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(17)反撃

〇原子力潜水艦「かみかぜ」ブリッジ

海上では、「あたご」対東亜共和国側採掘船と駆逐艦2隻の、睨み合いが続いていたが、しびれをきらしたのか、東亜共和国の駆逐艦1隻に先導される形で採掘船がEEZに向けて進んできた。それを感知した「あたご」が無線で警告をするとともに、進路を駆逐艦に向けた。


その時、

「敵潜唐級、発射管注水音」

と音無ソナー員の静かな、でもよく通る声がブリッジに響いた。


え!っと驚くオレをよそに、中野艦長は、

「先に動いたのはそっちだぞ、東亜共和国よ」

と独り言ちてから、

「高山艦長、今です!」 と、マイクに向かって叫んだ。


すると音無さんから、

「「あたご」、エンジンフル回転です! あれ、でもスピードは出ませんね」

と報告があがり、中野艦長がニヤリと笑う。


「それでいい。音だけデカくしてくれと頼んだんだ。副長3番から6番注水」

「3番から6番注水」

三上副長が繰り返す。


魚雷を打つんだ! オレだってわかる! マジか! 戦争が始まるのか!? のどがヒリヒリと渇いてくる。


「音無、発射したら敵潜に「かみかぜ」の位置も掴まれる。どんな音も聞き逃すなよ」

「了解」

と返事をした瞬間、音無の目が大きく開き、

「唐級、魚雷発射! 2発ッ」


中野艦長は素早くマイクを握り、

「高山二佐、来ます!」

と報告した。

「わかってるよ中野。杉、アスロック発射! ボルデメ、誘導頼むぞ、外すなよ!」

「ボルデメ、了解!」


そして「かみかぜ」では初めての実戦魚雷発射の準備が整う。

「艦長、3番から6番、発射準備オールクリア」

「発射」

中野艦長は、静かに、だが躊躇することなく発射を命じた。


後で聞いたことだが、中野艦長の作戦はこうだ。

まず敵がしびれを切らして動き出すまで、こちらからは動かない。

向こうが動いた時点で、「あたご」は動いた東亜共和国艦に舳先を向け前進。スピードは出さないがエンジンフル回転とする。

その音に紛れて「かみかぜ」で魚雷4門に注水。目標は駆逐艦2隻、潜水艦唐級、そして周級の計4隻、狙いはスクリュー。


敵は魚雷を発射されて初めて「かみかぜ」に気づき、回避行動を取る。そのスクリュー音を探知して魚雷をぶつけ航行不能にする。航行不能になれば対潜ミサイルアスロックを打ってくるかもしれないが、そのころには空自のF35と第7艦隊がやってきてどうにかなる、というものだった。


どうにかなるって、そんなんでいいの、とは思ったけど、艦長の説明っぷりからすると、ちゃんとその先も考えていそうだったので、あえて突っ込まないことにした。


ちなみにこの作戦、戦術卓上で聞いていたちくが頷いたように見えたのでこれで行くことにしたらしい・・・マジか、日本の命運を左右するかもしれない初実戦なのに、ちくでいいのか!


「ボルデメ、こちら「かみかぜ」! 音響魚雷4門発射した。スクリュー外しそうなら頼む!」

「ボルデメめぐる、了解! 1ミリだって外さないよぉ!」


ボルデメでは、最新鋭早期警戒機E2D、通称イロハから刻一刻と入電するデータをかけるが管制システムに取り込み、めぐるが「あたご」、「かみかぜ」双方からの魚雷進行データをリンクさせている、と大泉さんが耳打ちして教えてくれた。実はすごいんだ、あの二人!


●東亜共和国 民族解放軍 楊艦長 駆逐艦ブリッジ

「楊艦長ッ、魚雷来ます、距離2200!」


EEZを超え、侵攻を継続する楊艦長のミサイル駆逐艦のブリッジに、レーダーを監視していた担当の声が響く!


