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(24)深まる謎

9月14日。特調のメンバーを新たに加えた「かみかぜ」が地底湖を目指して出航した。

舞鶴海道を潜航中、ブリッジで木下が気になる話を皆に披露した。


「この件を大泉から聞いて、写真を見せてもらった後、色々考えたり調べたりしたのですが、あの三角錐がある場所は地脈の結節点ではないでしょうか」


「地脈の結節点? なんだそれは?」

若井が皆を代表するように聞く。


「うん。地脈と言うのは、大地を流れるエネルギーというか土地の気の流れというか・・・地下水脈や地層の連続した部分などのことを言うんだ。風水ではこの地脈の流れを意識して家とかを建てます」


思い当たる節があるように頷きながら、三上が、

「あぁ、そういえば、京都御所もそうやって場所が選ばれたって、何かで読んだことがあります」


木下が続ける。

「はい。御所に限らず京都、というか平安京は、都市が長く繁栄するための地脈を考慮して開かれたと言われています。そして、その地脈が集まる場所が結節点です。平安の時代にはその結節点がずれると天変地異が起こると信じられていましたので、陰陽寮が結節点を守るためにあの三角錐を置いたのではないでしょうか」


「陰陽・・・って、陰陽師とかの陰陽?」

みな、静かに聞き入っている。

「えぇ、そうです。漫画の世界のように思われるかもしれませんが、陰陽寮というのは、平安時代には天文や暦などを取り扱う、れっきとした行政組織の一つでした」


「その陰陽寮が、京都の地脈である結節点を守るために、何らかの呪文を刻印した三角錐をあそこに置いた。ところが千数百年という長きの間には、どうしても徐々に地層はズレ、断層が動き、地下水脈も枯れては流れを繰り返し、三角錐では抑えられないような結節点のズレが生じて、地脈が乱れつつあるのではないかと考えています」

皆が顔を見合わせる。


木下は真剣な顔で続ける。

「最近京都で頻発する小地震、最近の地底湖の水位低下・・・非科学的と思われるかもしれませんが、京都を守るための地脈が乱れていることが一因ではないかと、私は考えています」


「地脈が乱れる、か・・・」

大泉がひとりごとのように呟く。

「現時点ではもちろん私の想像でしかなく、しかも、わからないこともいくつかあります。そもそも、あんなところに、どうやってあの三角錐を置いたのか、表面に掘られているサンスクリット語は何と書かれていて、どんな効果があるのか・・・ 今回の調査で少しでも解明できるよう、頑張ってみます」


その時、ブリッジの沈黙を破るようにスピーカーから声が響いた。

「「かみかぜ」、こちらボルデメかけるです」


ボルデメから呼びかけがあるということは、日本海に未確認艦船を確認したときなど、緊急事の場合がほとんどだ。

中野艦長が、何事だ、と言う表情で三上を見る。三上が頷いて、ボルデメに応答する。

「ボルデメ、「かみかぜ」、感度良好。どうぞ」

全員が緊張したように耳を澄ませる。


「三上さん、チャンネル2で映像送ります。緊急です、すぐに見てもらえますか!」

三上は返事もせずに、ブリッジモニターのチャンネルを2に合わせる。

そこに映っていたのは・・・


「あれは・・・この間の三角錐じゃないか! なんであんなところに移動してるんだ!」

三上が叫ぶと、

「それだけじゃないんです。ちょっとカメラズームにしますね」

とかけるが言い、ズームされた映像には人が映っている。


「人だ! 誰だあれ、また誰か入り込んだのか?」

「いや待ってください、猫、もいません? 足元」

藤本がモニタに向かって指をさす。


「八瀬君か!」

「八瀬君とちくわちゃんだ!」

大泉と若井が叫ぶ。


「そうです、その二人、と言うか一人と一匹ですが、なんか、あの三角錐に付け回されてる感じなんですけど、緊急と言うことで、ここに避難させてもいいでしょうか?」

「付け回されてるって、どういうことだ?」

「今は落ち着いてるんですけど、さっきちくわちゃんが三角錐に近づいてスンスンしたら、すごく振動して光がミラーボールのように発光してすごかったんです! あの二人が左に逃げると左に回転して、右に逃げると右に回転して、まるで付け回してるって感じでした」


中野艦長が、ボルデメへの避難決定はお前の判断次第だ、とでも言うように大泉の顔を見る。

「わかった。詳しいことはわからんが二人が来たら避難させてやってくれ。それと三角錐に注意しておいてくれ。また光ったりしたらすぐに連絡を。我々もあと30分ほどで浮上する」

「了解です!」


「八瀬君とちくわちゃんがいたのも驚きだが、あの三角錐が移動していたのもびっくりだ」

若井が言った。


「艦長、舞鶴海道抜けます」

藤本プレーンズマンが到着が近いことを告げる。


「さぁいよいよだ、頼むぞ木下」

と、木下の肩をたたく大泉。


中野艦長が浮上プロトコルを開始する。

「岩盤までの距離150で両舷停止」

「了解、岩盤までの距離150で両舷停止」


「距離150。両舷停止します!」

「潜望鏡深度」

「潜望鏡深度―ッ」


「三上、潜望鏡映像をブリッジのスクリーンに映せ」

「了解!」


帽子を前後逆にかぶり直し、潜望鏡を覗く艦長中野。

「いたな、三角錐・・・」

音無がスクリーンを凝視する。


「三角錐との距離80、浮上に支障なし」

藤本が報告する。

うん、と頷いて中野が命令する。


「浮上」

「浮上っ」


こうして、地底湖の洞窟の秘密を解明すべく、「かみかぜ」が浮上した


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