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もふもふ集落と長老

外に出ると、さっきはいなかった獣族が私の方を見ていました。

ウサギさんが多いけど、他にイヌ、ネコ、クマ、リス、ヤギ、ヒツジ、フェレット、キツネ………

ここは天国ですかっ!

もふもふしかいないじゃないですか!みんなそれぞれ毛並みとか違って、抱き心地みんな良さそう。

物珍しげにキョロキョロしてたらいろんな子と目が合っては目を逸らされる……

何でだろう。まあ私は余所者だし、目が合っても気まずいだけだもんね。

「こいつはミカ、行くとこがないらしいからまあ、面倒をみてやってくれ」

オル君が私を皆に紹介してくれました。視線がさっきよりも刺さります。まあ動物の可愛い目が不思議そうにくりくりしてるから全く苦じゃないんだけど。

「何族?見たことないけど……」

そう問いかけてきたのはイヌ獣族、コリー犬かな?

「わからん。俺も初めて見たしな。まあフィルの保証付きだから普通に接してやってくれ。ニムを助けたのもミカだぞ」

ぼけっとしてたらオル君にお前も何か言え、みたいな視線を送られた。

「えーっと、ミカです。ここのことはほとんど知らないので、教えてくださればうれしいです。よろしくお願いします」

言えた!やっぱりこういうのは恥ずかしいね。そこにいるのはカボチャだと思え、とかはよく言われるけどこの状況でそうは思えません。

「じゃああとは長老のとこに行くだけか」

「長老?」

動物の……長老?想像つかない。強そうなのか、物凄いヨボヨボのおじいさんかな?

「ああ、ミカについてこれからどうするか長老の判断を聞く。魔法についてもミカは聞いといた方がいいだろ」

魔法、か。そうだよね。魔力高いとか言われちゃったし、どうせなら普通に使ってみたい。

長老に魔力を教えてもらうってなんだかとってもよくあるファンタジーみたい。まあファンタジーじゃなくて現実なんだけども。



長老は最初ここに来たときに教えてもらった洞窟と茂みにはいないそう。じゃあどこにいるのかってオル君に聞くけど行けばわかるとしか教えてもらえない。

歩くのには慣れたからよかった。普通に歩ける。

「ここだ」

そう言ってオル君が指差したのは木の根元の、根っこが飛び出てる隙間。こんな狭いとこにいるの?長老ってもしかしてモグラかなんか?

「長老、俺です、オルです」

………返事はありません。

「こんなところに本当にいるんですか?留守とか……」

「いや、長老はあんまり外には出ない。穴を掘ってるか寝てるかどっちかだ」

やっぱり長老ってモグラかな?穴を掘るのが日常らしいし。

「オルか?ちょっと待て、すぐ行く」

おや?女性っぽい高い声。おじいさんじゃないのかな?

ちなみに何で言葉がわかるのかを考えるのは止めました。声の高さとかもわかるし、普通に意志疎通ができてるから。

私はじっと木の根元を見つめます。モグラって生で見たことないからなぁ。どんなのだろう。

「どうした?急に来るなんて」

そう言って出てきたのは……あれ?リス?モグラじゃないの?

どこからどうみてもリス。茶色の、しっぽふさふさの可愛いリス。揺れてるしっぽがこれまた可愛らしい。

「ん?そのウサギ獣族は誰だい?見たことない族だが」

リス……長老と目が合いました。さっき集落で見たリス獣族よりさらに小さい。本当に長老なの?

「異世界から来た、元人間?って言ってる。フィルが保証してるから事実なんだろうけど」

「ふぅん、まああの子が言うならそうなんだろ。で、あんた名前は?」

「ミカです」

「ミカ、ね。誰が世話することになってるんだい?」

「まだ決まっていない、まあ誰がって言われても全員で面倒みるのが普通だし、寝床を用意してやるくらいでも大丈夫だろ」

長老はオル君の言葉にそれもそうだと言ってうなずくと、もう一度私の方を見ます。

「ちょっと手出してくれるかい?」

「手、ですか?」

私は少しかがんで長老に手を出します。私の手に長老は自分の手を乗せて少し目を瞑りました。

「うーん……オル、このウサギ獣族は何者だい?ここまで魔力の高いのには会ったことがない。まああんまり他の者と関わっていないだけかもしれないが」

「俺も驚いたよ。魔物3匹を一撃で倒してたしな。ニムの怪我も一瞬で治したし」

オル君はさっきのことを思い出しているのか、少し遠い目をしています。

「治癒魔法も使えるのか。でっかい拾い物をしたもんだ」

「長老は魔法が使えるんですか?」

さっき魔力の計測?らしいことをされたし。使えるのかな。

「あたしかい?、もちろん使えるよ。あんたほどじゃないだろうがね」

「でも私、魔法使えませんでしたよ。あのときは訳が分からなかったですし」

気付いたら魔物が爆発してたからなぁ。もう一回やってみろって言われたらできないと思う。

「まあ一種の魔力暴走状態になってたんだろ。基礎くらいなら教える……というより、教えないとせっかくの魔力が腐っちまう。暴走させなきゃ使えないなんてそれは魔法じゃなくてただの魔力の無駄遣いさ」

「というわけで長老、ミカを時々こっちに来させるけど、構わないか?」

「まああたしも穴掘ってるだけだしね。いつでも来な。でもあたしに教えられるのはほんとに基礎だけだからね、それ以上は独学でどうにかしておくれよ」

「ありがとうございます。ところで長老はなぜ穴を掘ってるんですか?」

リスなのに、どうやって掘ってるんだろ。

「まあ趣味だよ。自分のことは自分でやってるだけさ」

「どうやって掘るんですか?魔法ですか?」

私がそう聞くと、ちょっと待ってろと言い残して長老は穴に戻っていきます。

少し待つと、何か棒のような物を持った長老が現れます。

「これさ。魔法は一切使ってないよ」

手にとって見てみると、ただの木の棒。長老が持ってたら少し太いな、くらいの木の枝。

「スコップとか、使えばいいのに」

「すこっぷ?」

えっ?まさかスコップが存在しないの?

そこら辺の木の枝を拾っていびつだけど、スコップの絵を描いて説明。美術が常に3だった私の絵を見なさい!

「そうか、そういう手があったのか。今度木を削って作ろうかね」

「ここだけ木にして、先は石にした方がいいだろ」

オル君が新たなスコップの案を出しています。新たなスコップって何か変な言い方だけど。

「あんたの元いた世界の知識かい?」

「そう……ですね」

まさかスコップが無いとは。探してみたら意外なものが無いのかも。そういうのを提案していけばオル君達も楽になるようなのができるかな。

「あんた面白いねぇ。いつでもおいで。あんたの世界の話をしておくれよ。あたしはあんたに魔法を教えるからさ」

愉快そうに笑う長老、可愛すぎて私も思わずにやけます。

さっきから可愛い子ばっかりで悶えそうです。リスさんに魔法を教えてもらえるなんて、楽しみだ。

「まあ今日のところはもう帰りな。集落のやつらと仲良くしていきなよ」

そう言い残して長老は再び穴の奥に行ってしまいました。

「じゃあミカ、戻るぞ」

長老の消えた穴をぼんやり見ていたらオル君に手を引かれます。

私は黙って頷き、あのもふもふした子達と仲良く出来るんだろうか、と少し不安に思いながら、あの天国みたいなところに足取り軽く、先を行くオル君に付いていくのでした。


前回とだいぶ間が空いてしまいました。

たぶんカタツムリのごとく遅い更新になると思いますが、ご了承ください

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