「な、魚雷だと! かわせ! 両舷全速ッ、取り舵!」

「両舷全速ッ、取り舵!」

「砲雷長、左舷対潜魚雷発射!」

「左舷対潜魚雷発射します!」


つい10分ほど前の余裕もなくなり、慌ただしく現状に対応するこのブリッジにあって、朱委員長だけはじっと座ったまま、戦況を眺めていた。王艦長、あなたの艦にも魚雷は向かっていますよね。あなたならどう対処しますか、と考えながら。


「魚雷、距離400!」


「対潜魚雷はどうしたッ!」

「距離300、200、来ます!」


「総員衝撃体勢!」

と楊艦長が言い放った瞬間、ごぉんという鈍い音が響き、艦が推進力を失っていく。


「め、命中したのか!? 被害報告急げ!」

ブリッジで楊艦長が叫ぶ。


「艦長! スクリュー破損、航行不能です!」

航行不能と聞いて、唖然とする楊艦長は二の句が継げない。

「艦長、徐艦長から入電! 徐艦もスクリューをやられて航行不能、救援求むとのことです!」

「徐も、スクリューだと!? まさか狙ったのか! しかしどこから来たんだ、あの魚雷・・・、いやそれは後でいい。不発でも、狙ったのでもブリッジは無事だ、今は反撃だ! 砲雷長、SUM発射準備」


「艦長・・・?」

退避ではなく、ミサイル発射準備を宣告した楊艦長に副官が驚きの表情を見せる。

「艦が動けなくて漂流しても、ミサイルは打てる! 「あたご」め、絶対沈めてやる!」


思ってもいなかった攻撃を受け、反撃したくなるのはわかる。だが、推力を失い漂流するしかないこの艦はどうするのか。次の魚雷が来ればこの艦は沈む。乗組員の命はどうするつもりなのか。


この男はやはり、艦長の器ではない。朱は、慌てふためく楊艦長を見つめ、そう考えていた時、

「艦長、次の魚雷来ます! 2発、距離3300ッ!」

とソナーマンが絶望的に叫んだ!


魚雷の波状攻撃に楊艦長は言葉を失くした。副官や操舵手が艦長の指示を待つが、楊はまるでフリーズしたように固まったままだ。


「距離2000! 一本、本艦に来ます!」

「艦長ッ!」

と叫びながら副官が振り向くが、虚空を見つめ、手すりを握りしめる楊艦長には聞こえてもいないようだった。


朱委員長が立ち上がり指示をする。

「副官。この魚雷は当たる。総員耐衝撃体勢。命中後、艦を捨て総員退避」

そう静かに言った朱委員長の言葉に、副官は何度も頷き、マイクで衝撃体勢を取るよう叫んだ!


ソナーマンの死刑宣告がこの船のブリッジにも響く。

「距離700、500・・・」


が、その時だった。 駆逐艦の手間で物凄い轟音と水柱があがる。

「ぎょ、魚雷2発とも距離300で爆発! 自爆した模様です!」

自爆、どういうことだ? 朱委員長は2本の水柱を見つめながら、しばし絶句した。


●東亜共和国 民族解放軍 李艦長 唐級潜水艦ブリッジ

「1番2番、発射! 「あたご」め、目にもの見せてやる!」

自艦から発射された魚雷の音がソナーマンの耳に届く。


その時、ソナーマンの耳に、今度ははっきりと、間違えようのない音が響いた! 発射管の注水音ではない。別の魚雷が発射された音だ!


彼は両手をヘッドホンに当て、できる限りの声で叫ぶ!

「李艦長ッ! 魚雷来ますッ! 4発ッ 距離2800!!」


「なにッ、どこからだ!」

「「あたご」の真後ろです! うち1発、本艦に向かってきます! 距離2000ッ!」

「両舷全速、急速潜航!」

さっきまでの余裕が吹き飛び、李艦長が叫ぶ!


