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(12)周級潜水艦

●東亜共和国 民族解放軍 王艦長 最新鋭周級潜水艦ブリッジ

「副官、日本の海上自衛隊の動きはどうか?」

「変わりありません。 イージス艦が1隻、艦番号から「あたご」と思われますが、EEZの境界付近に停泊中です」


「1隻だけとは。我らが民族解放軍も舐められたものだな」

「我々の駆逐艦2隻も見えているでしょうに。侵入を警告するだけなら1隻で十分、と言うことでしょうか」

「おそらくな。戦闘になることはないからとりあえず警告代わりに1隻派遣しておけ、と言うのが日本政府の考えだろう。平和ボケも甚だしい国だ」

ブリッジ内に、全くだ、という失笑が漏れる。


「だが日本には米軍もついている。近海に潜んでいるかもしれぬから、気は抜くな」

と言ってソナー担当に目をやる周級王ワン艦長。

「ソナー反応ありません! 依然、「あたご」とその後方の調査船の2隻のみです」

との返答に、満足そうに頷く艦長。


「艦長、唐級潜水艦から入電。目障りな「あたご」を仕留めていいか、とのことです」

王艦長は、やれやれと言った表情でため息をつき、指示を出す。

「相変わらず気の早い男だな。李艦長に返信、指示あるまで待機。わざわざこちらから動いて居場所を知らせることもない」


との艦長の言葉を聞き、振り向いて副官が問う。

「日本側は、唐級と我が艦を認識しているでしょうか?」

「早期警戒機も飛んでいるようだから、唐級は見つかっているかもしれんな。だが、最新のステルス性能を誇る本艦がいることなど、夢にも思ってないであろう」

「ですね」

と安心したように同意する副官。


東亜共和国 民族解放軍 最新鋭ステルス原子力潜水艦 周級1号艦。

名前はもちろん、艦番号、攻撃装備、潜航性能など、ほとんどの情報は極秘だ。元々は東シナ海からフィリピン海周辺のアメリカ海軍潜水艦の動きを偵察、牽制、必要であれば攻撃することを任務として就航した。しかし日本のEEZ内に発見された巨大なレアアース海底鉱脈の調査のために本国が送った調査船団に対し、日本側はEEZ内での調査を認めないため、本国からの指令で、東亜共和国側調査船団の護衛艦隊旗艦として、新しい任務に就いたところである。


しかし、護衛とは名ばかりで、調査を強行するために、本国が立てる作戦に基づき、日本側護衛艦の排除、要すれば秘密裏に撃沈させることが目的である。


そして、今まさにその作戦が本国から王艦長の元に届けられようとしていた。


「王艦長、本国から作戦実行の連絡が届きました」

そう声を掛けてきたのは、共産党中央執行部として本国の指令を伝達するため、あるいは王艦長ら乗組員を監視するために、乗艦している陳委員長だ。


慇懃無礼なこの男を、王艦長は好ましく思っていない。百歩譲って我が艦に乗るのはいい。だがスーツ姿でブリッジに居座り、党本部の指令だからと、私の戦術にあれこれ口をはさんでくるのが我慢ならない。私の艦長室をあてがってやるから、昼寝でもしておけ、と言い捨ててやりたい。


だが王艦長はそんなことはおくびにも出さず、

「伺いましょう」

とだけ言った。


「作戦開始は今から2時間後。駆逐艦1隻に採掘船を誘導させ日本側EEZ内へ侵入。警戒して接近してくる「あたご」に対しては駆逐艦から警告射撃。同時に唐級の魚雷で撃沈。対外的にはEEZの外側海域において海底鉱床の調査をしていた我が調査船団に対し、日本側イージス艦から砲撃があったため、やむなくこれに対応。我が民族解放軍を守るため、日本側艦艇を沈没せしめた、という筋書きです。よろしいでしょうか」


陳腐。あまりに陳腐。

さんざん冷たい海の底で待たせておいて、この程度のストーリーしか描けぬとは、現場を知らぬ王都の会議室でぬくぬく育ったぼんぼんらしい。その筋書きで行くなら2時間も待たず、今すぐ李艦長に仕留めさせればよいではないか、と王艦長は思ったが、

「承知した。指示通りに2時間後に敵をせん滅するとお伝えください」

とスーツ姿の若造に首を垂れた。


「副官。今の本国指令を全艦に通達。作戦開始は本艦の合図を待て」

「了解しました!」


まぁいい。

あと2時間、あと2時間すれば、一瞬で勝負は決する。そして、「あたご」撃沈と海底鉱床の実効支配という土産を持って王都に凱旋すれば、次の民族解放軍太平洋艦隊司令は私のものだ。それを考えればあと2時間、この若造に従ったふりをするくらい造作もない。これからの2時間がこれからの私の人生を作るのだ!


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