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(34)地底湖のドック

地底湖のドック設置計画は、内調と防衛省の粘り強い交渉の結果、ようやく予算が承認された。


差し当って深海救命用の旧式潜水艦の前方デッキを開放できるように改造して、クレーンなどの重機や資材を運んで、去年の12月から工事の準備を進めている。


工事と言っても、極秘潜水艦の秘密ドックだ。民間業者に委託は出来ないので、設計や地盤などの調査も含め、陸自の施設科が全て請け負ってくれ、第一陣として、愛知の春日井駐屯地から第10施設大隊が来てくれている。


この大空洞に来て最初の数日間は、圧倒的なスケール感や、物珍しさで隊員たちのテンションも上がる。

だが、改造した潜水艦に寝泊まりし、風呂に入り、飯を食い、作業をして、また潜水艦に泊まる。潜水艦乗りならまだしも、本来、丘の上で行動する陸上自衛隊だ。太陽を見ることも浴びることもない生活はなかなかのストレスのようで、彼らの本業に支障が出ては困ると、一週間ごとに交代して作業を行うこととなった。


三角錐が鎮座する第2空洞前周辺は工事対象外だ。

今では水位が戻って見えなくなっているが、第2空洞の入り口上部の岸壁には、誰が貼ったか、水難除けで有名な、京都の水火天満宮さんのお札が貼られてある。


いつしか、毎日の作業前には隊員たちが手を合わせて、その日の安全を祈願するようになった。水火天満宮さんのお札に、安全祈願の効能があるのかはアヤシイが、毎日手を合わせる、その気持ちが大切なのだ。


万一、この前みたいに三角錐が振動するような事象が発生しても、その前兆段階から把握できるように、気圧計や地震計などの各種センサーを大空洞内に設置してある。三角錐が鎮座する宮殿の床には、潜水部隊が加速度センサーも設置した。


三角錐事件の時に特調が使ったAIはボルデメに移設して、そのまま使用している。常時センサーの値を監視し、何か通常と異なる予兆があれば警告を上げてくれる仕組みだ。


ビューティペアが嘆願書(といっても、かけるとめぐるの二人だけだったが)まで書いて望んでいた、コの字階段はついに自動化になるらしい。ただ、コの字の取っ手が上下するだけの簡易式にするのか、それとも、そこそこ大きな機器も運べるようなエレベータを設置するのか、内調と防衛省間で議論の最中で、実現にはまだ少し時間が掛かるようだ。


吉田山の地下道入り口は、数か月前にコンクリート製の建物で囲い、携帯電波の中継基地を模した疑似アンテナを立てたが、天の原入り口も、近いうちにはコンクリートで囲う予定だ。とりあえずの対応として、国土交通省名の立入禁止看板を立て、出るにも入るにも暗証番号による電子ロックを整備した。


地底湖ドックの本格的な工事は、新年度の予算が承認されてからの、4月以降に開始の予定となっている。


このドックの遥か頭上にある大津ボルデメ、正式名、舞鶴地方隊艦艇管制局にも工事の手が入った。


舞鶴湾沖防衛出動時に、ボルデメ管制室がイロハと「かみかぜ」、「あたご」、そして2機のF35の攻撃システムリンクをコントロールしたことで、その実績と重要性が政府のお偉いさんにも認識され、地底湖のドックよりも優先的な予算がついた。


おかげで、コンピュータは相当に性能が上がり、同時に3桁の攻撃目標と火器管制システムをリンクしても演算処理オーバーになることは無くなった。これはボルデメの功績だけでなく、若井さんのあの電話が効いたのかもしれない。


セキュリティ面でも、24時間体制で警備員が付くことになった。

あんな山の中に、誰が来るのかと思う人もいるかもしれないが、そんな山の中だからこそ、である。

万一、悪意のある者の襲撃を受けた時、連絡を受けてそこに仲間が到達するまでには、例えば陸自の大津駐屯地からでも、車で30分はかかる。


みなさんは、原発特別警備部隊というものをご存じだろうか。

これは日本の警察において原子力関連施設の防護を任務とする部隊で、原子力発電所が立地する道県警察本部の機動隊において、専門部隊として設置されている。これと同じものが全国5か所のボルデメにも設置されることになった。


つまりボルデメの警備員は日本の警察であり。銃の携帯、および緊急時の発砲が許可されている。人里離れた山奥だからと、興味本位で侵入を図ろうなどとゆめゆめ考えない方が身のためだ。


従って、ボルデメの建物自体にも強化が図られた。

ガラスは全て防弾となり、外から管制室に入るには、まず毎週強制的に変更される暗証番号で建屋本体に入る。次に前室ともいえる管制隊員の控室に入るには、ドアの前にいる警備員(繰り返しになるが、銃器を持った機動隊員である)に事前に提出する入室申請書の確認をしてもらい、顔認証で開扉する。そして本丸、管制室に入るには、顔認証と音声認証が必要となった。


これに伴い、大空洞に降下するには、管制室内のハッチだけが唯一の出入り口となっていたが、管制隊員以外は管制室に入室することはまかりならん、と言う内調室長のお触れにより、建屋本体に入ってすぐのところに、地下へと降りるコの字トンネルに直接アクセスできる出入口が設けられた。


こんなふうに、何もかも順調に動き始めているさなか、東亜共和国の復讐が始まろうとしていた。いや、始まっていたのだ!


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