「魚雷室っ、デコイだ、デコイ発射!」

「艦長間に合いません! デコイは発射管に装填してません!」

「なっ・・・」


「魚雷、距離500!」

「取り舵いっぱーい! 全速でかわせ!!」

「距離300、200、来ます!」


「総員衝撃体勢!」

そう叫んで手すりを握りしめ、体中に力を入れて踏ん張った瞬間、がぁんと言う鈍い音が響き、艦内に衝撃が伝わった。


「ふ、不発・・・?」

「助かった~」

安堵する乗組員たち。


しかし、

「ス、スクリューと舵、破損! 航行不能です!」

という操舵手の叫び声に、ブリッジは沈黙した。


「か、艦長・・・」

副官が、どうすればいいか、と言う目で李艦長を見る。


「はっ、魚雷は! 本艦の魚雷はどうした!」

「2発ともアスロックにやられました! 「あたご」は無傷!」

「に、2発とも・・・」

「艦長、次の魚雷が来たら本艦は・・・」

「今の魚雷、スクリューを狙ったのか、それとも偶然か・・・」


そんなことを考えていた矢先、

「艦長、次の魚雷来ます! 2発、距離3300ッ! 先ほどの遥か後方からです!」

とのソナーマンの叫びに、李艦長は言葉を継げなかった。


別の潜水艦? 何隻いるのだ! こちらは舵をやられ逃げるのは不可能、発射管にデコイもない・・・どうすれば・・・


「距離1200! 一本はまっすぐ本艦に来ます!」

「操舵手、浮上だ、緊急バラストブロー!」


海中で魚雷が命中したら、まず助からない。せめて海上であれば助かる可能性があるかもしれない。そう考えた李艦長は緊急浮上を命じた。


「距離700、500・・・」

死刑執行までのカウントダウンにも聞こえるソナーマンの声。その時だった! 物凄い衝撃が艦全体を襲った。


「ぎょ、魚雷距離300で爆発! 自爆した模様です!」

自爆、どういうことだ・・・

巨大な水柱が上がる中、李艦長の唐級潜水艦が浮上した。


無傷の「あたご」がブリッジから見える。

どうすればいい? ドリフト状態で魚雷を打つか、それとも・・・と次の手を考える李艦長の耳に、アメリカ海軍第7艦隊ジョージワシントンからのメッセージが響いた。


「ア、アメリカ海軍、だ、と・・・!」

「艦長、次の指示を!」

副官が言う。


「今のアメリカのメッセージを聞いただろう・・・王都を、本国を危険にさらすわけにはいかん。我々はこれでおしまいだ・・・」

そう呟いて、李艦長は立ち尽くした。


●東亜共和国 民族解放軍 王艦長 最新鋭周級潜水艦ブリッジ

「王艦長!魚雷4発ッ! 距離3500!!」


作戦開始を発令して、ブリッジで戦果報告を待っていた王艦長の耳に飛び込んできたのは、予想もしないソナーマンからの叫び声だった!


「なッ、どこからだ!」

「「あたご」の真後ろです! うち1発、本艦に向かってきます! 距離2500ッ!」

「両舷全速、急速潜航! おも舵急げッ! 副官、デコイ発射!」


さっきまでの余裕が吹き飛び、王艦長が叫ぶ!

「かみかぜ」が4発の魚雷発射した瞬間、どの東亜共和国艦でも同じ叫びが聞こえたことだろう。最新鋭潜水艦の周級でも同じだった。


「潜水艦がいただと! 見つけられなかったのか、我が軍は!」

鬼の表情でソナーマンを睨みつけ王艦長が叫ぶ。

「ソナー、注水音はなかったのか!」

「「あたご」のエンジン音が大きくて・・・」

「「あたご」めぇ~、注水音を消すために、わざと・・・」


「魚雷来ます! 距離800!」

「デコイ、発射します!」

「距離500!、300、」

「頼む、デコイに向かえ!」

誰かの祈りにも似た叫び声がブリッジに響く。

その時、ソナーマンが、やった!という表情で王艦長を振り返り叫ぶ。

「敵魚雷、デコイを追跡します!」


よし、という表情で頷く王艦長。反撃だ、沈めてやる!

「ソナー、ピンを打て! 敵潜の位置を特定しろ! 魚雷長、1番2番・・・」

注水、と言いかけてふと考える。


今の魚雷が本艦に向かってきたということは、敵は本艦の位置を掴んでいる。掴んでいるからにはまた打ってくる。次のデコイの準備は出来ているか?

「魚雷長、次のデコイは?」

「発射管にはありません、今のデコイだけです!」


まずい、王艦長の長年の潜水艦乗りとしての勘が全力で危機を伝えていた、このままでは次は当たる!

「デコイ優先だ! デコイを3番4番に2発用意! 完了次第1番2番注水!」

その時通信員が叫ぶ。


「艦長、友軍より連絡ッ! 楊艦、徐艦、そして・・・ま、まさか・・・李艦長の唐級、いずれもスクリューと舵をやられ、航行不能です!」


この報告に、百戦錬磨のさすがの王艦長も立ち尽くすしかなかった。3艦ともやられた! しかもスクリューだと!? 一体、どういうことだ。そんな精密な魚雷を誰が打ったのだ。


〇原子力潜水艦「かみかぜ」ブリッジ

「3番4番、命中します!」 

「かみかぜ」の中ではレーダーと睨めっこしていた神田電測員が声を上げる!


