる。
この巣は女王蜂が三匹居た。つまり戦利品は通常の三倍……
「なぁ……残りは今度にしないか?」
「逃げる気ですか? 敵前逃亡は銃殺ですよ?」
「「「「「「銃って何だ?」」」」」」
オルランドの四度目の持ち越し申し入れを断り、採取を強制する。
ルナがプテレアの蔓を加工した鞭を持ってサボる者が居ないか監視している。自分が受けた鞭の味を思い出しているのか、アンナは鞭が地面を叩く音を聴くたび背筋が伸びる。
「メアリー今蜂蜜どれくらい? これギルド倉庫に預かってもらう方が良いよね? 低温? 常温?」
「一瓶が直径7cm高さ8cmくらいで200gほど入ると思うから……全部で5tくらいかな? 日差しさえ当てなければ常温で良いみたい?」
響き渡るメアリーの声……虚ろな目で瓶に蜜を移していた冒険者達は、感電したかのように震え意識を取り戻す。
「5t……王都で売れば城が建つんじゃねえか? あの、【絶壁】さん? 一瓶って少なくないですか? ほら……オレ達頑張ったよね?」
「一瓶って約束でしたよね? それに幼虫ならいくらでも持って帰って良いですよ?」
弱気なオルランドをバッサリ切ると、推定5tになる蜂蜜をどうした物かと眺める。小分け200g瓶が現在五〇〇個ほど並べられており、町に瓶が無くなったので1kg入りの瓶や50kg入る壺も用意してこの量を何とか収めきれている。
幼虫はもう何匹居るかもわからないくらい採取されており、一応干物と凍らせて保存する分にある程度数を確保したら町中に無料で振舞う予定だ。
先ほどこんがり焼いて試食してみたところ、森の魔物を食べて育ったにしては美味しく、とろけるチーズのような食感と独特の甘さで、多分売れば儲かるかもしれない。でも……数が多過ぎる。
一人一匹食べたら当分見たく無くなる感じの濃い味だった。
蜜蝋は蜜を搾ったままの状態で現在加工していない、湯煎をするにも地下じゃ都合が悪いので壺に詰めて家に持って帰る予定を立てている。
「しかたないですね……あと一時間以内に終わらせたら、一人瓶二個で手を打ちましょう」
「約束だからな! 野郎ども……明日は休みだ。全力で行くぞ!」
更に二倍の速度に上がった冒険者達に、リトルエデンの皆は歩き回って治療をかけ続けている。何気に疲労まで取ってくれるのでかなり重宝するスキルで、全員が覚えれたのは幸先が良い。
でも何故か筋肉が増えるような事は起こっていない、ボクの治療は他の人が使うスキルと別物なのかな?
実験の為に、瓶を買い漁る作業を手伝ってもらったリリーに、幼虫取り放題を条件に蜜の瓶詰めも手伝ってもらう。体が疲れたとの申告を受け次第ボクが治療をかける、次第に治療をかけてから次の治療までの間隔が開いてきており、リリー自身もエネルギー補給の為に食べさせているラビッツの干物と取れ立ての蜂蜜を食べながらどんどん楽になって来ると言っている。
「これはもしかしたら凄い強化が施せるかもしれない……」
「うちにも! うちにもかけてや!」
今食べさせているラビッツの干物はルナが作った物なので、貰っているこちらとしてはダメとは言えない。伝染してクラン員全員が体を酷使してボクが直すという謎の苦行が始まってしまった。
「お前ら……いや、【絶壁】のクラン員だしな。そんな事もあるのかもしれない」
遠くを見つめ悟った表情を見せるオルランドは、次々と無くなって行く巣の残骸と増え続ける瓶を交互に眺め呟くのだった。
「皆で作業すると早いね~それじゃあ蜜をギルド倉庫へ全部預けようか! 幼虫は一時ボクのベヒモス袋に入れて移動させるからね」
「はぁ? 【絶壁】のアイテムボックスに全部入れてしまえば良いんじゃねえのか?」
それが出来たら話は早かった……しかしこれスマホなのよね!
