第15話 謎の男
梨沙の真剣な顔が目の前にあった。彼女の瞳は強く、俺をじっと見つめている。その視線は言葉以上の何かを伝えてくる。俺の中で何かが込み上げてきて、体中が熱くなるのを感じた。
「これは告白ってことでいいのか?」
梨沙の声が、俺の心に響く。この瞬間、俺たちの関係が変わるかもしれないという思いが、頭をよぎった。
沸騰しそうなこの気持ちを抑えながら、俺はなんとか冷静を保とうとした。でも、梨沙の瞳からは逃れられない。これ以上見つめられたら、俺はもうどうにかなってしまいそうだ。
そんな時、梨沙がため息をついて、ゆっくりと俺に抱きついてきた。彼女の体の柔らかさと温もりが、俺の感覚をさらに狂わせる。うう、この感触がたまらない。
「って、そうじゃないだろ!」
俺は自分を戒めた。今ここで断らないと、この先どうなるかわからない。でも、その「断る」という言葉が喉まで来て、出てこない。
そして、その緊迫した空気を切り裂くように、突然インターホンが鳴った。その音に、俺も梨沙もビクッと反応する。このタイミングで、誰だ?
梨沙が俺に突然抱きついたとき、その温かさと近さに、俺の心は一瞬で沸騰した。こんな状況は初めてで、どう反応していいかわからなかった。でも、その熱い感情が溢れかけた瞬間、突然のインターホンの音が鳴り響いた。その音に、俺たちは急に現実に戻されるように驚いた。インターホンの音が響くと、瞬間的に俺たちの間の緊張感がひしひしと感じられた。
梨沙は俺から急に離れて、恐怖と困惑が入り混じった表情をした。俺は彼女の反応を見て、ただの驚き以上の何か大きな事が起きているのではないかと感じた。梨沙の表情には驚きだけでなく、何かを恐れるような深い感情が見て取れた。俺はその表情を見て、彼女が何か重要な事情を抱えているのではないかと思った。
梨沙が俺に抱きついたあの温かい感触と緊密さから、急に現実の不安と緊張に引き戻された。まるで不意打ちを食らったような驚きと、それに続く何が起こるのかという恐怖が入り混じった感覚だった。
「ん? 一体誰がこんな時間に……?」
俺は呟く。梨沙はまだ俺に抱きついたまま、身を硬くしている。二人とも、予期せぬ訪問者に警戒しつつ、ドアの方を見つめた。
この謎の訪問者は一体誰なんだ?そして、このままだと、俺たちの間に何が起こるんだ? 頭の中は混乱して、心臓はドキドキと速く打っていた。
俺は梨沙によって急いでクローゼットに隠された。まるで映画のワンシーンみたいだった。心臓はバクバクして、何が起こるのかわからない不安でいっぱいだった。
隼人の声はずっとリビングに響いていた。彼の笑い声は高く、自信に満ちていて、どこか嫌な気配を纏っていた。彼は梨沙に近づき、彼女を困らせているようだった。
梨沙の声は、否定の意志を明確に示していたが、どこか弱々しくも聞こえた。
「もうあんたとは終わったって言ったでしょ?」
梨沙の声は震えていて、怖がっているのがわかった。
俺の中で怒りが渦巻いていた。なぜ梨沙はこんな男と関わっているのか?そして、俺はここで何をすべきなのか?
クローゼットの中の狭い空間は息苦しく、俺の心も苦しくなってきた。隼人が梨沙に何かをしようとしている様子は、俺の中で憤りを引き起こした。彼女を守りたいという衝動が、心の奥底から湧き上がってきた。
隼人の言葉はますます梨沙を追い詰めていった。彼の言葉は乱暴で、思いやりに欠けていた。
「お前だって最初は気持ちよくて喘いでいたじゃないか」
彼は言った。その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かが弾けた。
梨沙が隼人に対して「やめてよ! 隼人!」
叫んだ時、梨沙の声は絶望に満ちていた。その声には恐怖と悲しみが混ざっていた。
この状況はもはや耐え難いものだった。俺はどうすればいいのか、もう分からなかった。でも、俺がここで何もしないわけにはいかない。梨沙を守らなければ……。
梨沙が「やめてよ! 隼人」と叫んで拒否する声が聞こえた瞬間、俺の中で何かが切れた。隼人っていうのか、あの男。年は俺より上のようだ。梨沙があんな奴に告白されていたこと、そして今彼に絡まれていることが、俺の心をかき乱していた。
「あーも、何が何だか分からねえ」
頭を抱えながら、俺は隠れ続けるべきか、それとも出て行くべきか、迷っていた。すると、隼人が「おいおい今更何言ってんだよ! お前だって最初は気持ちよくて喘いでいたじゃないか」と言う声が聞こえてきた。俺の心は凍りついた。
もう我慢の限界だった。
「やめろ!」
叫びながら、俺は勢いよくクローゼットから飛び出した。梨沙の泣き顔が目に飛び込んできた。でも、俺が現れると、彼女の顔には安心した表情が浮かんだ。
クローゼットから飛び出して、俺は梨沙の隣に立った。彼女の目には怖さと混乱が見えた。隼人は驚いた顔をしたが、すぐに嘲笑うような表情に変わった。
「おい、こいつは誰だよ?邪魔だな」
謎の男が俺を見下ろすように言った。彼の目には挑戦的な光があった。
梨沙は俺の手を握り、小さく震えていた。その手の温もりが、俺に勇気を与えた。
「梨沙、大丈夫だからな」
俺は梨沙に強く言った。梨沙の目が少し安心したように見えた。
隼人は俺たちを交互に見て、「なんだ、お前ら何かあるのか?」と言った。彼の言葉は侮辱的で、俺の怒りをますます煽った。
俺は深呼吸をして、梨沙の手を強く握った。彼女を守るために、何があっても立ち向かう覚悟があった。
「梨沙に手を出すな」
俺は隼人に向かってはっきりとした態度で言った。
梨沙は俺に感謝の目を向けた。その目には、感謝と同時に何かを訴えるような訴えがあった。俺はそれを感じ取り、梨沙の守護者としての決意を新たにした。
隼人は一瞬、動揺したように見えたが、すぐに挑発的な笑みを浮かべた。
「面白いじゃねえか……けど、俺に勝てるのか?」
男が言った。
この状況は俺にとって未知の領域だったが、梨沙を守るためなら、どんな困難にも立ち向かう覚悟だった。