艦内に響く破壊音。どれくらい離れているのかわからないけど、結構な音が響いた。海上では東亜共和国駆逐艦2隻の艦尾から水柱が上がっているのだろうか。


「これって、爆発して沈没とかさせちゃったら東亜共和国が本気になったりしないですかね?」

と大泉さんに聞くと、

「おそらく魚雷は弾頭を抜いている。だから爆発はしないはずだよ。水柱も上がらない。スクリューにぶつけて、行動能力を奪うのが艦長の作戦だと思う」


「続いて5番、唐級に命中します!」

再び破壊音が艦内に響く。


「周級はどうか?」

「6番ダメです、デコイに命中!」


後ろから見ていても中野さんは表情1つ変えていない気がした。代わりに後ろから「ちっ」という大泉さんの舌打ちが聞こえた。


「音無、周級の動きは?」

「急速潜航中なるも注水の動きなし。デコイに命中したのが周級近傍だったので、もしかしたらどこかダメージを与えられたのかもしれません」 

との報告を受け、中野艦長は畳みかけるように攻撃を命じた。


「よし、1番2番注水! 目標周級、ならびに掘削船のスクリュー」

「両管、注水完了ッ! 発射準備よし」


その時、ボルデメから、

「「かみかぜ」、緊急! 「かみかぜ」との攻撃リンク切れました! 演算過多でコンピュータの処理が間に合いません!」

とまさかの連絡が入った。


「は?」 

三上が中野を振り返る。


「リンクが切れたって・・・ボルデメよ!」

さすがの大泉さんも少し焦っているようだ。


「とにかく魚雷誘導できません!」

ボルデメからの支援なしでスクリューに魚雷を当てるなんて芸当出来るのだろうか、とシロウトのオレが思った時、音無ソナー員が叫んだ。

「後方に魚雷ッ! 距離3000、2発来ます!」 


それを聞いた副長が、藤本操舵員に向かって叫ぶ。

「後ろから? 発射中止、エンジン全速! 面舵っ、急速潜航、よう・・・」

「三上、待て」

そういって音無ソナー員を見つめる中野艦長。


ヘッドセットに両手を当て音紋解析に集中する音無さん。


「魚雷、距離2000」 

少し焦った声の水田さん。それを聞いて、

「音紋Mk46。米軍の魚雷です!」

と中野さんを振り返って音無さんが叫ぶ。


うん、と頷いた中野艦長が、

「通過するな?」

と聞くと、

「両サイドから抜けていきます」


「よし。1番2番発射」

「しかしボルデメとのリンクがが・・・」


副長が心配そうに尋ねると、戦術卓の上で大きく伸びをしたちくわが、艦長を見上げてにゃあと鳴いた。


中野艦長はちくに頷いて、

「1番2番、発射」

と繰り返す。

「了解、1番2番、発射」


「副長、周級に目くらましを試す。Mk46との距離100で停止」

「は! Mk46との距離100で停止」

「魚雷との距離100で停止」

復唱する藤本。


「距離500・・・400・・・300・・・」

神田さんの声がだんだんと大きくなる!

「距離100!」

「停止!」

「停止!」

シューっと両脇を抜けていく魚雷音に紛れて「かみかぜ」のエンジンが停止する。


「藤本、1ミリも沈めるな! 周級にこちらの位置を気取らせるな!」

「はっ!」

必死に操舵する藤本

「殺人舵の本領を見せてみろ」


米軍第7艦隊所属、原潜ミネソタの魚雷2発は東亜共和国艦隊の目前で自爆。高い水柱が上がった。


その脇を、「かみかぜ」の魚雷が縫うように、掘削船とまだ海底深く潜む周級を目指す。レーダーを睨む神田さんが、

「1番、採掘船に命中します! 周級デコイ発射! 2番、デコイに向かいます!」


むぅっまたかと苦虫を嚙みつぶしたような中野艦長がちくわを見る。オレは思わず、

「ちく、魚雷を周級のスクリューに当ててくれっ、頼む!」

と叫んだ。すると艦長は、

「ちくわちゃん、頑張ってくれ! 成功したら海自は、君にちゅーる1年分贈ろうじゃないか!」 

すると、うにゃっと反応して、ちくが頭を持ち上げる。


後ろで戦況を見ていた若井さんは、

「我々防衛省は2年分だ、2年分贈ります! だから何とかっ!」

今度はうにゃうにゃっと二鳴きして目が光った!