「大きい物を少数入れるのに特化しているので……小さい物を多数入れるのは無理なんです!」
ボクの声が響き渡る……虚ろな目になり、乾いた笑いを浮かべた冒険者達は、己が役割をこなすマシーンへと変貌していった。
そして冒頭へ戻る……
――∵――∴――∵――∴――∵――
階段を上がる冒険者達、体力が尽きかけてふらつく者が出る度、リトルエデンの者が治療を施す。
「【治療D】ほらほら後が詰まって来てますよ!」
ダメだ、治療で体力は回復するけど精神的な疲労が回復しない……
オルランドが返事を返さなくなって来た。そろそろ何か策を打たないとまずいかもしれない。
「歌を歌うと気が楽になるんだっけ?」
「歌って何や?」
「どこに詩人が居るんだよ……」
「詩人の歌?」
根本的な問題が出てきた、あちらの世界で言う一般的な歌が無かった。メアリーが言うにはいわゆる吟遊詩人が歌う語り的なモノならあるそうだ。
皆立ち止まり考えているけど、ここは素直に気持ちを歌にしてもらおう。
「オルランド、自分達を鼓舞するようなのを適当にリズム良く叫んでね! 他の人は掛け声で!」
「なんつう無茶振りだよ! そんな体力残っているわけが……」
「オルランドには瓶を四個出す……他の者も掛け声次第では三個だよ?」
周囲の冒険者達がオルランドを見る目が変わる、妙に殺気立ち今にも殴りかかりそうだ。
出来なかったらどうなるか分かってるんだろうな? と暗に仄めかす冒険者達は一歩また一歩とオルランドに近づいていく。
「オレの歌を聞けぇぇぇ!」
追い詰められたオルランドが叫ぶように歌いだすと、冒険者達は掛け声を上げまた階段を往復する作業へ戻っていく……
「オレたちゃ強い! ラーズグリーズ支店の冒険者!」
「「「「「「オオッー」」」」」」
「一日冒険して! 三日休む冒険者!」
「「「「「「オオッー」」」」」」
「今日の稼ぎが! 三日の飲み代になるぜ!」
「「「「「「オオッー」」」」」」
「新参者の【絶壁】や! リトルエデンには負けられない!」
「「「「「「オオッー!」」」」」」
「最近嫁が! 口を利いてくれない!」
「「「「「「オ? オッー?」」」」」」
「だけど毎日飯は! ちゃんと用意してくれる!」
「「「「「「オ! オッー!」」」」」」
「今日も稼いで! いつか嫁の笑顔を取り戻す!」
「「「「「「オゥ……オゥッ……」」」」」」
途中から何故かオルランドの近状になってきて、むせび泣く冒険者達……
一日働いて三日も休んでいたら、お金が貯まらないし体も鈍って来るんじゃないかな?
それでも声を出す事で精神的にマシになったのか作業効率は上がっていく。スマホも総動員して円形闘技場から収穫品をギルド倉庫へ運ぶ。
作業が終わり皆宴会の準備なんて無理だと思うほど疲労困憊だった。
「コレじゃあ無理だね……また次の機会に――」
「お前ら行くぞ! 宴会だ! 宴会~」
「「「「「「オオッー」」」」」」
鼻歌を歌いながら準備に向ったオルランド達、唖然と見つめるボク達は大人は汚いモノだと知った……
解体が終わり収穫品も全てギルド倉庫へと移動したボク達は、幼虫を振舞う宴会の準備に行ったオルランドと冒険者達に報酬の蜜瓶を渡し円形闘技場の片付けに戻ってきた。
「清掃に浄化! これで一段落ついたね~」
ここに居るのはボクとルナとメアリーの三人だ。他のクラン員達は宴会の設営に向っている、ガルワンとサーベラスは階段を降りるのが怖いのか外で待機しているので、久しぶりに初期面子? この三人で集まった事になる。
ルナが無言で差し出したキングWARビーの羽を解体する。現れたのは先ほど貰ったイデアロジックと同じ物、もしかしたら先ほどのイデアロジックもキングWARビーの羽が原料なのかもしれない。
「イデアロジック(滑空)! これで二個同じスキルが……丁度良いしルナとメアリーが覚える?」
「うちも飛べるん!?」
「私よりアンナの方が戦いに向いてると思うよ?」
その場でジャンプして飛ぶ準備を始めているルナと遠慮するメアリー、ボクはこの二人に同じ飛ぶ感覚を味わって欲しい。
無言で停止飛行を行いルナとメアリーを抱えて飛び上がる、高さはとりあえず5mくらいでいいかな?
