表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたに捧げる愛はもうありません。  作者: 神宮寺 あおい@受賞&書籍化


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/41

ルドヴィックからの手紙

 リリーの元夫が商会で暴れた事件は伯爵がミラベルに謝罪し、相応の迷惑料を支払うことで決着した。アルバートには会う必要などないとは言われたものの、清算の場にミラベルは立ち会った。


(暴れていた時が嘘みたいに憔悴していたけれど……アルバートはいったい何をしたのかしら?)


 アルバートと伯爵の間でどのようなやり取りがあったのかをミラベルは知らない。ただ、今後伯爵がリリーはもちろんのことミラベルや商会へ迷惑をかけることはないということだけが伝えられた。

 これによりリリーの案件は終了し、ミラベルの初めての仕事は成功したことになる。


(いずれにせよリリー嬢が自由になって良かったわ)


 伯爵の存在を恐れる必要がなくなったおかげでリリーはドレスショップへと出勤する日も増えた。デザイナーと意気投合したのか新しいアイデアが次々と湧いてくるらしく、見違えるほど彼女の表情は明るくなっている。


 良くも悪くも社交界では噂話があっという間に広がるものだ。元よりリリーと伯爵の不仲はよく知られていた話だったのか、その結果と相まって今ではかなりの話題となっている。

 とはいえリリー自身はもはやそんなことを気にするのも時間の無駄と言わんばかりだ。


 そしてリリーの話が広がるにつれミラベルの元には貴族夫人からの相談が増えた。それが仕事につながる話となるかはこれからだが、少なくともただ我慢するばかりだった女性たちに一石を投じたのはたしかだろう。


 そんな中、ある日ミラベルは商会長室に呼ばれた。


「話があるって聞いたけど」

 

 そう言って部屋に入ればアルバートが苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。


「ルドヴィック卿から連絡が来た」


 アルバートとルドヴィックの間には今では仕事上のつき合いがある。その中でもミラベルが関係することといえばやはり出資者の件だろうか。最近ではルドヴィックが親しくしている貴族家から出資に関して問い合わせを受けることもあった。


「私にも関係することといえば、新たな出資希望者が現れたとか?」

「……残念ながら違う」


 そう言うアルバートの機嫌は未だに低空飛行のようだ。いつもなら自分の機嫌は自分で取るアルバートにしては珍しい反応と言えた。


「ご機嫌斜めね」


 ミラベルが言うとアルバートがバツの悪そうな顔をする。そんな子どもっぽい表情を見せることはほとんどないから、ミラベルはなぜか可愛らしさを感じてしまった。


(こんな顔を見せてくれるのは私にだけかしら?)

 そしてそんなことを思う。


「俺宛の手紙だが、ミラベルに伝言して欲しいとのことだ」

「読んでもいいの?」


 アルバートが無造作に差し出したルドヴィックからの手紙を受け取ってミラベルが目を通す。


「リカルドが?」

「ああ。ミラベルに会いたいと言っているそうだ」


 手紙に書かれていた内容は簡潔だった。


『リカルドがどうしてももう一度ミラベルに会いたいと言っている。このままでは突然そちらへ向かいかねないから会う場を設けたいと思うが、どうだろうか』


 簡単に言ってしまえばそんな内容だ。リリーの件と相まってミラベルのことも多少噂になったようだから、リカルドもミラベルの居場所を知ってしまったのだろう。もしくはルドヴィックから聞き出したのかもしれない。


「ミラベルがどうしたいかを聞かせて欲しい」


 そう言いながらも「俺は会わせたくないが」とアルバートが呟いた。


「そうね……」


 ミラベルとしてはリカルドのことなどもう過去のことだ。なぜ今さら会いたいなどと言ってきたのかも理解できない。それでも、今ここで放置したために今後面倒なことになるのは避けたかった。


「わかったわ。一度会ってみる」


 ミラベルの返答に「やっぱりな」とアルバートが言った。ミラベルの性格的になおざりにすることなどできないとわかっているからだろう。


「会う場は俺が決めてもいいだろうか?」


 ミラベルとリカルドの問題にアルバートは関係ない。それでも、ミラベルを見つめる瞳に心配している気持ちが透けて見えたからミラベルは承諾した。


 そして本当の意味で過去のことに決着をつける時が来たのだと、そう思った。

数多の作品の中から読んでいただきありがとうございます。


少しでも続きが気になりましたら、ブックマーク登録、評価などしていただけるととても励みになります。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