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(30)歓声

その様子を、モニタで見ていた「かみかぜ」では大歓声があがったようだ。

イヤフォンに届いた、これから浮上する、という中野艦長の声と一緒に、やったやったと叫ぶ声が聞こえ、オレは自然に顔がほころんだ。


ボートが大空洞の水辺に到着すると、ゆっくりと水位が戻ってきて、やがて第2空洞は完全に水没した。


大泉さんは、

「これでここはちくわちゃんにも陰陽師にも守られた今や最も安全な場所だ。ドックも作れる!」

と嬉しそうに笑った。


ボルデメから、かけるの落ち着いた声がイヤフォン越しに届く。

「動力反応、収束しています」

「地脈マッピングの数値も・・・安定に向かってます!」


続いて、めぐるの声で、

「地震計、異常なし」

「地下水位、回復傾向です」

「断層の動きも・・・止まりました!」

次々と上がる報告に、誰かが小さく拍手をした。


ビューティペアの報告を聞いて、大泉さんが、安堵したように深く息を吐いて言った。

「・・・どうやら、ちくわちゃんは“鍵”というより、“羅針盤”だったようだな」

「羅針盤、ですか?」

オレが聞くと、木下さんが小さくうなずいた。

「地脈の結節点がズレて不安定になった時、それを元の位置に押し戻すのがあの三角錐の役割だったはずだが、地震の影響か、水位が低下したからか、宮殿の中心からずれて、大空洞に移動してきてしまった。その三角錐を再び結節点の重しとするために、もとの宮殿の中心に戻す役目をしてくれたのがちくわちゃんだ」


続けて木下さんは、

「それにしても、三角錐の陰陽律がなぜちくわちゃんに反応したのか・・・これはぜひ詳しく調べてみたい!」

と言って、ちくを見ながら目を細めた。


気付けば、ちくの目はもう光っていなかった。

何かの観測装置の上に座り、普通の猫みたいに、しっぽをゆらりと揺らしている。


オレが、

「・・・お役目、ごくろうさん」

と言うと、ちくは一度だけ、にゃあっと鳴いた。


やがて、浮上した「かみかぜ」からクルーがボートで上陸してきた。

握手をしたり、肩をたたき合ったりしながら、作戦の成功を祝い、お互いの無事を喜び合っていた。


一番人気は、やっぱりちくで、藤本さんや音無さんたちクルーから、代わる代わるみんなに頭をなでられ、お腹をさすさすしてもらって、まんざらでもない様子だった。


でもちくの一番のお気には中野艦長のようで、一通りみんなにいじくり回された後、ぽてぽてと歩きながら艦長に近づいて、足元で丸まっていた。


「かみかぜ」が舞鶴に戻る前に、また写真を撮ろうということになった。ボルデメの二人は、また「当日の欠席者」的な扱いではかわいそうだからと、モニタを二つ並べて、そこにかけるとめぐるの顔を映してから、写真を撮った。


誰かが、

「またちくわちゃんの目、光ってないだろうな」

と言って笑いが起きた。


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