ちゃんとルナとメアリーがスキルを覚えた事を確認する。
「【滑空】ってスキルだから多分高い所から飛ぶか、思いっきりジャンプしないと使えないと思うけど。二人に飛ぶ感覚を味わって貰いたいんだ。奈落の穴を攻略するには必要だと思うしね!」
多分ジャンプで滑空するのは無理だ。一生懸命ジャンプするルナにその事を告げるのは気が引けるし、残酷だと思う……
「うちは飛ぶで! カナタ手離して良いでー」
「私も準備できたよ! ルナと同時にお願いー」
「行くよ! 明確に自分が飛ぶイメージを作ると良い感じに飛べると思うからね~」
手を離すと落下するスピードそのままで空中を滑り降りていくルナ、地面に足を着いてこちらに手を振っている。
対してメアリーは羽毛が舞い落ちる様に、ふわりふわりと空中を滑っていく。
「思った以上に使えるスキルかもしれない? メアリーもスピードあげて降りれる?」
「やってみる!」
メアリーがルナと同じく落ちる様に地面に滑り降りる。どうやら落下中のスピードは空気抵抗とか色々な法則を無視して自由自在なのかもしれない、停止飛行も良いけど滑空も面白そうだ。
一応公表しないように言い含めておかないといけない、それとなく使うなら良いけど大胆に使うのはまだだめだ。
「ボク達が飛べる事はリトルエデン内だけの内緒ね? もっとクランが大きくなったら公表するからね~」
「分かったで! もう一回や! もう一回だけやってから戻るで!」
「奈落の穴底を独占するんだね! 今から販売ルートの構築を進めておかないと……」
ルナに天井付近まで飛んで滑空するを五回せびられて、ついでにMPの消費も確認する。一回でどれだけ滑空しようが1消費みたいだ。この世界の冒険者はMPが低いし一日1MPしか回復しないけど、スキルも1消費なので無茶をしない限りは一日冒険して三日休むのは理にかなっているのかもしれない?
メアリーは奈落の穴の底から取れるで有ろう物品をスマホにメモしつつ、販売ルートの構築を始めている。チラッと画面を覗くと、この町全ての店名と経営者の名前に簡単なプロフと店員の名前まで書き記してあった。……メアリー恐ろしい子!
まだ飛ぶと駄々をこねるルナを何とか説得して、宴会場となっているはずの冒険者ギルド前に移動すると予想外の展開が待ち受けていた。
宴会の準備が始まっていない? オルランド率いる冒険者達とマリア&マーガレットが口論になっている。
「良いじゃねえか! 二回も三回も同じだろうがよ!」
「ダメです、この短い期間に何回宴会する気なんですか! オルランドあなた自分が今週何回狩りに出たか覚えていますか?」
「うぐっ、それは……」
「一回ですよ! 一日狩りに出て六日飲んだくれる……そんな事だからアンジェリカに愛想尽かされるんですよ!」
「うっぐ、それは今関係無いじゃねえか……」
オルランドが泣きそうになっている、でもアンジェリカに愛想尽かされる事は無いと思うよ? ちゃんとご飯作ってくれるみたいだし、宿のバイトの休憩中にオルランドの物だと思われる予備の武器を手入れしているところを見ている。
「まぁまぁ、皆さん落ち着いてください。ここはボクが話しを受けましょう」
「宴会のし過ぎです、ビックWARビーの幼虫はこちらで町中に配っておきますので解散してください」
「何で宴会に私を呼ばなかったのか疑問に……じゃなかった! 宴会をする時は事前に私に許可を貰ってからにして欲しいモノだね!」
「はい、すいませんでした。配布の方はよろしくお願いします、それとこちらの蜜瓶をギルド職員の方に各自一個ずつ配布お願いします。日頃お世話になっているのでお礼です……」
話を聞いて何とか宴会を開催しようと思ったけど、マリアさんの有無を言わさない眼光に即座に諦める事にした。あまり無理を言うと次はどんな無理難題を押し付けてくるか分からない……
袖の下を渡す事によって、いざと言う時ギルド職員には味方になってもらう算段だ。
