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世界を救うために君を落とします  作者: 月丘 翠
作戦《5》夏休みに彼女とデートせよ
23/40

夏休みに彼女とデートせよ③

花火大会当日はかなり人が多い。


この地域で1,2を争う規模の花火大会なので当然だ。

気慣れない浴衣に戸惑いつつ、待ち合わせ場所に向かった。


「よっ」

待ち合わせ場所につくと、誠しかいない。


「藤沢と大久保さんは?」

「まだ。ナンパとかされてるんじゃないかー?藤沢はまだしも、大久保はあれだけの美人だからな」


「誰がまだしもやって?」

振り返ると、小春が怒りに震えた表情で立っている。


梨央は前に見せてもらった浴衣で来ている。

浴衣姿もさることながら、照れているのかほんのりピンクに染まった顔が可愛らしい。


「まぁまぁ藤沢。とりあえず会場へ向かおうぜ。な?」


そう言って、なんとか会場に向かいだしたものの、近づけば近づくほどかなりの人だ。


「こりゃはぐれそうだな」

そう誠が言っている内に、人の流れに巻き込まれて梨央が離れそうになる。


(あ・・・)


奏汰はそう思った瞬間、手を伸ばして、梨央の手を掴んだ。

ぐっと引き寄せる。

思ったより力が入っていたのか、ぽすっと奏汰の胸の中に梨央が収まった。


「ご、ごめん」

「いえ、助けてくださいってありがとうございます」


辺りを見回すと、誠と小春は少し先のところで手を振って待っている。


「あのさ、またはぐれそうになったら困るから、大久保さんのどこかを掴ませてもらってもええかな?鞄でもいいし」


奏汰がそういうと、梨央はぎゅっと手を握り返した。

「・・・これでいい」

奏汰も手を優しく握り返すと、誠と小春の元へ向かった。


「なんかお前ら顔赤いけど?」

「うるさい、人混みで暑かったんだよ」



その後、なんとか会場に辿り着き、花火の打ちあがる時間を待っていた。

事前に小春が買ってきてくれたサイダーが渇いた喉にしみる。


「もうすぐだね。楽しみ」

「うん、楽しみだね」

小春と梨央も楽しみにしているようだ。


ひゅ~・・・・

花火が高く上がっていく独特な音が聞こえる。

そして、ドーンという大きな音共に夜空に大輪の菊の花びらが咲いた。


美しい花火があがっては消えていく。

その一つ一つに梨央は驚いたり、喜んだり、表情を変えて楽しんでいる。

「お前は何を見てんだよ」

誠に言われて少し恥ずかしくなったが、梨央の横顔はやっぱり美しくて横目で見てしまう。


そして最後の花火が上がっていく。

大きな花火がこちらを見下ろしている。

梨央を見ると、梨央もこちらをみている。

梨央の唇が動く。

“たのしいね”

奏汰は頷いた。



花火大会が終わると、特に予定もない。

奏汰は家の中で1日だらだらと過ごしていた。

夏休みの宿題はあるが、宿題なんて間に合うかどうかぎりぎりの日から始めて、スリルを味わうのが醍醐味だ。


そう思っているのに、今目の前には小春がいる。


「あのさ、藤沢はどうしてうちに来たんだよ?」

「どうせ夏休みの宿題やってないだろうなと思って、優しさで来てやったのよ」

「いや、別にちゃんとやるから大丈夫ですけど」

「じゃあ今どこまで出来てるわけ?」

「・・・ゼロです」

「ほら、やっぱり」

ドアがガチャっと開いて、母親がコーヒーとお菓子を持ってくる。


「おい、母さん!」

「小春ちゃん、助かるわ~。この子なんか頼んないから」

「任せといてください」

奏汰を無視して二人で会話をして、母親は「またね」と出ていった。


「さぁ、はやく宿題やるよ」

小春に促されて、仕方なく宿題を始めた。

なんとなくやり始めると、最近勉強を頑張ったせいか解けることも多く、気づいたら集中して問題を解いていた。


「ふぅ・・・」


時計を見ると、15時になっている。

どうやら2時間ほど集中していたらしい。


「ちょっと休憩しないか?」

小春に声をかけると、「そうだね」とコーヒーとお菓子を食べ始めた。

コーヒーはすっかりぬるくなっていた。


「藤沢はさ、小学校の時から結構友達いるだろ?」

「まぁあんたよりは多いかな」

「・・・そんな友達の多い藤沢がなんで俺のこと気にかけてくれるんだ?」

「気にかけてなんか!」


「だって、小学校の時、遠足で俺だけ一人で飯食ってたら声かけてくれたし、グループ学習の時も声かけてくれただろ?中学校になってからは誠がいたからそんなことはなかったけど、クラス離れても廊下で話したり、今みたいに気にかけてくれるから何でかなぁってふと思ってさ」


「べ、別に、そんなん友達だったら普通じゃない?」


小春の顔が赤くなっているように見える。


「藤沢は俺の友達か、まぁ確かにそうなのかもな」


そう言って奏汰が小春を見ると、「・・・友達なんかじゃない」と小さく呟いた。

「え?」

「もううるさい!」

小春はそのまま荷物をまとめて帰ってしまった。


その後は、帰って行く小春の様子がおかしかったようで、母親が怒ってきて散々だった。


「ちょっと、奏汰!あんた小春ちゃんに何したの!」

「いや、友達だって言ったら怒って帰った」

母親は一瞬呆れ顔でこちらを見たと思ったら、思いっきり頭をどつかれた。


「ホンマあんたはあほやな」

母は怒ると関西弁で怒る。

母は子供の頃関西にいたので、つい出てしまうらしいが、これが結構怖い。

「いや、俺は…」

奏汰の言い訳など耳を貸さず、怒りの足取りでドカドカと部屋を出ていった。


「痛いなぁ~・・・もう。今日は厄日だな・・・」

ベッドに横になると、母親の「あんた一人やねんからエアコン切りや」という声が下から聞こえてきた。

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