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(39)裏取り

「さて、これからあいつらを尋問するんだが・・・」

と言って若井さんが大泉さんを見る。

「おそらくは東亜共和国に買収されている。「かみかぜ」の情報漏洩を口実に船に乗り込み、それこそ機密情報を持ち出そうとしたんだろうね」


「で、ちくわちゃんの出番ってわけだ!」

陽気な声で若井さんがちくわを指さす。

「え?」

思わずオレは驚いた。


「ちくわちゃんなら、あの二人が考えていることや大使館で何を言われたか、わかるんじゃないかと思ってね」


***


大泉さんと若井さんに先導され、オレとちくは拘束室なるところに向かった。一見普通の部屋だったが、ドアに小窓がついていて、開けると中の様子が見えるようになっている。随分狭くて、背の低い部屋だった。拘束されているものが自由に動けないよう、こういう設計になっているらしい。


大泉さんと若井さんにKOされた公安二人はまだ伸びている。というか、ガムテープで目と口を塞がれ、タイラップで両手両足を縛られているので、伸びているのか、それとも正気は戻っているけど、動けないだけなのか、見た目ではわからなかった。


大泉さんから、誰も何も喋るなと指示を受けた後、体格のいい乗組員数人の護衛に囲まれた中野艦長が鍵を開けた。


大泉さんと若井さんの足元に座って二人を見ていたちくが、おもむろに公安に向かって歩き出し、体の上をのしのし歩いて、スンスンして、そして戻ってくる。

すかさず若井さんが扉を閉める。


「何かわかった? ちく」

オレが聞くと、うにゃん、うにゃにゃあん、うにゃんと長く鳴いた。


「東亜共和国からコンタクトがあったのは去年の10月で、原潜の性能や乗組員のスキルなど、東亜に提供する情報によって、報酬をもらえることになっていた、と言ってます」


「やっぱりか。で、これまでに渡した情報は?」

腕組みをしながら若井さんが尋ねる。


オレがドアを指さすと、若井さんが明けてくれ、またちくがスンスンしに行く。二人は気が付いたのか、何かが体の上をのしのし歩いているのを感じて、怯えたように、ん~ん~呻きながら体をよじっている。


そしてちくが戻ってくる。若井さんが扉を閉める。

「11月にここに来た時に撮った写真だけ。ネクタイピンがカメラだったみたいです。報酬は100万円だそうです」


「やはり、隠しカメラか・・・」

セキュリティが甘かったか、とでも言いたげにうつむく大泉さん。

「写真1枚で100万とはいいバイトだが、たった100万のために国を売るとはな」

情けない奴らだ、と若井さんが嘆く。


「八瀬君、もう一つだけ調べてもらっていいかい。今度いつ東亜側とコンタクトする予定なのかを知りたい」

オレが頷くと、若井さんがドアを開ける。


ちくがスンスンしに行き、ひとりの上にじっと止まったと思ったら、目が光りだした! そして、しばらくして、ふーっと唸り声をあげ、踏み踏みしだした。

爪が出ていたのか、踏まれている人は痛そうなうめき声をあげていた。


そしてちくが戻ってくる。すかさず若井さんが扉を閉める。

ちくは、盛りの季節を迎えた時のような声で、うぅ~~~ん、と長く低い声で鳴いた。

若井さんがビックリしたような顔で、

「なんだ?」

というので、

「次に会う予定は決まっていなくて、こちらから電話することになっていたようです。それよりも、猫を使った生体センサーの情報が大使館にあるようで、怒ってます・・・」


「そうか。辛い情報まで見させてしまったようで、すまなかった、ちくわちゃん」

大泉さんがしゃがみながらちくの頭をなでてくれた。


「もういいんですか、大泉さん」

「ああ、十分だ。今ちくわちゃんが、彼女の能力を使ってこの二人から得た情報は、情報本部が調べた情報と全く一緒だ」


「ちくわにやってもらうまでもなかったですね。お役に立てずにすいません」

オレが申し訳なさそうに頭を下げたら、

「何を言ってる青年! 俺たちはそれが知りたかったのさ!」

と言って、豪快に若井さんに背中を叩かれた。

「え? どういう意味ですか?」


「モニターに映った海を見て、その底に潜む潜水艦を見抜いたり、同じくモニターに映るミサイルの軌道を変えたり、そんなことができるちくわちゃんなら、この二人が大使館でどんな話をしたか、こいつらの記憶に残っていることならわかるんじゃないかと思ったんだよ」

と若井さんが話してくれた。


それに、と大泉さんが続けた。

「大使館に生体センサーに関する情報まである、と教えてくれたじゃないか!」


大泉さんが中野艦長に礼を言い、オレたちは部屋に向かって歩き出した。

「あの二人は、このまま拘束を続ける。リリースして我々の動きが大使館に漏れると困るからね」


さらに、

「「かみかぜ」が公になるのは避けたいので、事を荒立てるつもりはない。が、仕掛けてきたのは向こうだ。目には目を、思い知らせてやるつもりだよ」

ニヤリと笑う大泉さんだった。


それを見た若井さんは、

「言ったろ、コイツは見かけによらず武闘派なんだよ」

と片目を瞑ってみせた。


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