「【絶壁】が言うんだったら仕方無いなー。お前達、解散準備だ! 蜜瓶を一個売って飲みに行くぜ!」
オルランドは全然懲りていないようだ……。そして人ごみからこちらを、オルランドに射殺す視線を送っているアンジェリカが居る。
「オルランド……蜜瓶が一個いくらで売れるか知らないけど、金貨2枚の事忘れない方がいいよ?」
「お、おう……今思い出したぜ! 三個は売る事にする、なぁに一瓶銀貨4枚くらいにはなるはずだ。金貨2枚なんてすぐだぜ? すぐ!」
ボクがアンジェリカの方へ視線を送りながらオルランドに言うと、視線の先でこちらを見ているアンジェリカの表情を見たオルランドは言い淀み、慌てて言葉を紡いでいた。
「残念だけど帰ろうか?」
「うちは売ってラビッツの干物用に塩とはーぶ? を買うんや! はーぶってどこで売ってるんかな?」
「八百屋さんで聞いて帰ろうね? 皆自分の取り分は売っても良いからね? 普段食べる分は今日取れた分から食べるから」
「むむむ~悩みます……」
皆何を買うか悩みながら歩き、時々前の人にぶつかりそうになっている。
「それにしても200gかそこらの蜂蜜が銀貨4枚……4万円くらいか、5t有るから……銀貨1万枚、1億円!? えっ? 何この大金、順調過ぎて怖いんだけど……」
「加工するんですよね? 何に加工するかにもよるんですが倍以上の値段で売れると思いますよ?」
レイチェルが恐ろしい事を言う、倍って言ったら2億円超えちゃうよ? でも蜂蜜を加工ってどんな物があるのかな?
「加工ってこっちでは一般的にどんな物を作るの?」
「果実を煮たり、小麦粉に混ぜて焼いたり……極めつけはパンに混ぜて焼き上げると、パン焼きかまどの蓋を開けた瞬間、漂う蜜のかぐわしき香りで夢心地に……」
レッティはその時の味を思い出しているのか、ヨダレが垂れている事に気が付かず隣に居たアンナが変わりに拭っていた。
「ふ~ん、蜜がこれだけ高いとなると……誕生日のケーキ的なご褒美なのかな?」
「私達が売られる事が決まって……最後の日の晩御飯にお母さんが焼いてくれたんです」
思いがけないところで地雷を踏む。本人達は自覚していない様だけど両手を握り締めている。なかなかヘビーな思い出みたいだ……
「えっと……そうだ! 今日から毎週日曜日は蜂蜜パンの日にしようね! ボクが作った酵母も使ってふわっふわっの蜂蜜パンを焼くよ! そして日曜日は定休日として、狩りに出ない完全な休みにしようね!」
歓声が上がり喜び走りまわる子供達、やっぱり定期的に休みは必要だよね。今後は狩りだけじゃなくて観光やピクニックみたいな事もして行こうかな?
八百屋によって数種類のハーブの鉢を買い家への帰路に着く。
今日はお昼に幼虫のこんがり焼きを食べただけなのでお腹ペコペコだ。
謎の少女と護衛の騎士? も冒険者ギルドに預けてきたし厄介事はもう無いはず。そう思っていたボクを許してくれるほどこの世界は甘くなかった……
玄関? と呼ぶには大仰過ぎる門を開けて庭へ入ると、妙にドヤッ顔でボクの帰りを待っているプテレアが居た。
嫌な予感がする……スルーしてお風呂へ直行しよう。今日こそ大浴場でゆっくりお風呂に浸かるんだ。
「ただいま~皆大浴場へ行こうか! お風呂~お風呂~」
「待ってください主殿!」
全員プテレアの蔓に捕まった!? 胴体に腕ごと巻きつけられているのでもがく事しかできない。
「疲れているから明日にしない?」
「カナタさえ居たら良いんとちゃう?」
「そうですね……」
まさかのルナの裏切り、プテレアはボク以外の蔓を解くと蔓を引っ張って畑に向う、引きずられて行くボク。ルナはジェスチャーで何か訴えかけて来る。
「上? 波? 寒いの反対? 水? 火? ちょっと、何で脱ごうとしてるの!?」
「私達は大浴場の準備するから、カナタも用件が終わったら上がってきてね? ルナもちゃんと喋ってよ!」
ルナが握り拳に親指を立てたままメアリーに引きずられて行く、そうだよね。分担した方が作業は捗るよね……裏切ったと思ったボクが馬鹿だったよ!
