4話
事件から数週間が経った。
悪意を持ってミモザを排除しようとしたクロエとジュリアンは、学園を正式に退学処分となり、実家からも厳重な謹慎と廃嫡の手続きが進められているという。彼らが再びこの第一線に戻ってくることは二度とないだろう。
晴れ渡る青空の下、学園の庭園は爽やかな風に包まれていた。
ミモザはベンチに座り、無事に更新された奨学生の認定証を嬉しそうに眺めていた。
「本当に……夢みたい。奨学生も続けられるし、昇格試験も一番の成績で合格できるなんて」
「夢ではない。お前自身の努力と実力で掴み取った結果だ」
隣に腰掛けたレオノールドが、優しく微笑みながら言った。
かつての冷徹で周囲を寄せ付けなかった彼の表情は消え、今やミモザだけに見せる穏やかな光が宿っている。
「でも……レオが助けてくれなかったら、私は今頃追放されていました。本当に、感謝しても仕切れせん」
「お前に感謝される筋合いはない。俺はお前を守りたかったから動いただけだ。それに……」
レオノールドは少しだけ照れたように視線を逸らすと、ポケットから小さな真珠のペンダントを取り出した。
そこには、二人が完成させた『星導の涙』の欠片が、小さく輝きを放ちながら組み込まれている。
「これは……?」
「俺の魔力とお前の魔力回路を恒久的に同調させた守護石だ。……ミモザ。これからはパートナーとしてではなく、俺の生涯の伴侶として、隣にいてくれないか?」
唐突で、けれど最高に誠実な求婚の言葉。
ミモザは目を丸くし、やがてその頬を美しい朱に染めた。
「レオ……私なんかで、本当にいいのですか? 家柄も、身分も……」
「お前でなければダメなんだ。身分も周囲の雑音も関係ない。俺が愛しているのは、努力家で、誇り高く、美しいお前自身だ」
まっすぐな言葉が、ミモザの胸の奥深くまで染み込んでいく。
ミモザは溢れ出る涙を拭い、最高の笑顔を弾けさせた。
「はい……! 私でよければ、喜んで……ずっとあなたの隣にいさせてください!」
レオノールドはミモザを愛おしそうに抱き寄せ、その額に優しくキスを落とした。
邪魔者たちの悪意は完全に打ち消され、二人の前にはどこまでも澄み切った、輝かしい未来だけが広がっていた。
(完)