でも、そこに割って入るオレ。

「ちくは腎臓が弱いのでちゅーるは禁止です!」

ちくはがっくりするも、魚雷は見事命中!

周級に魚雷命中!との音無さんの報告に、歓声が上げる艦内!


「信じられない・・・ホントに猫が? ボルデメ、そちらで誘導したんじゃないのか?」

「ボルデメめぐるです、三上三佐、ご無沙汰しております。はい、さすがにボルデメでもコンピュータの攻撃システムのリンクが切れたら無理で~す」

明るい声でめぐるが答えた。


●東亜共和国 民族解放軍 王艦長 最新鋭周級潜水艦ブリッジ

「ソナー、敵潜は特定できたか?」

「まだです、まだ反応帰ってきま・・・はッ! 魚雷来ます、2発! 距離3100!」


もう来たか!

「デコイ、発射急げ! 準備出来次第打て、2発とも・・・」

「待ってください!」

待てというソナーを見つめる王艦長。


「魚雷2発、楊艦長駆逐艦と、李艦長の潜水艦に向かいます! 本艦ではありません!」


動けない艦を沈めに来たか! いやだが、そんなことをするくらいなら最初の1発目でスクリューではなくブリッジにでも当て、沈めればよかったではないか! そう考えていた時、艦内に爆発音が響く。


「やられたか!」

王艦長が聞くと、両手でヘッドホンを抑えていたソナーマンが首を振りながら、

「いえ無事です! 魚雷は楊艦、李艦の手前300で自爆したようです!」


自爆! ますますわからん・・・ 敵は一体何を考えているのだ・・・ その時、ソナーマンが再び叫ぶ。


「魚雷また来ます、2発! 距離2400!」

はっと我に返り、王艦長が指示を出す。


「デコイ、発射! 2発とも打て!」

発射音が艦内に伝わり、全員の視線がソナー担当に注がれる・

「艦長! 敵魚雷、デコイを追います! 回避成功!」

ブリッジの中に、よし!という雰囲気がみなぎり、反撃の指令を待つ。


その時、

「敵潜確認!」

と言うソナーマンの報告が入る。


「よし、反撃だ!」

と王艦長が立ち上がった瞬間、

「か、艦長ーッ、ぎょ、魚雷戻ってきます! こ、これは当たる! 距離300!」

「な・・・」


と叫ぶのが精いっぱいだった。衝撃体勢を取れとも逃げ舵を切れとも指示できず、ただ王艦長は立ち尽くした。魚雷が戻ってくるだと・・・!


そして、ごぉ~んという鈍い音と衝撃が、王艦長を襲った。


「魚雷命中! ですが、不発のようです!」

助かった、まだ天は我らを見捨ててはいない! 今度こそ、反撃だ!


「1番2番、発射用意!」

「艦長、操舵不能です。スクリューと舵が動きません!」


「なん、だと・・・!」

敵はわざとスクリューを狙ったというのか! しかも無弾頭で! 舵を奪われてもまだ攻撃は出来るのだぞ、それを知らぬはずがあるまい。なのになぜスクリューを!


「艦長、王艦長!」

副官の何度目かの呼びかけにはっとして我に返る王艦長。


「どうした、次の魚雷か!」

「いえ、艦尾から浸水です! わずかではありますが、先ほどの魚雷の衝撃で、亀裂が入ったようです」


スクリューをやられても、王都に帰ることはできないが潜ったまま姿を隠し続けることはできる。しかし浸水が始まった以上潜ったままでもいられない。私は、私は、一発の反撃もできないまま浮上するしかないのか・・・。

「艦長、浸水が始まった以上浮上しましょう、そしてせめてSUMで敵潜を沈めましょう!」


そうだ、このまま王都に戻ったところで出世の目はない。ならばせめてまだ見ぬ敵潜だけでも沈めて手柄とせねば、帰国することすら覚束ない。


そう決め、副官に浮上とSUMの発射準備を指示しようとした時、通信官が叫んだ。

「艦長、オープン回線にアメリカ第7艦隊からです!」


アメリカ・・・このタイミングで・・・さっきの魚雷もまさかアメリカ!?

万策尽きた、と言った表情で天井を見上げ立ち尽くす王艦長。


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