「プテレア、自分で歩くから蔓を解いて欲しいんだけど……」
「もう着くんで良いですよ?」
そうじゃ無い、そうじゃ無いんだよプテレア……普通蔓で縛られて引きずられる主なんて居ないんだよ。
ボクの願いは聞き入れて貰えそうに無く、何を勘違いしたのか引きずっていた蔓を持ち上げてボクを吊るした状態で畑へ急ぐプテレア。
畑に着くと見事なカナタ芋が生まれていた……
「何で? どう見ても芋だけど……」
「張り切りました! この色艶! 張りのあるこの実! そしてこのサイズ!」
想像していた物とは全然違う、そしてプテレアは実と言っている。太い蔓に吊るされたぶっとい芋は……長さ3mはある。
「何Lサイズ!? いや、Xが何個付くか分からないレベルか……」
「ドヤッ!」
成し遂げた感を漂わせているプテレアに詳しいサツマイモの生態を教える。
それにサツマイモは掘る物だ。たとえ見た目が芋でも決して蔓に生る物じゃない、地中に出来る物だ。手の平サイズを基準になるべく小粒な方が料理しやすいし売る時も楽なので、メインは小粒で一部サイズを大きくしたプレミアムカナタ芋を売りに出す方向で行こう。
「まぁ、お疲れ様? プテレアありがとうね! このカナタイモはまずは皆で試食するしかないね~熟成期間が分からないからボクが魔法で何とかするとして……半分は皆で食べて半分は試供品作りに使おうかな?」
「次は多産ですね! 芋が地下に出来る作物だとは思いませんでした。でもそれだと一部ダンジョンの中に生える事に……」
サツマイモに宿ったのに生態を知らなかったプテレア、それで良いのかドリュアス!
それにしてもダンジョンの中に生えるのはいただけない、他の冒険者に採取されると商売敵になってしまう。
「他の冒険者達にカナタ芋を採られたらまずいね……って! 何でダンジョンまで根を伸ばしているの!?」
「冒険者は来れないと思うので大丈夫ですよ? 大穴の底へ根を下ろしているので! 時々おっきな鳥が根を突きに来るので戦場ですけどね~」
プテレアがどこまで根を伸ばしているか気になって来る、芋を付けるのは本拠地の畑だけにしてもらおう。
おっきな鳥と言うのは多分? 奈落の穴のBOSSだろう、いつか皆で討伐に向おう。まだ皆のレベル上げの途中なので機会を見てボクが偵察してくるのも良い。
「今日はご褒美にいつもより気合を入れて【魔力の源泉】を使うね!」
「よろしくお願いします!」
早速ボクはスキルを使い、『世界に存在する力』を魔力へと変換していく。恍惚とした表情で魔力を吸い上げるプテレアの蔓を撫でながら、明日の予定を考える。
「あぅ! 溢れる、あふれちゃうー! すっごいのー! 主殿うちはもう、もうっ!」
「明日は引き篭ろう。ベヒモスの胃袋を加工したり商品開発したりしてマッタリ過ごそう……外に出るから厄介事に巻き込まれるんだよ、そうに違いない。」
嬌声を上げ身をくねらせるプテレアを放置して、明日の予定が決まったのでお風呂へ向う事にする。
後で聞いた話だと、あの後プテレアはロッズにお説教をくらっていたそうだ。嬌声に当てられたロズマリーがロッズを引きずって行くまでの間……
ロッズは翌日自室から出てこなかった。




